94 / 130
第三章
利用
しおりを挟む未だに笑っているハルにいつまでも構っている時間はもちろんなく、このまま帰ろうとしたその時
「これからよろしくね~、セツィーリアちゃん?」
なんか含みのある言い方で言われ、横目でハルを一瞥してから
「私としては、よろしくしたくないけどね」
そう言い残して私は教室の入り口で待っているコレットの元へと向かった
「さて、お手並み拝見といこうかね~」
愉快そうに笑いながら呟いた言葉は私の耳に届くことはなかった
「セッちゃん!大丈夫だった!?」
「大丈夫大丈夫!変な奴だったけど、今のところ悪い奴には見えないから」
そう、今のところはね
変な奴で、正直謎に包まれてるハルだけど……少なくとも敵意は向けられていなかった気がする
それだけでも分かれば今は充分だ
それに変に今までの奴らみたく媚びてくる様子もないからとりあえずは要観察ってとこかな
「そっか、なら良かった」
安心したように息をつくコレットの優しさに癒されながら寮に戻る帰路についていれば
「ゲッ」
「あら」
会いたくもない面倒くさい奴に会ってしまった
「お久しぶりですわね、セツィーリア様」
「えぇ、久しぶりねアイシャ、身体の調子はどう?」
「最近どっかの誰かさんと同じ空気を吸っていなかったからとても調子が良いですわ」
「そう、確かにそれだけぞろぞろと取り巻きを引き連れて歩けるくらいには元気そうで良かったわ」
会って早々ギスギスした空気を生み出させた張本人はここ数年でさらにソフィを崇拝し、さらに私を憎むようになったアイシャだ
見た目はさらに可憐にかわいくなったと言うのにどうして中身はこんなにも残念に育ってしまったのだろう
え?何?私が言うなって?だからうるせえって!!
「それじゃあ私達はこれで」
また何か嫌味を言われる前にさっさと退散しようと思ったけど、そう簡単にこいつがそれを許すはずもなく
「ところで、セツィーリア様?そちらの方は紹介してくださらないの?」
しかも最悪なことにコレットに目を付けやがった
心の中で舌打ちをしながらアイシャを振り返る
ここは無難に紹介だけして帰れれば万々歳だ!
「やだわ、私ってばうっかりしてたみたい。アイシャ、こちらはコレット・メリ嬢ですわ。コレット、こちらはアイシャ・ウォーレイですわ。さっ、紹介も済んだ事ですし、私達ははやく」
「コレット様、私のことは気軽にアイシャと呼んでください」
「あ、ありがとうございます、アイシャ…様」
チッ!!アイシャの奴め何を企んでやがる!!
本性を知った今じゃその笑顔だって純粋なものじゃないってのは分かるんだからな!?かわいい顔して笑ったって分かるんだからな!?
「そうだ!コレット様?これからお近づきの印に皆でお茶をしようという話になっているんですの。コレット様も一緒にどうかしら?」
「あの、招待は嬉しいんですけど、私セッちゃんと一緒に帰るって約束してて」
「…セッちゃんね……それなら大丈夫じゃないかしら、セツィーリア様はそのようなことを気にする方じゃないですし、むしろ一人でいるほうがお似合いとは思いませんこと?」
私のあだ名をとんでもなく冷めた顔で呟いたアイシャはお得意の仮面笑いでコレットをお茶に誘った
てかなんだお前!?お前までナンパ!?やめろよネタ被ってんだよそれもう私が何話か先でやってんだよ!!
つぅかなんでお前が知った口で私を語るわけ!?私とお前仲良くないよね!?むしろ天敵だよね!?
……はっ!待てよ?……分かったぞこいつの魂胆が
こいつ……コレットを自分の取り巻きに入れて私を孤立させようとしてる……!!
そう理解した時、ふつふつと怒りが湧きあがってきた
アイシャが私から友達を奪おうとしていたこともそうだけど、何よりこいつがコレットと友達になりらいから、という理由ではなく、ただ私を苦しめたいからとコレットを利用しようとしてることに対しての怒りがどんどんと大きくなっていった
「アイシャ、あんた!!」
アイシャに文句を言おうとしたその時
「ごめんなさいアイシャ様。私、セッちゃんと一緒に居たいのでお茶会には行けません。折角誘ってくれたのに申し訳ございません」
はっきりと通ったコレットの声で場は静まり返った
嘘くさい笑顔を浮かべていたアイシャも全員同じ顔に見えるありきたりな取り巻きも、そして私も、皆コレットの言葉に目を見張った
「さっ、セッちゃん帰ろ!」
「え!?あっ、う、うん!」
コレットに手を引かれて漸く我に返った私はアイシャを一瞥してからそのままコレットとその場を去った
少し小走りをしてもうすぐ寮というところでコレットを歩みを緩め、私の手を離した
「ごめんねセッちゃん、勝手なことしちゃって」
「ううん、全然。むしろありがとう、私もあの場から離れたかったから」
そう言って微笑む私に釣られたのかコレットも小さく笑みを浮かべる
でも、私には少し気にする事があった
「ねえコレット、さっきアイシャが言っていたお茶会だけど…もし本当は行きたいけど私を気にして行かないって言ってるんだったら私のことは…」
「もう!そんなんじゃないよセッちゃん!確かにお茶会も魅力的だと思うけど、私はセッちゃんといる方が楽しいから断ったんだよ!本当に本当なんだからね?」
プンプン、なんていう効果音がつきそうなくらいかわいらしく少し怒っているコレットになんと言っていいのか分からない
分かるのはただ一つ
マジでこの子天使!!
「それに、なんだか上手く言えないけど…私、アイシャ様がちょっと苦手なんだと思う……本当に失礼なことを言っている自覚はあるんだけど!その……笑っているのに笑ってないような感じがして」
気まずそうに言うコレットを見て私のゆるゆるデレデレ、略してユルデレモードが一気に引き締まった
コレット、やっぱりこの子すごい子だ
初対面で本能的にアイシャの裏の部分に気づくなんて、人間観察能力は私よりすごいかもしれない
ていうか普通にあれなのかな?マジもんのピュアだからこそ分かる偽ピュアの特徴があるのかもしれない
まあ、どちらにしろこれからはさらにアイシャに気をつけなければならなくなったな
「コレット、コレットは絶対に私が守るからね?信じて」
「?セッちゃん?」
去り際に見たアイシャの歪んだ顔は忘れられそうにない
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。
しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。
断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが
侑子
恋愛
十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。
しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。
「どうして!? 一体どうしてなの~!?」
いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
前世ブラックOLの私が転生したら悪役令嬢でした
タマ マコト
ファンタジー
過労で倒れたブラック企業勤めのOLは、目を覚ますと公爵令嬢アーデルハイトとして転生していた。しかも立場は“断罪予定の悪役令嬢”。だが彼女は恋愛や王子の愛を選ばず、社交界を「市場」と見抜く。王家の財政が危ういことを察知し、家の莫大な資産と金融知識を武器に“期限付き融資”という刃を突きつける。理想主義の王太子と衝突しながらも、彼女は決意する――破滅を回避するためではない。国家の金脈を握り、国そのものを立て直すために。悪役令嬢の経済戦争が、静かに幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる