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23 露呈する真実(アンスタンside)
卒業を前にジュリアは運命の番に出会ってしまった。両親と参加をした高位貴族のパーティーで、お互い一目見た瞬間に判ったらしい。
本物の番を見つけたジュリアの行動は素早かった。運命の番を見つけた僕と別れるのを嫌がりあれほど縋ってきたくせに、自分がいざ運命の番を見つけると僕は冷たく突き放されて捨てられた。
それでも僕とは正式に婚約をしているし、卒業後には結婚を控えているのだ。婚約の解消は認めないと別れるのを嫌がっていたら、卒業パーティーで婚約破棄を突き付けられた。
彼女が身に着けているのは隣の男の色のドレス。僕が必死の思いで贈った最高級のドレスは着てすらもらえなかった。
「な……う、嘘だろ、ジュリア! 婚約破棄って……僕たちは真実の番で……」
「何が真実の番よ、この大ウソつき! 大体、おかしいと思ったのよ。番という割には思ったほど幸せは感じないし、いつまでも未練たらしくラジョーネさんを気にしているし。たまたま参加したパーティーで本物の運命の番に出会わなかったら、すっかり騙されて紛い物と結婚をさせられているところだったわ。ねえ、フラッタリー様」
「ああ、まったくだ。彼女から話を聞いて驚いたよ。まさか、番と嘘をついて人を騙す獣人がいるなんてね。……なんでも、君は以前にも似たような騒ぎを起こしたそうじゃないか。その時はお相手の女性のせいにしていたらしいが、こうなってくるとどちらに非があるのか怪しいものだ」
忌々しそうに、僕を睨みつけてくるジュリアの番。その目には運命の番を傷つけられたことに対する激しい怒りと嫉妬の感情が滲んでいる。
王城の騎士団に所属をしているという熊獣人の男は見るからに強そうで、そんな相手に威圧をされると自然と身体が震えて何も言えなくなってしまう。
「そういえば君はラヴィッスマン商会の後継だったか。大方、家の為に貴族との縁を望んだのだろうが、獣人でありながらこうも番を軽視するような姿勢はどうかと思う。君は嘘をついて私の運命の番を貶めたんだ。我が伯爵家から商会へ厳重に抗議をさせてもらうよ」
「ああ、フラッタリー様! 私の為にそこまでしてくださるなんて……! 貴方こそが正真正銘、私の運命の番よ。今まで紛い物なんかに騙されていた私が馬鹿だったわ! どうか許して頂戴」
「いいんだよ、愛しいジュリア。悪いのは番を騙り君を騙したあの男の方なのだから。こうして君が自分の間違いに気が付いて、私を選んでくれただけで十分さ」
「フラッタリー様!」
「ジュリア!」
ひしと抱き合い、濃厚な口づけを交わす二人に周囲から歓声が上がる。――と、同時に僕に向けられる軽蔑の視線。
「…いや……確かにおかしいとは思ったんだよな。だってさ、どう見たってアンスタンの方がラジョーネに執着していたし」
「えっ! じゃあ、もしかして二人は本当に運命の番で、振られた腹いせにラジョーネに言いがかりをつけていたってことか?」
「そういやアンスタンの奴、ラジョーネと仲が良かった転校生にやたら絡んでいたよな。あれって嫉妬?」
「意外とあっちが本物の番だったりしてな。二人で仲良く転校しちゃったし」
「そんなのどうでもいいわよ。振られた腹いせに運命の番を嘘で陥れたにしても、二度も運命の番を騙ったにしても、どちらにしてもアンスタンがやったことはサイテーじゃない。見損なったわ」
『運命の番に捨てられるような哀れな間抜けヤロー』
『番と嘘をついて恋人を騙した獣人モドキの紛い物』
『二度も番を見誤った間抜けな獣人』
会場のあちこちから聞こえてくるひそひそ話。今までの行いが全て自分に返ってくるような状況にいたたまれなくなって、僕は卒業パーティーの会場を飛び出した。
そうして家に帰れば僕は両親から怒鳴られた。
「ちょっと! 伯爵家から抗議文が届いているわ! 伯爵令息の番を騙したってどういうことよ!?」
「あの伯爵家は獣人国と懇意にしているんだぞ。それだけじゃない。ジュリアさんの家から事業提携解消の知らせが届いた……信用できない商会とは今後の取引を中止させていただくと……もちろんお前との婚約もこちらの有責で破棄になった。貴族を敵に回すなんて、お前は何を考えているんだ……」
「貴方が運命の番だったラジョーネさんを繋ぎとめてさえいれば……! それでも獣人なの!? 信じられない!!」
「番のいる貴族を選ぶなんてな……お前がもっとうまくやってさえいれば……獣人ならもっと野生の勘が優れている筈なのに、お前は危機管理能力がなさすぎる。獣人失格だ」
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