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第二章
バチバチ
しおりを挟むあの後、少し騒ぎになったものの、パーティ終盤では会場でアイシャの姿が見えた
あの時馬鹿にされて本当にムカついたけど、やっぱりあの青白い顔が全部演技とはどうしても思えなくて、正直に言ってホッとした
未だにあちこちから私を見てヒソヒソとするような声が聞こえるけど、逆にそれくらいで止まっているのは私がアイシャに何かしたというはっきりとした証拠がないのと、私があのノワール家の令嬢でヴァーシス・ノワールの娘だからだろう
はぁ…本当に不甲斐ない
自己嫌悪に陥りながら皆の前で最後の挨拶をするアイシャを眺めた
「皆様、本日は本当にありがとうございました」
パチパチパチパチ
裾を摘んで優雅に一礼するアイシャに拍手が巻き起こる
もちろん私もその一人だ
きっとさっきのバチバチがなかったらもっと素直な気持ちで拍手出来てたんだろうな~
そんなことを考えていたらバチッと目が合って
「!…うっわあー」
すんげえドヤ顔をされた
やってくれんじゃねえかこの小娘めが
こちとらさっきあたふたさせられた借りだって残ってんだからな!?
かわいいけど憎たらしい顔に怒りが湧いてくる
アイシャよアイシャ、あんたって娘はすげえよ
この私が女の子に対してこんな感情を向けるってマジで本当にないんだからな!?
次々と来賓がギーベル様とアイシャに最後の挨拶をして去っていく
私たちの番になったら面倒くさいことにまた険悪な雰囲気が流れた
そして今度はその娘である私たちの間からも同じ空気が流れた
ああ、母よ、申し訳ない
娘はこういうとこまで完璧に父似であったよ
「アイシャ様、ご無事で何よりですわ」
「あら、意外ですわね、セツィーリア様がそう思ってくれてるなんて」
はあ!?
「…どういう意味かしら?」
「そのままの意味ですわ」
こっちでバチバチ
「今日の招待、感謝する」
「ギーベル様、本日はお招きいただきありがとうございます」
「ふん、よくもそんなぬけぬけと。貴様らの娘のせいでうちのアイシャが大変な目に遭ったというのにいい気なもんだな」
「結果的になんともなかったのに、いつまでもぐちぐちと小さい男だな」
「なんだと!!?」
「あらあら」
あっちでバチバチ
そんな血気盛んに挟まれて頬に手を当てて苦笑いを浮かべる母にひたすら申し訳ないと思った時間だった
「私なんかよりよっぽど悪役令嬢にふさわしいと思うでしょ!?」
「帰ってきたと思ったらいきなり人を部屋に連行して開口一番にその一言だけ言われても何も分からねえしあと鼻息荒いし目血走ってて怖い」
結構引いてるクロスに構わずに詰め寄る私
ちなみに鼻息は自分でもうぜえと思ってたけどちぃっとばかし興奮状態だからね今、致し方ない致し方ない
「今日のバーティでなんかあったのか?」
「あったなんてもんじゃない!なんと!天敵が出来た!」
「天敵?」
「いんやもうすげえよ、すげえの一言しかねえのよこれがマジで!もうこれは運命だね、親同士がそうならもう子供同士もその運命に従うしかないってことだよね!かあー!!世の中って上手く出来てんなコンチクショー!」
「……」
ドン引きしてるクロスにも気づかずにテーブルを叩く
もし私が未成年じゃなかったら絶対ビールジョッキを手にしてさらに荒ぶってたわ
「とりあえず、相当悔しい思いをしたのは分かった」
「分かってくれるか親友」
「うん、性格が変わるくらいの何かがあったんだろ?」
「うん、うん?ま、まあ、そうかな!」
すっごい哀れんだ目で見られたような気がするけど今はクロスが分かってくれただけで満足だ!
「それじゃあ、今日は尚更ユーリは行かなくて良かったって感じか?」
「うーん…そうだね」
本当はユーリも一緒に行くはずだったけど、ユーリは今日体調を崩して大事をとって療養中だ
本人は大丈夫って言ってたけど、私たちは心配だし、ウォーレイ家のお嬢さんは身体が弱いという話も聞いてたから念の為今日はお留守番してもらったのだ
帰ってきてすぐに様子を見に行ったけどぐっすり寝ていて、話を聞くと具合も大分良くなったらしいから一安心だ
とりあえず、今日は本当にその選択をして良かったと思う
ユーリを連れて行って、ないかもしれないけどアイシャがユーリにまで何かを言うかもしれないと思ったら…
「本当に許さないよね」
自分でも気づかないうちに感情の篭っていない声が発せられた
ハッ!として顔を上げればじいっとクロスが私を見ていた
「あっ、いや!今のはその」
「ははっ、何慌ててんだよ」
少しおかしそうに笑うクロスに自然と私も落ち着きを取り戻した
「セツのその家族を何より大事に思ってるとこ、俺は好きだし尊敬してるよ」
「……」
「だから、誰かに何か言われたって、気にせずに胸張ってろ。そっちのがお前らしい」
「……んだよクロス、千里眼でも持ってるわけ?なんでそんなになんでも分かっちゃうんだよ」
なんでそんなにも…私の心を救ってくれるんだよ…
「お前が分かりやすいだけだっつの」
自然と俯いてしまった私の頭をクロスがポンッと優しく撫でてくれる
なぜかそれだけで身体が軽くなったと感じてしまうのは、きっとクロスが私の一番の理解者であり、親友だからだ
じゃなきゃ
この気持ちの説明がつかないもの
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