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本編
12 自称ヒロインの評判がとんでもなく悪い
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「「「あっれー生徒かいちょーマジ生きてる、ウケルー」」」
空気を読まない発言をしながら保健室に入ってきたのは三人。クラスのギャル達だった。両手にはなぜか、汚れた掃除道具を持っている。いや、保健室にそれ駄目だろ。衛生面を考えろ。
「お前ら、まだいたのか。どこ行っていたんだよ。いつの間にかいなくなって」
「いや、ホラ最後だし~? お別れ会に使わせてもらった教室掃除して帰ろーと思って」
「そうそう。んで掃除用具借りに行ったんだけど」
「戻ったらキレイになっててさー。リリーもいないし」
意外なことに、自称ヒロインはともかく、こいつらは掃除する気はあったらしい。最後の最後で、少しだけ見直した。
「んで、リリーもう行っちゃったのかと思ってオカルト研究会の部室行ったんだけどぉ、めっちゃ血まみれになっててさー」
「そうそう! オカ研やばくね?」
「部室に理事ちょーがいてさー、掃除用具持ってるなら丁度いいから掃除して血痕消してくれとか言い出してマジ疲れた」
理事長、隠す気マンマンだな!まあ、護衛騎士に刺されたとか言ったところで頭がおかしいとしか思われなさそうだから、誰にも言う気ないけど。
「んで聞けば生徒かいちょーがケガしたっつーじゃん」
「そうそう! けっこーすごい血だったから心配でさ」
「生きてるのが逆にびっくりだよね。あ、コレお見舞い」
そう言って、なぜかトマトジュースを渡された。いや、気持ちは分かるけどなんで?ってか、俺、これ苦手なんだけど。
とは言え、気持ちは嬉しいのでありがたくもらっておくことにした。
「それでわざわざ様子を見に来てくれたのか。サンキューな。これもありがたくもらっとく」
「あーうん。それもあるんだけどぉ。最後のリリーの様子知りたくて」
「あ?」
ここにきての自称ヒロインの話題に、つい声が低くなる。ギャル達の評価が少し上がった分、自称ヒロインに対する俺の評価は最悪だ。
「あいつ、落ち込んでたからさー」
「そうそう。せっかく最後の最後で好きな人と心も体も結ばれたのに、元の世界に帰らなきゃいけないーって」
「は?」
え……ちょっと待て。こいつら今、なんて言った?心も体も……体……?え?
「でも、アイツ元の世界に彼氏いるって言ってなかった? 出来ちゃってたらどうする気だろ?」
「あーなんか髪と目の色一緒だからそれは大丈夫とか言ってたよ」
「え? なにそれ流石にひくわー」
「でも金髪はともかく紫の目の人なんているんだね」
「本当! 見たかったなーリアルイケメン王子」
「リリーの相手はカラコンだもんね。金髪は根元までキレイに染めてるけど」
きゃっきゃと盛り上がる三人。
とりあえず自称ヒロインは元気だったと伝えると、安心したのかギャル達は帰って行った。そして俺は不安になった。ええと、いったん落ち着こう。
「たしか、聖女って処女じゃないと力が使えないって……」
真っ青な顔をしてつぶやく委員長。
直接的な言い方をするな、と突っ込む気力はもうない。いや、本当にどうするんだ?悪役令嬢は自称ヒロインがいるから大丈夫って言ってたけど、ギャル達の話が真実なら自称ヒロインはもう……。恐る恐る悪役令嬢を見ると。
「大丈夫ですわ。あの方の傷は私が癒しましたので。ですから、聖女の力は使えます」
今朝早く。寮に自称ヒロインがやってきたらしい。そして。
『つい流されて力を失ってしまったの。お願い、聖女の力で治して! このままじゃラストイベントが……魔物の襲撃から国民を救うためなのよ。国のためにも聖女は多い方がいいでしょう? ね?』
そう説得されて、回復してきてた魔力で癒しの力を使ったそうだ。
そんなことさせといて、王子の前であんなこと言ったのか、あの女……。
