同僚の吸血鬼は今日も憂う

ユーリ

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同僚の吸血鬼は今日も憂う

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きっかけは明らかにこちらのミスだった。
菊田花凛(きくた・かりん)はその日、魔法省に発注した血液パックの個数の単位を間違えた。
多く来れば冷蔵庫で保存してなるべく早く飲めばいいだけだが、少なめに発注してしまった。
数が足りない。
それでも次の日は休みだから貧血に堪えながら宅配便が来るのを待てばいいと思っていた。
しかし、もうすぐ帰宅という場面で職場である保健室で倒れてしまった。
しかもそこに、最近なぜかよく姿を現す体育教師である山口北斗(やまぐち・ほくと)に見つかってしまった。
横たわる花凛を軽々抱き上げ「どうした、救急車呼んでやろうか?」と耳元で囁く北斗の首筋から目が離せない。
たくましい、首。
太い血管も見えてなんておいしそうなーー花凛の喉が鳴る。口の中の大量の涎が唇の端からあふれ出る。
誰かに対してそんなこと一度も思ったことなんてないのに。
我慢なんてできなかった。
気付けば花凛は、同僚である北斗の首元に鋭い犬歯を突き立てていた。



保健室へと入ってきた北斗は自身の首を見せながら開口一番「飲むか?」。
これには花凛は嫌そうな顔をする。
「あの、別にお腹空いてないので…」
「? お前のメシって血だろ?」
「僕もう育ち盛りじゃないしそんなにたくさん飲まなくても平気です」
「一週間前ここで倒れてたくせに」
「…あれは僕のミスです」
「そういやまだあの時のお礼、貰ってねえよなあ」
そう言ってどっかりとベッドに座る。健康な人は出ていってほしいなあと呟いても北斗にはスルーされた。
「なあ、花凛。お礼くれよ」
何を言ってるんだこの体育教師は。にっこり笑って微笑まれても怖い。
負けてなるものかと花凛もにっこり笑う。
「ラーメンでも奢りましょうか。どこがいい?」
「そんなもんいらねえよ。まあいいや、もう一回説明してくんね? 吸血鬼とかマジでいるとか知らんかったし」
「…」
花凛は話し始めた。
「僕の先祖が吸血鬼でした。でも次第に血は薄れていつの代かは知りませんが羽根はなくなりました。でも…血を飲む行為は続いています。僕は魔法省に吸血鬼として登録しているので毎日のように血液パックが届きます」
こんな風に、と言いながら鍵のかかった冷蔵庫を開けて、手のひらサイズほどのパウチを見せた。
「でもあの日はちょっと発注ミスをして…そこからはご存じのとおりですよ」
「びっくりしたぜ。いきなり首噛んで血を飲まれたからな」
「それはさすがに申し訳ありませんでした」
北斗が、ニッと笑う。
「俺の血はうまかったか? ちゃんと答えろ」
「…おいしかったです。初めて血液パック以外の血を飲んだからもあると思いますが」
「他のやつの血は飲まねえのか?」
「飲みませんよ。僕はできればあまり人と関わりたくない」
ベッドに座る北斗が、目の前を塞ぐように立つ。大きな手で頬を撫でられた。
「なんでだ?」
「…想像するのは簡単でしょう? 僕は吸血鬼だ。誰かの血を飲んだとしても…僕はその人に対して何もできない。ギブアンドテイクが成り立たない。僕は永遠にテイカーの存在になります」
「想像するのは簡単だろう? お前だってギバーになれるだろうに」
