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第二話
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「これがメロンパン…」
皿の上にちょこんと置かれたパンを見て、アイルが呟いた。
「これパパがつくったの?」
「ああそうだ」
「パパ、パンやさん…」
決してパン屋ではないが、アイルがキラキラした目で勝希を見上げるので夢は壊さないことにした。
「もうたべていいですか? あちあちですか?」
「ちょっと見てみようね」
紬は自分の分のメロンパンを手にふたつに割って、唇に当てて温度を確かめる。
「うん、もう大丈夫だよ」
「いただきますっ」
アイル用の小さなメロンパンでも、アイルが持つと大きく見える。
勢いよくかじりついて、アイルが目をキラキラ輝かせた。
「パパ、パンやさん…!」
頬をぱしぱし叩いて、おいしい、を全身で教えてくれる。
「おいしいか、アイル」
「おいしいです! メロンパンおいしいです!」
覗き込むようにして見つめる勝希の頬も小さな手でぱしぱし叩いておいしさを伝える。
アイルの隣に座る紬もメロンパンを口にした瞬間に目を輝かせた。
「すごい! これメロンパンだよ! すごいね勝希くん!」
「ははっ、パン作っただけでここまで喜ばれるとは」
「ママもパン、おいしいですか?」
「うん、おいしいよ!」
「パパはパンやさん!」
紬の頬にもぱしぱしぱし。小さな手で喜びを教えてくれるのが嬉しい。
「スープもちゃんと飲むんだぞ?」
「はーい」
朝ごはんも食べ終わり、アイルは学校の制服へと着替えた。
紬はランドセルの中身をチェックする。
「うん、忘れ物なさそうだね」
「紬、弁当も入れといてくれ」
「パパ、きょうのおべんとどんなのですか?」
「今日もキャラ弁作ったからな、昼に食うときまで楽しみにしとくんだ。量が多かったら残すんだぞ?」
そう言って勝希がアイルの頭を撫でると、ふふふ、とアイルが笑った。
「しょーちゃんとたべるからだいじょぶなのです」
最近アイルの口からよく出てくる、しょーちゃん。きっと同じクラスでアイルと仲が良いのだろう。
三人が子供部屋へ行く。部屋の隅には、フラフープのような丸い輪のようなものが置かれている。
「いってきまーす!」
「いってらっしゃい」
ランドセルを担いだアイルが勢いよく丸い輪の中にジャンプすると淡い光を発し、アイルが姿を消す。
ふう、と紬が息を吐いた。
「これ、結局どこに繋がってるんだろうね」
「行き先は学校だし、天界じゃねえの?」
「天界?」
「神様や天使たちが居る場所だ。このワープ装置は恐らく天界に繋がってる」
「よくわかんないなあ…そもそも僕は魔法使いじゃないからねえ…」
「紬は事務員だもんな。でも今はアイルのママだ。んでもって俺の奥さん」
勝希に腰を抱かれ、ちゅ、と額にキスをされる。
む、と紬は唇を尖らせた。
「僕はアイルのママにはなったけど、キミの奥さんになった覚えはないよ?」
「ははっ、これを機に籍入れようぜ」
「だからね、僕はまだキミのことほとんど知らなくて…」
「じゃあ俺のことを教えよう」
ひょいと抱っこされ「アイルじゃありませんー」と文句を言うと「ははっ」と笑われただけで終わった。
リビングへ行きソファーへ座る。勝希の足を跨ぐようにして向かい合って座らされた。
「なんかすごい恥ずかしい体制なんですけど」
「毎晩恥ずかしいことしてるのに?」
「それ、は、アイルが……」
「パパとママは仲良しさんですか? ってよく聞いてくるもんなー。最初は焦った。俺たち夫婦でもなんでもないし、たまに会ったら喋るぐらいのほぼ赤の他人です、なんて言えねえもん」
勝希の大きな手のひらが紬の頬を撫でる。
毎晩、この大きな手のひらで体のあちこちを撫でられる。気持ちよくて心地いい、手。
勝希が笑った。
