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3:ダンジョンクローラーになろう
260:ダンジョンクローラー(シガミー御一行様)、豪奢な剣(まがいもの)と小太刀(新色)と仕込み錫杖(極太)
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またもや姫さんの不意打ちをくらった魔物が、四つ足をついた。
「ギャッギュギャギュギュギュギュギャギュギュギュギュギュギュギュギュ――!!!」
その地声、うるせぇなぁ。
「またその唸り声っ――うるっさいで――――すわ――――――よーっ!」
剣を引き、通路の奥へ逃げていく伯爵ご令嬢。
まあ正解だ。
リカルルのぶった切りを全部避けたおれでさえ――金剛力と、〝動く物を見える化する窓〟がなかったら。
あの間がねぇ突進は、そうそうさばききれなかったからな。
おれも奥へさがる。
「(おい、五百乃大角。角をひとつ、姫さんが壊してくれたぞ!)」
ふぉん♪
『イオノ>えー、ほんとぉー? あと一本あと一本、きゃほぉーい♪』
「(ああ、だから地上へ向かった連中のことを頼めるか?)」
ふぉん♪
『イオノ>そーね。あっちには強化服二号が居るから、あたくしさまがレイダちゃんを使ってみんなを守ってあげてもいいわよ?』
「(なんか不安だが、ソレで頼むぜ)」
スタタタッ――――ドッゴォォォンッ!
曲がると言うことを知らない、頑なな殺気を尻目に――通路の曲がり角へ飛びこむ。
ゴッゴンゴゴンドズゴゴォン!
壁が粉々に粉砕され――――瓦礫をまき散らす!
痛ってぇ――――スタトタッ――トトォーン!
地図はすでに完成してる。
この先の突きあたりの三叉路を右に曲がりゃ、ミノタウが登ってきた階段が有るあたりへ通じる道に出る。
「――きゃぁきゃぁぁぁっ――――!――」
む? リカルルめ、まだこんな所に居やがる。
「連日の祭りの宴会で、体が鈍ったんじゃねぇのかぁー?」
「だ、誰が酒樽ですってぇー!? き、聞き捨てなりませぇんわよぉー!?」
いけねぇ、また声に出てたか。
迅雷式隠れ蓑をひろげ――――ぶわささささぁぁぁぁっ!
長く真っすぐな道を、飛んでかけぬける。
わめく令嬢をふたたび、すくい上げて抱えた。
「(迅雷、コッチに行き止まりの道があるだろ?)」
画面に表示される地図を見てたら、短ぇ横道を見つけた。
ふぉん♪
『>はい、なるほど。リカルルにココへ隠れていてもらえば、
安全に地上へ引き返させることが出来そうですね』
「(ああ、隠れ蓑を一枚出してくれ)」
ぶわっさぁぁぁぁ――――あっぶね!
風に煽られて、前が見えなくなった。
巻きついちまった隠れ布を通して、迷路の壁が表示される。
ぐるん――スッタァン。
三叉路の壁を蹴り、出口じゃない方に身を隠す。
「ふう、姫さんに相談だ。コイツで体をまとって、この先の行き止まりに隠れてくれ」
ガンガガン――隠れ蓑を力一杯、拳で叩いてみせる。
こいつは迅雷が無しじゃただの布だが、それでも強い攻撃には滅法強い。
色味も群青色にしてある。
「んなっ!? ガムラン代表のこの私が、シガミーみたいな小さい子をひとりのこしておめおめと、逃げおおせられるとお思いっ!?」
「思わねぇが、ここはおれひとりのほうが動きやすい。ミノタウの野郎を倒したらスグに呼ぶから、ソレまでみんなの所に戻っててくれねぇかい?」
がばっ――歯を食いしばられ、腕に抱きつかれた。
意地でも付いて来やがるつもりだぜ。
「じゃあ、この刀に免じて言うことを聞いちゃくれねぇか?」
ヴッ――ぱしん♪
指輪から群青色の小太刀を、取り出して押しつける。
オルコトリアに色とりどりの小太刀を自慢されたとき、そうとう悔しがってたから……ひょっとしたら。
「あら、素敵な色ね?」
片手を放して、ガシリとつかまれる小太刀。
もう「返せ」って言っても、あの手は離れそうもない。
「そうだろう? そしてもう一本おまけにくれてやるから、姫さんの剣を貸しちゃくれねぇか?」
ヴッ――ぱしん♪
同じ色じゃ芸がねぇから――コッチのはさっきまでの洞窟の、赤茶けた岩肌色にしてみた。
剣は武人の魂だ。
命を預ける刃を、そうそう借り受ける事は出来ね――――――
「――先ほどノ、大角ヲ破壊しタ一撃を再現するのに必要かモ知れないのデす――」
「そうなんですの? ならよくってよ」
おれの腕を放り投げ、手首に引っかけた剣のこしらえをグイッと持ちあげる。
「随分とすんなり貸してくれるんだな――助かるけど」
あわよくばさっき剣に付けちまった〝伝説の職人〟のくだりを、アイテム名偽装スキルで隠しちまおうって腹だったんだが。
うまくいったなおい。
「けれど、この剣自体はそれほど強いものでは無くってよ?」
「いや、大丈夫だ。恩にきる」
ドッゴォォォxン――――――――――――!