「…??」
北斗の言っている意味がわからない。それよりも、頬に添えられた手が熱くてしょうがない。
いや、熱いというか心地よくて思わず擦り寄ってしまう。
「あったかい…」
「お前が冷たすぎんだよ。もう少し厚着しろ。冬だぞ」
「普段着はもこもこですよ。さすがに職場でそれはどうかと思うので」
「お前のもこもこ姿かわいいだろうな」
そう言って笑われ、花凛の耳が少しだけ赤くなる。
「キミは…変な人ですね。遠ざけても遠ざけても近寄って来る」
「一番最初出会ったとき言っただろ? お前が気になる、って」
「どういう意味の気になる、ですか?」
「こういう意味」
前髪をかき上げられ唇を寄せられる。この男の唇は柔らかい上にあったかい。
思わず目を閉じると、目元にまでキスされた。
「僕は…恋人は作りたくない。迷惑をかける」
「作ってみねえとわかんねえだろ」
「僕はテイカーです。恋人に搾取されるだけの存在でいてほしくない」
「搾取されるだけ、なんて考えてるのはお前だけだ。お前だって十分他者に与えてんだよ」
「??」
首を傾ぐともう一度額にキスをされた。北斗が保健室を出ようとして、そうだ、と振り向いた。
「お前、正月なんか予定ある?」
もうそんな季節か、とカレンダーを確認した。…正月なんてあと半月もせずやってくるじゃないか。時が経つのが早すぎて困る。
「予定なんてあると思いますか? 寝正月ぐらいですよ」
「俺と一緒じゃん。さみしい男ふたりで過ごさねえ?」
「遠慮します」
「うまい日本酒用意してやる」
「僕はお酒飲みません」
「…こたつ、あるぜ」
こたつという言葉に花凛がぴくりと反応する。
欲しいけれど永遠に出てこれない気がして長年買うのを躊躇っているのだ。
明らかに迷っていたのが顔に出たのだろう「決まりだな」と北斗に笑われた。
保健室のドアが閉まる。花凛は両手で顔を押さえた。
「はあ…なんで遠ざけても遠ざけてもめげないのですか、あの男は…」
毎日のように空き時間でやってくるし、少し時間が空いただけでもこの保健室へやってくる。
何かするでもない、ちょっと話をして帰っていく。たまにキスをされる。あったかいその手で頬を撫でてくれる。
…それは花凛が吸血鬼とわかる前でも後でも同じだった。
正直嬉しい。態度が変わらないその北斗の優しさが嬉しい。
でもできれば近寄らないでほしい。永遠にテイカーの存在でしかないから、吸血鬼の自分は。
「…人間として生まれていたら、こんな悩みなんてなかったのかな…」
どんなに悩んでもしょうがないというのに、たらればを考えてしまう自分に嫌気が差した。




花凛の姿を見た北斗が吹き出す。
「おまっ…三倍ぐらいに膨れてんじゃねえか」
「これが僕の普段着ですよ」
ボア素材の耳まで隠れる帽子を被り、長く分厚いマフラーを首元に何重にも巻く。何枚もあったかインナーを重ねて分厚いセーターを着てあったかベストにさらにダウンジャケットを羽織る。
下半身もこれまたあったかインナーを重ねた上に裏起毛のズボン、靴下も分厚いので大きめのムートンブーツである。
北斗が肩を震わせながら笑っているのを、花凛は白い目で見つめた。
「すみませんね…これでもまだ寒いのですよ」
「どれ」
そう言って北斗の手が伸び、鼻を摘まれる。
「ははっ、つめてー鼻」
「寒いです」
「早く中に入れ。エアコン効かせといてよかった。こたつもちゃんとスイッチ入れてるぞ」
重装備をいくらか脱ぎ中へ入るとあたたかかった。
