溺れ愛 ―おぼれあい―

井海博人

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「ねぇ、恢琉。どこ行くの?」



 足の長い弟の後ろで多少小走りになりながら、芙由はそう尋ねた。

だが、彼は答えずスタスタと歩き続ける。

短い中休みはもうすぐ終わりそうだというのに、恢琉は廊下をどん詰まりまで進むとさらに階段を下り始めた。



 仕方なく芙由は落ち着かない気持ちでその後に続く。

彼の言う通りにしないと後が恐いということを、彼女はここ数日で早くも学んでいた。





 恢琉がようやく足を止めたのは、一階に着いた時だった。

しかも芙由が連れて行かれたのは、普段学生がそれほど頻繁に訪れることのない、来客用玄関の近くだ。

廊下を挟んで事務室の向かい側にある来客用男子トイレの前で、何故か恢琉は立ち止まる。



「来て」



 そして、一言で命じながら、姉の手をグイッと引っ張った。



「な、何するの……?」



 聞かなくても、自分を呼びにきた時から、弟が何の目的を持っているのかについては薄々察していた。

しかし、それに唯々諾々と従うわけにはいかない。

 片腕を捕らわれた状態で腰を引こうとする姉に、恢琉はにっこりと微笑みかけた。



「来れば分かるよ」



 そして、そう言ったかと思うと、男子トイレの中へ彼女を連れ込もうとする。



「いやっ、恢琉、だめっ……」



 小さな声で彼を止め、芙由は懸命に逃れようとするが、空手五段の弟に敵うはずもない。

 そのままあっさりとトイレの中に引きずり込まれ、気がついたら彼と二人、個室に押し込められていた。



 恢琉がドア側にいるため逃げることもできず、芙由は怯えた表情で壁際に身を縮める。

そんな姿を見せれば弟の加虐心を煽るだけだというのは、ここ数日で嫌というほど思い知らされているのだが、これから行われることに対する抵抗の方法が、それしか思いつかない。

