98 / 130
第三章
特殊
しおりを挟む「クロス?」
今さっきまで感じていた焦りも忘れて眉を顰めながらハルの顔を凝視する
どうしてこいつがクロスのことを?
「わお、クロス・ウェルシーの名前を出しただけでセツィーリアちゃんってばそんな顔するんだ~」
「なんでクロスのことを聞くの?そもそも、どうやって知ったの?」
「あれ?もしかして知らない?クロス・ウェルシーって結構有名だよ~、"セツィーリア・ノワールの優秀な僕"ってね」
「…なんですって?」
そんな話、聞いたことない
確かにクロスのお母さんのミリアーナさんはうちの正式な使用人だけど、クロスは自由な身のはずだ
ノワールの名前で縛られることなんて…さらに言えば"僕"なんて言葉を使われていい存在じゃない
「そんなに彼のことが大事?ただの"僕"なのに?」
ハルがわざとこういう言い方をして私を挑発してるのは分かる
カチンとは来るけど、私はそれに乗るつもりはない
前に一度失敗しているから
例え状況が違っていても、もうアイシャの時のような失態を犯すつもりは無い、二度と
「クロスは"僕"なんかじゃないわよ、私たちの家族よ」
事実を淡々と述べるも、ハルは納得がいかないのか食い下がってくる
「それはおかしくな~い?だって聞けばクロス君って使用人の息子でしょ~?使用人とすら呼べないような存在なのに家族って、色々と間違ってると思うけど~?」
ハルがそう言うのも無理は無いと思う
ていうか、もうそういうことを言われ飽きたし聞き飽きた
今までにだって私たちノワール家とクロスとの関係について色々と口を出してくる部外者が沢山いた
「あのような身分の子どもを軽々しくあなた方の身内としないでください、付け上がりますよ!」や「そのような子ではなくうちの息子と親交を深めてみてはいかがですか?」「まあ!?使用人の子どもだなんて!身の程を知りなさいよ!」
色々と言われたし聞かされた
最初はそんなことを言う奴ら全員に噛み付いてやりたかったけど、私が怒る前にお父様とお母様が無難にそいつらの相手をしたから私の怒気は削がれた
その後二人にどうして反論しなかったの!と八つ当たりも兼ねて聞けば
「当主がそう簡単に感情を露にするわけにはいかない。笑顔を浮かべながら嫌な事を流せるような人に成らなければいけないのだ。」
今はその言葉の意味がよく分かるが、当時まだまだ未熟中の未熟だった私はお父様を冷たいと思い一時期拗ねて口も聞かなかったことがある
そんな私に一番呆れていたのはクロスだった
私はそれに対しても納得がいかなかった
だって、こっちはクロスのことで怒ってるのに!確かに、勝手に私が怒ってムカついてるだけだけどさ!でもクロスはもっと気にするべきだよ!私はクロスが酷く言われてるのが許せない!
それをクロスに言えば
「その人たちの言ってることは正しいよ。セツや旦那様たちが特殊なだけで」
「そんなこと!」
「あるんだよ。本当なら、俺とセツは同じ席に着くことはおろか、軽々しく名前を呼べるような関係じゃない」
話しかけることすら阻まれるんだよ、俺とお前の本当の関係は
クロスのこの言葉は少なからず私にショックを与えたし、この世界の身分制度というものを思い知った
この件以降、私はしばらくの間考え込んだ
で、考え込んだ結果
誰にも何も文句を言われないくらい立派な、ノワール家に相応しい令嬢になれば、私がクロスや他の使用人たちのことを家族として扱っても誰にも咎められないのではないか、という結論が出た
そしてここで漸くお父様の言っていた言葉の意味も理解出来た
一家の主はそう簡単に弱みを見せてはいけないのだ
大切なものや人達ほど強みにも弱みにもなる得るし、そこに付けこもうとするやつはこの世界には山ほどいる
その人たちを守る為にも、どんなことでも冷静に流せるような力を身につけなければならないのだと知った
だから私も何があっても動じない人間になった
まあ、まだまだ感情の方が勝っちゃう時もあるけどそれでも大分自分を律することが出来てると思う
それに、発散の方法も分かったしね
ある時クロスに「最近大人しくなったね」と言われたことがある
それがどういう意味なのか分かっていたから笑顔で言ったのだ
「物理的に仕返し出来ないから社会的に仕返し出来るって分かったからね」
この言葉を聞いた時のクロスの顔は傑作だった
少年よ、結局私はやられたら黙ってはいられない人種なのだよ
それに、このやり方はお父様の受け売りだから呆れるならお父様の優秀な遺伝子に呆れてね
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。
しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。
断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが
侑子
恋愛
十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。
しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。
「どうして!? 一体どうしてなの~!?」
いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
前世ブラックOLの私が転生したら悪役令嬢でした
タマ マコト
ファンタジー
過労で倒れたブラック企業勤めのOLは、目を覚ますと公爵令嬢アーデルハイトとして転生していた。しかも立場は“断罪予定の悪役令嬢”。だが彼女は恋愛や王子の愛を選ばず、社交界を「市場」と見抜く。王家の財政が危ういことを察知し、家の莫大な資産と金融知識を武器に“期限付き融資”という刃を突きつける。理想主義の王太子と衝突しながらも、彼女は決意する――破滅を回避するためではない。国家の金脈を握り、国そのものを立て直すために。悪役令嬢の経済戦争が、静かに幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる