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2:カブキーフェスタへの道
176:龍脈の棟梁(シガミー)、シシガニャンVSルリーロ
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「草原一帯が、地獄と化したわい」
森へ通じる道の横。
看板隣の木の上。
黒装束を木陰にまぎらせ、
高下駄をブラつかせる。
天狗はいくさ場から引いた。
草原の様子が、画面に映し出されている。
画面に映し出された物の音まで、ちゃんと聞こえるから――――
「このぉっ――――まとわり付くんじゃぁぁぁぁ、ありまっせんわよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっぉおっぉぉおぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅ――――――――ふっしゅるるるるるるるうっるぅぅぅぅぅっ!!!」
――――怖えぇ!
もうなんか、口から直に狐火がでてるし。
「五百乃大角は、どこ行った?」
「(現在、物理ストレージにイオノファラーは、格納されていません。おそらく、オルコトリアと一緒に避難したと思われます)」
念話は、どんどん使わせとく。
この距離でも、時々、反応するから――――援護がわりだ。
「にゃんやにゃぁぁぁ~~♪」
覇気のない、猫の声。
命の灯火が、吹き荒れる渦中。
若草色が、見え隠れしている。
最初こそ鬼娘にも、森の先まで吹っ飛ばされてたけど。
「にゃんやにゃぁぁぁ~~♪」
両手をあげて、果敢にも火中へ飛びこむ。
「(どうやら、自律型シシガニャンは、シガミーが最初に置いた場所を自軍陣地として、防衛しているようです)」
うん、猫耳頭のおにぎり野郎は、すっげー頑張ってるな。
「うぉのれっ――護り鬼めぇぇぇえぇぇえぇっ――――!」
ぼっごぉうわっぼごごうわぼごごぼごごぉぉごぉぉん♪
爆発する、化け狐の怨念。
ひとまず天狗の放った〝シシガニャン〟を、尖兵と見なしてくれて助かった。
ぽっきゅむぽきゅぽきゅぽぽきゅきゅきゅむむんっつ♪
なかに芯が入っていないにもかかわらず、〝強い服〟は次第に狐火をかわし始めている。
ふぉん♪
『ヒント>極所作業用汎用強化服:シシガニャン』
そうだ、身を守る服だ。
その動きがまるで人が着ているように、上手になってきている。
「まだ歩き方しか、教えてなかったんだが――やるもんだぜ、おい♪」
「(はい。強化学習のための、データセット……頓知のための座学が無いにもかかわらず、入出力レシオを高く保っています)」
わからん。
「(ルリーロが異常な強さと速さで叩くから、反発も強くなりその分だけ、急速に賢くなっていると思われ)」
わかった。
「習うより慣れろ、見て盗めってこったな」
「こぉんこぉぉぉん、こぉぉん、こぉぉっぉん、こぉぉっぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん♪」
とうとう杖の上に、四つ足でふんばり――――吠えだした。
伯爵夫人は色々アレだが、名君と呼ばれる領主の奥方だ。
基本的にはやさしく、下々の者にも分け隔てがない。
魔物と戦うガムラン町の政にも、こうして参画しているし。
なかなか出来た御仁だ。
「さっき、天狗が敵みたいなこと言ってたけど、どう思う?」
ふぉふぉん♪
『発行人:猿田太郎光藏坊命綱切彦左衛門』
「そう、そいつ。猿田太郎光藏坊命綱切彦左衛門たぁ、本当に名前かコレ?」
「(はい、幼少期につけられる仮名を、そのままのこし続けた結果、このような長さになってしまったと思われま――――!?)」
『▲――ぴぴぴっ♪』
不意の赤文字。
「(正面より、狐火来ます)」
「(んをっ!?)」
あわてて、足を枝に掛けたまま、うしろに倒れる。
チチュィィィン――――――――バキバキッ!
切られた枝が、上から落ちてきた――――「うぅわっ!?」
「(いまの、見えなかったぞ!?)」
迅雷の念話に対する牽制なのは、わかるが。
「(収束させた、細い狐火を――――尻尾で操ることで、一種の重ねがけを行ったようです)」
わからんけど、念話止めろ。
「――了解しまシた。魔法でハなく、日ノ本の理だけデもない、新たナ様式ヲ
編みだしたと思われマす――」
新たな……それは、リオレイニアの生活魔法を大化けさせるアレみたいなヤツか?
