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弱きゴーストは人間に守られる
しおりを挟む傷つけたくないからひとりでいる、そう思ってもさみしさには勝てない。
傷つけたくないから触らない、そんな思いすら一瞬で跳ね除けられた。
なあ、触ってもいいか?
なあ…こんな俺でもそばにいてくれるか?
「もう疲れたーっ!」
そう言って鈴音(すずね)の足が止まる。
その様子を見た倫太郎(りんたろう)が嫌そうな顔をした。
「止まんじゃねえよ。歩け」
「疲れた疲れた疲れたっ」
「スズ、お前はひとつも荷物持ってねえだろ。この大食らいが」
倫太郎の両手にはパンパンに膨らんだエコバッグが持たれるも鈴音は手ぶらである。
鈴音が、えへっ、と笑う。
「ねーえ、りんくん。浮いてい?」
「ダメだ」
「一センチ! 一センチだけ浮かせて!」
「お前は一センチって言いながら一メートルは浮くだろうが」
「だって疲れたんだもん! 一センチだけ浮いて歩いてるように見せるから!」
「お前はそういうのヘタだろうが! それにこんな人混みで浮いたらゴーストだってバレんだろうが! 歩け!」
「いやだー! もう歩きたくなーい!」
そう言って泣きべそをかき始めた鈴音を見て、はあ、と倫太郎がため息を吐く。
まあ確かに基本は浮いて生活している鈴音は短距離でも歩くのは難しい。それに足も細ければ体も細すぎるため、基本的な体力がそもそもない。
…じゃあなんで買い物に付いて来たんだ!
「俺にどうしろと」
「だっこかおんぶして!」
「はいはいわかったよおんぶしてやるよ。乗れ!」
「わーいっ!」
鈴音が倫太郎の背中にぴょんと飛び乗る。
両手にエコバッグ、背中に鈴音をおんぶした倫太郎が歩く。
「まあ軽いからいいけどよ。…寝んなよ?」
「え?」
「寝るやつを運ぶのは重いんだよ。この前みたいにな」
「え、えへへ~、何のことかなぁ…」
しかし倫太郎のぽかぽかした広い背中に抗えず、鈴音から寝息が聞こえ始める。
すぴーすぴーと安心し切った寝息が見事にかわいい。
「マジか、また寝やがった…」
仕方ないのでエコバッグを片手で持ち、空いた手で鈴音の体を支えてやる。
ため息を吐きながらも倫太郎は笑っていた。
三ヶ月ほど前だった。
深い森に住む倫太郎が森の中を歩いていたときだった。
痩せた少年がひとり、倒れていたのだ。
細すぎる手足に小柄な体、乱れた髪の毛のせいで顔は全く見えない。
もちろん倫太郎はスルーした。しかし通り過ぎる寸前に、少年の腹がぐうううぅと盛大になった。
当たり前だが倫太郎はスルーした。
「クラムチャウダーが食べたい…」
倫太郎は恐ろしかった。つい先ほど、家を出る前にちょうどクラムチャウダーを作ったからだ。
(偶然なのはわかってっけど俺たかられてんのか?)
「クラムチャウダーが食べたい…」
「二回言いやがった…」
「あの…ごはん…食べさせてください…。お腹が空いて…ちょっと動けなくて…」
「誰が食わせるか。そもそもそんな状態で歩けねえだろ。悪いが初対面のやつに触れねえぐらいの潔癖でね」
「あ、大丈夫です…浮きますんで…」
そう言うと少年の体がゆっくりとふんわりと浮いた。
倫太郎は驚いた。
ーーこのガキ人間じゃねえな。
この森には様々な種族がいると聞いたことがある。人間の血を吸って生きる吸血鬼、人間に襲いかかりその肉を食べる狼男…実際に見たことはないが、そういう類の噂は多い森だ。
そして倫太郎は見た。
浮く少年の姿がぼんやりし始め、たまに透明になる瞬間を。
「お前…ゴーストか?」
「あ、はい、そうです…。ちょっと今お腹空きすぎて…あ、もうだめ…」
その場に少年が落っこちる。
「え、えへへ…浮く体力も残ってないや…」
落ちた時に少年の顔がハッキリ見えた。
真っ白い肌に困ったように垂れた眉、キラキラ光る大きな瞳に小さな口…倫太郎の心臓が射抜かれた瞬間だった。
ーーえ、うそだろ。
(コイツめちゃくちゃかわいいじゃねえか…)
ごくりと唾を飲み込む。