主の確認もしていないが早速こたつの中へ入ると手足がジンジンとしびれ始め、花凛はうっとりと目を細める。
「こたつ最高…やっぱり僕も買おうかなあ…」
「お前は買うな」
「なぜ」
「俺ん家に来させる口実がなくなるだろ。ノンアルでいいか? 俺はとりあえずビール飲みまくりたい」
「おつまみ色々買ってきました」
こたつの上に飲み物やら食べ物を大量に並べる。
花凛はノンアルコールの甘い缶を手に、北斗は生ビールの完を持つ。カチン、とふたりは合わせた。
「今年もお疲れ様でした、山口先生」
「菊田先生もお疲れ」
そして一本を一気に飲み干した。
12月31日、午後9時。結局、花凛は北斗の家へお邪魔していた。
そうそう、と花凛が思い出したように口を開いた。
「念の為血液パック持って来てるんで、冷蔵庫に入れてもいいですか?」
「いいけど。その気はないって言ってるくせに泊まる気じゃねえか」
ニヤニヤ笑われて花凛は目線を逸らす。
「…今飲む用です」
パウチを開けようとして北斗に取られた。
「冷蔵庫に入れといてやるよ。何個持ってきた?」
「四つ」
「連泊する気じゃね?」
くすくす笑われてノンアルの缶を煽る。こういうときにお酒が飲めればいいが、生憎と飲めない。
こたつに潜り込んで横になる。あったかい。隣に座る北斗が頭を撫でてくれ、とろんと目が落ちてしまう。
毎年恒例のテレビ番組が部屋中に響く。流行りの歌なんて全然わからない。
「なあ」
頭の上から声がかかる。
「付き合ってくれよ」
花凛は聞いていないフリをするも、前髪をかき上げられては目を開けてしまう。
額に添えられる手があったかい。するりと落ち頬を撫でてくれる指先が心地よくて擦り寄ってしまう。
「お前は自分のことをテイカーだと思ってんだろ? それは違う。お前はギバーでもあるんだよ」
「どういう意味ですか」
「こうやってお前と一緒にいると俺は楽しい。嬉しい。ドキドキする。抱きしめたくなる。キスしたくなる。これだけのものを俺に与えてんだよ。それでもまだテイカーだと言えるか?」
「…これは僕自身の問題ですから」
「強情だな」
喉奥で笑われ、花凛は起き上がる。
「ノンアルのはずですけどね」
「酔ったか?」
「そういうことにしたいです」
花凛が腕を伸ばすと抱きしめられた。たくましいその肩に額を擦り付ける。
ぺろりと、北斗の首を舐めた。
「太い首ですね」
「昔バスケしてたからかな。おかげで全身筋肉質だ」
「立派な首に肩に腕に…どこを噛み付いてもおいしそう。ーー僕は血液パック持ってきてましたっけ?」
「さあ? 俺は見てない」
花凛の喉が小さく動く。口の中が涎で溢れている。少し口を開いただけで端からこぼれ落ちそうだ。
犬歯が伸びるのを感じた。血を欲しているーー本能的に思う。
(本当に欲しいのは血でしょうか、それとも…)
花凛は目を閉じた。
答えなんてわかりきっているのに何を今更。
首筋に唇を寄せる。小さく口を開いて犬歯を突き立てた。ぷつ、と皮膚が切れる音が聞こえる。
少しずつ犬歯を押し込むと途端に血が溢れ出る。花凛が少し慌てながら飲んでいると、ぽんぽんと頭を撫でられた。
「んっ…」
ある程度血が出るとあとは飲むだけだ。傷口に舌を這わせ、ごくごくと喉を鳴らしながら血を飲んでいく。
「…ごちそうさまでした」
最後にもう一度傷口を舐める。
「血は止まってますが…絆創膏貼りますか?」
「このままでいいだろ。お前すげー眠そうだけど大丈夫か?」
「さすがに…ねむい…です…」
