隻腕の少年は柊兄弟に甘やかされる

ユーリ

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第一話「甘やかされた毎日」

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それまで家族に尽くしてきただろうに事故で片腕を失った桜田ひより(さくらだ・ひより)は、ポイっと捨てられた。
これからどうやって生きていこうと思っていたところに手を差し伸べてくれたのは二人の男だった。
ひよりより五歳年上の柊緋色(ひいらぎ・ひいろ)とその弟でひよりより四歳年下の柊碧人(ひいらぎ・あおと)の幼馴染兄弟だ。
迷うことなく、ひよりは二人の腕に飛び込んだ。




本棚から本を取ろうとして落としてしまい、慌てて拾い上げようとするのに体のバランスを崩し転んでしまう。
「ひゃうっ」
我ながら変な声が出たなあとぶつけた額を押さえていると「大丈夫か?」と慌てて仕事部屋から出てきた体格の良い男…緋色に抱え上げられた。
「ひより、大丈夫か? どこか怪我してないか?」
「うん、大丈夫だよ、ごめんね」
「デコが赤くなってるぞ」
ぶつけた額に、ちゅ、と口付けられた。そのままべろりと舐められくすぐったさに笑ってしまう。
「緋色くん、くすぐったいよ」
「で、なんで転んだ? 片腕ないんだからあまり変な態勢を取るんじゃない」
そう言って緋色が上腕より先のないひよりの短い左腕を取った。
そう、この腕のせいで体のバランスが取れないのだ。
「本をね、取ろうとしたんだよ」
「これか?」
落とした本を緋色が拾い上げてくれた。
「本を取るなら俺に言え。そのために家にいるんだから」
「本ぐらい取れると思ったんだよ…」
「でも実際は取れなかったんだろ?」
「落としました…」
しゅん、と小さくなっていると体を抱え上げられ「持っとけ」と本をお腹に乗せられる。姫抱っこされたままリビングのソファーに緋色が座り、そのままひよりも緋色の膝の上に座らされた。
「ページめくってやるからちゃんと言えよ」
「それくらいできるよー。過保護だなあ」
くすくす笑っているとひよりの短い左腕を掲げ、欠損部分にキスをされた。
「過保護になりたいんだよ。実際、俺らがいねえとひよりの生活は成り立たないだろ?」
「うん、成り立たない…」
「じゃあ素直に甘えとけ」
「…お願いします」
読みたい本は文庫サイズなので、正直片手ではページがめくりにくいのでありがたい。
緋色の大きな手のひらで本を支えてもらいながら読み進めるも、反対側の緋色の手は欠損部分を撫でてくる。
「あのー、緋色くん?」
「うん?」
「読みづらいんだけど…」
「しょうがねえだろ? お前のこの腕がかわいくて仕方ないんだ」
そう言っては何度も左腕にキスを落としては擦り寄る。ひよりは頬を赤くさせた。
家を追い出される原因になったこの左腕だけど、こんなにも愛されているんだったらいいかな、なんて思ってしまう。
すると玄関ドアが開いた音がして「碧人くんが帰ってきたね」と本を閉じてもらい立ち上がり玄関へ急いだ。
「おかえり、碧人くん」
ひょこ、と顔を出すと制服であるブレザーをきたスラリと背の高い碧人が嬉しそうな顔で「ただいまひよ兄!」と抱きついてくる。
「ひよ兄、今日もいい子にしてた?」
「もー、僕は碧人くんよりお兄ちゃんだよ?」
「それでもやっぱ心配なんだよ。んー、今日も左腕がかわいい」
碧人も緋色と同じように左腕を持ち上げては何度もキスをしてくる。
この兄弟、なぜか欠けた左腕が大好きなのである。
「おい碧人、ひよりに触るより先に手ぇ洗え。ひよりに変なウイルス付いたらどうすんだ」
左腕がなくなって半年、完全に傷口は塞がったけれどその箇所から感染症になるのではと緋色は常に気を遣っていた。「へーへー」と言いながら碧人が洗面所へ向かう。
ふふ、とひよりは笑った。
「緋色くんは過保護だねえ」
「さっきも言っただろ? 過保護になりたいんだよ」
ちゅ、と額にキスをされていると「俺もするー」と手を洗った碧人に唇を重ねられた。
ーー半年前、事故に巻き込まれたひよりは左腕切断という大怪我を負った。起こってしまったことは仕方ないとがんばって前向きに生きようとしたところに追い討ちがかかる。
それまで実家に住んでいたひよりだったが、大家族だから面倒見れないという理由で家を追い出されてしまった。
それまで給料のほとんどを実家に入れ幼い兄弟の面倒を見たりと尽くしたはずなのにと思うが、幼馴染の緋色と碧人の柊兄弟に手を差し伸べられ、それから三人で住むことになった。
上から順に、魔法省に務める在宅ワーク中の柊緋色二十五歳、兄弟に世話になっている桜田ひより二十歳、そして近所の高校に通う柊碧人十六歳だ。
「あー疲れたっ」
そう言って碧人がソファーに座ると「ひよ兄もこっち座って」と隣を叩かれる。
隣に座ると肩を抱かれ、すんすんすんと髪の毛の匂いを嗅がれた。
「くすぐったいよ碧人くん」
「ひよ兄いい匂い。甘くていい匂い」
「おい碧人。しばらく仕事部屋篭るからひよりの世話と晩メシ頼んだぞ」
「わかってるって」
兄の緋色向かってひらひらと振ったその手でひよりの頬を撫でる。
「ねえひよ兄、膝枕して?」
「ふふ、いいよ。おいで」
片腕でポンポンと膝を叩くとすぐさま碧人が嬉しそうに頭を乗せてくる。
「ひよ兄は今日はいい子にしてたか?」
「それさっきも聞いたねえ。…ちょっと転びました」
「デコ? 赤くなってる」
優しく額を撫でられた。
「俺がいない時間は兄貴が家にいるんだから、ちゃんと兄貴を頼れよ?」
「でも緋色くんお仕事してるからね…」
緋色は家にいるが、あくまで在宅ワークなのでできれば邪魔をしたくない。
「ひよ兄がこの腕になってわざわざ兄貴は家での仕事に変えたんだから、しっかりこき使ってやれ」
「う、うーん、そう言われても…」
「さーて、俺は晩メシの用意するかー」
「あ、僕も手伝う!」
「ひよ兄は座っといて」
「…お箸出したりとかならできるよ?」
そう言うと碧人は考える素振りを見せた後で「却下」と笑って頭をポンポンしてきた。