すでに恋に落ちたと早くも自覚してしまった。心臓が悲鳴を上げている。愛らしい顔といい小柄な体躯といい、倫太郎の好みをど真ん中に突いているのである。
手を伸ばしかけてやめる。
頭ではわかっているのだ。決して触ってはいけないと。
触ってはだめだ、また傷つけるーーそう思うのになぜだろう、倫太郎は腰を屈めて少年の顔を覗き込んでいた。
「なあ、クラムチャウダー好きなのか?」
「あ、はい、僕の一番の好物で…」
「ちょうど出来たてあんだけど、食いに来るか?」
「え、いいんですか…!? あ、で、でも、僕いまちょっと動けなくて…」
「連れてってやるよ」
倫太郎は笑った。
もう誰かを触る気なんてなかったのにな。たった今会ったコイツに触りたくてしょうがねえ。
躊躇った手を伸ばす。触れた少年はゴーストだというのにあたたかかった。
そしてひょいと抱きかかえてお持ち帰りしてから早三ヶ月。
「ーー三ヶ月かぁ」
窓の外を眺める鈴音がぽつりと呟いた。
鈴音をおんぶして帰宅すると目を覚まし、今はおやつにシュークリームを食べている。
口の端にクリームが付いていることには全く気づかず、もぐもぐと嬉しそうに食べているところがまたかわいい。
「たまにはお家に帰ろうかなぁ」
「は? 家族いねえんだろ?」
「うん、僕ひとり」
「じゃあ帰る意味なんてねえだろ。まだここにいろ」
誰が帰すかーーそう思いながら鈴音の腕をぐいっと引っ張った。
「なに?」
「ここ、クリーム付いてる」
どこ? と愛らしく首を傾ぐ鈴音の口元を舐めてやり、ついでに舐め取ったクリームを鈴音の口の中へ突っ込んでやった。
「んぅ。…もー、普通に取ってくれたらいいのに…」
「それじゃあつまんねえだろ」
「そういう問題じゃないのに…あ、しまった」
シュークリームを食べ終わった鈴音の体がふわりと浮き、地上一メートルほどを浮遊する。
「人としての体力使い果たしちゃった…。シュークリームじゃあ補えなかった…」
鈴音はゴーストである。基本的には歩いて活動できるが体力がなく、人間としての体力を使い果たすと体がゴーストモードに入り浮遊するらしい。
「りんくーん、甘いお菓子もう一個ください」
「お前が浮いて食べれても菓子は浮かねえんだよ。誰が掃除すると思ってやがる」
出会った当初、鈴音に言われるがまま菓子を渡していたが、本人は浮遊できるが菓子が浮くはずもなく辺りにボロボロこぼすのである。
「食うなら降りろ」
「うー…がんばります」
ゴーストモードでも気合いで降りれるらしい、鈴音が再び椅子に座る。
しかし倫太郎は見逃さなかった。若干、浮いていることに。
「横着すんな」
「いったーい! 叩かないでよー! いひゃい! いひゃい! ほっぺたみょーんってしないで!」
「早よ座れやコラ」
そう言ってぽんぽんと膝を叩くとふよふよ浮かびながら鈴音がやってくる。
膝を跨ぐようにして鈴音が座る。浮かないように鈴音の細く薄い腰に腕を回した。
「りんくん僕お腹空いてます」
「そう言うと思ってアレを用意している」
ごそりと取り出した小瓶をテーブルに置くと、それを見た鈴音が目をキラキラ輝かせた。
「魔法こんぺいとう! りんくん作ってくれたの!?」
「ああ、お前のためにわざわざ作ってやった」
「わーい! ありがとうりんくん! あれ、ちょっ」
淡い黄色に光るこんぺいとうが入った小瓶に手を伸ばすも、倫太郎に遮られる。
「スズ」
「…なに」
「欲しいか?」
「……欲しい」
魔法こんぺいとうとはゴーストが食べると体力が回復する菓子だ。
倫太郎が笑う。
「そんなに欲しいか?」
鈴音が唇を尖らせた。
「欲しいに決まってるじゃん。だってりんくんが作る魔法こんぺいとうってすごいんだよ? 僕自分で作れないし、仲間が作ってたどの魔法こんぺいとうよりもおいしいし体力の回復が少々じゃないんだもん。…やっぱりりんくんって魔法使いなの?」
「さあ?」
「でも魔法使いって人間だよね…こんなのにもすごい魔法こんぺいとう作れるのに魔法じゃないわけないし…んん? 結局りんくんって何者?」
「さあ?」
「いつもはぐらかす…。ていうか早く食べさせてー! 消えちゃう!」
