魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

文字の大きさ
219 / 364

219 今日のおやつは

しおりを挟む

 王子もそうだけど、育ちのいい人はふとした拍子にソレが出る。王子は動作一つをとっても王子だし、先輩も先輩で育ちの良さがにじみ出ている。

 やはり日々の積み重ねというか……緊急時にこそ、その人の日常の行動が出ると思うのだ。

 今の一連の行動から、先輩が日頃からどれだけ眼鏡を大事にしているのかがよく分かる。

 なので、つい――心の声が漏れてしまった。



「前からすごいすごいと思ってはいたけれど、やっぱり先輩はすごいです。私、先輩のこと心から尊敬します……」

「!!!???」



 いつもなら。

 先輩は私のお腹がいっぱいになるまでスイーツを食べさせて。もう無理、限界……ってなってから先輩が残りをサクッと平らげてようやく解放されるのだけど。

 何かこの日は急に、もう無理、限界。胸がいっぱい……とか何とか言って先輩は席を立ち、残りのクッキーは全部お土産にと私に持たせてくれた。


 やった、ラッキー☆ 
 何かよく分からないけど、召喚用のおやつゲット!!


 しかし、真っ赤な顔してフラフラと学食から出て行ったけど、先輩大丈夫なのだろうか。


 苦しそうに胸の所を抑えていたし、胸焼けでも起こしたのかも――って、ああ、胸がいっぱいってそういうことか。

 ほっそりした体型のわりによく食べる先輩は今日もボリューム満点の定食をペロリだったからな。
 最近、やたらスイーツ系を食べさせてもらう機会が多かったけど、先輩は残った分を完食しているから私以上に食べているし。

 しかも、先輩がくれるスイーツって、やたら高そうなのが多いんだよね。カロリー的にもお値段的にも。


 そうだ! いつも貰ってばかりもあれなんで、たまには先輩に健康志向のおやつでも差し入れしようかな?
 何か、負担にならなそうな低いやつ。……カロリー的にもお値段的にも。


 王子も毎日のように高カロリーなおやつで召喚をしているから、ちょうどその辺のことは気になっていたんだよね。

 最初の頃より格段に召喚回数が増えている上に、王子ってば太りやすいし。

 しかも、娯楽を求めて異世界来るほどアグレッシブなくせに、王子はゲームにハマるとすぐ私の部屋に引きこもる。
 だからまめにお散歩にも連れ出さないといけない。

 体調不良やら体型の変化やらで、異世界召喚があっちの人に見つかったら笑えない。召喚バレが深刻なのって私以上に王子の方なのに、あのゲーム依存王子ってばイマイチ危機感が足りないんだよな。

 いいですか、既に王家の影さん達にはバレているんですよー。そんでもって、他にバレないように偽王子さん達が留守番してくれたりしているんですよー。
 ……物理的に王子には言えないけれど。

 何だかんだこっちの世界に呼び出しちゃった責任は私にもあるし、出来ることはしてあげないと。

 おやつと召喚と健康。

 なんとか全てを両立させてみせますよ。そんでもっていいおやつを見つけて、先輩に日頃の恩を返せれば一石二鳥だし。


 ――とまあ、あれこれ考えてはみたけれど、今日はせっかく先輩から高品質、高評価、高価格、高カロリーのお高い尽くしのクッキーを貰えたんだから、難しいことを考えるのも健康志向もダイエットも明日から☆


 とりあえず今日は何も考えず、美味しいクッキーを王子と一緒に有難くいただこうと思う。


 そうだ、おやつ代が浮く分でクッキーに合いそうなお茶でも買おうかな☆ (家計のダイエットも明日から、ってことで♡)
 うーん、楽しみ!!




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されないと知った時、私は

yanako
恋愛
私は聞いてしまった。 彼の本心を。 私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。 父が私の結婚相手を見つけてきた。 隣の領地の次男の彼。 幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。 そう、思っていたのだ。

明日のために、昨日にサヨナラ(goodbye,hello)

松丹子
恋愛
スパダリな父、優しい長兄、愛想のいい次兄、チャラい従兄に囲まれて、男に抱く理想が高くなってしまった女子高生、橘礼奈。 平凡な自分に見合うフツーな高校生活をエンジョイしようと…思っているはずなのに、幼い頃から抱いていた淡い想いを自覚せざるを得なくなり…… 恋愛、家族愛、友情、部活に進路…… 緩やかでほんのり甘い青春模様。 *関連作品は下記の通りです。単体でお読みいただけるようにしているつもりです(が、ひたすらキャラクターが多いのであまりオススメできません…) ★展開の都合上、礼奈の誕生日は親世代の作品と齟齬があります。一種のパラレルワールドとしてご了承いただければ幸いです。 *関連作品 『神崎くんは残念なイケメン』(香子視点) 『モテ男とデキ女の奥手な恋』(政人視点)  上記二作を読めばキャラクターは押さえられると思います。 (以降、時系列順『物狂ほしや色と情』、『期待ハズレな吉田さん、自由人な前田くん』、『さくやこの』、『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい』、『色ハくれなゐ 情ハ愛』、『初恋旅行に出かけます』)

番(つがい)と言われても愛せない

黒姫
恋愛
竜人族のつがい召喚で異世界に転移させられた2人の少女達の運命は?

初恋の呪縛

緑谷めい
恋愛
「エミリ。すまないが、これから暫くの間、俺の同僚のアーダの家に食事を作りに行ってくれないだろうか?」  王国騎士団の騎士である夫デニスにそう頼まれたエミリは、もちろん二つ返事で引き受けた。女性騎士のアーダは夫と同期だと聞いている。半年前にエミリとデニスが結婚した際に結婚パーティーの席で他の同僚達と共にデニスから紹介され、面識もある。  ※ 全6話完結予定

【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?

咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。 ※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。 ※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。 ※騎士の上位が聖騎士という設定です。 ※下品かも知れません。 ※甘々(当社比) ※ご都合展開あり。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

幸せを望まなかった彼女が、最後に手に入れたのは?

みん
恋愛
1人暮らしをしている秘密の多い訳ありヒロインを、イケメンな騎士が、そのヒロインの心を解かしながらジワジワと攻めて囲っていく─みたいな話です。 ❋誤字脱字には気を付けてはいますが、あると思います。すみません。 ❋独自設定あります。 ❋他視点の話もあります。

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処理中です...