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紫陽花の咲く頃に 結1-1
しおりを挟む「葵! 帰ろう! ほら、早く早く!」
隣の教室まで迎えに来たスミレは葵の姿を見つけると、ぐいぐいと腕を引っ張って外へ出た。
るんるん気分で腕を絡めたまま歩き、その足取りは今にもスキップでもしそうだった。
「最近のお前はスキンシップが多いな」
「え、なに?」
「なんでもない。それより嬉しそうだけどどうした」
「えへへー、わかる? なんと! 今日! 子猫がウチに来ます!」
嬉しさのあまり思わず葵の腕に擦り寄った。
「母さんの友達の家に子猫が生まれたらしくて見にいったんだって。そしたら! なんとなんと!あーちゃんそっくりな子がいたんだって! 里親探してたみたいだから、ウチが引き取ることになったんだ! どうしよ、今日帰ったらあーちゃんそっくりな子猫がいるんだよー!」
嬉しくて嬉しくて絡めた腕をぶんぶんと振り回す。
「落ち着け」
「落ち着いてなんていられません! …僕はあーちゃんの生まれ変わりだと思ってるから」
「名前はもう付いてるのか?」
「紫陽花! 紫陽花の季節じゃないけど、僕も家族も、みんなでこの名前にしたいなって」
「そうか。よかったな」
「うんっ! それと…あの時はごめんなさい」
小さく頭を下げた。
「勘違いしてた。僕に憑いたユーレイはあーちゃんのせいだ、って言われたように受け取っちゃったから…。本当はそうじゃなかったよね。あーちゃんがユーレイを退治しようとしてるって、葵は言いたかっ、んむぅっ」
大きな手のひらで口を押さえられ、耳元で囁かれる。
「誤解をさせた俺が悪い。お前は何も悪くない」
「んっ」
耳を噛まれ思わず変な声が上がってしまいバシバシと葵の体を叩き、
「もう! 変なことしないでよっ!」
そう言いつつも腕を離さないでいると、ぽん、と葵が古典的に手を叩いた。
そして、訝しげにじとっと見つめられる。
「お前に友達がいない理由を教えてやろうか」
「え?」
「それだよ、それ。スミレ、お前は慣れたらスキンシップが多くなるだろ。それで友達関係が続かなかったんじゃないか? 今まで友達と思ってた男から何人も何回も告白されてるだろ」
「な、どっ、どこで見てたの!?」
スミレの顔が赤くなったり青くなったりと大忙しである。
ーー確かにそうだ。
今まで仲良くなった子には高確率で告白された。友達だと思っていたのにある日突然好きだと告白されるのだ。
どうしてだろうとずっと思っていた。なぜこんなことになってしまうんだろうとずっと考えていた。
葵が冷たい目で見下ろす。
「男は単純なんだよ。そんなにベタベタベタベタされてみろ。俺のことが好きなんじゃないかと、これは付き合えるんじゃないかと思うんだよ」
「ぼ、僕も男…」
「関係ないんだよ、そんなもの」
葵の大きな手のひらが額に当てられ、撫でるように頬を滑り落ちる。
ーー初めて話しかけられたときから季節は進み、すっかり暑さは消えた。
朝晩は冷え込み、背中にじっとりとした汗をかくことはない。
それなのに触れられた頬が、じんわりと熱を生む。
この熱を生み出しているのは僕? それとも葵? もしかしてふたりとも?
反対の手のひらでも頬を包み込まれた。
視線が絡まる。
逃げられないし、もう逃げる気もーー
「またユーレイ憑いてるって言ったら、今度はキスさせてくれるか?」
スミレは返事の代わりに、身長差を埋めるためにほんの少しだけ背伸びした。
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