「俺の何が知りたい?」
「…わかんない」
だって食堂でたまに会って一言二言会話するぐらいの間柄。それ以上の関係になるなんて思ってもいなかった。
紬の手を取り、その指先に口付けた。
「俺は護衛課に務める魔法使いだ。もしお前とアイルに何かあっても絶対に助けてやる」
「すごい自信だね」
「まあ実践型の魔法使いなもんで、腕には自信がある。他に聞きたいことは?」
耳元で囁かれ、ついでと言わんばかりに頬にもキス。
「…なんで僕を指名したの」
「ん?」
「アイルの養育者に…だってキミが僕を指名したから…」
「お前が好きだから。全部の過程すっ飛ばして家族になりたかった」
微笑まれてそう言われればもう何も言えない。だってそこには嘘は混じっていない本音のように思えたから。
ぎゅ、と抱きしめられる。
「たまに食堂で会っただろ? 少し会話はするがお互いの所属先もよく知らん。最初はそれでよかったが、人間は欲深い生き物だよホント、それだけじゃ物足りない。紬、お前のことが知りたくてしょうがなかった。そんな時に天使養育の話が来たんだ。笑えるよな、付き合ってもいないのに全部すっ飛ばして家族になりたいって思っちまった。でも今は、お前もいてアイルもいて俺は幸せだ」
「僕、は…」
「ん?」
言ってしまおうかと思った時だった。ピコン、と紬と勝希のスマホが同時に通知を告げた。
ふたりはスマホを見る。
「ヤベ、提出忘れてた」
「明日までだっけ? 急いで書かなきゃ!」
紬はすぐさまアイル専用の棚へ走って中から大量のプリントを引っ張り出した。勝希は別の棚を漁りハンコを用意する。
「えーっと、これじゃなくてこれでもなくて…あった! これだ!」
「子供の提出物って何気に多いよな。親のハンコも多いし。ていうか天使がハンコを貰ったからってどうすんだ?」
「天使も人間の生活してみたいんじゃないの? はい、僕の名前書いたからここ勝希くんの名前書いて」
「おう。…やっぱ苗字揃えたいよなあ」
養育者欄には、大石勝希、原沢紬、と書かれている。
紬は勝希を小突いた。
「なに言ってるの。この生活だってあと二週間なんだから」
「そうなんだよなあ、あと二週間なんだよなあ」
「…」
アイルと勝希と三人で暮らせるのもあと二週間。そう考えるともうすでにさみしい。
紬は無理矢理頭を振って笑顔を見せた。
「ほら、買い出し行かないと。今日もアイルの気になってるごはん作るんでしょ?」
ーー提出プリントを書き、食材の買い出しやら必要なことを済ませるとあっという間にアイルの帰宅時間となる。
「子供いたら時間過ぎるの早えなホント…」
「世のパパさんママさんはさ、これに仕事もしてるんだよ? 僕たち特別休暇だけどさ…」
アイルと暮らすために休暇を取らなくてはいけなくなり、いざパソコンで休暇届を出そうとしたら、昨日までそこになかったはずのチェック欄に、天使養育のため、という欄が設けられていた。
なのでアイルと暮らすこの三週間はふたり揃って特別休暇である。
「さ、そろそろ帰ってくるな。ふたりでアイルを出迎えてやろう」
頬にキスされながら子供部屋で待つ。しばらくするとワープ装置が光り、アイルの帰宅を告げた。
「おかえり、アイ…ル…?」
かわいいアイルと手を繋ぐ別の子供が立っている。
黒い髪の毛に黒い瞳、背中から覗く小さな羽根は真っ黒で…もしかして悪魔?
にこっ、とアイルが笑顔を見せる。
「しょーちゃん!」
「あ、ああ、この子が噂のしょーちゃんね。初めまして…」
アイルより少し背の高い悪魔が、ぺこり、と頭を下げる。
「はじめまして、ショーゴです。アイルとおなじクラスです」
「初めまして、ママの紬です」
「初めまして、パパの勝希です」
四人全員で一旦頭を下げた。
顔を上げた紬の目はぐるんぐるん回り大混乱だ。
(え、何この子、いきなり何…! え、友達だよね? 友達でいいんだよね!? でもずっと手繋いでるし!)
