魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

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249 偽王子(大)と出来立ておやつ

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 幸い、王子の為のホットケーキミックスだけは安売り時に買ってある。これさえあれば割と何でもできるはず。

 だけど今は夜だし、あまり凝った物は騒音・壁ドン☆(怖い方)対策に遠慮したい。クッキーは地味に時間がかかるし、ホットケーキは洗い物が多い上にガスを使う。換気扇も必須。


 ――となると、ここは蒸しパンとかかな?


 あれなら洗い物が少ないし、電子レンジを使えばうるさい換気扇も回さず素早く作れる――よし、それでいこう!

 ちょうど冷蔵庫の中には私用のおやつであるさつま芋が残っている。いつもガス代節約の為に何本かまとめて蒸してあるのだ――あれを入れちゃえば自然な甘みでヘルシーだし、それでいて食べ応えもある。今の時間に食べるおやつとしてはピッタリではないだろうか。

 明日は一限からだけど早朝バイトは無いし、私も一緒に夜食を食べて、久しぶりに偽王子(大)とレースゲームを楽しむのも有りかもしれない。

 猫耳王子はレースゲームには興味ないのか途中で飽きてやめちゃうし。本物の王子相手だと私が負けるからやりたくないし。
 お兄ちゃんは……レベルが違い過ぎて王子以上にボロ負けするから考えたくもない。


 大好きだけど、決して強くはないあのゲームを一緒に楽しめるのは、偽王子(大)さんしかいないのだ。


 よぉ~し、そう考えたらなんか楽しくなってきた!!



「――うん!! 今日は王子が来てくれて良かったな!」

「『真偽』……なるほど、嘘はないようだ……」



 ……おおっと。偽王子(大)さんてば、ココで嘘を見破っちゃう系魔法を使ってきましたね。私のウェルカム精神を怪しまれているようだ。

 まあ、偽王子(大)とこうして顔を合わせるのは久しぶりだし、何より猫用おやつで召喚しちゃいましたからね……。
 これは疑われても当然かも。

 偽王子(大)を歓迎する気持ちに嘘はないから魔法を使われたところで問題はないけれど、私の行動で彼に猜疑心を抱かせちゃったのは事実。

 これからも続く召喚生活の為にも、出来る限り偽王子(大)との信頼関係を回復しなくては。


 ……しかし…。
 猫ちゃんもそうだったけど、真偽魔法とか言う月に一回の大技を、私とのこんなどうでもいいことで使っちゃっていいのだろうか?


 どうもこの人たちは、魔法の使い方が根本的に間違っている気がする……。




 ――とか何とか考えている間にさつま芋入りの蒸しパンが完成しましたよ! 

 やっぱり何でも出来ちゃうホットケーキミックスは有能ですね☆

 女子的にはきゃわいいケースなんかで見栄えを気にしたり、オシャレにデコったりするのが正解なんだろうけれど、洗い物は少なく無駄な出費は避けたい私は実利優先。ほどほどの大きさの耐熱容器でドバっと一気に作って切り分けます。

 本当は冷めてからの方がいいんだろうけど、私としては出来立ては熱いうちに食したい派なので、ある程度温度が下がった所でやけどに気を付けながら切っちゃいます。

 ――で、そんな急ごしらえのおやつはともかく、偽王子さん達一人一人の飲み物の好みは完全に把握しているので、本日の偽王子の為にはしっかりと『コーヒー』をご用意しました。

 し・か・も! 本格コーヒーにどハマり中の王子のお陰で、インスタントではなくちょっぴりお高めの『ドリップコーヒー』です☆

 そうなるとブラックでどうぞ……といきたいところだけど、そこは甘さ控えめミルクたっぷりのコーヒーが好きな偽王子(大)の好みに合わせます。

 贅沢だけど、コレはコレで美味しいよね☆
 はい、こちらも完成です!


「ハイ、王子お待たせ! 出来立てほやほやのおやつをどーぞ☆」


 さあ、偽王子(大)の反応はどうだろうか。おっ、早速蒸しパンに手を伸ばしていますね。おっと、出来立てアツアツに驚いているようです。アチアチと、左右の手でパスしながら冷ましていますね。もちろん無言で。


 さてさて。肝心の蒸しパンのお味は……


「(もぐもぐ)……………………」

(ふむふむ)



 ミルクたっぷりコーヒーは……


「(ゴクゴク)……………………」

(ほうほう)



 ――――よし! 口数少ない系偽王子の無言顔色判断によれば、今度は両方とも御満足いただけたようだ!!


 全体的に甘さ控えめだからさりげなくコーヒーに入れるお砂糖をすすめてみたり、蒸しパンにホットケーキ用のチョコソースを付けるか聞いてみたりもしたけれど、このままがいいと顔に書いてありました。お芋の自然な甘さを気に入っていただけたみたいです。


 偽王子(大)さんは甘いもの好きな割にヘルシー志向でいいね!


 野菜と聞くだけで若干の抵抗感を持っちゃうどこぞの王子(本物)にもぜひ偽者さんを見習ってもらいたいものだ。





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