「――ハい、言イ得て妙でスが、まサにそのアレでス――」
鬼に金棒じゃねーか。
いま鬼は、ココにはいねぇが。
「にゃにゃみゃみゃぁっ――――ポッキュムムンッ♪」
いや、一匹居るか。
「ここぉぉん、ここぉん、ぉぉぉおおおおぉおおっこっつこつここっ――――――チチュィィィン!」
鳴き声が……鶏かな?
「――命名すルなら、ウィルオウィスプ・レーザー……鬼火怪光線でしョうか――」
コッチに撃った、まるで姫さんの聖剣切りみたいな、不可視の狐火。
その、リオレイニアの様式なみに、研ぎ澄まされたソレも、シシガニャンには効かなかった。
「(おれが着てる隠れ蓑も、あれに耐えられるか?)」
「――はイ。でスが、至近距離ヤ長時間ノ照射ニは耐熱性能ノ差で、耐えラれません――」
おれたちは、場所を変えて岩場側に陣取った。
「にゃにゃぉ――――――――ん♪」
木々を貫通しなぎ倒す、見えない狐火。
それを喰らっても、何処吹く風の護り鬼。
しびれを切らした、妖狐が――
「ええええええぃぃいっ!」
怒声を発し、巫女服の袂から、取り出したのは。
それは朱色の襷。
しゅるっ、きゅきゅっ♪
たすき掛けされた姿が、大写しになる。
「――シガミー……あノ細布ヲ画面越シで良いノで、上級鑑定してくだサい――」
ん?
とおくを近くにする画面は便利だが、動きが速い妖怪狐を真ん中で捉えるのは難しい。
ぐ、ぐ、ぐぅぅん――――よし、捕らえたぞ♪
ふぉぉん♪
『追憶の結び紐【消費アイテム】
身につけた者の命を一度だけ保護する』
そんな表示が出た。
――――無数に。
「おい、あの襷――だけじゃねぇ!?」
ふぉふぉん♪
『神巫女シリーズ一式【白昼夢の紬】
身につけた者が受けた攻撃を半減する』
「――ハい、アの布のスべてが〝追憶の結び紐〟で出来ていマすね。巫女装束ニ至っテは、効果ハ永久のようデす――」
おいおい。
なんだか、とんでもねぇのを持ち出してきたぞ?
おれは首にかかってる紐を、取りだす。
せいぜい60センチ――で一回分として。
「碌に戦い方を知らないシシガニャン相手に、大人げねぇなあ」
あの巫女装束は、殺しても死なねえわけだろ。
こっちの服も……頑張っちゃ居るが、
「ルリーロ・イナリィ・コントゥル――――参りますコォォン♪」
ゴッツン!
巫女さんの神速の踏み込みからの、正拳。
青白く光ってたりするから、たぶん本気の全力。
それを、どでかい頭で受ける猫耳頭。
シシガニャンは、頑張った。
壊れても、ちゃんと直してやろう。
伝説の職人スキルで、こんどは負けねぇくらいに。
「にゃぁーみゃっ!」
くるるん――ぽっきゅむぅぅん♪
ありゃ?
大の字になった黄緑色の裏拳が――――妖怪キツネのこめかみに、ぶち当たる。
「くっふっふっふぅ、中々やりますわねぇ、護り鬼ふぜいがぁぁ――――コォォォォン♪」
ふたたびの神速。
シシガニャンの背後に、あらわれた巫女さん。
地に伏せたと思ったら、とんぼを切って、シシガニャン・へっどに踵を振りおろした!
――――ガッゴンッ!
神速の下駄からの、強力な一撃。
「ふっぎゃぁぁっ――――!」
ぐるんぐるぐるるん――――――――ぼっぎゅむぅん♪
やっぱり、大の字になった黄緑色が――――凄まじい勢いで回転する。
ぎゅぎゅりりっ――――どっごぉぉぉんっ♪
回転力は、地を駆ける推進力となり――――
妖怪巫女狐の、背中を強打した。
朱色の襷がハラリと落ち、巫女が地に倒れた。
「ありゃ? まさか、勝負がついちまったのか?」
ぽきゅぽきゅぽきゅむん♪
倒れたままの妖怪狐巫女へ、ちかよる黄緑色の魔物。
魔物みたいなヤツは、辺りを見わたしてから、巫女に腰掛けた。
「にゃにゃにゃにゃぁー♪」
覇気の無い勝ちどきをあげる、猫耳頭シシガニャン。
10分くらい様子を見たけど、巫女装束も魔物装束も、どっちも微動だにしなかった。
森へ通じる道の横。
看板隣の木の上。
黒装束を木陰にまぎらせ、
高下駄をブラつかせる。
天狗はいくさ場から引いた。
草原の様子が、画面に映し出されている。
画面に映し出された物の音まで、ちゃんと聞こえるから――――
「このぉっ――――まとわり付くんじゃぁぁぁぁ、ありまっせんわよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっぉおっぉぉおぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅ――――――――ふっしゅるるるるるるるうっるぅぅぅぅぅっ!!!」
――――怖えぇ!