アイルがもう一度笑った。
「おおきくなったらしょーちゃんとケッコンするの!」
紬に目眩が発生。くらりと体が落ちるところを勝希にキャッチされる。
腕の中で見上げた勝希は笑っているが、目は全く笑っていないことに気付き若干の恐怖を覚えた。
「へえ…結婚すんのか」
「うん!」
「お前、ショーゴだっけか? ウチのアイルを選ぶのはお目が高い。そこは褒めてやろう。アイルは俺たちのかわいいかわいい息子だからなあ。で? お前はウチのアイルのどこが好きなんだ?」
いきなりなんて質問をするんだ。
これじゃあ何かしらのハラスメントじゃないか! と慌てて紬が割って入ろうとするも、ショーゴがぺらぺら喋り始めた。
「まずアイルはかわいい。かおもかわいい。せいかくもかわいい。ひかえめなのにいがいとドキョウがある。オレは悪魔だけどアイルはワケヘダテなくはなしかけてくれる。オレはそれがすごくうれしい。だからアイルはオレがまもる」
あ、意外にしっかりしてる…紬は思わずショーゴを見つめてしまった。
勝希の手が伸び、ぽん、とショーゴの頭に乗る。
「合格だ。お前をアイルの結婚候補として認めてやろう」
「ちょっ、勝希くん!?」
「ありがとうございます」
ーー子供部屋でふたりが並んで座って本を読んでいる様子を、紬は小さく開けたドアから眺める。
ぽん、と頭に手が置かれた。
「おい、あんまり覗いてやるな」
「だってだって気になるじゃん。ウチのアイルに…!」
「はは、まだ一週間なのに俺たちすっかり親だな」
「うん…」
後ろから抱きしめられ、その逞しい胸に擦り寄った。
しかし紬は気付く。勝希が一向にこの場を離れようとしないことを。
「…勝希くんだって気になるんでしょ?」
「当たり前だ。俺たちのかわいいかわいいアイルに」
勝希は歯を食いしばっていた。
皿の上にちょこんと置かれたパンを見て、アイルが呟いた。
「これパパがつくったの?」
「ああそうだ」
「パパ、パンやさん…」
決してパン屋ではないが、アイルがキラキラした目で勝希を見上げるので夢は壊さないことにした。
「もうたべていいですか? あちあちですか?」
「ちょっと見てみようね」
紬は自分の分のメロンパンを手にふたつに割って、唇に当てて温度を確かめる。
「うん、もう大丈夫だよ」
「いただきますっ」
アイル用の小さなメロンパンでも、アイルが持つと大きく見える。
勢いよくかじりついて、アイルが目をキラキラ輝かせた。
「パパ、パンやさん…!」
頬をぱしぱし叩いて、おいしい、を全身で教えてくれる。
「おいしいか、アイル」
「おいしいです! メロンパンおいしいです!」
覗き込むようにして見つめる勝希の頬も小さな手でぱしぱし叩いておいしさを伝える。
アイルの隣に座る紬もメロンパンを口にした瞬間に目を輝かせた。
「すごい! これメロンパンだよ! すごいね勝希くん!」
「ははっ、パン作っただけでここまで喜ばれるとは」
「ママもパン、おいしいですか?」
「うん、おいしいよ!」
「パパはパンやさん!」
紬の頬にもぱしぱしぱし。小さな手で喜びを教えてくれるのが嬉しい。
「スープもちゃんと飲むんだぞ?」
「はーい」
朝ごはんも食べ終わり、アイルは学校の制服へと着替えた。
紬はランドセルの中身をチェックする。
「うん、忘れ物なさそうだね」
「紬、弁当も入れといてくれ」
「パパ、きょうのおべんとどんなのですか?」
「今日もキャラ弁作ったからな、昼に食うときまで楽しみにしとくんだ。量が多かったら残すんだぞ?」
そう言って勝希がアイルの頭を撫でると、ふふふ、とアイルが笑った。
「しょーちゃんとたべるからだいじょぶなのです」
最近アイルの口からよく出てくる、しょーちゃん。きっと同じクラスでアイルと仲が良いのだろう。
