幸せに決まってる!

ユーリ

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後編

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伊織は違う意味でドキドキしていた。
侑汰と一緒にリビングでホラー映画を見ているのだが、怖くてしょうがない。
大きなソファーに座る侑汰の腕に必死にしがみついていた。
「ヒイイッ」
「大丈夫か伊織。さっきからお前、叫んでしかないぞ」
「だいじょ…ヒイイッ」
飛び上がりそうになるもなんとか堪え、ひたすら侑汰にしがみつく。
ふと視線を感じ見上げると、侑汰に微笑まれていた。
「…なんですか」
「映画見てるだけなのにお前はかわいいなー、って思って」
「…侑汰さん映画見てます?」
「ごめん。ほとんど見てない。ずっと伊織見てる」
「……ホラー映画見たいって言ったの侑汰さんですよ?」
そう言うと気まずそうに頭をかき始めた。
「あー、うん、ホラー映画が見たいっていうか、ホラー映画で怖がって俺に抱きつく伊織が見たい」
「へ?」
思わず素っ頓狂な声が上がるも、その間にも映画は進みどんどん怖いシーンが追加されていくので一時停止した。
「…侑汰さんってホラー映画好きって前に言ってましたよね?」
「正しくは、ホラー映画見て怖がる伊織が見たいからホラー映画が好き、って感じだな」
「……じゃあもう見ない」
リモコンで操作しようとして「だめ」と手で制された。
「まだかわいい伊織が見たいからだめ」
ひょい、と抱っこされて膝の上。顎を上げられ、ちゅ、と額にキスをされた。
むう、と唇を尖らせながら膝を抱えると抱きしめられた。
「だって伊織がすげーかわいいんだもん。今にも泣きそうな顔でさー、俺に必死にしがみついてくるんだぜ? すげーかわいい。すげーかわいい」
「…」
もうなんて言えばいいのかわからない。
とりあえずリモコンでスタートボタンを押し、背後の侑汰に念押しした。
「じゃあ一緒に見るから、しっかり僕のこと守ってください」
「はいはい」
「もー! 僕は本気で苦手なんだからー!」
侑汰にケラケラ笑われるも嬉しそうなので、しょうがないなあ、と侑汰にしがみついた。