夜ごはんも食べ終わった後のまったりタイム。
ソファーに座ってうとうと眠りそうになっていると、風呂から上がった碧人が隣に座ってきた。
「ひよ兄」
左腕を持ち上げ、傷口が塞がった切断面に舌を這わせてきた。途端にゾクゾクと気持ちの良い震えが体に走り、眠気も一気に吹っ飛んだ。
「ひよ兄、いい?」
頬を撫でながらそう言われ、真っ赤な顔でこくりと頷くと碧人に横抱きに抱っこされた。
「というわけでひよ兄借りまーす」
「じゃあ俺は仕事するわ。ひよりに無理な体制取らせんなよ?」
「わーってるって」
「ひより、俺とは後でな?」
転んでぶつけた額にキスをした緋色が仕事部屋へ入るのを見てから、碧人が寝室へ向かう。
ベッドの上へそっとひよりは下ろされる。全裸となった碧人に服を脱がされるも、やはりこの瞬間はどうしても気になってしまう。
「あ、あおと、くん…」
「ん? 何?」
「…僕の体、気持ち悪くない? 大丈夫?」
事故のせいで体中あちこち傷がある上に左腕がないのだ、普段は服で隠れているけれど全て脱いだ時にどうしても全身の見た目のアンバランスさが際立ってしまう。
碧人が不思議そうに首を傾いだ。
「なんで? ひよ兄は全身かわいいよ?」
「…ほんと? 大丈夫?」
「サラサラの髪の毛もぶつけたデコも、腹の傷も太ももの傷も脚の傷も、もちろんこの左腕も全部かわいい」
口にした箇所一つ一つに口付けながらそう言い、左腕も持ち上げられキスをされる。
そのまま赤い舌を出し、べろりと舐める。切断面の少し肉が盛り上がった箇所をしゃぶるように入念に舐められ「ん…」とひよりから甘い声が漏れ出た。
「ひよ兄は全部かわいいから安心してね。ついでに言えば俺もう勃ってるから」
ひよりは目線を下に向けた。碧人の性器はもう勃起していた。
一瞬にしてひよりは顔を真っ赤にさせ、あわあわと碧人を見る。
碧人の顔が近づき、そっと唇を重ねられる。重なるだけの柔らかいキスから舌が入り込み歯列をなぞられた。
「ふ……ぅ、う…」
体のゾクゾク感が増して思わず碧人の腕に触れると体ごと抱きしめれた。あたたかい体温に安心するも、これから始まることに対して下半身に熱が集まってしまう。
「ひよ兄、しっかり俺に捕まってて?」
「ん…」
そう言われ右腕を碧人の首元に巻き付ける。ぬちゅ、と重なる二人の性器同士を碧人が一纏めにして上下に擦り始めた。
「ああ、あ、…あっ、あっ」
垂れる蜜が互いに濡らし合い、さらにぐちゅぐちゅと卑猥な音をさせる。
「腕痛くない? 大丈夫?」
こくこく、と何度か頷くと「よかった」と首筋にキスをされ甘噛みされる。そのまま唇が横へ動き、左腕を舌で舐めていく。
「あ、や、そこ、や…っ」
「嫌じゃないよね? ひよ兄はココ舐められるの好きだもんね?」
切断面に吸い付くように舐められ、我慢していた快感が一気に押し寄せひよりの性器は果てた。
追いかけるように碧人もイき、二人の腹が白く汚れる。肩で荒い呼吸を繰り返すひよりはくったりと、碧人にもたれかかった。
「やっぱりひよ兄はかわいいなあ。好きだよ、大好きだよ」
耳元で囁かれては体の熱が再燃しそうだ。
優しく背中を撫でられていると突然、バターン、と寝室のドアが開いてひよりは飛び上がりそうになった。
「終わったか?」
入ってきたのは緋色で、手にしていたタオルでさっとひよりの体を拭っては肩に担ぎ上げられた。
