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本編

4 悪役令嬢とお出かけ

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 そんなこんなであっと言う間に一年が過ぎた。

 このくらいになると悪役令嬢とも大分仲良くなった。俺も三年になってからは忙しかったが、受験勉強の合間に悪役令嬢と出かけることも結構あった。生徒会長は引退したが、相変わらず教師からは彼女のことを頼まれていたし、真剣に何かを学び取ろうとする悪役令嬢とのお出かけは純粋に楽しかった。

 悪役令嬢はこちらの文化に興味があるらしく、出かけるのはもっぱら図書館や公民館などの公共施設だ。その中でも防災関連施設はかなり真剣に見学していた。

 なんでも、悪役令嬢の世界では定期的に魔物の襲撃があるらしく、聖女の力をもってそれに備えるそうなのだが、それでも被害は出てしまうらしい。

 こちらの防災の知識を取り入れれば、かなり国民の被害を抑えることができるかもしれない――と、細かくメモを取る姿が印象的だった。

 そんな思いからだろうか。

 学校でも避難訓練への力の入れ方はすごかった。特に、負傷者の搬送の訓練の際は感情を込めすぎて涙ぐんでいた。

 最初の頃の、感情の読めない穏やかな笑顔ばかり見せていた頃に比べると随分表情豊かになったと思う。クラスメイトにそう言ったら、「あまり変わっていないけど」と言われてしまった。俺が負傷者役だったから、より近くで見ていたせいかもしれない。

 ちなみに自称ヒロインは避難訓練をサボっていたのでいなかった。


 悪役令嬢とは色んな所に行った。ほとんど彼女のリクエストの場所だが、一度だけ、夏休みにチケットが余っているからと噓をついて、遊園地へ連れて行った。

 お出かけの時、いつも悪役令嬢は国や国民のことばかり考えて行き先を選ぶ。だから一度くらい、彼女自身が楽しめる所に連れて行ってあげたかったのだ。

 とても楽しんでくれたようで嬉しかった。

 ただ、帰る間際に見学した電飾のパレードを見て「妖精祭りみたい……」と、泣きそうな、嬉しそうな、いつもとは違う意味で感情の読めない複雑な顔をしていたのが忘れられない。
 故郷の祭りらしいが、詳しいことは教えてくれなかったので分からない。

 遠く離れた故郷を思い出し、ホームシックになったのだろうか。

 そう思ったら、悪役令嬢の住む世界はここじゃないのだと、そんな風に感じて少しだけ胸がざわついた。



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