【完結】後悔するのはあなたの方です。紛い物と言われた獣人クォーターは番の本音を受け入れられない

堀 和三盆

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7 恋人の裏切り

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「……ジュジュマンさん? 顔色が悪いみたいだけど大丈夫?」

「…あ……っ、ごめんなさい。ちょっと……考え事をしちゃって。パーティング君は帰るのよね。気を付けてね!」


 いけない。人と一緒にいるのに、ついうだうだと思い悩んでしまったわ。とにかく生徒会室に居るアンスタンに待ち合わせ場所の変更を伝えて、面倒なことはその後、教室に行ってから考えよう。

 そう思って狼耳の友人に挨拶をして歩き出せば、帰ると言っていた彼が同じ歩幅でついてきた。


「パーティング君? どうしたの、下駄箱はあっちよ?」

「あ、いや――その、心配だから俺も行く。生徒会室まで送っていくよ」

「え、でも――」

「いいから」


 戸惑いはしたが、正直その申し出は有難かった。思い悩むのは後でと決めたものの、一人になればつい、あれこれと思い悩んでしまいそうだったから。

 そんな深刻そうな顔でアンスタンに会いに行ったらきっと心配をかけてしまうし、彼から嫌われてしまうかもしれないもの。

 生徒会室に続く廊下をパーティング君と並んで歩きながら先ほどお薦めした本についてあれこれと話していたら、自分でもびっくりするくらい心と表情が穏やかになっていくのを感じた。

 どうやら自分で思っていたよりも相当気分が沈み込んでいたようだ。それに気づいたからこそ、彼はこうしてついてきてくれたに違いない。


 ――よかった。これで、笑顔でアンスタンに会える。これもパーティング君のお陰ね。


 私は灰色の目をした穏やかな狼耳の友人に心の中で感謝した。



「はぁ!? ふざけないでよ!! 私と別れるって、ソレ本気で言っているの!? 貴方、私の事が好きだって言ってくれたじゃない!!」


 ガシャーン。


 何かが割れる音と――甲高い女性の怒鳴り声。

 目的の生徒会室に着いたのはいいが、何やら取り込み中のようだ。そのせいで、どうにも声をかけるのがはばかられる。

 男女間のトラブルだろうか。少しドアが開いているから廊下にまで中の会話が丸聞こえだ。


「はぁ……ったく、落ち着けよ。そんなに喚いたって結果は変わらないんだからさ」


 え……コレ……この声、アンスタンよね?


 ドキリ、と心臓が跳ねた。

 冷たい……いつも明るく優しい彼からは想像もできないような底冷えする声で、冷静に言葉を返すアンスタン。そのことにざわざわと胸騒ぎがするが、休む間もなく女の喚く声が聞こえてくる。


「落ち着いてなんかいられないわよ! アンスタン、あなた私の事が可愛いって、顔も体も大好きだって言ってくれたじゃない!!」


 ヒュ……と私の喉が鳴る。


 男と女の声――別れ話。
 それも、既に深い仲になっているような話しぶりだ。

 そして――聞こえてくるのは間違えようもない人の声。
 自分の恋人で……愛しい番……の……。




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