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第四章
害悪
しおりを挟む「ごきげんよう、皆さん」
思っている以上ににこやかな私の様子に少し安心した表情を浮かべる奴も、余計に顔色を悪くする奴もいた
その中で、明確に敵意を持っているであろう眼差しを私に向けている奴がいる
こいつ、なんか妙に記憶に新しい顔をしているような……
「ノ、ノワール嬢!お目に掛かれて光栄です!私は」
「あら、自己紹介は必要ございませんわ。ロイス・ターヘン卿。そして、そちらのお二方も。左のあなたがデインリー・ベッチ卿。そして、真ん中のあなたはべスパル・ノスカ卿でしょう?皆様のことは存じておりますわ」
「!!本当ですか!?ノワール嬢に覚えて頂けてたなんて!こんな嬉しいことはありません!」
「自分も!まさかあなた様に知ってもらえてたなんて、この上ない誉れです!」
「ふふっ」
果たして本当にそうかしら
さっきまで覚えていた男も呑気に喜んでいる男と同じように喜びだした
よほど、ノワール家の人間に知られていたことが嬉しかったのだろう
あぁ、なんと滑稽なのだろう
こいつらはどうして自分たちが私に覚えられているのかをその腐った脳みそで考えた事はないのだろうか
まあ、そもそもが腐っているから考えた所で碌な答えが出てくるわけもないのだけど
まず、ロイス・ターヘン
男尊女卑が激しい一家、ターヘン子爵の三男坊
主に商いを生業とする一家だが、少し掘れば裏での違法取引や薬物売買など、叩けば埃やごみしか出てこないような一族だ
そして、ずっと怯えていたくせに、いきなり現金になり喜びだしたのはデインリー・ベッチ
ベッチ男爵は表では宝石商を生業としている一族かと思いきや、街での違法賭博場の多くはこの家が絡んでいると言われている
信じられる筋からの情報なので間違いはないだろう
最後に、ずっと私を睨みつけているのはベスパル・ノスカ
ノスカ伯爵の一人息子であり、派手な女遊び、女性や平民への暴行、飲酒喫煙、暴力沙汰などなど、今までの二人以上に素行の悪さが群を抜いているクズ野郎
しかし、それでもこんな風に堂々とした態度でこの学園に居られるのは、彼を溺愛するノスカ伯爵がそれら全てを金でもみ消しているからだ
この3人の共通点
つまり、私に覚えられてしまった理由は
極度に平民を嫌い、貴族である自分たちの家の権力を笠に着て好き放題にしている背景があったからだ
ちなみに、この学園にはこういう奴らは腐るほどいる
だからこそ、私はそういう奴らの情報を全て頭の中に叩き込んだのだ
そいつらがクロスや他の生徒たちに何かした時に
徹底的に潰すために
「それより、ベスパル・ノスカ卿はいつまで私のことを睨みつけるのでしょうか?レディに対してあまりにも失礼ではなくって?悪態をつきたくとも、相手はきちんと選んだほうが賢明では?」
訳:お前誰に向かってそんな態度取ってんねん、身の程を知れボケが
「ハッ……これは失礼いたしました。ノワール嬢のあまりの美しさにに目が離せずにいたもので」
鼻で笑ったことを隠そうともせずによくもまあそんな白々しい言葉を並べられるものだ
「あら、そうでしたの?私ったらてっきりノスカ卿は私に何か不満があるのかと思ってましたわ!まるで親の仇のような目で見てくるから、恐怖を覚えてしまいましたわ」
「そんな、とんでもない!お慕いしているノワール嬢をそんな風に思うわけがありません!…まあ、ノワール嬢は覚えていないかもしれませんがね」
まるで吐き捨てるような言い方をする姿に既視感を覚える
覚えてない?あと、なんだって?お慕いしているだと?
表情に出さないようにちゃんとベスパル・ノスカの顔を人の顔として認識を始める
正直、今までこいつらのことを人として認識せずに顔にモザイクが掛かった人の形をした害悪としてしか見てなかったから、今初めて顔を見たと言っても過言ではない
そして、初めてちゃんと認識したからこそ思い出せたけど
こいつ、前に私を口説こうとした奴じゃん
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