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クリスside
3 学園生活
しおりを挟むこの国の貴族は十二歳になると王立学園に入学し、十八歳になるまでの間に魔法や学業などを学ぶ。
優秀だったり裕福だったり。ごく少数の庶民の子もいるが、その大半は王族や貴族だ。僕とヴィーナも十二歳になり、学園に入学することになった。
学園生活が始まっても相変わらず彼女は聖女教育に忙しい。それに加え、彼女の王太子妃教育に僕の王太子教育。
それらを言い訳にほとんど顔を合わせることもなくなっていたが、デビュタントを済ませると、公務としての外せないパーティーや夜会などで再び共に過ごす機会が増えてきた。
「あんなに美しい婚約者がいて羨ましい」などと周りから言われることも多かったが、僕は何とも思わなかった。
確かにヴィーナは美しくなった。もともと愛らしい顔立ちをしていたが、成長するにつれ、立ち居振る舞いから滲み出る気品や優雅さがプラスされ、外見も、内面も、非の打ち所のない淑女となっていた。
けれど、そこに僕の好きだったヴィーナはいない。
捕まえた虫を「見せて!」とはしゃぐヴィーナも、虫に触れなくなってしまって「きゃあ!」と叫ぶヴィーナもいない。
虫を見て、難しそうな顔で考え込む、僕の知らないヴィーナがいるだけだ。
……彼女と出会ったのはそんな頃だった。
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