鈴音の体が薄ら消え始める。倫太郎は笑いながらその口に一粒、放ってやった。
途端に鈴音の色が戻った。
「んー、おいしい!」
「定期的に食べりゃそのうち消えなくなるだろ」
「ホント!? わーい! …ん? あれ? ということは僕ってゴーストの意味がなくなる…??」
難しそうな顔で首を傾ぐ鈴音がかわいくてかわいくて、頬を撫でてやった。
「りんくん?」
「…俺に触られるの、嫌じゃね?」
「んーん」
「それならいい」
「りんくんよくそれ聞くけど何? 何か聞きたいことでもあるの? んっ、ふふふ」
頬を揉まれた鈴音が思わず笑う。
その笑顔を見るだけで、心があたたかくなる。
「スズ」
「なあに?」
「なんでもねえよ」
「?? ね、魔法こんぺいとうちょうだい? 一粒じゃあすぐ消えちゃう」
「だめだ。約束、覚えてるだろ?」
「…一粒につきキスひとつ」
「上出来。さ、ほら早く」
唇を尖らせたスズが赤い顔で、納得いかないなぁ、とブツブツ文句を言いながらも目をつむる。
倫太郎も目をつむると、むに、という柔らかな感触が唇に伝わった。
薄目を開けると必死な顔をしてキスをしてくる鈴音がかわいくて、笑うのを耐えた。
(ホントにかわいいなあコイツは…)
どこもかしこも触りたくて、そのサラサラの髪の毛を指ですいた。
ふわりと、シャンプーの甘い香りが漂う。自分と同じものを使っているはずなのに、スズはいつもシャンプー以上のいい匂いをさせる。
「ん……キス、したよ?」
「じゃあご褒美な」
小瓶の魔法こんぺいとうを一粒口に入れてやると、途端に頬を綻ばせて嬉しそうな顔をする。
「ふふ、おいしい」
作るのにそこまで面倒ではない。それなのにこんなにも喜んでくれるのは嬉しくてしょうがない。
口の中の魔法こんぺいとうをころころ転がして、カリッ、カリッ、と噛む。
小さいのですぐになくなるのだ、鈴音が見上げる。
「…もう一個」
「じゃもう一回キスだな」
「……べろちゅーしたら三個くれる?」
「特別に四個やろう」
おずおずと鈴音の腕が伸び、倫太郎の首に巻き付く。ちゅ、と唇が重なった。
食むだけの柔らかいキス。鈴音の唇はふにふにと柔らかいので、こうやって重ねるだけで癒される。
でも目的はそうじゃない。なかなか舌が入ってこないことに痺れを切らした倫太郎が強引に舌をねじ込ませた。
「んんっ、はぅ、うっ…ん、ん…」
「魔法こんぺいとう食いたいんだろ? ほれ、がんばれや」
「あううっ、うっ…ん、んんっ」
鈴音の小さな舌が入ってきた。どうすればいいのかよくわからないのだろう、倫太郎の舌先をちろちろと舐めている。
もう少し情熱的なものが欲しいのだが、ここは我慢。魔法こんぺいとう自体がいらないと言われれば本末転倒だ。
そう、キスしたいがために作っている。
(まあそんなもんなくったってキスぐらいするが…どうもねえ…)
鈴音を試している節があるのは自覚している。断らないぐらいには関係性を気付けているとも知っている。
でも…。
(女々しいなあ、俺)
求めるよりも求められる方が安心する…そう思いながら唇を離した。
「ほれ、口開けろ」
あ、と鈴音の口が小さく開く。魔法こんぺいとうを四粒手に取り、指ごと口内に突っ込んだ。
「り、りんたろく…」
「指噛んだら泣かすからな」
人差し指で上顎をくすぐる。ぴく、と鈴音の体が反応した。
「ん、指、邪魔だよぉ…」
口の中にはこんぺいとうもある。噛もうにも倫太郎の指が邪魔でどうにもできないのだ。
口内に涎が溜まり、つつ、と鈴音の口の端を伝い落ちる。
「んっ、んっ」
倫太郎の指を舌で押し出そうとがんばるものの、ただ指でこねくり回されて終わる。
ちゅぷちゅぷと音を出しながらがんばる姿がかわいくて、倫太郎の胸がきゅんと鳴った。
「あ、そうだスズ。今日の夜は仕事だ。お前の夜目が必要だからお前も来い」
「へ? …あ」
軽く倫太郎の指に歯が当たった。
倫太郎は笑った。
「はい泣かす」
ーーずちゅずちゅと音をさせて性器を出し入れさせる。そのたびに鈴音から甘くかわいい声が聞こえて自身は膨らむ一方だ。
