難度SSSダンジョン最下層で発見された░░░░に、命を狙われている件について。

スサノワ

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追記事項~その1

第10頁

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「ハハッ! おどかしちまったか? 俺はワーフ。ドワーフ族のワーフだ!」
 差し出された腕はまるで脚みたいな太さで、指なんて僕の手首くらいある。

「どうも、ジュークです。よろしく」
「……ロットリンデよ」
「ロットリンデ? はて、何か聞いたことあるな、ハハン?」
「いーえ、気のせいよ。私はただの駆け出し冒険者だもの」
「ハハッ! ただの駆け出しが、あんな強力な攻撃魔法を使えるはずがねえけど……まあイイか。こんな稼業だ、いろいろあらぁな」

「それで、ワーフさん。私たちに何かご用かしら?」

「ハハッ! ソレなんだがな。さっき言ってた、『緊急用の食料備蓄収納魔法』ってヤツぁ、売りモンなのか聞きたくてよ」
「いーえ。アレは私たちにしか扱えないから、お売りすることは出来かねますわ」
「ハハッ! そいつぁ残念だな。あの旨いスープを故郷の連中にも飲ましてやりたかったんだが……」

「えーっと、収納魔法は門外不出ですので、お売り出来ませんが……コッヘル商会として〝ソッ草〟を卸売りすることなら出来ますわよ?」
「なに? それは本当か!?」

「でもソッ草なら村の近くにバカみたいに生えてるから、むしって持って帰れば――――むぎゅふっ」
「もーーーーーーーーっ! ジュークはどうしてそう、ヲヴァカなの! 私たちはまがりなりにもコッヘル商会の従業員ですわよ。売り上げのチャンスをみすみす逃す人が居ますか!」
 細い指先をつかんで、必死に引っぺがす。
「むがっ――でもさ、買うと結構するよ?」
「もーだから――はぁ。もう、いいわ。……と言うわけで村に帰ったら、この子にソッ草の群生地を案内させますわよ?」

「ガハハハハッハハハハハッ! オマエさんも、商売が上手そうには見えねえぜ」
 体を揺らすと背中に背負った巨大な鉄杭が、ガキュガキュって鳴った。
 一挙手一投足が騒々しいけど、良い人柄は伝わってくる。

「よし、気に入った。オマエさん達のとこから正式に、あの〝旨いスープの素〟を大量に買い付けたい」
「ソレでしたら、宿屋ヴィフテーキ……いえ、コッヘル商会までお越し下さい。女主人……いえ、商会長が懇切丁寧かつ誠実に対応させていただきますので」
「えー、商会長ってティーナさんの事だろ? 言うほど誠実じゃないよ。コレ・・だって使用期限ギリギリのを売りつけられたしさ」
 僕は弾帯をつかんで見せた。

「ガハハハハッハハハハハッ! ボゥズ、お前さんは本当に商売に向いてねえな」
 盛大に笑われた。けど、バカにされてるわけじゃないから、我慢する。

「あのよぅ、横から悪ぃーんだけどライフル銃はドコの使ってんの? もし弾が安く買えるなら、少し欲しいんだよね」
 僕達の話を聞いていた、別の冒険者が話に混ざってきた。

「うふふ、コレは違うんですのよ。中に詰まってるのは銃弾じゃなくて――――」

      §

「ガハハハハッハハハハハッ! ボゥズ、お前さんは回復薬ポーションで何と戦うつもりなんだぁ? ガハハハハッハハハハハハッ!」
 盛大に笑われた。これはバカにされてるから、我慢できない。

「ひ、酷いよロットリンデさん!」
「あら、勇ましくてイイじゃない。〝回復薬ポーションだけじゃないおー! 蘇生薬エリクサーだって有るんだおー!〟」
 また変な声色で小芝居をする淑女。変顔で小躍りするお嬢様なんて見たことないよ。
 ば、バカにされてる。ロットリンデさんは、もはや敵だった。

「ちょっと待て、ボゥズ。いま蘇生薬エリクサーも売りつけられたって言ったか? 嘘はいけねえな」
 ピタリ。
 ソレまで爆笑の渦に包まれていたキャンプ小屋が、静まりかえった。