「体は元に戻っていますので、聖女の力は元通りに使えます。既に宿ってしまったものは、私にはどうすることもできませんが」
「え」
「え」
なんでも力を使う際、小さな違和感を感じたのだという。確証はまだないが。
「一応、彼女にも可能性はお伝えしましたが『ダイジョーブダイジョーブ何かあっても責任は自分でとるから』とおっしゃって。……まあ、ですから私には一切関係ありませんわよね」
そう言って微笑む彼女の顔は、今までで一番悪役令嬢らしかった。
その後。悪役令嬢は理事長の保護の元、付属の大学へ進学することになった。理事長は口止め料のつもりか、自称ヒロインが使っていた高級マンションに住んではどうかと勧めていたが、悪役令嬢はそれを断った。なんでも「食事がおいしいから寮の方がいい」そうだ。結局それで大学の学生寮の方へ移ったが、それでよかったのかもしれない。
なぜなら。
自称ヒロインは掃除が苦手だったらしく。彼女が使っていた部屋の荒れ具合はそれはもう酷かったらしい。自称ヒロインと仲が良かったからと、理事長から直々に掃除のバイトを引き受けたギャル達が言っていた。
「女としてマジありえない。ひくわー。清掃業者入った後でも住みたくない」
元の世界に帰還した後ですら評判を落とすとか。これはもう自称ヒロインの才能かもしれない。
それから色々あって。俺は現在、悪役令嬢と暮らしている。
今は仲良く夕飯作りの最中だ。
「痛っ」
「大丈夫ですか!?」
考え事をしながら鰹節を削っていたら、指を削ってしまった。
『癒しの光よ……!』
みるみる治る指先の傷。そう。結論だけ言えば、彼女はまだ聖女の力を失っていない。
あれから10年。俺もそろそろ決断をすべき時がきているのではないかと思う。
来月、卒業して初めての同窓会があるらしいから、その時にそれとなく言ってみようと思う。ただ――。
元オカルト研究会の連中が、同窓会に向けて、何やらサプライズを用意しているらしい。
……余計なことだけはしないでもらいたい。
空気を読まない発言をしながら保健室に入ってきたのは三人。クラスのギャル達だった。両手にはなぜか、汚れた掃除道具を持っている。いや、保健室にそれ駄目だろ。衛生面を考えろ。
「お前ら、まだいたのか。どこ行っていたんだよ。いつの間にかいなくなって」
「いや、ホラ最後だし~? お別れ会に使わせてもらった教室掃除して帰ろーと思って」
「そうそう。んで掃除用具借りに行ったんだけど」
「戻ったらキレイになっててさー。リリーもいないし」
意外なことに、自称ヒロインはともかく、こいつらは掃除する気はあったらしい。最後の最後で、少しだけ見直した。
「んで、リリーもう行っちゃったのかと思ってオカルト研究会の部室行ったんだけどぉ、めっちゃ血まみれになっててさー」
「そうそう! オカ研やばくね?」
「部室に理事ちょーがいてさー、掃除用具持ってるなら丁度いいから掃除して血痕消してくれとか言い出してマジ疲れた」
理事長、隠す気マンマンだな!まあ、護衛騎士に刺されたとか言ったところで頭がおかしいとしか思われなさそうだから、誰にも言う気ないけど。
「んで聞けば生徒かいちょーがケガしたっつーじゃん」
「そうそう! けっこーすごい血だったから心配でさ」
「生きてるのが逆にびっくりだよね。あ、コレお見舞い」
そう言って、なぜかトマトジュースを渡された。いや、気持ちは分かるけどなんで?ってか、俺、これ苦手なんだけど。
とは言え、気持ちは嬉しいのでありがたくもらっておくことにした。
「それでわざわざ様子を見に来てくれたのか。サンキューな。これもありがたくもらっとく」
「あーうん。それもあるんだけどぉ。最後のリリーの様子知りたくて」
「あ?」
ここにきての自称ヒロインの話題に、つい声が低くなる。ギャル達の評価が少し上がった分、自称ヒロインに対する俺の評価は最悪だ。
「あいつ、落ち込んでたからさー」
「そうそう。せっかく最後の最後で好きな人と心も体も結ばれたのに、元の世界に帰らなきゃいけないーって」
「は?」
え……ちょっと待て。こいつら今、なんて言った?心も体も……体……?え?