「んっ、んっ、ふぅうっ、…んっ、うぅ…」
「どうだ、スズ? 気持ちいいか? 声隠さず聞かせろ」
四つん這いで膝を立たせて後ろから突く体制だと、鈴音は枕に顔を埋めてしまうのだ。
少し上を向かせ、声を出させるために指を突っ込んで口を開く。
「うあっ、ぁっ、やああ…っ」
「俺は気持ちいいぞ、スズの中。うねうねしててあったかくてすげー気持ちいい」
落ちてくる腰を抱え上げさらに突くと「はぁあんっ」とより一層下半身に響く甘い声に倫太郎は舌なめずりをした。
「いいなあ今の声。なあ、もう一回聞かせろスズ」
「そ、っん、な…こと、はうぅっ、いわれて、も…んっんっ」
「もっと鳴いてくれ」
細い肩に噛み付く。薄い皮膚に薄らと歯形が残り、そこを丁寧に舐めるとビクビクと鈴音の体が大きく震えた。
「どしたスズ。イったのか?」
スズの性器に触れるとドロドロですでに萎んでいる。一度自身を引き抜き、スズの体を反転させてその顔を眺めた。
顔を真っ赤にして大きな瞳からは涙を流すものの、気持ちよさそうに恍惚とした表情に倫太郎は満足する。
「気持ちよかったみたいだな、スズ」
目元を舐めながら聞くと、こくこく、と鈴音が頷く。その頬に、触れた。
ーー俺はコイツに触れる資格はあるのか。
自分の中の誰かが囁く。小さく首を横に振ってその考えを飛ばす。
「りんくん…?」
「なんでもねえよ。なあ、スズ…触ってもいいか?」
「?? いつもりんくん触ってるし、もう触ってるよ?」
ほら、と言いながら頬に手を重ねてくれる。小さなその手のひらがあたたかくて、鈴音を抱きしめた。
「りんくん…?」
「なんでもねえよ。ほら、続きするぞ」
足を抱え上げて再び挿入。鈴音の背がのけぞり、露わとなった喉元に噛みついた。
「んんっ、はああっ、あっ…ううッ、うっ…」
「スズ…」
ーー大事にしたいけどで大事にできるのか?
込み上げてきた疑問を振り払うように、倫太郎は鈴音の体に打ちつけた。
ランタンを手に暗き道を進む。
「りんくん、そこ足元ちょっとデコボコしてるから気をつけてね」
「おー」
「もうちょっと進んだら右に行くからね」
「お前の夜目は便利だな」
「ゴーストだからね! 夜は得意だよ!」
「いつも大いびきかきながら寝てるくせによく言う」
「ぼ、僕いびきかいてる!?」
「お腹空いた、ってよく寝言も言ってる」
「ひいいぃ失礼しました…」
「かわいいからいいんだよ」
そう言ってふよふよ浮きながらも倫太郎の背中に乗っかる鈴音の腕をぽんと叩いた。
「今回は夜光花の花びらが要るの?」
「ああ。魔法省からの依頼だ」
「いつも魔法省だよねぇ。やっぱりりんくんって魔法使いなの?」
「さあ?」
「だって仲間が言ってたよ? 魔法省には普通の人間もたくさんいるけど魔法が使える魔法使いもいるって」
「仲間?」
「僕の幼馴染の三つ子の狼男。みんな同じ顔で正直誰が誰だかわかんない」
「幼馴染なのにかわいそうだな…」
「いいんだよ別に。いっつも意地悪してくるんだもん」
歩きながらランタンを掲げると、肩口で鈴音は唇を尖らせていた。
「僕が辛いの食べられないのにいつも魔法こんぺいとうの辛いの食べさせてくるんだよ」
「お前が食べなきゃいいだけでは?」
「無理矢理食べさせてくるんだよー! いらないって言うのにあっち三人だからね!? 勝てると思う!?」
「拒否れよ」
「お前に拒否権はない、って言ってくるんだよ。どう思う? ムカつくんだよー!」
倫太郎は嫌な予感がした。
俺と同じ匂いがする。
「…お前と三つ子の狼男ってどういう関係だ?」
「へ? 幼馴染だけど?」
「なんか言われてるだろ絶対」
「んー…? あ、僕が結婚できなかったら狼男共で引き取ってやるって言われてる。失礼だよね」
倫太郎は頭を抱えた。
「やっぱり…」
「ん? りんくん? え、もしかしてりんくんも僕が結婚できないって思ってる!?」
鈴音の言う、もしかして、とは違う可能性も捨てきれないので別の嘘知恵を仕込もう。
「…スズ、知ってっか? 人間の世界にはなあ、三ヶ月ルールってのがあんだ」
「三ヶ月ルール」
