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クリスside
13 娘の誕生と幸せの崩壊
しおりを挟む「良かった……きっと、今回は召喚されたときの影響がなくなったんだわ」
赤ん坊との対面の場で、リリーは嬉しそうにそう言って僕そっくりの赤ん坊を抱きしめた。
以前も見たようなその光景に驚くほど心が動かなかった。産まれてきたのは……娘。僕そっくりで、間違いなく僕の娘。血の繋がりは間違いないだろう。
それなのに。
可愛がっていた黒髪黒目の息子は成長する度に僕の外見とは遠ざかっている。
「この子とユージンは、あまり似てないな。父親が同じとは思えない」
「な……何を。ユージンは貴方が認めた、正真正銘貴方の子よ」
僕はリリーに気付かれないように、部屋の隅に居る神官長を見た。
「そうだな。で、僕との血の繋がりはあるのか?」
「も……もちろんよっ」
パリン。
神官長の持つ水晶が割れた。そして、粉々に崩れ去る。神官長はカバンから新たな水晶を取り出した。
「し……真偽の水晶!? なんで……っ、この子! この子は、貴方の子よ」
産まれたばかりの娘を震える手で抱きかかえ、リリーは叫ぶ。
水晶は動かない。
「だろうね。今回の子は、間違いなく僕の子だ。ところで君は真偽の水晶を知っていたんだね。かなり希少な魔道具だったんだけど。知っていたなら対処もしやすかっただろう? でも、今回は言い逃れはさせないよ」
「……っ」
リリーが顔色を変えて、息をのむ。
「では、ユージンは? いつ、授かった子だ?」
「もちろん、討伐を終えたあの夜の……」
パリン。再び水晶が割れた。
「貴方のっ貴方の子供よ、二人とも。心の底から愛し合って産まれた、貴方と私の……」
パリン、パリン。
「もういい。君の言葉なんて信じずに、最初からこうやって判断すればよかったんだ」
「ち……違うの、あの、これは。そう! あの、異世界で」
「正直に話して。でないと水晶の代金を、これからの君の生活費から差し引くよ」
「……ッ」
驚いたことに、リリーは真偽の水晶の価値まで分かっているようだ。一部の者にしか、その存在は知られていないというのに。
「異世界で、無理やり純潔を……」
パリン。
神官長は次々と割れる真偽の水晶に青ざめている。彼は隣国へと異動した前神官長の代わりにその職に就いた人物だ。正直、力は弱く、国内でもあまり顔を知られていない。だからこそリリーに警戒されなかったのだろう。
まだ若い神官長は国宝級の代物が、次々と使い捨てられていくのが信じられないらしい。今にも倒れそうなほど顔色が悪い。……当然だ。本来ならばそれ一つで、平民が何年も暮らせるくらいの価値があるのだから。ただ、十年以上前になぜか市場にたくさん出回り大暴落が起きたことがある。そのときにこれ幸いと王家が秘密裏に安く買い上げた。おかげで在庫にはかなり余裕がある。だからこそ、こんな使い方ができるのだ。
真偽の水晶を受け取り、僕は部屋にいる護衛と神官長を下がらせた。
「もう一度言う。正直に話すんだ。でないと、コレが割れる度に、君の生活費から差し引くぞ」
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