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第二章
生きがい
しおりを挟む「……セツィーリア様、そんなに唇を噛み締めないでください。傷になってしまいます」
顎をとられて唇を撫でられる
いつもの私ならこれだけで真っ赤になって固まるけど、今はただまるで泣いてるように笑ってるシェリーの顔を見つめることしか出来なかった
「すみません、やはり話すべきではなかったですねこのようなお話」
「違う…私は聞いたこと後悔してないんだからシェリーも私に話したこと後悔しないで」
私の顎に添えられたシェリーの手をとって握る
「ねえ、一つ聞いていい?」
「はい」
「…シェリーの幸せは何?シェリー自身の幸せは?」
違う、違うんだよ?
決してシェリーの今までの行いを否定してるって訳じゃないんだ…ただキュアラちゃんのことを抜きにしてシェリーが思う自分にとっての幸せはなんなのか気になって
そう伝えたいのにうまく言葉が出てこない
こういうときに限って口下手になる自分がもどかしい
誤解されたくない…傷つけたいわけじゃない…そう思うのに…
悔しくなってギュッと無意識のうちにシェリーの手を握る力が強くなった
その時、クスッと笑う声が聞こえたと思ったらシェリーの左手が私の手の上に重ねられた
見上げれば優しく微笑むシェリーがいた
「大丈夫ですよ…前までは確かにくじけそうになった時もありました、自分のことなんて考えてる余裕なんてなかった。……けど、ちゃんと自分の幸せも見つけましたよ?」
「それは何?」
「セツィーリア様ですよ」
「へ!?」
な、なんですと!!?え、何これ告白!?告白っすか!?
「それにユーリ様に、街外れで私が教えている子ども達も…みんなの先生でいれることが私の幸せです」
「あっ、そ、そうだよね!!あはは!も、もう~…紛らわしいんだよバカヤロー!」
「ふふ、ドキッとしました?」
「調子に、乗るなっ!」
顔を近づけてニヤリと笑うシェリーを見ただけでさっきのあの言い方がわざとだったってことに気づく
人をからかうのは好きだけどからかわれるのは好きじゃない!
まんまと嵌められて赤くなってる顔を見られたくなくってペチンッとシェリーの顔に手を押し付けた
ペチペチとシェリーの美しすぎる顔を叩きながらホッと一息つく
良かった…ちゃんとシェリーも自分の幸せを見つけてたんだね…!
「これでシェリーから"妹の幸せは自分の幸せ。キュアラが幸せなら自分はどうでもいい"なんて自己犠牲満々な言葉が出てきたらどうしてくれようかと思ったよ」
「はは、手厳しいですね」
「当たり前でしょ?そんなエゴの塊みたいな言葉、キュアラちゃんだってきっと喜ばないよ」
「…セツィーリア様の言葉は刺さりますね」
「その様子だと、もう既に一回キュアラちゃんを怒らせちゃったことがあると見た」
「残念ながら、一回どころじゃないですね」
「かあー!おばかさんだね~シェリーは。まっ、でも、もう大丈夫でしょ?シェリーはちゃんと自分の幸せを持ってる。キュアラちゃん以外の生きがいをちゃんと自分で見つけたんだ。それだけで、私はもう安心だよ」
シェリーの顔を叩いてた手をそのまま頬に添える
両手でシェリーの顔をはさみながらそのまま嬉しくなってニカッと笑った
少しだけ目を目を見張ったシェリーの顔が面白くてさらに笑ってしまった
「やった!シェリーも驚いたからこれでおあいこだね」
頬を押したりこねくり回したりしてもされるがままのシェリー
ていうか結構変顔にしようと頬で遊んでるのになんでこの人はどんな顔でも綺麗なままなんだよちょっとムカつくんだけど
「あ、あの、セツィーリア様?ちょっとだんだん力が強くなってるような」
「いやちょっと顔が崩れなさ過ぎてムカついちゃったから」
「それ私からしたら不可抗力ですよね?」
「まあまあまあ」
こねくり回すだけじゃ飽き足らず頬を引っ張ってやろうとしたら肉がなさ過ぎて全く引っ張れなかった
ケッ
「いいなー!羨ましいなー!シェリーは本当に美人だなー!その美しさの四分の一でもいいから分けなさいよね」
弱い力でシェリーの頬をつねってたら右手をいきなり包み込まれた
そしてシェリーの顔が近づいてきたと思ったら
「私からしたら、セツィーリア様の方がずっと美しいし、かわいいですよ?」
耳元で囁かれたと思ったらフッと耳に息を吹きかけられた
先に言っておきます
私は決して耳が弱いなどといった弱点はありません、ええ決して!!
