目覚めたら天使でした。

momo

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 薄い青色のフィルターが貼られたような夜明け頃。窓近くの木の枝に止まって囀る小鳥の声にマリアリールの意識は浮上した。
長く見ていた夢が単なる夢でない事をマリアリールは理解していた。あれは自分の転生前の記憶。天使だった頃の思い出。

 ところで天使、と呼称されている天界に住む者たちだが、厳密には『天使』ではない。伝承を伝える際、便宜上そう呼ばれてはいるが白い翼も頭上の輪っかも持ってはいない。
だが、闇に堕ちた天界人たちにはコウモリの羽のような黒い羽が生える。これは堕ちた者が正しく悪魔と呼ばれる者に変容してしまう為である。
因みに堕ちる者は何も天界人だけではない。地上界人、伝承に記されるところの人間も悪魔に変容する事はあると言われている。
ただ、天界人はほとんどの者が清廉潔白、純粋無垢である為負の感情を持ってしまうと、返って堕ちやすいとされているのである。

閑話休題。

とにかくこのタイミングでマリアリールは転生前を思い出した。おそらくはそうなるようにラファエルが計算していたのであろう。
万が一悪魔たちに存在を知られた時に記憶がなければ対抗も出来ないであろうと危惧しての事なのだとマリアリールは分かっていた。

「ラファエル様は・・・ご無事かしら」

あれから一体どれほどの時間が経ったのか、今のマリアリールには何も分からない。ラファエルがどうしているのか。ルシフェルがどうなったのか。
そして何より天界は今どうなっているのか。転生してからの記憶は今きちんとあるのだが、その中に世界について勉強した記憶はあれど天界についての事はほぼ何もわからなかった。

「あぁ、どうしてあの時素直に従ってしまったの。私もやっぱり残れば良かったわ。怪我をした方はまだたくさん居たのに」

あの時のラファエルがあまりにも必死だった為そのまま従ってしまった。マリアリールはその事を悔いて涙を零す。
だが後悔しても今のマリアリールは単なる地上界人のしかも幼い子供でしかない。どうしようもないのだ。

「もう少し大きくなったら、どうにかして天界について調べよう・・・。大きな図書館か・・・神殿に行ってみよう」

今自分にどれほどの魔力が残っているのか。もうじきあるデビューの時に測定して貰えば分かる。とにかく自分に出来る事を探そう。マリアリールはそう決心する。
今は、今だけは家族の溢れる愛が与えられる幸福を感じていてもいいだろうか。マリアリールは訪れた眠気に勝てず不安な心に一先ず蓋をして、静かに目を閉じるのだった。
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