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2:カブキーフェスタへの道
220:ギルド住まいの聖女(研修中)、バトルロイヤルおにぎり杯予選
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「こりゃぁ、いくらなんでも多すぎねぇかなぁ」
突貫工事で完成した舞台……闘技場?
継ぎ目のない床石は磨きあげられ、おにぎり渾身の試し殴りにもキズひとつ付かなかった。
そんな晴れの舞台を走り回る、目鼻立ちがないやつら。
猫の耳が付いてる、丸い頭をした作業服たち。
「けどあれ全部でも、椅子がせいぜい25個分だろう……本当に安上がりだな」
「(いえ、さすがに激しい運動をするため強度が必要で、一匹につき椅子3脚分使用しています)」
椅子何個分って、逆にわかりづらくね?
「紙を巻いて作った棍棒にも木材を使用しているので、一匹につき約十二倍……いえ、普通の高さの木一本分の木材で、三匹作れる計算です」
木一本で三匹か。すると、三十数本の丸太があれば百匹。
百本の丸太で――三百匹。猫耳頭数だけなら、最低限の〝備〟になる。
「――やばくね?」
あれを作ったのは、超女神像にくっ付いてる無人工房だ。
図面を引いたのは五百乃大角で、中身は……おれと迅雷を真似た強化服を元にしてる。
あの舞台の上に〝敵をおびき寄せられるなら〟――マジで無敵じゃね?
央都に居たモサモサ神官どもに、どれだけの材料費が掛かってるのか知らないけど――
まちがいなく、使い捨てシシガニャンの方が安い。
なんせ中身は、人じゃねぇ。超女神像ひとつで賄える。
切られて破けても、丸太さえありゃ際限なく補充できるし、まるで――――
「ちょっとシガミー、まさか参加しないつもりじゃないでしょーね?」
自分はすでに本戦参加が決まってるもんだから、見ているだけしか出来ない鬼。
不機嫌顔のオルコトリアが、おれに八つ当たりをしてくる。
「え、出ないよ。働きづめてさ、むしろ寝るよ?」
おやぁす――やぁ♪
白い隠れ蓑。迅雷式の頑丈な布にくるまって、シガミーは寝息を立てる。
カチャカチャカチャカチャ――♪
ふぉん♪
『>隠れ蓑固定しました。
どうぞ椅子の底から、隠し通路へ降りてください』
キュキュキュキュキュリ――――カチャァ!
この座席には細工をしておいた。
隠れ蓑の下から、人知れず抜け出せる。
「(じゃあ迅雷。おにぎりやみんなのことを頼むぞ)」
「(はい、おまかせください。ご武運を――)」
すたっ!
座席の下には細い通路が張りめぐらされていて、斜めになった床に体をあずけた。
「いそがないと――」
なんせ、烏天狗としては、出場することになってるからな。
スルスルスルスルルッ――――ッシャァァァァァァァッ!
すべり落ちる速さが、どんどん増していく。
これなら舞台下の隠し通路に、すぐ出られ――
――熱っち、あちあち!
こりゃ火傷するぞっ――――なんでも実際にやってみないと、わからねえもんだぜ!
ヴッ――小太刀を二本尻に敷いた。
§
「あ、あの真っ黒いの、カラテェーミャ!」
「ほんとコォン! 真っ黒だコォン!」
ついさっき、自分で組み立てたばかりの舞台に立つ。
「おぉぉーいコォン!」
「うをぉーいミャァ♪」
君ら、観客席の最前列に陣取ってたのか。
§
出来たばかりの〝灯りの魔法具〟を仕舞った一号。
背中の魔法具箱がなんでか、妙に重くて。
その背中を押してたらルコルたちの話し声が、とおくから聞こえてきた。
「どうするミャッ? 灯りの魔法具が今さら出てきたけど、とても足りそうもないミャ!?」
遊んでたわけじゃなくて、一応探してくれてたのか。
魔法具はコッチで用意できたよって、説明しとくか。
烏天狗の装束で、顔を出したら――
「え? カラテェーは、イベントに出るコォン?」
舞台を作って、そのまま乱取りに参加するって言ったら――
「ひらめいたミャ♪」
ニャミカが、手のひらを拳の底で叩いた。
「フフフフフフのふニャ♪」
ゴソゴソッ――バリッ!
「我のお財布を、どうするコォン!? それは喫茶店の、運用資金だコォン!?」
「よく聞くミャ! ……ひそひそ……みんなはカラテェーの強さを知らないニャ♪」
聞こえてるよ?
ぎらりん――コォン!
ぎろりん――ニャァ!
獣の目で見られたときは、怖かったけど――――さすがに喫茶店の運用資金の全部を突っ込まれちゃうとな。
まるっきり無視するのも、忍びない。
仮にも喫茶店の従業員として、名をつらねてもいるし――
たしか乱取り戦、三位入賞で――掛け金が戻る仕組みだから。
三位入賞したら、すぐに場外に出よう。
万が一勝ちすすんじゃうと――――一人二役で、戦えないし。
迅雷に裏天狗……いや、裏烏天狗をさせても良いけど――
本気のオルコトリアあたりには、一人三役がバレたりしそうでなー。
§
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ――――――――!」
ズバズバ――ッ!