血を飲みお腹がいっぱいになると眠くなる。こくりこくりと船を漕いでいると、笑われながら北斗に抱っこされた。
向き合うように抱かれ、そのままこたつへ滑り込む。
「年明けには起こしたほうがいいか?」
「そうですね…年明けぐらいは…」
ぎゅ、と抱きしめられた。
「お前はテイカーじゃねえよ。今の俺が幸せなのがその証拠だ」
北斗の逞しい腕にしがみついた。頭を撫でられる。
なんでこんなにも胸があたたかくなるんだろうと、花凛はそっと目を閉じた。





「今年もそんな季節ですか…」
スマホを見た花凛がそう呟くと、なんだ? と北斗が近寄ってきた。
「見てください、これ。毎年のことですが」
そこには、魔法省より血液パックのお知らせ、という内容の通知が来ていた。
「どうしても冬の間は血液パックの生産が追いつかないんですよ。そもそもどうやって作っているのかもわかりませんが、特に寒い季節は生産が落ちるらしいです」
「つまりどういうことだ?」
「いつもの血液パックではなく、希望者には人工血液パックを送ります、ということです」
「何か違うのか?」
「人口血液パックの方が味が落ちるんですよね…。まずいほどではないのですが、小さな子や高齢の方には厳しい味です。この案内が届くのは比較的年齢が若い方です。発注するのに優先的に人工血液パックを選んでくれ、って言われてるんです」
「ふーん」
今年もこちらの人工血液パックを選ぼうとスマホを操作しかけて、北斗に取り上げられた。
花凛は首を傾ぐ。
「なんですか?」
「わざわざまずいほう頼まんでもいいだろ」
「でも優先したい方がいるわけで」
「冬の間だけでも俺の血を飲めばいい。なあ、花凛。俺たちもうそんな関係性なんだぜ?」
そう言って唇にキスをされた。
花凛は赤い顔で見上げた。
「…いいのですか、北斗」
「ああ。いくらでも俺の血を飲め」
「でも一応、何かあったとき用のために少しだけ頼んでおきます」
「保険かけやがって」
あたたかい手のひらで前髪をかき上げられくすぐったさに笑った。
ーーギバーのこともテイカーのことも、北斗がいるおかげで毎日考えずに済み始めた一月終わりのことだった。
発注していた血液パックが職場である学校へ届いた。冬の間用の人工血液パックのほうだ。
しかし受け取った花凛は眉を潜める。
「…?? 常温?」
いつも冷蔵便で来るのに、なぜか今回は常温で届いた。人工だし、常温でも耐えられるようになったのだろうか?
とりあえず、とテーブルに置くとガラリと扉が開いて北斗が入ってきた。
「おい花凛。今日お前ん家行くからな」
「おや、急ですね」
「お前の家に届くようにこたつをポチっておいた。今日来るんだ」
ニヤリと笑った北斗に、花凛の顔がぱっと輝く。
「なんて素晴らしいことを!」
思わず北斗に飛びつくと小柄な体を抱っこされた。
「だろ? 毎週のように行き来してんだからお前ん家にもこたつが欲しくてな。あとでみかん買っとけ」
「もちろんです」
「好きだぜ、花凛。お前は?」
「……す、き、です」
「まだ恥ずかしがってんのかよ。いい加減に慣れろ。ああそろそろ行かねえと。じゃあな」
次の授業が入っているのだろう、花凛を下ろして北斗が保健室を出て行く。
花凛は赤い頬を押さえつつテーブルのダンボールを開けた。
今夜はふたりきりの長い夜だろうから今のうちに少し飲んでおこうと、人工血液パックのパウチを咥えて飲んだ。
しかしすぐに吐き出す。
「な、に…これ…」
変な味だ。常温だからか?
