【完結】昭和アイドル好きの悪役令嬢、中途半端ぶりっこヒロインが許せないのでお手本を見せる

堀 和三盆

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番外編

17 修道院送りになった警護対象

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 警護対象が失脚した。貴族街の修道院は警護対象である王太子妃の働きにより大盛況となったが、王太子殿下が思ったよりも夢中になってしまった。狙い通り商業地区からは足が遠のいたものの、今度は貴族街の修道院に通い始め、お気に入りの修道女を側妃にしてしまったのだ。身分差は問題なかった。貴族出身の者ばかりを集めたことによる弊害だろう。

 商業地区の修道院へ探りを入れ、王太子殿下の好みをどこまでも把握したうえで人選したのもまずかった。好みはバッチリだったようで、側妃への寵愛は深く王太子妃の元へと通うことも無くなった。第二、第三の側妃候補もいるらしい。
 警護対象は自らの手でプロデュースした令嬢達に足をすくわれることになったのだ。

 支援していたフキョーノ公爵家は王太子妃から手を引いた。もともと学園卒業後、王太子殿下が修道院通いを始めた頃から彼に対して見切りをつけていたらしい。フキョーノ公爵家の令嬢を正妃に、という話もあったが、元男爵令嬢に役目を押し付けさっさと他国へと嫁いで行った。寵愛を失った身代わりに支援を続ける理由はない。元男爵令嬢は資金力も愛も失った。

 警護対象は愛を諦め、修道院のプロデュースに力を注いだ。表向きはチャリティーだ。しかし今度は修道士グループを、と夢中になりすぎて公務が疎かになり、自身が修道院へ送られることになってしまった。浮気をしたわけではないが、外聞が悪すぎた。

 意外にも警護対象は落ち込んでおらず、「ママさんアイドルもいいわよね」と、修道女になることに前向きだ。ただ、送られる予定の最果ての修道院は戒律が厳しいから、思い通りにはならないだろう。

 王太子妃が正式に警護対象から外れることが決まった、その日の深夜。俺は召喚魔法を使って回収された。
 ああ、やっとあの女から解放される。兄の前だというのに、つい頬が緩む。警護対象に対して覚えておきたいことなど一つもない。

「とっとと記憶を消してください」

 兄に対して笑顔でそう言うと、不思議そうな顔をされたが、何か納得したのかサクッと記憶を消してもらえた。


 ただ、記憶を消すその前に。俺は一つだけ重要な決断をさせられた。記憶を封印されるのは今回で2度目だ。だから。


 記憶を封印された後。影を続けるかどうか。


 俺が出した結論は――。




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