【完結】昭和アイドル好きの悪役令嬢、中途半端ぶりっこヒロインが許せないのでお手本を見せる

堀 和三盆

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番外編

14 新たな警護対象

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 新たな任務に就いてからは覚悟していた通りの毎日だった。

 24時間働いて。
 存在を気にされることなく。
 感情を無くして警護対象を守るだけの日々。

 前の警護対象のことはまるで覚えていないけれど、きっと似たようなものだったのだろう。


 新たに警護対象になったのは王太子殿下の婚約者。とある伯爵家の養女となった元男爵令嬢だ。王太子殿下とは大恋愛の末結ばれたらしい。

 しかし、この女は最悪だった。姿を消して見守っているからこそすぐ分かる。

 まず、男と女で態度が違う。爵位の高低で態度が違う。顔の良し悪しでも態度を変える。だから、彼女の評判は聞かれる者の性別、年齢、立場によってまちまちだ。でもまあ、仕事なのだから俺の好悪は関係ない。そう思って、毎日、淡々と仕事をこなしていた。

 ところが数年後。王太子妃教育がほぼ終わり、仕上げに影についての存在を教えられたとき。

「やだぁ! トイレもお風呂も見られているなんてぇ。……もおぉ、裸だからってあんまり見ないでよ?」

 風呂の世話をする侍女が用事で席を外した際に。入浴中の警護対象がそんなことを言い出した。一応は、王家の機密情報であるという自覚はあるらしい。

 チラリチラリ。ぎゅっぎゅっ。人が居そうな何もない空間を見てはそちらに向けて胸を寄せて上げている。俺は反対側の風呂場の隅で無感動にそれを見ていた。

「ねえ、本当にいるのよね? いくら私のスタイルがいいからって変な気おこさないでよね。私は王太子殿下のものなん、だ・か・ら♡ まっ、つい見ちゃう気持ちは分かるけど。ふふふ、やーらしー」
 キャッ、キャッ。風呂場に女の笑い声が響く。

 ……イラっとした。そして、兄が昔言っていた言葉を思い出す。

『女の裸を見たところで別に何も感じない』

 ああ、兄の言っていた通りだ。コレはただの警護対象に過ぎない。服なんて、着ていようが着ていまいが関係ない。裸を見たところでピクリとも感情は動かない。

 きっと俺は今――あの時の兄と同じような目をしているに違いない。



 ……そんな風にイライラした日には、夜中にこっそりとマジックバッグから例のチラシを取り出して眺めることにしている。月明りに照らされて見る、その珍しいカラー印刷のチラシは見ているだけで何やら楽しい。見目の整った修道女たち。それぞれが可愛らしくポーズをとっているその中に、あの修道女がいる。直接、会話をしたからだろうか。なぜか、その修道女だけが気になって仕方がなかった。
 結局、このチャリティーイベントには行けなかったけれど。月に一回はやっていると言っていたから、いつか見に行ける機会もあるだろうか。

 そんな風に思っていたが、「そのとき」は意外と早くやってきた。



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