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6 婚約者である公爵令嬢は第二王子の味方についた

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「知っての通りわたくしと殿下は政略で結ばれた婚約者です」

「あ、ハイ」


 第二王子の婚約者である公爵令嬢の部屋の前。正座する私を見下ろしながら、背筋を伸ばしてやたら余裕たっぷりにゆったりと語りだす公爵令嬢。

 政略的な婚約――それは間違いない。目の前にいらっしゃる第二王子の婚約者であるミーティス様……シュトルツ公爵令嬢は有力貴族。シュトルツ公爵家は王妃を何人も輩出してきた家柄だ。

 幼少の頃、第一王子の婚約者としても名前が挙がっていたが、そこは何故か話が立ち消えとなった。とはいえ国内でも有数の財力を持つと言われている名門公爵家。そこで第二王子との縁談が持ち上がり、今に至る。

 二人の相性も良かったことから政略結婚とはかくあるべき、とも言われていた理想のカップルだった――はず。私が余計なことをするまでは。


 え? 何? どういう事?
 魅了を解いて欲しくないの?
 あんなに仲が良かったのに??



「わたくしの両親も政略結婚でしたの。今でこそ仲良くお過ごしですが、結婚当初はお二人とも色々とあったようですわ」


 公爵令嬢が語り出したが、コレ、私が聞いてもいいやつなのかしら……。


「でも、そんなとき『初恋』の思い出に救われたそうですの。慣れず、つらく、厳しい新婚生活。そんな中、若かりし頃の初恋の思い出は少なからず心に癒しを与えてくれたそうですわ。穏やかな愛情が芽生えるまで、それはそれは心の支えになった――と。ですから私、貴女には感謝もしていますのよ」

「は? 感謝……ですか?」

「ええ。幼い頃より共に過ごしたわたくしですら、このような第二王子殿下の変化は記憶にございません。つまり、偽物とはいえ、これはおそらく殿下の初恋」


 そう言った公爵令嬢の口元が悠然と微笑みの形を作った。


「ですので、そう簡単に解除されては困りますの。わたくし達の将来の為にも。この、殿下の初恋は将来の伴侶となるわたくしが守り抜いてみせます。さあ、殿下! 今のうちにお逃げになって!!」


 公爵令嬢の言葉に答えるかのように。室内からガタンと大きな音が鳴ったかと思えば――。


「まあ! 第二王子殿下はどこにいらっしゃったのかしら? 王宮には王族専用の隠し通路がいくつもあるようですけれど……王族以外の使用は禁止されておりますものねぇ」


 開け放たれたドア。中はもぬけの殻。

 公爵令嬢の言う通りだ。私は追うことが出来ないし、彼女の許可なしに入室することすらできない。

 消えた王子。追えない足取り。


 クスクスクス……。
 ドアを開け放ち満足そうに微笑む公爵令嬢。



 ――公爵令嬢が敵に回った。




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