三人が子供部屋へ行く。部屋の隅には、フラフープのような丸い輪のようなものが置かれている。
「いってきまーす!」
「いってらっしゃい」
ランドセルを担いだアイルが勢いよく丸い輪の中にジャンプすると淡い光を発し、アイルが姿を消す。
ふう、と紬が息を吐いた。
「これ、結局どこに繋がってるんだろうね」
「行き先は学校だし、天界じゃねえの?」
「天界?」
「神様や天使たちが居る場所だ。このワープ装置は恐らく天界に繋がってる」
「よくわかんないなあ…そもそも僕は魔法使いじゃないからねえ…」
「紬は事務員だもんな。でも今はアイルのママだ。んでもって俺の奥さん」
勝希に腰を抱かれ、ちゅ、と額にキスをされる。
む、と紬は唇を尖らせた。
「僕はアイルのママにはなったけど、キミの奥さんになった覚えはないよ?」
「ははっ、これを機に籍入れようぜ」
「だからね、僕はまだキミのことほとんど知らなくて…」
「じゃあ俺のことを教えよう」
ひょいと抱っこされ「アイルじゃありませんー」と文句を言うと「ははっ」と笑われただけで終わった。
リビングへ行きソファーへ座る。勝希の足を跨ぐようにして向かい合って座らされた。
「なんかすごい恥ずかしい体制なんですけど」
「毎晩恥ずかしいことしてるのに?」
「それ、は、アイルが……」
「パパとママは仲良しさんですか? ってよく聞いてくるもんなー。最初は焦った。俺たち夫婦でもなんでもないし、たまに会ったら喋るぐらいのほぼ赤の他人です、なんて言えねえもん」
勝希の大きな手のひらが紬の頬を撫でる。
毎晩、この大きな手のひらで体のあちこちを撫でられる。気持ちよくて心地いい、手。
勝希が笑った。
「俺の何が知りたい?」
「…わかんない」
だって食堂でたまに会って一言二言会話するぐらいの間柄。それ以上の関係になるなんて思ってもいなかった。
紬の手を取り、その指先に口付けた。
「俺は護衛課に務める魔法使いだ。もしお前とアイルに何かあっても絶対に助けてやる」
「すごい自信だね」
「まあ実践型の魔法使いなもんで、腕には自信がある。他に聞きたいことは?」
耳元で囁かれ、ついでと言わんばかりに頬にもキス。
「…なんで僕を指名したの」
「ん?」
「アイルの養育者に…だってキミが僕を指名したから…」
「お前が好きだから。全部の過程すっ飛ばして家族になりたかった」
微笑まれてそう言われればもう何も言えない。だってそこには嘘は混じっていない本音のように思えたから。
ぎゅ、と抱きしめられる。
「たまに食堂で会っただろ? 少し会話はするがお互いの所属先もよく知らん。最初はそれでよかったが、人間は欲深い生き物だよホント、それだけじゃ物足りない。紬、お前のことが知りたくてしょうがなかった。そんな時に天使養育の話が来たんだ。笑えるよな、付き合ってもいないのに全部すっ飛ばして家族になりたいって思っちまった。でも今は、お前もいてアイルもいて俺は幸せだ」
「僕、は…」
「ん?」
言ってしまおうかと思った時だった。ピコン、と紬と勝希のスマホが同時に通知を告げた。
ふたりはスマホを見る。
「ヤベ、提出忘れてた」
「明日までだっけ? 急いで書かなきゃ!」
紬はすぐさまアイル専用の棚へ走って中から大量のプリントを引っ張り出した。勝希は別の棚を漁りハンコを用意する。
「えーっと、これじゃなくてこれでもなくて…あった! これだ!」
「子供の提出物って何気に多いよな。親のハンコも多いし。ていうか天使がハンコを貰ったからってどうすんだ?」
「天使も人間の生活してみたいんじゃないの? はい、僕の名前書いたからここ勝希くんの名前書いて」
「おう。…やっぱ苗字揃えたいよなあ」
養育者欄には、大石勝希、原沢紬、と書かれている。
紬は勝希を小突いた。
