滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

２：カブキーフェスタへの道

１８３：龍脈の棟梁（シガミー）、結婚式と喫茶店組

　最後列さいこうれつの長椅子ながいすに座すわったけど、何なにをしてるのかサッパリわからない。
　超女神像ちょうめがみぞうの間まは、央都おうとのと同おなじくらい広ひろくて、天井てんじょうもかなり高たかかった。

　この超女神像でかいののずーーーーっと上うえには、神域惑星しんいきわくせいの絵・が浮かんでるはずだけど、中なかからは当然見とうぜんみえない。

　女神像めがみぞうの正面しょうめん、通路側つうろがわへ頭あたまをだす。
「――――、――。――――――、――――――！」
　とおくでなんか言ってるのが、微かすかに聞こえてくる。

　きゅふぉん♪
『＞とおくて聞こえないや』
　文字板もじばんを裏表逆うらおもてぎゃくに持ちあげたら――文字もじも逆ぎゃくになった。
　肩越かたごしに板いたを読む二人ふたりにも、読みやすくなる。
　かしこいな。迅雷ジンライがやってくれてるのか？
「――いいエ。上下逆じょうげぎゃクに持ツと、文字こジモ逆さかさまにナるように設計せっけイしましタ――」
　じゃあ、板いたが、かしこいんだな。

　むぎゅ、むぎゅぎゅっ――！
　ルコルたちも、二号ぼくのうしろから身を乗りだした。

「それは、カラテェーの〝耳みみ〟の使つかい方かたがわるいニャ！」
「自分じぶんの耳みみをうごかして、よく聞こえる〝場所ばしょ〟をうんと〝遠く・・〟すれば良いコン♪」
　肩越かたしに見たら、猫耳ねこみみと狐耳きつねみみが〝正面しょうめん〟を向いてた。

　真似まねをして、〝極所作業用きょくしょさぎょうよう汎用強化服はんようきょうかふく：シシガニャン〟の耳みみをうごかしてみる。
　ぱたぱた、ふしゅふしゅ♪
　中々なかなかうまく動うごかせないけど、耳みみが正面しょうめんよりを向いたときに、たしかに女神像前とおくでしゃべるる声こえが――ちかくで聞こえた。

「――――であるからしてぇ、美の女神めがみであらせられるぅー、こぉの・・・、あたくしさまがぁ、宣言せんげんしまぁすぅー♪」
　こっからじゃ、〝手乗り女神のちいさな〟姿すがたは見えない――
「（あいつ、いつもの調子ちょうしで、かわらないけど――いいのか？）」
　まるで、ありがたみがないよ。

「もー、末長すえながく爆発ばくはつして！　どうぞおしあわせにぃー♪」
　なげやりというか。
　五百乃大角あいつの神々かみがみの世界せかいにゃ、〝結婚けっこん〟てぇのはねぇのか？
　怒おこられるんじゃね？

　なんせ今日きょうは、この長椅子ながいすの列れつの一番前いちばんまえに、ガムラン町会議ちょうかいぎの時ときにいた、お歴々れきれきだけじゃなくて――
「――はイ、央都おうトの領主りょうシゅ……俗ぞくに言ウ王族おうゾく――将軍しょウぐんモ来ているはずでス――」

　　　§

「（なんかみんな……笑わらってるな？）」
　どういうわけか、五百乃大角いおのはらはどこでも、受け入れられてる。
　「こんなのは、美の女神めがみではない」って退治たいじされないかと、ヒヤヒヤしてたのがバカみたいだ。

「――終始しゅうシなごヤかに、滞とドこおりナく終わりそうデす――」
　また通路側つうろがわから、前まえを見た。
　小ちいさいのと、頭あたまが大おおきいのが、通路つうろに少すこしはみ出してる。
　レイダがうまいこと〝シシガニャン一号いちごう（シガミー）〟を使つかってくれてるみたいで、安心あんしんした。