「家族以外の者同士が二人きりで三ヶ月一緒に住んだら、そいつらは結婚しなきゃいけねえっていうルール」
「そうなの!? じゃあ僕とりんくん結婚しなきゃ!」
「ああそうだ。結婚しなきゃいけないんだ」
大きく頷くと、ほへー、と鈴音からかわいい声が上がった。
「僕が結婚かあ。ふふふ、大好きなりんくんと結婚。嬉しいなあ」
倫太郎の足が止まる。
「…お前、俺のこと好きなのか?」
「そうだよ。だって好きじゃなきゃあんなすごいことできないもん…」
「お前キスとかセックスの意味分かってたのか」
「僕子供じゃないもん。キミと同い年だもん。ゴーストも人間と同じ歳の取り方だから知ってるもん」
これには驚いた。
てっきり流されているのだとばかり思っていた。倫太郎が笑った。
「そっか。俺のこと好きなのか」
「りんくんのこと大好きだよ」
「俺もスズが好きだ。こりゃもう結婚するしかねえな」
「ね。あ、見てりんくん!」
鈴音が空を指差した。
「お月様が綺麗だよ! もうすぐ満月だね」
「結婚の誓いするのにちょうどいいな。ーースズ、俺のそばにいてくれるか?」
鈴音が笑ってくれた。
「どんなときもそばにいるよ。お月様に誓います」
「じゃ、結婚成立だな」
ふよふよ浮かびながら抱きついてくる鈴音を抱っこして、倫太郎と鈴音は月を眺めた。
僕から一目惚れしたのは、内緒だよ?
いつも難しい顔をしてつまらなさそうにしているキミを一目見て、好きになった。
だから毎日のように姿を消して会いに行った。
キミは知らない。
キミの笑顔を見たいことを。
キミは知らない。
どんなときもそばにいるーーその誓いが、どれだけ僕が重く受け止めているか、っていうことを。
ふよふよ浮かびながら本を読んでいると、ぐいっと足を引っ張られた。
「行儀悪いぞ。座って読め」
「はあい」
そのまま体の浮力をなくすと倫太郎の膝の上に向き合うようにして座る形となったが、なぜか倫太郎の眉間に皺が寄った。
「邪魔だ。見えねえ」
スマホを見る位置に鈴音がいるため見えないようだ。
鈴音は本を閉じて一緒にスマホ画面を見た。
「なになに? お仕事の依頼?」
「魔法省からだ。今度はウロコを取って来いってさ。なんだ、なんのウロコって書いてんだ?」
「ハナサキアオイロザカナ。湖に住んでる青くて花が咲いてる魚のことだよ」
「そんな魚がこの森に住んでんのかよ」
「すっごく大きな魚だよ! 身を焼いたらおいしいんだよ~」
「必要なのはウロコだけか。じゃあ捕まえたら本体は食えるな」
「…りんくんってやっぱり魔法使い? 魔法省の人?」
「さあ?」
鈴音は唇を尖らせた。
いつも、さあ? とはぐらかされる。この質問には絶対に答えてくれない。
そんなに知りたい訳ではないが、こうもいつもはぐらかされると逆に気になる。
「りんくんって魔法こんぺいとう作れるじゃん? あれ作れるってことはやっぱり魔法使いだよね」
「さあ?」
「もしかして僕みたいに浮いたりできる?」
「できる。でもしねえ」
「なんで?」
倫太郎が手に持っていたスマホを仕舞った。
「できる限り魔法は使いたくねえ」
「でも魔法こんぺいとういつも作ってくれてる」
「そりゃかわいい奥さんのためだもんなあ? それぐらいはがんばりますよ?」
奥さん。
そう言われて、ぽぽぽ、と鈴音の顔が赤くなる。
「そっか、僕は奥さんなんだよね」
一ヶ月ほど前に月に見守られながら結婚の誓いを立てたのだ。
「そうだよ、スズ。お前は俺の奥さんだ」
「えへへー、僕はりんくんの奥さん! えへへー、嬉しいなぁ。あ! さっきの依頼の魚、捕まえに行く?」
「そうだな、今行くか」
倫太郎が立ち上がるので、鈴音も浮かんでその首元に抱きつく。
「今夜は魚だな。焼くのがうまいっって話だな。ムニエルも捨てがたいしグラタンに入れるのもアリだな。つか大きさどれぐらいだ? あまり小さくも困る」
「五メートル」
「…は?」
ーーふたりは森の奥深くまで来ていた。
「さて、五メートルはあるらしいがどうやって捕まえるか…。お前は食べたことあるんだろ? どうやって捕まえたんだ?」
「いつも幼馴染の三つ子の狼男が素手で捕まえてるよ」
