「絶望の川を越えて」

夕暮れ狼

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第10章:絆の力

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第10章:絆の力
時間が経ち、二人は次第にこの新たな場所での生活に慣れてきた。資源が限られている中でも、互いに協力し合って生きる力を蓄えていった。昼間は菜月が食料を探し、悠斗が川の水を浄化するための方法を改善し、夜は火を囲んでお互いの存在を確かめ合う。
ある日、菜月が再び魚を捕るために川に出かけると、予想以上の収穫があった。小さな魚が次々と釣れ、菜月は急いでそれを持ち帰る。
「悠斗、これ見て!」菜月は息を切らしながら叫んだ。悠斗がその魚を受け取ると、顔をほころばせて言った。
「お前、すごいな。これでまたしばらくは食料に困らなくて済む。」
菜月は照れ笑いを浮かべる。「でも、これもお互いの協力があってこそだよ。悠斗が水を浄化してくれて、私はこうして食べ物を探して…。」
二人は自然に笑い合い、互いの存在がどれほど大切なものかを実感した。
その夜、悠斗が突然言った。「菜月、もしも…このまま帰れなかったとしても、俺はお前と一緒にいられればそれでいい。」
菜月はその言葉に驚いたが、心の中で温かいものが広がるのを感じた。彼女もまた、悠斗と一緒にいることで、過去の痛みが少しずつ癒えていくのを感じていた。
「私も、悠斗と一緒なら怖くない。」菜月は小さく微笑んだ。
二人はその夜、焚き火を囲みながら、今後の未来について考える。まだ救助が来る保証はない。しかし、少なくとも今はお互いの手をしっかりと握り、どんな困難にも立ち向かう覚悟を決めていた。
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