「（それにしても将軍しょうぐん――王様おうさまてのは、伯爵とのさんたちを束たばねる殿様とのさんだろ？）」
「――そレが、どうかしましタか？――」
　いやなぁ――近ちかくには魔物みたいなシシガニャン一号いちごうも居るのに――まるで動どうじないなと思おもってさ。

「（この世界せかいは、良くできたお偉えらいさんばかりで、感心かんしんしてるんだよ）」
「――そウですネ。シガミーが居たコろの日ひノ本もトハ、絶エず有事ゆうジト言って良いくラいに、群雄割拠ぐんゆうカっきょノ時代じだイでしタから――」

　そうか、この来世らいせには――魔王まおうとかいう生き物ものがいて、ソレを退しりぞけるのに一丸いちがんとなってた経緯けいいがあるから――
「――ソレもありまスが、この世界せかイハ基本的きほんてきにイオノファラーが住んデいた国くにヲ参考さんこうに作つクらレたので、比較的温和ひかくてきおんワナ社会性しゃかいセいを維持いジできていルと、お考かんガえくださイ――」
　ふぅん。殿様とのさんの中なかの王様とのさんの顔かおくらい、見ておきたいけど――

「飽きたニャ。じゃあ、次つぎはこの……甘あまいお菓子かしを食べに行くニャ♪」
　コソコソと、猫足ねこあしであとずさり。

　きゅふぉん♪
『＞そうだね。お式が終わると出口が込むから、
　　その前に外に出ようか』
　ぼくたち三人は、超女神像の間けっこんしきじょうを出た。
　王様おうさまには、央都おうとに行ったときにでも、ひょっとしたら会う機会きかいも、あるかもしれないし。
　いまは、ルコルたちについていこう……放ほっとくとなんか、やらかしそうだし。

「ああ、そういえば――この建物たてものの中なかで一カ所いっかしょだけ、見ておきたい場所ばしょがあったコォン♪」
　きゅふぉん♪
『＞冒険者ギルドの中？』
　立ち話ばなしも何なんなので、大階段横だいかいだんよこの休憩所きゅうけいじょで一休ひとやすみすることにした。

「ふう、すっかり忘わすれてたニャ。今日きょうは遊あそぶのは、半分だけ・・・・ミャ。危あぶない所ところだったニャン♪」
　がさり。
　取りだされたのは、一枚いちまいの絵草紙チラシ。
　カブキーフェスタの分厚い冊子プログラムとは、また別べつの。

『テナント募集
　冒険者ギルドガムラン町支部屋舎内
　３Ｆ～７Ｆ、Ｂ３～Ｂ５まで
　（各フロア１０店舗程度の空きがあります）
　お問い合わせは、
　冒険者ギルド支部受付まで』

「そもそも今日きょうは、このチラシを見てきたコォン♪」
　テナントてなぁ、なんだっけ？
「――貸店舗かしテんぽ……商あキないノための部屋へヤヲ、間借まガりすることでス――」
　猪蟹屋ししがにやを姫さんリカルルから、借りてるようなもんか？
「――はイ。同おなじ意味いミでス――」

　きゅふぉん♪
『＞城塞都市のお店は、
　　どうするの？』

「もちろん、ちゃぁんと、戸締とじまりしてきたコォン♪」
　えへんと、威張いばる喫茶店店主きっさてんてんしゅ。
　きゅふぉん♪
『＞戸締まり……？』

「そうミャ！　ちゃぁんと、張り紙がみもしてきたミャ！」
　同おなじく、威張いばる喫茶店店員きっさてんてんいん。
　きゅふぉん♪
『＞張り紙……？』

「カブキーフェスタ開催期間中かいさいきかんちゅうは、お休やすみしますのおことわり・・・・・ニャ♪」
　きゅふぉん♪
『＞お休み……？』

「なんニャ、さっきから。文句もんくあるミャ？　ちゃぁんと〝おいしい物ものを食べてきます〟って断ことわりの文面ぶんめんも、正直しょうじきに入れたニャ！」
　きゅふぉん♪
『＞そうじゃなくて……
　　お店をガムラン町に移すなら、
　　二人はガムラン町にお引っ越し、
　　するってことだよね？』

