月夜の狼と人の心

夕暮れ狼

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第六章: 絆の力

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第六章: 絆の力
試練の最後、二人は一歩一歩進むたびに心の奥底で何かが崩れていくのを感じた。彼らの周囲には無数の幻影が現れ、二人の心を引き裂こうと試みていた。リナは、過去の自分の恐れや不安、そして失った家族との思い出が幻のように襲ってきた。
「アキラ、私は…」リナは震える声で言った。「こんな私を、愛してくれるのか?」
その言葉に、アキラはしっかりと彼女を見つめ、静かに答えた。
「君の過去を愛しているわけではない。ただ、今、君を愛している。君がどんな傷を抱えていても、俺はそれを受け入れる。それが、俺が君を愛する理由だ。」
リナの目には涙が溢れた。彼女の心が、アキラの言葉で少しずつ解放されていくのが分かった。
その時、突然、周囲の景色が変わり、彼らはまるで別の世界に引き込まれたような感覚に陥った。見覚えのある村が現れ、その中にはリナの家族の姿があった。しかし、それは過去のリナの記憶の中にしか存在しない、消えた時間だった。
「母さん、父さん…」リナは震える声で呼びかけた。しかし、その家族の影は、彼女に向かって手を伸ばすことはなく、ただ静かに消えていった。
「もう、あなたはこの世界に戻ることができない。」父親の影が低い声で語りかけた。「リナ、君の心が縛られている限り、ここには帰れない。アキラを愛することで、君はもっと深い呪いに囚われるだろう。」
その言葉がリナを深く傷つける。しかし、アキラは彼女の手を握りしめ、強く言った。
「リナ、君はもう過去に縛られることはない。君が過去を愛し、過去を抱きしめても、未来はお前の手の中にある。君の決断が、君の未来を作るんだ。」
リナはその言葉を聞いて、涙をこらえた。その瞬間、周囲の幻影が消え去り、二人の前に静かな月夜が広がった。
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