「さーて、仕事も終わったことだし今度は俺の番だな。一緒に風呂入ろうぜ、ひより」
「兄貴こそ無理な体制させんなよー」
「わかってるっての」
あっという間に風呂場へ連れて行かれ、ひよりのために転倒しても大丈夫なように風呂マットを敷かれその上へ座らされる。
ひよりの背後に緋色が座り、肩からシャワーをかけられた。
「温度はどうだ?」
「ん、大丈夫…」
汗をかいた体にシャワーが気持ちいい。あたたかくてぽやぽやしていると、左腕にもシャワーをかけられた。
「碧人のことだからココ舐めまくっただろ。しっかり洗ってしっかり保湿しような」
そう言って切断面を撫でられた。ただ綺麗に洗ってくれているだけとわかっているのに「ん…」と漏れ出る小さな声は甘い。
「やっぱかわいいなあ、左腕」
シャワーを止めた緋色が左腕を持ち上げ、ちゅ、ちゅ、とキスをしてくれる。
「俺たちがしっかり世話してやるから、ひよりは安心して毎日を送ろうな」
「うん…」
ひよりは体を捻って緋色に擦り寄った。
「ありがとう」
二人がいないと僕はどうなっていたかわからない。
ただの幼馴染の兄弟にここまで迷惑かけていいのかな、と思ってしまうも背後から伸びてきた大きな手のひらに性器を緩く包まれてはそんな考えは飛んでいってしまう。
「ぁっ、んんっ、ん…」
ぬちゅぬちゅと水音が風呂場に響く。思わず前のめりになってしまうと、その体を優しく後ろへ引っ張られた。
「ほら、しっかりもたれかかっとけ」
「ん…」
「足も広げて、左腕に負担がないようにしような」
言われた通り背後の緋色にもたれかかり、両足を大きく広げる。太ももの付け根をマッサージするように撫で、濡そぼった性器をもう一度包んでは上下に擦り上げた。
後ろにいる緋色も自分で自身を触っているのだろう、背中に先端が当たりねちゅねちゅと音がする。
「んっ、ぁっ…ひいろ、くん…」
「ん? なんだ?」
顎を取られ上を向かされキスされた。ねっとりと舌が入り込みひよりの舌と絡めては緩く吸われた。
「んぅ…僕の体で……ちゃんと興奮できる? …大丈夫?」
碧人にも同じことを聞いたが、どうしても緋色にも何度も尋ねてしまう。
いい加減聞かない方がいいと自分でもわかってはいるが、それでも確認してしまうのだ。
背後で緋色が、ふ、と笑う。
「お前の体でちゃんと興奮するよ。後ろ見てみろ」
首を捻って緋色の性器を確認すると、それはもうすでに大きく勃起していて思わずごくりと息を飲んでしまった。
「な? お前の体はかわいい。もちろんこの左腕だってかわいい」
左腕を舐められながら緋色の大きな手の中で達してしまう。背中を曲げて大きく息をしていると、覆い被さるように大きな体で抱きしめられ、その中心にいた緋色の性器も達した。
どろりと、熱いものが背中に広がる。
「好きだよ、ひより」
耳元で熱く甘く囁かれ、ひよりは充足感に満ちながら緋色の腕に抱きついた。
ーーこの半年間、兄弟が住むマンションの一室で共に暮らしながらひよりは落ち着いた毎日を過ごしてはいたものの、ずっと考えていたことがあった。
それは、いつまでも二人に頼っていていいのだろうか? ということだった。
ひよりは密かに二人からの自立を目論んでいた。…計画も中身も一切考えていないけれど。
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