「守りたい、君のすべてを」

夕暮れ狼

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第4章:不穏な日常

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第4章:不穏な日常
都心の高級ホテル「グラン・ルミエール」。
その最上階のスイートルームに、氷川玲奈は避難していた。榊京介の判断で、今は本社にも自宅にも戻っていない。
「本当に、ここまで大げさにする必要あるの?」
カーテン越しに東京の夜景を見下ろしながら、玲奈がつぶやく。
「あります。銃撃があった以上、“事件”はすでに始まっています」
背後から冷静な声が返ってくる。ソファに座る京介は、ノートPCと監視モニターを交互に見つめていた。
玲奈はソファに腰を下ろし、手元のワイングラスをくるくると回す。
「……あなたって、本当にずっとそうなの? ピクリとも感情を見せない」
「感情は判断を鈍らせます」
迷いもなく、答えが返ってくる。
「でも、それって……人間としてどうなのかしら」
京介が初めて、少しだけ言葉に詰まった。
一瞬だけ彼の視線が玲奈に向く。その目は、どこか影を宿していた。
「……そう思うなら、解雇されても構いません」
「違うわ。そう言いたいんじゃないの。ただ……あなたがどんな人か、知ってみたくなっただけ」
沈黙が流れる。
玲奈自身も、なぜそんな言葉を口にしたのか分からなかった。
数秒後、京介は小さく息を吐いた。
「——この部屋の防犯システムは手動に切り替えています。寝る前にすべてロックを確認してください」
玲奈は小さく笑った。「話そらすの、上手いのね」
「そう訓練されてますので」
乾いたやり取りに、どちらともなく微笑みがこぼれた。
ふたりの間にあった氷が、ほんの少しだけ、溶けた気がした。
夜も更けて、玲奈はベッドルームに向かう。
その背中を、京介は無言で見送った。
——この距離は、保つべきか、壊すべきか。
男の心に、ほんのわずかな“迷い”が芽生えていたことに、彼自身もまだ気づいていなかった。
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