「素手」
そう言って倫太郎がじーっと自分の手を見ている。
その手を取って指を絡めると、倫太郎が笑った。
「なんだあ? 手ぇ繋ぎたかったのかよ」
「うん」
「かわいいやつめ」
ふふふと笑いながら鈴音が浮かんでいると、巨大な湖の前に見知った顔を見つけたため、倫太郎の手を離し大急ぎで飛んでいった。
「久しぶりー!」
鈴音の目線の先には犬耳と尻尾を生やした体躯の良い狼男三人組。皆、背丈も顔も何もかもが同じである。
「鈴音、お前どこ行ってたんだよ」
「四ヶ月もいなかっただろうが」
「こっち来い。無事を確認させろ」
三人に代わる代わる髪の毛の匂いを嗅がれる。三人が同時に喋った。
「人間くせえ」
「僕ね、結婚したんだよ! その人が人間なんだ! ほら、あの人」
そう言って倫太郎を指差す。振り返った先の倫太郎は、顔が強張っていた。鈴音は首を傾ぐ。
ーーりんくん、どうしたんだろう。
「は? 人間と結婚?」
「鈴音お前なに言ってんだ?」
「脳みそまでバカになったか?」
「んもー! なんでみんなそんなこと言うんだよー! 僕はりんくんと結婚し…」
途端に腕を引っ張られて三人の腕の中。
「何を言ってんだ鈴音」
「人間と結婚なんかありえねえだろ」
「いいか、鈴音。お前らゴーストは俺たち狼男が守らねえといけねえんだ」
「結婚するなら狼男…」
鈴音は驚いた。
目を見開いた倫太郎がすぐ目の前にいて、鈴音の体を引っ張った瞬間に小さくぼそりと呟いた。
「ーースズに触ってんじゃねえよ」
三つ子の体が吹っ飛び、背後の湖へと一瞬にして体が沈む。大きな水飛沫が上がるのを鈴音はただ見ていた。
倫太郎に抱きしめられる。
その存在を確認するように体のあちこちを触られ、最後に頬を包まれた。
「りん、くん…?」
見上げた先の倫太郎の目の色がおかしい。焦点があっていないし、目は開きっぱなしだ。
「スズ、スズ。お前は俺のだ。誰にも触らせねえ」
「りんくん…?」
「スズ、スズ…お前は…俺、の、だ…」
様子がおかしい。
顔色は変わっていないのにどこか苦しそう。呼吸が乱れているわけでもないのに息苦しく思える。
鈴音が倫太郎の名前を呼びながら触れた腕は、驚くほど冷たかった。
「てめえ何しやがる!!」
湖から飛び上がった三つ子が同時に拳を振り上げる。
しかし倫太郎に届く前に真っ黒い何かに遮らた三つ子は地面に叩きつけられた。
鈴音が慌てて足元を見ると、倫太郎の影が不自然に伸びていることに気づく。先ほどの黒い何かは、影だ。
影が地面から伸び、縦横無尽に動き回っている。
「お前…魔法使いか」
しかし倫太郎はその問いには答えずブツブツと何かを呟いている。
「スズ…スズ…」
地面から伸びた影が素早く三つ子の狼男の喉を捕らえた。そのまま重そうな体がゆっくり持ち上がる。
「りんくん…やめてりんくん!」
どれだけ名前を呼んでも聞こえないのか、全く反応がない。
一体どうすればーー目に涙が溜まる鈴音の耳に、聞き慣れた高い声が飛び込んできた。
「何を…しているのでしょうか?」
影がブツッと切れて三つ子が再び湖の中に落ちる。水飛沫が上がる中、ひとりの小柄な青年がゆっくり歩いてきた。
「ユイ様!」
「久しぶりですね、鈴音。ーーところでこれは…一体何の騒ぎですか?」
金色の髪の青年が首を傾ぐと、湖から上がってきた三つ子が目を丸くした。
「ユイ!? お前起きてていいのかよ!」
「眠ろうにもうるさくて…。おかげでまだ半分薄いです」
青年ーーユイの体は薄らとしか見えない。
鈴音はユイへ駆け寄った。
「起きてきて大丈夫ですか!? その、お体は…」
「ゴーストとしての機能はまだ半分も戻っていません。ところで…あの青年は誰ですか?」
「僕の旦那さんです。結婚しました」
「おや、人間と。それは構わないのですが…あの魔法使いはやめたほうがいいですよ。自分の魔法に飲み込まれています」
「え…?」
「見なさい。影が、言うことを聞いていない。そもそも意識がない」
倫太郎の体がゆらゆら揺れているその周りを、影が楽しそうに踊っている。
「ユイ」