もうなんか、口から直に狐火がでてるし。
「五百乃大角は、どこ行った?」
「(現在、物理ストレージにイオノファラーは、格納されていません。おそらく、オルコトリアと一緒に避難したと思われます)」
念話は、どんどん使わせとく。
この距離でも、時々、反応するから――――援護がわりだ。
「にゃんやにゃぁぁぁ~~♪」
覇気のない、猫の声。
命の灯火が、吹き荒れる渦中。
若草色が、見え隠れしている。
最初こそ鬼娘にも、森の先まで吹っ飛ばされてたけど。
「にゃんやにゃぁぁぁ~~♪」
両手をあげて、果敢にも火中へ飛びこむ。
「(どうやら、自律型シシガニャンは、シガミーが最初に置いた場所を自軍陣地として、防衛しているようです)」
うん、猫耳頭のおにぎり野郎は、すっげー頑張ってるな。
「うぉのれっ――護り鬼めぇぇぇえぇぇえぇっ――――!」
ぼっごぉうわっぼごごうわぼごごぼごごぉぉごぉぉん♪
爆発する、化け狐の怨念。
ひとまず天狗の放った〝シシガニャン〟を、尖兵と見なしてくれて助かった。
ぽっきゅむぽきゅぽきゅぽぽきゅきゅきゅむむんっつ♪
なかに芯が入っていないにもかかわらず、〝強い服〟は次第に狐火をかわし始めている。
ふぉん♪
『ヒント>極所作業用汎用強化服:シシガニャン』
そうだ、身を守る服だ。
その動きがまるで人が着ているように、上手になってきている。
「まだ歩き方しか、教えてなかったんだが――やるもんだぜ、おい♪」
「(はい。強化学習のための、データセット……頓知のための座学が無いにもかかわらず、入出力レシオを高く保っています)」
わからん。
「(ルリーロが異常な強さと速さで叩くから、反発も強くなりその分だけ、急速に賢くなっていると思われ)」
わかった。
「習うより慣れろ、見て盗めってこったな」
「こぉんこぉぉぉん、こぉぉん、こぉぉっぉん、こぉぉっぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん♪」
とうとう杖の上に、四つ足でふんばり――――吠えだした。
伯爵夫人は色々アレだが、名君と呼ばれる領主の奥方だ。
基本的にはやさしく、下々の者にも分け隔てがない。
魔物と戦うガムラン町の政にも、こうして参画しているし。
なかなか出来た御仁だ。
「さっき、天狗が敵みたいなこと言ってたけど、どう思う?」
ふぉふぉん♪
『発行人:猿田太郎光藏坊命綱切彦左衛門』
「そう、そいつ。猿田太郎光藏坊命綱切彦左衛門たぁ、本当に名前かコレ?」
「(はい、幼少期につけられる仮名を、そのままのこし続けた結果、このような長さになってしまったと思われま――――!?)」
『▲――ぴぴぴっ♪』
不意の赤文字。
「(正面より、狐火来ます)」
「(んをっ!?)」
あわてて、足を枝に掛けたまま、うしろに倒れる。
チチュィィィン――――――――バキバキッ!
切られた枝が、上から落ちてきた――――「うぅわっ!?」
「(いまの、見えなかったぞ!?)」
迅雷の念話に対する牽制なのは、わかるが。
「(収束させた、細い狐火を――――尻尾で操ることで、一種の重ねがけを行ったようです)」
わからんけど、念話止めろ。
「――了解しまシた。魔法でハなく、日ノ本の理だけデもない、新たナ様式ヲ
編みだしたと思われマす――」
新たな……それは、リオレイニアの生活魔法を大化けさせるアレみたいなヤツか?