「でも、アイツ元の世界に彼氏いるって言ってなかった? 出来ちゃってたらどうする気だろ?」
「あーなんか髪と目の色一緒だからそれは大丈夫とか言ってたよ」
「え? なにそれ流石にひくわー」
「でも金髪はともかく紫の目の人なんているんだね」
「本当! 見たかったなーリアルイケメン王子」
「リリーの相手はカラコンだもんね。金髪は根元までキレイに染めてるけど」
きゃっきゃと盛り上がる三人。
とりあえず自称ヒロインは元気だったと伝えると、安心したのかギャル達は帰って行った。そして俺は不安になった。ええと、いったん落ち着こう。
「たしか、聖女って処女じゃないと力が使えないって……」
真っ青な顔をしてつぶやく委員長。
直接的な言い方をするな、と突っ込む気力はもうない。いや、本当にどうするんだ?悪役令嬢は自称ヒロインがいるから大丈夫って言ってたけど、ギャル達の話が真実なら自称ヒロインはもう……。恐る恐る悪役令嬢を見ると。
「大丈夫ですわ。あの方の傷は私が癒しましたので。ですから、聖女の力は使えます」
今朝早く。寮に自称ヒロインがやってきたらしい。そして。
『つい流されて力を失ってしまったの。お願い、聖女の力で治して! このままじゃラストイベントが……魔物の襲撃から国民を救うためなのよ。国のためにも聖女は多い方がいいでしょう? ね?』
そう説得されて、回復してきてた魔力で癒しの力を使ったそうだ。
そんなことさせといて、王子の前であんなこと言ったのか、あの女……。
「体は元に戻っていますので、聖女の力は元通りに使えます。既に宿ってしまったものは、私にはどうすることもできませんが」
「え」
「え」
なんでも力を使う際、小さな違和感を感じたのだという。確証はまだないが。
「一応、彼女にも可能性はお伝えしましたが『ダイジョーブダイジョーブ何かあっても責任は自分でとるから』とおっしゃって。……まあ、ですから私には一切関係ありませんわよね」
そう言って微笑む彼女の顔は、今までで一番悪役令嬢らしかった。
その後。悪役令嬢は理事長の保護の元、付属の大学へ進学することになった。理事長は口止め料のつもりか、自称ヒロインが使っていた高級マンションに住んではどうかと勧めていたが、悪役令嬢はそれを断った。なんでも「食事がおいしいから寮の方がいい」そうだ。結局それで大学の学生寮の方へ移ったが、それでよかったのかもしれない。
なぜなら。
自称ヒロインは掃除が苦手だったらしく。彼女が使っていた部屋の荒れ具合はそれはもう酷かったらしい。自称ヒロインと仲が良かったからと、理事長から直々に掃除のバイトを引き受けたギャル達が言っていた。
「女としてマジありえない。ひくわー。清掃業者入った後でも住みたくない」
元の世界に帰還した後ですら評判を落とすとか。これはもう自称ヒロインの才能かもしれない。
それから色々あって。俺は現在、悪役令嬢と暮らしている。
今は仲良く夕飯作りの最中だ。
「痛っ」
「大丈夫ですか!?」
考え事をしながら鰹節を削っていたら、指を削ってしまった。
『癒しの光よ……!』
みるみる治る指先の傷。そう。結論だけ言えば、彼女はまだ聖女の力を失っていない。
あれから10年。俺もそろそろ決断をすべき時がきているのではないかと思う。
来月、卒業して初めての同窓会があるらしいから、その時にそれとなく言ってみようと思う。ただ――。
元オカルト研究会の連中が、同窓会に向けて、何やらサプライズを用意しているらしい。
……余計なことだけはしないでもらいたい。
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