三つ子の狼男がユイと鈴音を守るように立つ。
「お前はまだ万全じゃねえだろ」
「鈴音と隠れとけ。アレはまだこっちに攻撃する可能性が高い」
「俺たちがなんとかする」
「駄犬では何とかできませんよ。ちょっと通してください…ちょっと、邪魔! 邪魔です!」
三つ子の間を抜け出ようとするがその体が大きくてユイが動けない。
鈴音も慌ててユイの腕を取った。
「ダメです、絶対にダメですユイ様。また長い間眠るようなことになったら…」
「大丈夫ですよ。僕のゴーストとしての弟子を守るぐらいにはがんばらないと。駄犬は三匹いても駄犬ですからね」
そう言ってユイが三つ子を見ると、三つ子は明後日の方向を見ていた。
ユイがちらりと倫太郎を見る。
「ああ、飲み込まれた」
黒い影が大きく広がり、倫太郎の全身をばくんと包み込んだ。
「そんな…りんくん! りんくんっ!」
近づこうにも跳ね返される。吹っ飛んだところを三つ子のひとりに抱きかかえられた。
「何が…起こってるの…?」
ただ仕事のために湖に来ただけだ。手を繋いで楽しかったはずなのに…。
「恐らく、あの青年は魔法使いとしての能力は高いです。ただ、それを制御できる程の力がない。だからこそあの黒い自らの影に飲み込まれました」
「ただ弱いだけだろ」
しれっと三つ子のひとりが言うので「うるさいっ」とその男の腕に鈴音は噛みついてやった。
「いって! 何すんだよ!」
「僕の旦那さんを悪く言うな!」
「事実を言ってるだけだろうが! だから人間と結婚なんかすんじゃねえよ!」
「うるさいうるさいうるさいっ! 僕はりんくんが好きなんだ! キミたちにとやかく言われる筋合いはないっ!」
三つ子の額に青筋が浮かび「ゴーストの分際で…」と低い声で唸るように言うのを、ユイの細い手が遮った。
「鈴音」
「…はい」
「結婚したと言っていましたね。おめでとうございます。あの人間が好きですか?」
「大好きです」
「では五分」
ユイの真っ白で華奢な指が開いた。
「五分だけお前に魔法をかけてあげます。どんな影も能力も受け付けない強力な魔法です。それだけ愛しているのならば、自分で取り戻しなさい」
鈴音は頷いた。
「またやっちまった…」
黒い影の中、倫太郎は大の字で横になっていた。
途中から意識がなかった。いや、正確にはあるがただ見ていただけという表現が正しいだろう。
「完璧に飲み込まれたな…」
何年振りだろうか、自らの魔法と影に飲み込まれたのは。
「いい加減なんとかならんものか…」
倫太郎は目を閉じた。
鈴音が三つ子の狼男に駆け寄る姿が面白くなかった。鈴音が三つ子に髪の毛の匂いを嗅がれたのも、触れられたのも…全部全部、面白くなかった。
昔からこうだ。
感情が昂りすぎると魔法を制御できない。途端に魔法と影に飲み込まれてしまう。
「…りんくん」
目を開けると目の前に鈴音がいた。ふよふよと浮かんでいる。
「お前…どうやって入ってきた」
「ユイ様が助けてくれたの。五分しか時間がないの。りんくん、一緒に帰ろう」
そう言って微笑みながら差し出される鈴音の手を取ることはできなかった。
鈴音の眉がさらに垂れ下がる。
「そんな顔すんな」
「じゃあ一緒に帰ろうよ」
「無理だ」
「なんで…」
「…俺と一緒にいるとまたこんな目に遭うぞ」
「構わないよ」
「俺が構うんだよ。…魔法がうまく制御できねえんだよ。結構な能力だろうにコントールができねえ。昔な、魔法省にいた頃に大事故起こしたんだよ。まあ向こう側との手違いもあったが…大惨事だった。見知った顔全員が血まみれだ。もうそんなん見たくねえよ」
鈴音が倫太郎の隣に寝転ぶ。
じっと、横顔を眺められた。
「そろそろ五分経つだろ。帰れ」
「帰らないよ。どんなときもそばにいるって、お月様に誓ったもん」
「そんなもん忘れろ。ついでに俺も忘れてくれ」
「いやだ」
不意に秒針のような、チッ、チッ、チッ、と鋭い音が聞こえた後に、ボーン、と低い音が響いた。
「五分経っちゃった」
「帰れよ」
「いやだ」
「帰れ!」
「いやだ! どんなときもキミのそばにいるって誓った!」