「なに言ってるの。この生活だってあと二週間なんだから」
「そうなんだよなあ、あと二週間なんだよなあ」
「…」
アイルと勝希と三人で暮らせるのもあと二週間。そう考えるともうすでにさみしい。
紬は無理矢理頭を振って笑顔を見せた。
「ほら、買い出し行かないと。今日もアイルの気になってるごはん作るんでしょ?」
ーー提出プリントを書き、食材の買い出しやら必要なことを済ませるとあっという間にアイルの帰宅時間となる。
「子供いたら時間過ぎるの早えなホント…」
「世のパパさんママさんはさ、これに仕事もしてるんだよ? 僕たち特別休暇だけどさ…」
アイルと暮らすために休暇を取らなくてはいけなくなり、いざパソコンで休暇届を出そうとしたら、昨日までそこになかったはずのチェック欄に、天使養育のため、という欄が設けられていた。
なのでアイルと暮らすこの三週間はふたり揃って特別休暇である。
「さ、そろそろ帰ってくるな。ふたりでアイルを出迎えてやろう」
頬にキスされながら子供部屋で待つ。しばらくするとワープ装置が光り、アイルの帰宅を告げた。
「おかえり、アイ…ル…?」
かわいいアイルと手を繋ぐ別の子供が立っている。
黒い髪の毛に黒い瞳、背中から覗く小さな羽根は真っ黒で…もしかして悪魔?
にこっ、とアイルが笑顔を見せる。
「しょーちゃん!」
「あ、ああ、この子が噂のしょーちゃんね。初めまして…」
アイルより少し背の高い悪魔が、ぺこり、と頭を下げる。
「はじめまして、ショーゴです。アイルとおなじクラスです」
「初めまして、ママの紬です」
「初めまして、パパの勝希です」
四人全員で一旦頭を下げた。
顔を上げた紬の目はぐるんぐるん回り大混乱だ。
(え、何この子、いきなり何…! え、友達だよね? 友達でいいんだよね!? でもずっと手繋いでるし!)
アイルがもう一度笑った。
「おおきくなったらしょーちゃんとケッコンするの!」
紬に目眩が発生。くらりと体が落ちるところを勝希にキャッチされる。
腕の中で見上げた勝希は笑っているが、目は全く笑っていないことに気付き若干の恐怖を覚えた。
「へえ…結婚すんのか」
「うん!」
「お前、ショーゴだっけか? ウチのアイルを選ぶのはお目が高い。そこは褒めてやろう。アイルは俺たちのかわいいかわいい息子だからなあ。で? お前はウチのアイルのどこが好きなんだ?」
いきなりなんて質問をするんだ。
これじゃあ何かしらのハラスメントじゃないか! と慌てて紬が割って入ろうとするも、ショーゴがぺらぺら喋り始めた。
「まずアイルはかわいい。かおもかわいい。せいかくもかわいい。ひかえめなのにいがいとドキョウがある。オレは悪魔だけどアイルはワケヘダテなくはなしかけてくれる。オレはそれがすごくうれしい。だからアイルはオレがまもる」
あ、意外にしっかりしてる…紬は思わずショーゴを見つめてしまった。
勝希の手が伸び、ぽん、とショーゴの頭に乗る。
「合格だ。お前をアイルの結婚候補として認めてやろう」
「ちょっ、勝希くん!?」
「ありがとうございます」
ーー子供部屋でふたりが並んで座って本を読んでいる様子を、紬は小さく開けたドアから眺める。
ぽん、と頭に手が置かれた。
「おい、あんまり覗いてやるな」
「だってだって気になるじゃん。ウチのアイルに…!」
「はは、まだ一週間なのに俺たちすっかり親だな」
「うん…」
後ろから抱きしめられ、その逞しい胸に擦り寄った。
しかし紬は気付く。勝希が一向にこの場を離れようとしないことを。
「…勝希くんだって気になるんでしょ?」
「当たり前だ。俺たちのかわいいかわいいアイルに」
勝希は歯を食いしばっていた。
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