ただですね、このシェイルス・アーレスという人はですね、顔も然ることながら声もめっちゃ良いんですよ。めっちゃエロボイスなんですよ、伝わりますかねこの気持ち!!もうとにかくね?俗に言うめちゃくちゃイケボなんですよ!!
そんな声で耳元で囁かれてみ?
「バババババババババカヤロー!!!!」
叫ばずにいられるかっての!!
耳を押さえて思いっきり後ろに仰け反った
抑えてる左耳が尋常じゃなく熱い、ていうか身体全体が死ぬほど熱い
手はまだ繋がれたままだったから仰け反りすぎて椅子から落ちることはなかったけど正直今は頭から落ちてもいいからシェリーに離してほしかった
すごい楽しそうに笑ってるシェリーを全力で睨みつける
こいっつ…!!8歳女子にお色気を使って本気でからかってきやがった…!!なんって大人気ないんだこの子ども先生!
自分でもびっくりするくらい大きな声を出したからもしかして寝てるキュアラちゃんを起こしてしまったかもしれない、そう思ったけど幸いなことにさっきと変わらず穏やかな寝息を立てていた
一安心しながら繋がれた手を上下に振って離すように訴えるがシェリーは楽しそうに手を繋いだまま一切離す素振りを見せない
なんだあこいつ!!あれか!?今までの分の仕返しも含まれてんのか!?やっぱり結構根に持つタイプだよ!!
「は、離すのだ!!てかはーなーせー!!」
「えー?楽しいのでこのままでいいんじゃないですか?」
「おいいいいい!!やっぱりあんた結構性格悪いでしょ!!絶対ドSでしょ!!」
「なんのことですか?」
「ほらあ!!もうその笑顔が黒いー!!」
綺麗だから余計に黒く感じるー!!
もっと激しく振り払おうとしても結局シェリーの手は私の手から離される事はなかった
「も、もうシェリーのこといじる回数減らすね…」
「そこは普通もうしないって言うとこじゃないですか?」
自分で言うのも何だけど、超幼稚な攻防?を経て私はすっかりぐったりとしてしまった
シェリーは美しい笑顔を浮かべたままだけど…クッソ、これが勝者の余裕ってやつか…!
「き、今日は仕方ないから許してあげる!シェリーの生きがいが知れた記念日ってことで!」
「それは、ありがとうございます」
おい、笑い堪えてんのバレバレだぞ
いっそ堂々と笑えよコノヤロー
顔を引きつらせながらも、もう一つ気になっていたことを聞くことにした
「先生以外に何かやりたいこととか目標ってあるの?」
「そうですね、今は特に……強いて言うなら"物事全てに結末をつけたい"、と言ったところでしょうか」
物事全てに結末をつけたい?
「なんか妙に引っかかる言い方だね?つまりは何事も最後までやり遂げたいってこと?」
「そういうことになりますね」
「なーんだ!それならそうとわざわざ回りくどい言い方しないでよー」
カラカラ笑いながらシェリーの腕を叩く
「そうですね」と控えめに笑うシェリーに若干の違和感を感じながらも私は特に気にすることなく笑い続けた
少ししてシェリーがキュアラちゃんのタオルの水を替えてくると言って部屋を出た
残された私は顔色が随分良くなったキュアラちゃんの頭を撫でながら
「早くお兄ちゃんに元気な姿見せてあげようね」
と呟いた
部屋にセツィーリア様とキュアラを残して俺はお盆を持って外に出た
ノワール家の長い廊下を歩きながらさっきまでのことを思い出す
"先生以外に何かやりたいこととか目標"
そう問いかけられた時、自然とある一つのことが浮かんだ
けどそれを口にすることは絶対に許されない
これは俺一人で絶対に成し遂げなきゃいけないことだから
申し訳ございませんセツィーリア様
私の過去はあれで全てじゃありません
あの時、父と母を殺した男が俺に言った言葉はあれだけじゃない
"一生この傷を背負って生きていけ。この絶望を忘れるな"
これの後に続いた言葉を俺は絶対に忘れない
"お前が再び幸せを感じるようになったその時、また俺がそれをぶっ壊してやるよ。今度は跡形もなくな"
あの男…右眉から瞼にかけて傷があったあの男は必ず俺の前にまた現れる
その時は絶対……
「この手で殺してやる…!」
これが結末だ
憎悪に満ちた目で前を見据えるシェリーの声は誰にも聴かれることなく消えていった
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