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第三章
唯一の欠点
しおりを挟む新入生の入学式が数日前に終わり、生徒会の仕事も漸く一段落ついた
今年入学してきた友人たちに会いに行く時間もやっと出来た
……あの子にも、やっと…
その姿を思い浮かべただけで顔が緩んでいくのが自分でも分かる
「なぁにニヤついてんの~?」
廊下を歩いていたら耳馴染んだ声がかけられた
僕にこんな風に話しかけるのは思いつく限り一人しかいない
「久しぶりだね…そして、入学おめでとう
ハル」
そこにいたのはやっぱり、窓枠に座り片足を抱えた幼馴染だ
「入学してもすぐに会いに来ないとか寂しかったんだぜ~、フィー」
「ごめん、生徒会が忙しくて。それより、ダメじゃないか、行儀が悪いよハル」
「はいはい、新生徒会長様に言われちゃあ仕方ないね」
そう言って窓枠から降り、こっちに歩いてくるハル
会うのは1、2ヶ月ぶりだけど、また少し背が伸びた気がする
僕もかなり伸びたほうだけど、年下のハルに抜かされるのはちょっと悔しいな
「そう言えば、ハルはどうしてここにいたの?今の時間は授業のはずじゃ」
「俺んとこは今の時間自習になったの、そういうフィーこそ、一年生の階に何の用だよ~?」
「え?…いや、それは…」
あの子に会いたくてまさか無意識のうちにここに来てたなんて…
「あぁ、お姫様に会いに来たのね??」
「ええ!?どうして分かったの!?」
ズバリと言い当てられ驚きながらハルを見た
けど、当のハルは呆れながら僕の肩に手を置いた
「そりゃそんな色ボケしたような緩い顔を見たら誰でも分かるでしょ」
ハルにそう言われて慌てて顔を触った
まあ触ったところで自分で確かめる術なんて持っていないけどね
「そ、そんなに緩んでた?」
「一国の王子様が外でしちゃいけないレベルにはね~」
わざとそんな言い方をしたハルの言葉に刺さるものを感じた
分かってる、一国の王子はそう簡単に自分の感情を露にしてはいけないというのは
けど、セツのことになるとどうしても抑えきれないんだ
だって……本当に好きだから
「……今まではフィーの話でしか知らなかったけど、確かにセツィーリアちゃんは他のお嬢様とちょっと違うね~」
ハルの口から親しげに呼ばれたセツの名前にまたしても驚いた
「ハル!もしかして、セツに会った!?」
「会ったも何も同じクラスの隣の席だよ~、俺とあの子」
ニヤリと笑うハルを見つめる僕の顔はきっととても間抜けなことになっているだろう
だって、あまりにも色々と知らない間に事が起きているから…!
「で、で?ハルから見たセツはどうだった?やっぱりかわいかったよね?ううん、セツはかわいいだけじゃなくてかっこいいとも言えるんだけどね!?明るくて笑顔が眩しくて正義感が強くて、人のことばっか考えてるとても優しい子で…確かに他のご令嬢たちと比べて少し変わってるところはあるけど…僕はそこに救われたと言っても過言ではないし、むしろそこがセツのかわいい部分で!!」
「はいはいはいはいはーい!!!!分かった、分かったから!!!もうそれ何回も聞いたから!!なんなら年単位で聞いてるから!!だからいい加減にしろ!!!」
ついハルに詰め寄りながらセツのいいとこについて話せばまたしてもうんざりと言ったような感じで話を止められた
ハルにセツの話をすればいつもこうだ
セツのいいとこはもっと語りつくせないくらいあるのに
「たくっ、フィーって他は完璧だけど、お姫様のことになると暴走するのが唯一の欠点だよね」
「どうして?僕はそれを欠点だとは思わないよ?」
セツを好きでいるのはある意味僕の誇りでもある
それは間違っても欠点と言われる様なものではない
「……そうだね~、なぜなら今の僕があるのもセツのおかげだから、って言うんだろ~?それもまとめて全部聞き飽きたから」
本当に疲れたような表情を浮かべてため息をつくハルに少しだけ申し訳なくなる
ハルはいつも僕の話を全部聞いてくれるからついつい甘えてしまうんだよね
それには感謝してるし、良い友人を持ったって本当に思ってるけど…
ハルとセツが知り合ったことで少しだけ心配なことがある
こんなことを聞いたら多分ハルには呆れられるし、セツに知られたら情けないと思われるかもしれないけど、それでも聞いてしまおう…
「ねえ、ハル」
「何?フィー」
「……ハルはさ…セツに会ってどうだった?好きに…なっちゃいそうだった?」
自分でもびっくりするくらい弱弱しい声が出た
だけど、これに関してはどうしようもない
セツのことは好きだ
誰よりも好きな自信があるし、絶対に振り向かせてみせる!という覚悟もある
けど、それとこれとは別なんだ
ハルは僕の幼馴染で親友で、僕から見てもとても素敵な人だ
そんなハルがもしセツのことを好きになったら、僕達はライバルになる
ただでさえ一筋縄じゃいかないライバルが他にもいるのにハルまで加わったら、ますます気が抜けなくなる
まあ、例えそうなっても、負けるつもりは一切ないけど
気を持ち直してハルの顔を見れば、ハルは一瞬だけとても怖い顔をしていた
……と思ったら、次の瞬間目に入ったハルの顔には呆れの感情しか浮かんでいなかった
「冗談やめてよね~、わざわざ親友の好きな子を好きになるような修羅場展開を俺が持っていくわけないでしょ~?そもそも、セツィーリアちゃんって全くと言っていいほど俺の好みじゃないから余計な心配するだけ無駄無駄~」
そう言うハルからは嘘をついてる感じはしなかったからとりあえず一安心したけど
それでも
……さっきの表情は本当に見間違いだったのだろうか?
わずかな引っかかりを覚えながら、ハルに肩を組まれて廊下を進んでいった
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