「ヤァァァァ――――――ッ!」
ヒュボボォ――ン!
次々と切りきざまれたり燃やされたりして、減っていく使い捨てたち。
ぼとっ。ひらひら。
中には小さな包みや、何かの引換券(たぶん例のアーティファクトが当たるやつ)が入っている。
「にゃにゃみゃーう、みゃごー♪」
舞台そばの高台に、まるで王様のように鎮座ましましておられるのは。
賞品でもある一騎討ちの相手、シシガニャン一号(|おにぎり)だ。
ズバズバ――ッ!
ぼとぼとっ。
ヒュボボォ――ン!
ひらひらららっ。
落ちた景品は即座に回収され、あとでまとめて渡される。
美の女神と伯爵夫人《ルリーロ》の思いつきで急遽、開催された見世物試合だが、優秀なギルド職員たちが滞りなく進めてくれていた。
使い捨てたちは、そこそこ強い。
けど、ガムラン町の冒険者たちなら、まず参加料の元は取れる。
100匹居た使い捨て。作業服の頭数が減ってきた。
冒険者たちも場外に押し出されて、半分くらいになった。
三位入賞ってことは――えーっと。
音もなく背後から飛びついてきた作業服を、錫杖で引っかけて引きたおす。
あ、そういやニゲルは――アソコでさびた剣を振るってるな。
もう錆びついたのか。おにぎり本戦前に、また研いでやるか。
えーっと、そしたら、姫さんもどっかにいるはず。
あれ? まてよ、あのふたりが居るってことは、三位中ふたりは確定じゃんか。
すこしは本気を出さないと、入賞できなくな――――ブゥォォォォォオォンッ♪
この風切り音――――まさか!?
「あんたたち! 遠慮はいらないよぉっ、どっからでもかかっておいでっ!」
その声に気をとられた、一瞬の逡巡。
音もなく死角から飛んでくる、紙の腕と紙の棍――
これをに躱すには、石床にぺたりと倒れるしかない。
見上げた鼻先を、木さじがスゴイ勢いで、すっ飛んでった!
やべぇ! 女将さんまで参加してたのか!
入賞のためには、誰かを(場外に)蹴落とさないといけなくて――
金剛力のない今のぼくじゃ、手加減も出来ないし――
マジでやらないと!
ーーー
備/戦国時代から江戸時代において、戦時に構成された最小の戦術単位。
単独作戦行動可能な人員の総勢は300~800名程度。
槍隊、弓隊、鉄砲隊、騎馬隊等で構成される。
これをひとつでも編成できることが、大名としての基準。
突貫工事で完成した舞台……闘技場?
継ぎ目のない床石は磨きあげられ、おにぎり渾身の試し殴りにもキズひとつ付かなかった。
そんな晴れの舞台を走り回る、目鼻立ちがないやつら。
猫の耳が付いてる、丸い頭をした作業服たち。
「けどあれ全部でも、椅子がせいぜい25個分だろう……本当に安上がりだな」
「(いえ、さすがに激しい運動をするため強度が必要で、一匹につき椅子3脚分使用しています)」
椅子何個分って、逆にわかりづらくね?
「紙を巻いて作った棍棒にも木材を使用しているので、一匹につき約十二倍……いえ、普通の高さの木一本分の木材で、三匹作れる計算です」
木一本で三匹か。すると、三十数本の丸太があれば百匹。
百本の丸太で――三百匹。猫耳頭数だけなら、最低限の〝備〟になる。
「――やばくね?」
あれを作ったのは、超女神像にくっ付いてる無人工房だ。
図面を引いたのは五百乃大角で、中身は……おれと迅雷を真似た強化服を元にしてる。
あの舞台の上に〝敵をおびき寄せられるなら〟――マジで無敵じゃね?
央都に居たモサモサ神官どもに、どれだけの材料費が掛かってるのか知らないけど――
まちがいなく、使い捨てシシガニャンの方が安い。
なんせ中身は、人じゃねぇ。超女神像ひとつで賄える。
切られて破けても、丸太さえありゃ際限なく補充できるし、まるで――――
「ちょっとシガミー、まさか参加しないつもりじゃないでしょーね?」
自分はすでに本戦参加が決まってるもんだから、見ているだけしか出来ない鬼。
不機嫌顔のオルコトリアが、おれに八つ当たりをしてくる。
「え、出ないよ。働きづめてさ、むしろ寝るよ?」
おやぁす――やぁ♪
白い隠れ蓑。迅雷式の頑丈な布にくるまって、シガミーは寝息を立てる。
カチャカチャカチャカチャ――♪
ふぉん♪
『>隠れ蓑固定しました。
どうぞ椅子の底から、隠し通路へ降りてください』
キュキュキュキュキュリ――――カチャァ!
この座席には細工をしておいた。
隠れ蓑の下から、人知れず抜け出せる。
「(じゃあ迅雷。おにぎりやみんなのことを頼むぞ)」
「(はい、おまかせください。ご武運を――)」
すたっ!