鈴音に覆い被される。鈴音の心臓が、猛スピードで鳴っている。
怖いなら帰ればいいのにーーそう思っているのに、倫太郎は鈴音を抱きしめていた。
ーーだめだ。手離せない。
危ない目に遭う前に離れた方がいいとはわかっているのに。
ぼそりと、鈴音が小さな声で言った。
「……りんくん知ってる? 僕たちが出会ったのってね、僕が倒れたときが初めましてじゃないんだよ」
「は?」
「実はもっと前からりんくん知ってたんだ。僕はゴーストだから、実は自由自在に姿を消すことができる。体力がなくなったから消えてるわけじゃないんだ。たまたまね、見つけたんだ。人間が住んでいる家を。それがりんくんだった。すごい難しそうな顔してつまらなさそうにしてる。……一目惚れだった。かっこいいな、って思った。笑顔を見てみたいな、って思った。毎日姿を消して会いに行ったの。どうやったら自然に出会えるかなって思って…あ、僕がお腹空いて倒れたのはホントに偶然。まさかあそこで倒れるとは思ってなかったんだ」
「…じゃあ俺も言っとくか。人間の世界には三ヶ月ルールがあるって言ったろ。あれウソだ」
「へ?」
「三ヶ月一緒に住んだぐらいで結婚なわけないだろ。まさかマジで騙されるとは思ってなかった」
鈴音がぽかんと口を開ける。
ふたりは顔を見合わせて笑った。
「あーあ、だめだ。やっぱお前じゃなきゃだめだ」
「僕だってりんくんじゃなきゃだめだよ」
「さて、どうやって帰るか…。ここまで規模のでかい飲み込まれ方は初めてだ」
「…僕ね、魔法使えないけど使えるんだ」
「どういうことだ?」
「ユイ様に…僕のゴーストとしての師匠なんだけどね、教えてもらった一つだけ使える魔法」
鈴音が唇を重ねてきた。
「魔法の根源って知ってる? それは願うことなんだ。強く強く、願うこと。ユイ様は僕に教えてくれたんだ。どんな生き物でも強く強く願えば、魔法を使えることができるって。だから僕は…生まれて初めて魔法を使うよ」
コツンと額同士がくっつく。
鈴音も倫太郎も目を閉じた。
「大好きな人とずっと一緒にいられますようにーー」
「で?」
ふよふよと浮かぶ鈴音の足を引っ張った。
「お前ホントにあの三つ子の狼男と何もねえのかよ」
浮力をなくし、ぽすんと倫太郎の膝の上に座った。
「絶対に何かあるだろ。変なことされてないか?」
「りんくん顔怖いよ」
「距離感が変だ。異常だ。幼馴染にしては距離感が近すぎる」
「何もないよ。そもそもあの三つ子、ユイ様のことが好きだし」
「じゃあなんで結婚なんて話が出てんだよ」
「僕を守るためだよ。そもそも狼男って僕たち能力の弱いゴーストを守るガーディアンみたいなものだから。それに僕たちが一緒にいるのもユイ様の命令だったし。色々事情があってユイ様は十年近く寝てたから、その間弟子の僕が心配だったみたい」
「ふーん」
意味がわからないことだらけだ。なぜ狼男がゴーストを守っている。
そもそもユイというあの青年は誰だ。十年眠っていたとはどういうことだ。弟子ってなんだ。
「りんくん顔怖いよ。めちゃくちゃ怖い顔になってるよ」
そう言う鈴音の顔が、ハッとする。
「りんくん…もしかして嫉妬してるの!?」
「ああそうだよ悪いか」
「えへへー、嬉しい。だって僕りんくん大好きだから」
「今更乗り換えるなんて言うなよ。絶対に離さねえからな」
「当たり前だよ! そもそも…家の中以外じゃあ離れられなくなっちゃったからね」
あのとき願った、大好きな人とずっと一緒にいられますように、という魔法は無事にふたりにかけられ影からも脱出することができた。
が、副作用のようなものなのか、外ではぴったりくっついて離れられない体になってしまったのだ。
「願い方が悪かったのかな…。まあずっと一緒って意味ではある意味正解だけど…」
「どっちでもいいだろ。どうせなら家の中でもくっついとこうぜ」
そう言って倫太郎は鈴音を抱きしめる。
ふふふ、と鈴音が笑った。
「僕たちずっと一緒だね」
「ああ、ずっと一緒だ」
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