「へ? 嘘じゃないよう。ほらコレ、紫色のは6本くらいしかないけど」
 それに、言ったのは僕じゃなくて、変顔のロットリンデさんだよう。
「6本だと!? ソレ、一体いくらで――売りつけられたってんだ?」

「ちょっと高かったんだけど、回復薬ポーションとあわせて全部で5レルもしたよ」
 僕からしたら結構な大金だ。散財しました的なニュアンスで、やれやれまいったなんて顔をしてたら――。
 ワーフだけじゃなくて、周りに居た冒険者全員の顔が苦渋に満ちていく。

 あれ? なんか変なこと言ったかな?
 ジリジリと引き潮のように下がる人の波。
 乾いた、かすかな笑いが場を満たしていく中、学者コートの小柄な女性が歩み出た。

「その紫色の小瓶、拝見させていただいてもよろしいかしら?」
 手のひらを差し出されたから、小瓶を一つ手渡した。
 小さくて分厚い金属板を取り出し、その上に小瓶を乗せる女性。

「――――驚愕ですが、純度は100%。正真正銘、本物の蘇生薬エリクサーにまちがい有りません」
 それはそうだ。ティーナさんはがめつい所が有るけど、嘘つきではない。

「つかぬ事をお訊きいたしますけど、現在の蘇生薬エリクサーの市場価格はおいくらほどかしら?」
 なんかロットリンデさんまで渋い顔で、小柄な女性に尋ねてる。

「(……金貨一枚は下りません)……ひそひそ」
 顔をつきあわせて内緒話をしてるから、よく聞こえなかった。
 でもロットリンデさんの口元が引きつっていくのが見える。
 ティーナさんは、思っていた以上にがめつかったの……かも。
 聞いたらガッカリしそうだから、聞かないでおく。

「じゃー、村に戻ったら店に顔を出すぜ」
 そういって、逃げるみたいにいなくなるワーフさん。
 コッヘル商会の商売っ気に、驚いたのかな。

「これ以上、悪目立ちしないよう気を付けなさい」
 青ざめた顔の小柄な女性が、そういって小瓶を返してくれた。
「だいじょうぶですよう。みんな僕をからかうのにも飽きたみたいだし、これ以上目立つ事なんて――」

「いーからっ! お返事は!?」
 なんでか、ロットリンデさんに念を押された。

「わ、分かったよ。気をつける」
 僕は返してもらった小瓶を弾帯に戻した。
 それにしても――。
「周りに誰も居なくなっちゃったね……少し寂しい」
 まあ、いいか。今は宝箱おたからを守るのが先だ。

 ロットリンデさんが宝箱ジューク・ボックスが入ったズッタ袋に、革紐を巻き付けてる。
 うん、ソレなら落とす心配が無い。

 その後、ソッ草倉庫の害獣よけのための仕掛けを念入りに作っていたら、日が落ちてしまった。
 結局、この日は第二キャンプ設営予定地に出発することは出来なかった。

   §

 殺気で目が覚めた。
 こんな辺境で暮らしていれば、日常茶飯事だ。
 研ぎ澄まされたナイフの、切っ先みたいな気配。

 たいていは、遠くの茂みで獲物を狙う動物たちや魔物モンスターたちの、血の方陣結界ブラッドグラムが干渉してるだけだ。
 放っておいても問題ない。まだ眠い――スャァ。

「ジューク、起きて――」
「むにゃり? えー、まだ真っ暗だよう?」
 いや、何か明るい。
 ついたて代わりに横にしたテーブルの向こう。

 暗闇に何個もの光の文様が、浮かび上がっている。
 起き上がると、ソレは得物を構えた冒険者達で、魔物でも出たのかなと思ったけど……方陣結界ピクトグラム射出方向やじるしはコッチを向いている。

「ひゃぁぁぁぁっ!」
「ジューク、アナタこれ持って逃げなさい」
 革紐で縛った宝箱を手渡される。

「コレってどういうこと? ひょっとして凄いお宝だってバレちゃった?」
 僕は宝箱を腰に巻き付け、木刀をつかんだ。

「違うわ。狙われてるのは、蘇生薬エリクサーよ」
「え? こんなの倉庫にゴロゴロしてるよ?」

「ソレがおかしいの! あの牝ギツネ……じゃなかった女主人はやっぱりとんだ食わせ者だったわっ!」
 ロットリンデさんが、暗闇に爆煙を放つ!
 壊れた方陣結界ピクトグラムの欠片が飛び散るから、真っ黒い煙の輪郭がみえる。

