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9 プロポーズと母国からの知らせ
しおりを挟む政略が蔓延る国を政略でひっくり返すのは簡単だった。しかも、正当な血筋はこちら側。利用しようと近づいてきた者を逆に利用して、オネストの冤罪を晴らし元の身分を取り戻させた。
既に王位にはまったく未練の無かったオネストも、自ら社会の底辺を体験したことで思うところがあったのだろう。最初は難色を示していたものの、途中からはリベルタがビックリするほど積極的になってくれた。
オネストは相変わらず馬鹿正直で危なっかしいが、その分理想を歪めることはなかった。その姿勢は贅沢三昧の愛妾のせいで疲弊していた国民には分かりやすかったらしく、リベルタもオネストも驚くほどスンナリと受け入れられた。
オネストが苦手とする根回しが必要な貴族とのやり取りや、裏の部分はリベルタが請け負ってやればいい。
そうして、二人で創りあげた国がどうにかまわり始めた頃。
リベルタはオネストに求婚された。出身国からは遠く離れ、国交もない国。家族とは手紙で連絡をとりあっているが、既に国に対する未練もヴァールに対する思いもない。
種族の違いのせいで自分が年上なのは気になったが、オネストはリベルタが人間でないことは知っているし、種族の違いを気にしている様子はない。元々、地位にはさほど執着していないこともあり――自らの子供に王位を譲りたいという野望もないらしい。
たとえ子が出来なくとも構わないと言われた。
「僕は君を愛している。だから、僕と結婚してほしい。自分とこの国が生きていくためには君という存在が必要なんだ!!」
そう言い切られてしまえば、リベルタもその通りだとしか言えない。オネスト一人でこの国を統治するのは不可能だし、せっかく創りあげた国も必死に守り抜いたオネストの命も、リベルタがいなくなればあっという間にこの世から消えてしまうだろう。
頼りない男にも、危なっかしい国にも、既に愛着がわいて放っておけなくなっている自分がいる――リベルタがかつて番に対して持っていたものとはまったく違う感情だが、絶対に失いたくないという思いが強かった。
国造りは楽しかったし、駒を動かすように裏から手を回し、意のままに人間を動かすのも楽しかったが、それでも彼が持つ真っすぐさには癒されていた。
出会った時から変わらない、オネストの正直さに惹かれていたのは――国民よりも誰よりも、リベルタ自身だったのかもしれない。
自分はこの国で結婚をすることになるのか――そう思いオネストのプロポーズを受け入れ、婚約したことを手紙で両親に報告した直後のことだった。
義弟の爵位継承を認めてほしければ、今年のデビュタントには本来の跡取りであるリベルタを出席させるように――竜王ヴァールがそう言っていると連絡があったのは。
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