「しないコォン？」
「城塞都市オルァグラムの家いえは、超。気に入ってるので――引っ越す訳わけなんてないミ゛ャ～ァ♪」
　じゃあ、毎日まいにちガムラン町ちょうまで、通かようってことか。
　まあ、ニャミカも一緒いっしょなら……そう簡単かんたんに、ふた首大鷲くびおおわしにさらわれないとは思おもうけど。

　きゅふぉん♪
『＞毎日、通うのは大変だよ。
　　だいじょうぶかい？』

「ふふふコォン♪　お金かねの心配しんぱいなら、いらないコォン♪」
「そうミャ♪　ガムラン町ちょうで始はじめるお店みせは、喫茶店きっさてんほど準備じゅんびはいらないミャ♪」

　きゅふぉん♪
『＞喫茶店じゃないお店？』
　あと、お金かねの心配しんぱいってなんだろ？

　ぺらり♪
『テナント募集』
　の紙かみを裏返うらがえす、猫耳族ニャミカ。

『～転移陣開放のお知らせ～
　光陣暦１３１年○月×日より
　超女神像による全国各地女神像への、
　転移が可能になります。
　※転移可能な女神像は、随時拡大中。
　※年間契約パスポートにより、転移料金は一律。
　※いまなら最大７０％ＯＦＦ（適応条件は、諸説有ります）』

「ふっふっふニャ♪　一定料金いっていりょうきん、しかも七割引ななわりびきの転送料金てんそうりょうきんニャら、〝城塞都市オルァグラム〟からの通勤つうきんにも気軽きがるに使つかえるミャー♪」
「トッカータ大陸中たいりくちゅうを転移てんいして、各地かくちの珍めずしいアーティファクトを、かき集あつめるコォォン♪」

　きゅふぉん♪
『＞やりたいお店っていうのは、
　　ひょっとして……』

「「もちろん、アーティファクト仲介所ちゅうかいじょコォン♪」――ミャァー♪」

　あー、キラキラしている。
　彼かれらの瞳ひとみが、とても素敵すてきに輝かがやいている。
　とても、水をさすようなことは言えない。

「――でスが、このまマだと、貸店舗テナントヲ先さキに借りテしまいそうな勢いキいでス――」
　だよなぁ。

　きゅふぉん♪
『＞水をさして悪いんだけど、
　　いま超女神像から飛べるのは、
　　央都の大女神像だけだよ』
　正確せいかくには、神域しんいきの五百乃大角いおのはら像ぞうにも飛べるけど……

「――ハい、まダ小ちイさナ火山かザんが噴火ふんカしてまス。もうしばらくハ転移不可能てんいフかのうかト……どのみち、アーティファクトは自然発生しぜんはっせイすルわけではないので、神域むコうニ存在そンざいするアーティファクトは、イオノファラー像ゾうのひとつだけデす――」

「コォォォォンッ!?」
「フッギャニャーッ!?」
　ばたばたり――テーブルに突っ伏す、カフェノーナノルン組ぐみ。

　よ、よっぽど、楽たのしみにしてたんだろうなぁ。
　そういや、ぼくも喫茶店きっさてんの一員いちいんだったっけ。
　なんとかしてあげたいけど、こればかりはなー。

「――超女神像ここから飛べるのは、超女神像ちょうめがみぞう完成後かんせいご、シガミーが訪おとづれた女神像めがみぞうだけでス――」
　わかってるよ――――ばたり！

　テーブルに突っ伏した三人ぼくたちが気を取りなおすのには、三分さんぷんくらいの時間じかんが必要ひつようだった。