座席の下には細い通路が張りめぐらされていて、斜めになった床に体をあずけた。
「いそがないと――」
なんせ、烏天狗としては、出場することになってるからな。
スルスルスルスルルッ――――ッシャァァァァァァァッ!
すべり落ちる速さが、どんどん増していく。
これなら舞台下の隠し通路に、すぐ出られ――
――熱っち、あちあち!
こりゃ火傷するぞっ――――なんでも実際にやってみないと、わからねえもんだぜ!
ヴッ――小太刀を二本尻に敷いた。
§
「あ、あの真っ黒いの、カラテェーミャ!」
「ほんとコォン! 真っ黒だコォン!」
ついさっき、自分で組み立てたばかりの舞台に立つ。
「おぉぉーいコォン!」
「うをぉーいミャァ♪」
君ら、観客席の最前列に陣取ってたのか。
§
出来たばかりの〝灯りの魔法具〟を仕舞った一号。
背中の魔法具箱がなんでか、妙に重くて。
その背中を押してたらルコルたちの話し声が、とおくから聞こえてきた。
「どうするミャッ? 灯りの魔法具が今さら出てきたけど、とても足りそうもないミャ!?」
遊んでたわけじゃなくて、一応探してくれてたのか。
魔法具はコッチで用意できたよって、説明しとくか。
烏天狗の装束で、顔を出したら――
「え? カラテェーは、イベントに出るコォン?」
舞台を作って、そのまま乱取りに参加するって言ったら――
「ひらめいたミャ♪」
ニャミカが、手のひらを拳の底で叩いた。
「フフフフフフのふニャ♪」
ゴソゴソッ――バリッ!
「我のお財布を、どうするコォン!? それは喫茶店の、運用資金だコォン!?」
「よく聞くミャ! ……ひそひそ……みんなはカラテェーの強さを知らないニャ♪」
聞こえてるよ?
ぎらりん――コォン!
ぎろりん――ニャァ!
獣の目で見られたときは、怖かったけど――――さすがに喫茶店の運用資金の全部を突っ込まれちゃうとな。
まるっきり無視するのも、忍びない。
仮にも喫茶店の従業員として、名をつらねてもいるし――
たしか乱取り戦、三位入賞で――掛け金が戻る仕組みだから。
三位入賞したら、すぐに場外に出よう。
万が一勝ちすすんじゃうと――――一人二役で、戦えないし。
迅雷に裏天狗……いや、裏烏天狗をさせても良いけど――
本気のオルコトリアあたりには、一人三役がバレたりしそうでなー。
§
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ――――――――!」
ズバズバ――ッ!
「ヤァァァァ――――――ッ!」
ヒュボボォ――ン!
次々と切りきざまれたり燃やされたりして、減っていく使い捨てたち。
ぼとっ。ひらひら。
中には小さな包みや、何かの引換券(たぶん例のアーティファクトが当たるやつ)が入っている。
「にゃにゃみゃーう、みゃごー♪」
舞台そばの高台に、まるで王様のように鎮座ましましておられるのは。
賞品でもある一騎討ちの相手、シシガニャン一号(|おにぎり)だ。
ズバズバ――ッ!
ぼとぼとっ。
ヒュボボォ――ン!
ひらひらららっ。
落ちた景品は即座に回収され、あとでまとめて渡される。
美の女神と伯爵夫人《ルリーロ》の思いつきで急遽、開催された見世物試合だが、優秀なギルド職員たちが滞りなく進めてくれていた。
使い捨てたちは、そこそこ強い。
けど、ガムラン町の冒険者たちなら、まず参加料の元は取れる。
100匹居た使い捨て。作業服の頭数が減ってきた。
冒険者たちも場外に押し出されて、半分くらいになった。
三位入賞ってことは――えーっと。
音もなく背後から飛びついてきた作業服を、錫杖で引っかけて引きたおす。
あ、そういやニゲルは――アソコでさびた剣を振るってるな。
もう錆びついたのか。おにぎり本戦前に、また研いでやるか。
えーっと、そしたら、姫さんもどっかにいるはず。
あれ? まてよ、あのふたりが居るってことは、三位中ふたりは確定じゃんか。
すこしは本気を出さないと、入賞できなくな――――ブゥォォォォォオォンッ♪
この風切り音――――まさか!?
「あんたたち! 遠慮はいらないよぉっ、どっからでもかかっておいでっ!」
その声に気をとられた、一瞬の逡巡。
音もなく死角から飛んでくる、紙の腕と紙の棍――
これをに躱すには、石床にぺたりと倒れるしかない。
見上げた鼻先を、木さじがスゴイ勢いで、すっ飛んでった!
やべぇ! 女将さんまで参加してたのか!
入賞のためには、誰かを(場外に)蹴落とさないといけなくて――
金剛力のない今のぼくじゃ、手加減も出来ないし――
マジでやらないと!
ーーー
備/戦国時代から江戸時代において、戦時に構成された最小の戦術単位。
単独作戦行動可能な人員の総勢は300~800名程度。
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