魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

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118 警戒心の薄型化が止まらない(王子視点)

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 僕は召喚主の警戒心の薄さをなめていた。


 あれから。夜の召喚にも慣れた僕はこの状況をすっかり楽しんでいた。イヤホンを耳に差し込みつつ、ゲームの音声は切って、召喚主の気配を感じながらの建設作業。

 なんとなーく、眠っている彼女の寝ずの番でもしている気分になっていた。いや、こっちの世界には魔物もいないし、別に脅威も何もないのだけれども。

 変わったことと言えば何度か先輩とかいう人物から夜に着信があったくらいか。鈴木さんとはまた違う方向性の魔力を感じるからすぐ分かる。なんなら音が鳴る数秒前に分かる。なので、とりあえず魔法で起こさないようにしてあげた。


 夜の召喚二日目には彼女はアイマスクを使用していて、ますます警戒心が薄まっているのが気にはなったが、まだこれは想定の範囲内。多分、前日眩しかったのだろう。

 間違いなく僕のせいなので、三日目の昼の召喚時に今日の夜は電気を消してゲームをやろうかと提案したが、目が悪くなったら大変だからいい、寝るだけなんだから自分がアイマスクをつければ問題ない、そう言って、宣言通り夜はアイマスクをしてさっさと眠ってしまった。

 彼女はよほど眼鏡が好き――なのだと思う。僕が眼鏡をかけていると見てくるし、乙女ゲーも眼鏡キャラを優先させて攻略しているし。

 にもかかわらず視力の低下は気にしてくれるのが矛盾していて面白い。まあ、そんなところも彼女らしいとは思うけど。ゲームと現実は別、というヤツなのだろう。ゲームに出てくる飲食物にはしょっちゅう影響されているけれど、攻略対象は攻略対象と割り切っているみたいだし。

 ……その割には彼女の知り合いは先輩だの鈴木さんだの眼鏡男がやたら多いのが気にはなるが――。

 ああ、いやいや。別に僕は気にしてはいない。って、いうか僕も今は眼鏡だしな! うん。


 せっかく3D酔いを防止できる眼鏡を着用しているのだから今はしっかりとゲームに集中しよう!!


 そんな感じで日付が替わる少し前までゲームに集中して。少し余裕をもって部屋の電気を消したら、なんとな~く召喚主を観察して、一分前には塔へと帰る。

 まるで、離宮での僕のように。気持ちよさそうにあの同じクマに抱きついて眠る召喚主。その姿を見ると妙な満足感を覚えてしまう。

 そうすると、不思議と冷たい塔へと帰っても寂しくない。何故か、さっきまで一緒にいた召喚主の気配を感じるし、彼女の息遣いまで聞こえてくるような気がして、温かい気持ちで眠れるのだ。

 眠気が無くても。夜桜の高画質動画やパジャマ写真を見ているだけで、いつの間にか幸せな気持ちで寝落ちする。彼女には言えないけど、ちょっぴり夢に出てきたこともある。
 ……いい夢だった。言えないけど。また見たい。

 そういうものなんだと自然と受け入れていた。
 だから、もう、ちょっとやそっとじゃ自分が動じることはないと思っていた。


 彼女が3D酔い防止の眼鏡効果が自分にも出ているみたいだから――と言い出して。やたら接触率の高い実験に付き合わされるまでは。




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