「ぐわぁぁぁぁぁぁっ!」
「っきゃーっ!」
 爆煙は冒険者達の革鎧を、次々と焦がしていく。
 手加減はしてるけど、穏やかじゃないし、穏便じゃない。
 もう既に戦いの火ぶたは切られている。

 冒険者達を引きつけるつもりか、果敢に飛び込むお嬢様。
 ボボボボボグワァァァァァアァアッ!
 爆煙が起こす衝撃が、遠くなっていく。

「――――ハハッ! ボゥズ、悪いな」
 後ろから、厳つい声――
 いつの間に回り込まれたのか――
 振りかぶる鉄杭のシルエット――
 ソレは僕の木刀なんかじゃとても防げない!

「しまったっ! ジューク、逃げてっ!」
 ムリ。僕は木刀を抱えてうずくまる。

 ゴッ――――鉄杭が振り下ろされ、
 ゴガンッ――――――さらに、無骨なガントレットで地面に打ち込まれた!

 ゴッゴゴゴゴゴゴ、グゥゥゥゥゥヮァァァァァァアッァ!
 その衝撃は地面を水面のように波打たせた。

 広がっていく巨大な方陣結界ピクトグラム

「あわわわわっ!」
 凄まじい振幅ゆれが僕を――通り抜けていく。
 木刀を杖代わりにして、へたり込むことしか出来ない。

「ギャッ!」「グワァッ!」「ギャーー!」「ウッホッ!」
 バタバタバタッ!
 次々に倒れる冒険者達。キャンプに暗闇と静寂がもどった。

 チリチリとした鋭利な気配が消えている。
 なんか、ロットリンデさんの大猿みたいな叫び声も聞こえたけど、大丈夫かな。

      §

「ハハッ! 悪いなボゥズ。助けに入るのが遅くなっちまってよ!」
 謀反者全員を一人で制圧したワーフさんの手には特別報償金ぎんか一枚。

 『灯り』の魔法で、丸太小屋の中は昼間よりも明るくなっている。
 起きるにはだいぶ早い時間だけど、みんな起きてしまった。
 床に寝てるのは、ワーフさんの鉄杭攻撃を受けた冒険者達だけだ。

「まあ、全員悪気はないと言うか、それなりの理由と覚悟の上、行動したのだろうから恨まないでやってくれ」
 出番がなかった大剣を壁に立てかける青年。
「当然、償いはさせますので――ギュギュッ」
 小柄な女性が、倒れた冒険者達を縛り上げていく。

 あのぅ……ロットリンデさんは放してあげて下さい。

      §

「えっ!? 蘇生薬エリクサーって金貨一枚もするの? ひと瓶、1レルもしなかったけど?」
「ええ、それを聞いた全員が思いましたよ。なんで幻と言われる秘薬がそんな、ゴミみたいな値段で売られてるんだって――ギュギュギュッ?」
 ロットリンデさんの縛り具合を念入りに確かめながら、小柄な女性が教えてくれた。

「ゴミみたいな値段……なけなしの全財産だったんだけど」
 しかも今回、彼らから支度金としてもらった前払いのお金なわけで。
 いろいろと、いたたまれない気持ちになった。

「とても貴重なモノで、ウチのギルドでも扱ってるけど、年に一本入荷するかどうかだ」
「おかしいな……こんなのウチの倉庫にゴロゴロしてそうだし、そもそもティーナさんや寺院の職員さんに頼めば、ツケで蘇生も出来るのに?」
 なんて言って首を傾げていたから、この時のみんながどんな顔をしていたかはわからない。

 カンカンカンカンカンカンカンカンッ――――♪
 突然、外から警鐘が聞こえてきた。

「んにゃっ!? ――――ちょっと、どーなってんの、何コレ!? 今すぐ、ほどきなさいよ! ジューク! たぁすぅけぇてぇ~!」
 あ、お嬢様が起きた。
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