すぐに吐き出したのに、急に体が驚くほどに冷たくなった。それと同時に嘔吐する。
どこか出血しているのか、吐き出したものは全て血だった。
「はあ、あっ……」
花凛がその場に倒れる。大きな音がしたのだろう、聞き覚えのある足音が保健室へ走って来た。
「花凛!? おいどうした!」
ガタガタと震える手で鞄を指差す。
「なんだ? 鞄か?」
「かばん、に…僕の…証明書、が……そこに記載、の、病院……へ…」
「今すぐ救急車を呼んでやるから待ってろ」
一般の病院でも魔法省関連の病院でもだめだ、魔法省関連のさらに吸血鬼専門の病院でなければ意味がない。
花凛が咳き込む。抱き支えた北斗の左半身に喀血が飛び散る。男らしい顔や体を、一瞬で血まみれにしてしまった。
花凛は気付いた。
これから自分の体に何が起こるかを。
花凛は後悔していた。
やはり自分はテイカーであると。色々なものを奪ってしまうと。




深々と頭を下げて魔法省の人間数人が出て行くのを見た花凛は息を吐き出した。
それと入れ違いに北斗が入ってくる。
「今の奴らは…」
「魔法省の方々です。今回…血液パックが常温になった件と、もうひとつ別件で謝られました」
「別件?」
「…僕が死ぬまでの間、誰かひとりの血液を飲み続けなければならなくなりました」
「どういうことだ?」
病院のベッドで横になったまま、花凛が喋る。
「血液パックのロットナンバーを調べたところ、中身が違っていたそうです。血液は血液でも、吸血鬼用ではなかったらしい。一口飲んで吐き出したのですが、それでも体に永久に残るそうです。…もう魔法省が作る血液パックは飲めないようです。今まで口にしたことのある人間の血をひとりだけ、これから永久に飲み続けなければならない」
花凛は腕で顔を覆った。
「やっぱり僕はテイカーですね。これからその人の人生を奪わなくてはならない」
はは、と小さく笑った。
「魔法省からは僕とその相手に多額の保証金を支払うそうですよ。いくらお金を積まれたからといって、これから何十年とある未来なのに…。ーーごめんなさい、北斗」
涙でいっぱいの目で笑った。
「これからキミの未来を奪います。…僕は血液パックを除いてキミの血以外を飲んだことがない」
北斗の手が伸びる。涙を、拭われた。
「許してください、北斗…僕は今のこの幸せを自分の手では終わらせられない。僕の人生に無理矢理キミを引きずり込ませてください」
涙で揺れる視界で見上げた先の北斗は、笑っていた。
「いくらでも引きずり込んでくれ」
「いいのですか…?」
「いいに決まってんだろ」
「キミはもう…僕の隣でしか歩けない人生になりますよ?」
「上等じゃねえか」
「色々と制限がかかるかもしれませんよ」
「そん中でどれだけ幸せに生きれるか勝負するか? ま、俺が勝つけどな」
「その勝負は最初から僕の勝ちですよ」
「じゃあ決まりだな」
前髪をかき上げられ額に口付けられた。
「これからの長い人生、よろしくな」




ぱちりと目を開けた花凛の目に飛び込んだものは、北斗の笑顔だった。
「はよ、花凛。起きたか?」
目元に口付けられる。
「ん…僕はどれくらい眠ってました?」
「三十分ぐらいか」
「キミは次の授業は…」
「俺はもう正職員じゃねえ、派遣だ。そんなに授業数受け持ってねえよ」
保健室のベッドで横になりながら北斗から頭を撫でられた。
今まで血液パックで済んでいたものが北斗ひとりの血液しか飲めなくなり、それに伴い北斗は職業形態を変えた。
誤配の血液パック事件から二ヶ月が過ぎていた。
「北斗、体調は悪くないですか? 貧血とか…」
「全く」
「それならいいのですが…。今まで口にしていた血の全てが北斗のものに変わったので、キミに負担がなければ…」
正職員から派遣に変えたのもそれが理由だった。血を飲む側なので相手の負担がわからないため、北斗に頼み込んで仕事内容も抑えてもらっている。
「俺としては前と何にも変わらねえよ。それなのに派遣で暇になるわ保証金がすげー入るわでびっくりだ」
「人生の全てを捧げないといけませんからね…正直、お金で解決はできません」
「俺としてはこうやってお前と過ごせるからサイコーだけどな」
そう言ってぎゅっと抱きしめられる。
「…僕はキミに何か与えられているでしょうか」
ぽつりと小さく呟くと「バカかお前は」と花凛の真似だと言わんばかりに首に噛みつかれた。
「俺は今幸せなんだ。それ以上のものがいるのか?」
花凛は笑って「それもそうですね」と言った。
「僕も幸せですから」
ふたりは笑い合って互いに抱きついた。
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