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1:輪廻転生、おいでませガムラン町
41:魔剣イヤーイ使い(幼女)、姫さんのお付きの白いの
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「でも、シガミーはまだ生活魔法、ぜんぶは使えないよね?」
なんて言って楽しげに、まあたらしい風呂桶にすわり込む子供。
「なにいってる? 灯りと、炎のがつかえりゃ十分だろうが」
ひっぱり込まれたおれも風呂桶にすわり込む。
まだ余裕があって、おとなでもあと一人は入れそうだ。
「これからの暑い季節に部屋を冷やせないと、また倒れるよ。それにトイレだって、お風呂だって水魔法が必要でしょ?」
おい、なんだその残念そうで深刻な顔は。
「厠……トイレは、迅雷の〝仕舞う魔法〟じゃ駄目か?」
「(風呂の水も、おまえが川から汲んでこれるよな?)」
「(いいえ、液体を量子記述的に再配置することは不可能……私の量子回路……頓知をもってしてもむずかしいのです。よって格納することはできません)」
「駄目に決まってるでしょ! ちゃんと水魔法で流して、乾燥させる魔法で乾かさないとだめ! なんでかはわからないけど、とにかく駄目って決まってるの!」
「ちっ、だめかぁー」
「ご期待にそエず申しわケありません」
「乾かす魔法か……じゃあ、レイダが毎日あそびに来るついでに、やってもらえりゃぁ……」
「あそびには来るけど、乾燥の魔法は私もまだ……つかえないわ――よいしょっと!」
レイダが風呂桶から飛びだした。
テーブルに用意された、おれたちの茶菓子に、どたどた――かけていく。
「(生活魔法てのは誰にでも、つかえるはずじゃなかったのか?)」
「(乾燥の魔法は、対象を燃やさないための加減がむずかしく、収得には時間を要するようです)」
「(レイダもまだ、子供だしな。それに手が燃えねえようにすんのは、たしかに簡単じゃねえからなあ)」
「どっこらせっと!」
椅子がわりの木箱に腰かけた。
もー、シガミーはほんと、おじさんみたい。
レイダがいつもの小言をいう。
茶菓子をかじりながら――もぐもぐもぐ。
包帯が巻かれた、じぶんの腕をみる。
ようするに〝燃やすもの〟と〝燃やさねえもの〟の〝区別〟がむずかしいわけだな。
「うーん。魔法の練習中にまた暴発させて、手が燃えちゃっても困るし、ちゃんとした講師が……ぱりぱり、もぐもぐ……ひふほうかひはへ?」
ほんと鬼とはいえ、よく食うよな鬼娘は。
いや、冒険者ってのは、みんなよく食うか。
でも、こいつ受付仕事だろ……このあいだの動きを見りゃ、鍛錬をおこたってねえのはわかるが。
「うふふのふ♪ おふたりさん、そのお話、相談に乗ってあげても、よくってよ?」
このえらそうな態度が良い――とか抜かしてたなニゲルは。
おれには、さっぱりわからんが。
「でも人に教えるのって、結構……いえ、かなーりむずかしいわよ……わすれたわけじゃないでしょうね?」
鬼の端正な顔が、かすかにゆがむ。その冷ややかな眼差しは――姫さんが、ひとにものを教えるのに難があることを物語っていた。
「も、もも、もちろんよ。教えるのに適任がいるわ――ぱちん♪」
指をならす、狐耳の藩主の娘。
「こちらに」
さっきまで、おっさんたちに紅茶をいれてた白装束が、姫さんのとなりにたってた。
「「わっ!?」」
おどろいたおれとレイダが、茶をこぼす。
「おどろかせてしまいましたね。ごめんなさい」
――と、こぼれたのを、そつがなく拭きとってくれる白装束。
ちかくでみれば、それはえらく仕立ての良い給仕服。
しゃらあしゃらした物腰、すずやかな口元。
姫さん付きのなかでも、よけいな動きがまったくないやつ。
コレだけの器量良しをニゲルたち、男衆が放っておくはずはねえ、と思うんだが――――
やっぱりあの〝面〟が、怖ええのか?
目と鼻をおおう、まっしろい鳥の顔を模した面。
紅茶の器に似たような光沢を放ち、草のつるの模様があしらわれている。
「(おい、よくみりゃ、目の穴があいてねえぞ?)」
「(……逆に〝視る〟ことに特化したアーティファクトと思われます)」
「(みる? ……ギルド長の眼鏡みてえなのか?)」
「(おそらくは)」
§
「炎の魔法と冷たい魔法を、同時につかうと〝乾燥の魔法〟になるんだけど――」
オルコトリアの声が遠い。
物置小屋のよこ。
城壁とちいさな草地のあいだ。
通路いっぱいに距離をあけた、鬼と白いの。
鬼の手には大きめな、炎の魔法。
がやがやがや、いいぞー、やれやれ!