 案の定、恢琉は姉の様子を目にし、ニヤリと笑った。



「やめて、恢琉。やめて、お願い……」



 早くも涙を浮かべ、芙由は必死に懇願する。

だが恢琉はそれを無視し、腕を伸ばして姉を捕まえる。

無意識に逃げようとした芙由は、当然逃げられるわけもなく、背後からがっちりと弟の両腕に絡め取られてしまう。



「何するのっ、やめて、やめてっ……」

「何されるのかとっくに分かってるくせに。姉さんだって欲しかっただろ?」

「いやっ……欲しくなんかないっ……」



 昨日も一晩中――ほとんど明け方まで、弟はベッドの中で芙由を離さなかった。

それなのに学校でも襲われるなんて。

 芙由は必死に体を捩ってどうにか彼の腕の中から逃げ出そうとするが、どうあがいても力では敵わない。

 そんな彼女をなだめるように、恢琉は舌先でつぅっと芙由の首筋をなぞり上げた。



「ひっ……あ、あっ……」



 途端にゾクゾクとした感覚が背筋を走り抜け、芙由は微かに体を震わせる。



「いい反応」



 すぐ耳元で恢琉が嬉しげにそんなことを言うのが聞こえてきた。



「お願い恢琉、やめて。学校では、だめ……」

「安心しろよ。家に帰ってもたっぷりやってやるから。これはおやつみたいなもん」

「いやっ、違うのっ、学校でも家でもだめっ……こんなのだめなの……」



 ここ数日の間に何度そう言って弟を止めただろう。しかし、彼が耳を貸す気配はない。



「何言ってんだよ。姉さんだって毎回喜んでるじゃん」

「喜んでなんかないっ……やめっ……恢琉、ホントに、お願い……」



 姉と話しつつも、恢琉は彼女の制服のブレザーのボタンをはずし、ブラウスの裾から手を忍ばせる。



「やめっ、やめてっ……あぁんっ……」



 そのせいで、芙由の声には途中から喘ぎが混じった。

恢琉の両手はすべすべとした腹部を通り、瞬く間にブラジャーを押し上げる。

ぷるんと弾み出てきたのは、彼の大きな手でも掴みきれないほどの豊かな乳房。

毎回のように恢琉が「エロい体」と揶揄するように、芙由の肢体は大人しく控え目な性格には似つかわしくないほどに成熟しきっている。



「だめ、恢琉。しないで……もう、これ以上……んぁっ……」



 自分を懸命に止めようとする姉には構わず、恢琉はたっぷりとした重量感のある乳房を下から掬い上げ、柔らかな手つきで揉み始めた。



「あーあ、もう乳首硬くしちゃって」



 それから、呆れたように言い、力を持ち始めた二つの蕾を指先で摘む。



「違うの……これはっ、はぁぁんっ……」



 単にブラジャーを押し上げる時に布で擦られたからだと言いたいのに、恢琉はそれを遮るように硬い頂きをコリコリとひねり回した。

それだけで堪らない快感に襲われた芙由はびくんと痙攣する。



「いいんだろ?」



 姉のことなど全て分かっていると言いたげに、恢琉は断言した。



「よく、なっ……ふぁっ……やめっ、あぁぁんっ……」



 抵抗する芙由の乳房をむちゃくちゃに揉みしだき、蕾を指で弾いたかと思うと、強く引っ張り上げる。

 弟の愛撫に早くも彼女は甘い声を上げ始め、頬を紅潮させていた。



「あんま声デカいと人来るよ?」



 そんな姉を咎めるように、恢琉は耳元で囁く。芙由は嫌でも我に返らされた。

 今は特に行事もない平日の授業時間中だ。

それほど来客が多いとは思えないが、事務員がこのトイレを利用することだってある。



「じゃあ、やめ、てっ……こんなとこで、しない、でっ……」

「もう始めちゃったし。姉さんが大人しく協力してくれれば、とっとと終わらせてやるよ」



 そう言う弟が笑っているのが、振り向かずとも見えるような気がした。

 普段は決してこんな喋り方をしないのに、何故か姉を抱く時だけ、まるで言葉で彼女を追い詰めようとするかのように、恢琉の言葉遣いは多少荒くなる。



 自分がどう止めても何を言っても弟は決してやめないだろうと悟った芙由は、唇を噛み締めて小さく頷き、彼の行為を受け入れた。

 それを見てふっと楽しげに笑い、恢琉は再び桃色の乳首を責め始める。



「こっちはどうなってんの?」



 それだけでなく、片手を姉の下半身へと持っていく。

タータンチェックのプリーツスカートを何の躊躇もなく捲り上げると、彼女の秘所に手を伸ばした。



「あっ、いやっ……だめっ……」



 彼の手が恥ずかしい場所に触れようとしているのが分かり、芙由は思わず腰を引く。

恢琉に後ろから抱きしめられるような姿勢のため、当然彼女の尻は弟の股間に擦りつけられた。



「何、姉さん。もう欲しいの?」



 口角を上げた恢琉は、わざとらしくそう訊いてくる。



「ちっ、違うっ、違うのっ……」



 芙由はすぐに必死で否定したが、その隙を見計らったように、弟の手がショーツの上からさわさわと秘所を撫でた。



「んっ……だめぇっ……」



 泣きそうな声で腰を揺らす姿はかえって艶かしく、いっそう恢琉の情欲を掻き立ててしまう。



「あれ? 姉さんのココ、なんか湿ってるんですけど」



 手を少しずらし、陰裂に指を当てた恢琉が楽しげに教える。

芙由は思わず足を閉じ、彼を拒もうと太腿の柔肉で弟の手をギュッと挟み込んだ。

すると、背後から笑い声が聞こえてくる。



「何それ、もしかして誘ってる?」

「何……そっ、そうじゃなくてっ……」

「はっきり言ってそれじゃ逆効果。こっちのこと焦らそうとしてるみたいに思えるんだけど」

「なんでっ、違うっ……違うからねっ……あっ、だめ、って言ってる、のにっ……」



 どうしてそんな解釈が成り立つのか全く分からないまま慌てて足を緩めると、恢琉はそれで弄りやすくなったとばかりに布越しに素早く陰裂を擦り上げた。

それを受けて、ますますじわりと愛液が湧き出し、彼の指を湿らせる。

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