「わー! やっぱ人多いですね!」
今日は車で近所のショッピングモールへと来ていた。
ふう、と侑汰が息を吐く。
「ここはなあ、年末年始にゴールデンウィークはすごいことになる」
「じゃあ家に引きこもってて正解ですね」
すすす、と伊織が近づき、侑汰の腕を取った。
「結婚まであと一ヶ月切りましたよ?」
「ああ、もうすぐだな。…大丈夫か? 心変わりしてないか?」
「もー、侑汰さんそればっかり」
この年の差は永遠に縮まることはないから、きっと侑汰はずっとこの心配をするのだろう。
ショップを見て回りながら雑貨屋に入った時だった。
「永井? 久しぶりだな!」
顔を上げると同級生がそこに立っていた。伊織は笑う。
「わー久しぶりだねー!」
「卒業式以来だから…て言ってもまだ二ヶ月経ってねえわ」
「ホントだ。でもすごい懐かしいねー」
「永井は今何してんの? 俺はこの近くで働いてて」
「あ、僕は…」
続きを言いかけて不意にぐいっと腰を抱かれた。見上げると侑汰だった。
「俺の妻に何か用ですか?」
ボッ、と伊織の顔が一瞬で真っ赤に染まる。
それを見た同級生も顔を赤らめ「え…え?」と伊織と侑汰の顔を交互に見ている。
きっとこれからこういう機会は増えるだろうから今のうちに練習だ! と伊織は頷いた。
「ぼ、僕、えっと、来月結婚するんだ…」
親以外の初めてのカミングアウトは思った以上に照れてしまい、最後の方は声が消えかけていた。
ーー助手席に座る帰り道の車の中で、伊織はまだ赤い頬を押さえていた。
「伊織、スマホめちゃくちゃ鳴ってるぞ」
「うん…」
恥ずかしさや照れに追い討ちをかけるようにスマホの通知がピコンピコン鳴る。うるさいので消音にした。
「さっきの同級生がさ、元ウチのクラスのグループトークにメッセージ入れたみたいで…」
「なんて?」
「…僕が結婚する、って」
さっきからずっとお祝いメッセージが鳴り止まないのだ。中には根掘り葉掘り聞いて来る子もいて恥ずかしくてしょうがない。
「なんかね、僕、同級生で一番に結婚するみたい」
「ほぼ卒業と同時だもんな。で? どう思った?」
「…俺の妻、って侑汰さんに言われてめちゃくちゃドキドキした。どうしよう、僕、僕…っ」
運転する侑汰の腕にそっと触れた。
「侑汰さんに今すぐ抱かれたい…」
ーー玄関ドアを閉めた瞬間に抱きしめられ、すぐさま唇を奪われる。
「んっ、ぁ、…は、あ…ゆうた、さ…」
「煽ったのはお前だぞ、伊織。責任取れ」
「ん…責任、とる…から、……抱いて?」
「ああもう俺の嫁がかわいすぎる」
舌を乱暴に入れられ無理矢理伊織の舌と絡めた。そのまま痛いほどに舌を吸われすぐさま下半身が反応してしまう。
その股間を服の上から撫でられ、伊織も侑汰自身を服の上からさすった。
ズボンと下着を脱がされ、先走りの体液がとろりと流れるそれを指に纏い穴をほぐされる。
「んっ、んっ…あ、あ…」
侑汰の長い指が何度も出入りを繰り返す。時折コリコリと気持ちいい場所を弄られ、腰が跳ねそうになるぐらい感じてしまった。
「んんんっ!」
「どうする? 一回出すか?」
完全に勃起状態の伊織自身を撫でられるも、伊織はふるふると首を横に振った。
「侑汰さんのが、ほしい…」
壁に背中を押しつけられ、片足を侑汰の腕に乗せる。とろりと落ちた体液が、床に広がる。
キスをされた。
重ねるだけの優しい口付けを、角度を変えて味わうように何度も何度も。
唇を離すと見つめられた。真剣な瞳で見つめられ、ドキドキしてしまう。
「伊織。必ず幸せにする。ーー俺と結婚してくれ」
伊織は頷いた。
何度も何度も頷いた。
小さな頃からずっと好きだった人。その人とこうやって体が結ばれるだけでなく将来も結ばれた。
伊織は腕を伸ばして侑汰に抱きついた。
「よろしくお願いします」
ずぶずぶと性器を挿入されてぎゅっと目をつむると、その目元に優しく口付けられた。
「目え痛くなるぞ」
ちゅ、ちゅ、とかわいい音を立ててのキスに思わず笑うも、体の力が抜けたのだろうその瞬間に根元まで挿入されて伊織は体をのけ反らせながらイってしまった。
「はっ…あ……」
腹と床が白く染まる。ぴくぴく震える伊織自身は、まだ半勃ち状態を保っていた。
それを見た侑汰が笑う。
「元気だな」
「だって…気持ちいいんだもん…」
「俺も気持ちよくなりたい。ーー中に出していいか?」
「うん…いっぱい出して…侑汰さんのもので、僕の中いっぱいにして…?」
侑汰に微笑まれながらキスをされた。
首元に腕を巻きつけて、離れないようにしがみつく。ぐちゅぐちゅと、内側から湿った音がよく聞こえた。
腰を打ちつけられて中も思考も全部ぐちゃぐちゃだ。
「ぅ、あ…っ、あっ、あっ、…んん、んっ…んっ」
「伊織…伊織…」
「あ、あっ、ゆうた、さ、ん…っ」
奥を突かれた瞬間に侑汰自身が果てる。荒い呼吸を繰り返していると張り付いた前髪をかき上げられた。
「ん…」
「そろそろ婚姻届貰いに行くか」
「僕どこか間違えそうだから多めに貰いたいなあ」
「それもそうだな。…小さな頃から知ってるお前と結婚かあ。最高に幸せだな」
侑汰にキスされて微笑まれた。
「これからよろしくな、奥さん」
「これからよろしく、旦那さま」




目を覚ました伊織は目元を擦ろうとして何かに触れたことに気づいた。
「あ…」
左手の薬指に嵌められているのは結婚指輪だ。
「そっか、僕、結婚したんだ…」
ぽぽぽ、と染まる赤い頬を押さえる。熱い。
伊織の誕生日となる昨日の六月二日に朝イチで役所へ行って婚姻届を提出してきた。
受け取った書類の自分の名前が、永井伊織から佐野伊織となったのを見てすごく嬉しかった。
そして今日は、佐野伊織となって二日目である。
「ん…どした伊織…もう起きたのか?」
侑汰も目を覚ましたらしく、ちゅ、ちゅ、と頭に額にキスされた。
「ほら、ちゃんと布団を被りなさい。風邪引くぞ」
「侑汰さん、侑汰さん」
「ん?」
「僕、侑汰さんの奥さんです」
左手を見せながらドヤ顔でそう言うと、頭上の侑汰が吹き出した。
「なっ、なんで笑うんですかー!」
「何を言うかと思えば…お前は本当にかわいいなあ伊織。お前と結婚できて俺は幸せだ」
「僕だって幸せだもん」
「言っとくけどなあ、もうキャンセルできる二ヶ月は過ぎたからな? 覚悟しろよ?」
「覚悟するも何も、ようやく夢が叶ったんだもん」
抱きしめられ、伊織も笑いながら抱きついた。
「幸せに決まってる!」
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