おっさん連中は、もちこんだ酒を飲みはじめている。
「リオレイニア、これつかって!」
姫さんが放りなげたのは、さっきまで咥えてた三つ叉の一本箸。
「承りました。リカルルさま」
白いのが、片足をひいて腰をおとした。
なんて言って楽しげに、まあたらしい風呂桶にすわり込む子供。
「なにいってる? 灯りと、炎のがつかえりゃ十分だろうが」
ひっぱり込まれたおれも風呂桶にすわり込む。
まだ余裕があって、おとなでもあと一人は入れそうだ。
「これからの暑い季節に部屋を冷やせないと、また倒れるよ。それにトイレだって、お風呂だって水魔法が必要でしょ?」
おい、なんだその残念そうで深刻な顔は。
「厠……トイレは、迅雷の〝仕舞う魔法〟じゃ駄目か?」
「(風呂の水も、おまえが川から汲んでこれるよな?)」
「(いいえ、液体を量子記述的に再配置することは不可能……私の量子回路……頓知をもってしてもむずかしいのです。よって格納することはできません)」
「駄目に決まってるでしょ! ちゃんと水魔法で流して、乾燥させる魔法で乾かさないとだめ! なんでかはわからないけど、とにかく駄目って決まってるの!」
「ちっ、だめかぁー」
「ご期待にそエず申しわケありません」
「乾かす魔法か……じゃあ、レイダが毎日あそびに来るついでに、やってもらえりゃぁ……」
「あそびには来るけど、乾燥の魔法は私もまだ……つかえないわ――よいしょっと!」
レイダが風呂桶から飛びだした。
テーブルに用意された、おれたちの茶菓子に、どたどた――かけていく。
「(生活魔法てのは誰にでも、つかえるはずじゃなかったのか?)」
「(乾燥の魔法は、対象を燃やさないための加減がむずかしく、収得には時間を要するようです)」
「(レイダもまだ、子供だしな。それに手が燃えねえようにすんのは、たしかに簡単じゃねえからなあ)」
「どっこらせっと!」
椅子がわりの木箱に腰かけた。
もー、シガミーはほんと、おじさんみたい。
レイダがいつもの小言をいう。
茶菓子をかじりながら――もぐもぐもぐ。
包帯が巻かれた、じぶんの腕をみる。
ようするに〝燃やすもの〟と〝燃やさねえもの〟の〝区別〟がむずかしいわけだな。
「うーん。魔法の練習中にまた暴発させて、手が燃えちゃっても困るし、ちゃんとした講師が……ぱりぱり、もぐもぐ……ひふほうかひはへ?」
ほんと鬼とはいえ、よく食うよな鬼娘は。
いや、冒険者ってのは、みんなよく食うか。
でも、こいつ受付仕事だろ……このあいだの動きを見りゃ、鍛錬をおこたってねえのはわかるが。
「うふふのふ♪ おふたりさん、そのお話、相談に乗ってあげても、よくってよ?」
このえらそうな態度が良い――とか抜かしてたなニゲルは。
おれには、さっぱりわからんが。
「でも人に教えるのって、結構……いえ、かなーりむずかしいわよ……わすれたわけじゃないでしょうね?」
鬼の端正な顔が、かすかにゆがむ。その冷ややかな眼差しは――姫さんが、ひとにものを教えるのに難があることを物語っていた。
「も、もも、もちろんよ。教えるのに適任がいるわ――ぱちん♪」
指をならす、狐耳の藩主の娘。
「こちらに」
さっきまで、おっさんたちに紅茶をいれてた白装束が、姫さんのとなりにたってた。
「「わっ!?」」
おどろいたおれとレイダが、茶をこぼす。
「おどろかせてしまいましたね。ごめんなさい」
――と、こぼれたのを、そつがなく拭きとってくれる白装束。
ちかくでみれば、それはえらく仕立ての良い給仕服。
しゃらあしゃらした物腰、すずやかな口元。
姫さん付きのなかでも、よけいな動きがまったくないやつ。
コレだけの器量良しをニゲルたち、男衆が放っておくはずはねえ、と思うんだが――――
やっぱりあの〝面〟が、怖ええのか?
目と鼻をおおう、まっしろい鳥の顔を模した面。
紅茶の器に似たような光沢を放ち、草のつるの模様があしらわれている。
「(おい、よくみりゃ、目の穴があいてねえぞ?)」
「(……逆に〝視る〟ことに特化したアーティファクトと思われます)」
「(みる? ……ギルド長の眼鏡みてえなのか?)」
「(おそらくは)」
§
「炎の魔法と冷たい魔法を、同時につかうと〝乾燥の魔法〟になるんだけど――」
オルコトリアの声が遠い。
物置小屋のよこ。
城壁とちいさな草地のあいだ。
通路いっぱいに距離をあけた、鬼と白いの。
鬼の手には大きめな、炎の魔法。
がやがやがや、いいぞー、やれやれ!
おっさん連中は、もちこんだ酒を飲みはじめている。
「リオレイニア、これつかって!」
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