「――ハい、言イ得て妙でスが、まサにそのアレでス――」
鬼に金棒じゃねーか。
いま鬼は、ココにはいねぇが。
「にゃにゃみゃみゃぁっ――――ポッキュムムンッ♪」
いや、一匹居るか。
「ここぉぉん、ここぉん、ぉぉぉおおおおぉおおっこっつこつここっ――――――チチュィィィン!」
鳴き声が……鶏かな?
「――命名すルなら、ウィルオウィスプ・レーザー……鬼火怪光線でしョうか――」
コッチに撃った、まるで姫さんの聖剣切りみたいな、不可視の狐火。
その、リオレイニアの様式なみに、研ぎ澄まされたソレも、シシガニャンには効かなかった。
「(おれが着てる隠れ蓑も、あれに耐えられるか?)」
「――はイ。でスが、至近距離ヤ長時間ノ照射ニは耐熱性能ノ差で、耐えラれません――」
おれたちは、場所を変えて岩場側に陣取った。
「にゃにゃぉ――――――――ん♪」
木々を貫通しなぎ倒す、見えない狐火。
それを喰らっても、何処吹く風の護り鬼。
しびれを切らした、妖狐が――
「ええええええぃぃいっ!」
怒声を発し、巫女服の袂から、取り出したのは。
それは朱色の襷。
しゅるっ、きゅきゅっ♪
たすき掛けされた姿が、大写しになる。
「――シガミー……あノ細布ヲ画面越シで良いノで、上級鑑定してくだサい――」
ん?
とおくを近くにする画面は便利だが、動きが速い妖怪狐を真ん中で捉えるのは難しい。
ぐ、ぐ、ぐぅぅん――――よし、捕らえたぞ♪
ふぉぉん♪
『追憶の結び紐【消費アイテム】
身につけた者の命を一度だけ保護する』
そんな表示が出た。
――――無数に。
「おい、あの襷――だけじゃねぇ!?」
ふぉふぉん♪
『神巫女シリーズ一式【白昼夢の紬】
身につけた者が受けた攻撃を半減する』
「――ハい、アの布のスべてが〝追憶の結び紐〟で出来ていマすね。巫女装束ニ至っテは、効果ハ永久のようデす――」
おいおい。
なんだか、とんでもねぇのを持ち出してきたぞ?
おれは首にかかってる紐を、取りだす。
せいぜい60センチ――で一回分として。
「碌に戦い方を知らないシシガニャン相手に、大人げねぇなあ」
あの巫女装束は、殺しても死なねえわけだろ。
こっちの服も……頑張っちゃ居るが、
「ルリーロ・イナリィ・コントゥル――――参りますコォォン♪」
ゴッツン!
巫女さんの神速の踏み込みからの、正拳。
青白く光ってたりするから、たぶん本気の全力。
それを、どでかい頭で受ける猫耳頭。
シシガニャンは、頑張った。
壊れても、ちゃんと直してやろう。
伝説の職人スキルで、こんどは負けねぇくらいに。
「にゃぁーみゃっ!」
くるるん――ぽっきゅむぅぅん♪
ありゃ?
大の字になった黄緑色の裏拳が――――妖怪キツネのこめかみに、ぶち当たる。
「くっふっふっふぅ、中々やりますわねぇ、護り鬼ふぜいがぁぁ――――コォォォォン♪」
ふたたびの神速。
シシガニャンの背後に、あらわれた巫女さん。
地に伏せたと思ったら、とんぼを切って、シシガニャン・へっどに踵を振りおろした!
――――ガッゴンッ!
神速の下駄からの、強力な一撃。
「ふっぎゃぁぁっ――――!」
ぐるんぐるぐるるん――――――――ぼっぎゅむぅん♪
やっぱり、大の字になった黄緑色が――――凄まじい勢いで回転する。
ぎゅぎゅりりっ――――どっごぉぉぉんっ♪
回転力は、地を駆ける推進力となり――――
妖怪巫女狐の、背中を強打した。
朱色の襷がハラリと落ち、巫女が地に倒れた。
「ありゃ? まさか、勝負がついちまったのか?」
ぽきゅぽきゅぽきゅむん♪
倒れたままの妖怪狐巫女へ、ちかよる黄緑色の魔物。
魔物みたいなヤツは、辺りを見わたしてから、巫女に腰掛けた。
「にゃにゃにゃにゃぁー♪」
覇気の無い勝ちどきをあげる、猫耳頭シシガニャン。
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