銃声が飛んでくる。
「じゃ、みんなの所には五百乃大角も付いてるから、何かあったらなんでもいいつけてくれ!」
§
じゃあこの豪奢な剣に、アイテム名偽装を掛ける――
スタタァァン、肩越しにうしろを振りかえる。
ドッゴォォォォォンッ!
空中を裂く銃声は、コッチを追ってきてる。
画面の地図の中。
ものすごい勢いで迫り来る――『殳』。
逆に『◎』から離れていく――『尽』、リカルルか?
――けど、まずは魔物を倒しちまおう。
危なくて仕方がねぇ。
ふぉん♪
『>了解しました』
すこし削れた錫杖を――すぽん♪
収納して出しなおす――ジギャリリィン♪
鉄輪の重い音が心強い……すっげー重くて疲れるけど。
借りた剣は、ひとまず締まっとく。
壊れない〝不壊〟は錫杖にも、付けといても良いかもな。
「(あれ? けどそもそも姫さんの剣は、指輪で直しただけじゃね?)」
もし、伝説の職人スキルが、よけいな気をきかすってんなら、今までだって小太刀も錫杖も〝不壊〟になってなきゃおかしーよな?
ふぉん♪
『仕込み錫杖(極太)
攻撃力102。修験者が使う鉄の棍。
内部に隠された刀身は高威力。
追加効果/ATK+274』
やっぱり〝不壊〟の文字はない――――スッタァァン!
ドゴッォォオォンッ――ゴガギャッ!?
また曲がり角で躱したら、ミノタウが壁に突き刺さった。
「(シガミー、いまです!)」
おうよ――――シュッカァァァァァンッ!
一本のこった太角へ、打ちおろしの変則的な居合いを繰りだした。
「ギャッギュギャギュギュギュギュギャギュギュギュギュギュギュギュギュ――!!!」
その地声、うるせぇなぁ。
「またその唸り声っ――うるっさいで――――すわ――――――よーっ!」
剣を引き、通路の奥へ逃げていく伯爵ご令嬢。
まあ正解だ。
リカルルのぶった切りを全部避けたおれでさえ――金剛力と、〝動く物を見える化する窓〟がなかったら。
あの間がねぇ突進は、そうそうさばききれなかったからな。
おれも奥へさがる。
「(おい、五百乃大角。角をひとつ、姫さんが壊してくれたぞ!)」
ふぉん♪
『イオノ>えー、ほんとぉー? あと一本あと一本、きゃほぉーい♪』
「(ああ、だから地上へ向かった連中のことを頼めるか?)」
ふぉん♪
『イオノ>そーね。あっちには強化服二号が居るから、あたくしさまがレイダちゃんを使ってみんなを守ってあげてもいいわよ?』
「(なんか不安だが、ソレで頼むぜ)」
スタタタッ――――ドッゴォォォンッ!
曲がると言うことを知らない、頑なな殺気を尻目に――通路の曲がり角へ飛びこむ。
ゴッゴンゴゴンドズゴゴォン!
壁が粉々に粉砕され――――瓦礫をまき散らす!
痛ってぇ――――スタトタッ――トトォーン!
地図はすでに完成してる。
この先の突きあたりの三叉路を右に曲がりゃ、ミノタウが登ってきた階段が有るあたりへ通じる道に出る。
「――きゃぁきゃぁぁぁっ――――!――」
む? リカルルめ、まだこんな所に居やがる。
「連日の祭りの宴会で、体が鈍ったんじゃねぇのかぁー?」
「だ、誰が酒樽ですってぇー!? き、聞き捨てなりませぇんわよぉー!?」
いけねぇ、また声に出てたか。
迅雷式隠れ蓑をひろげ――――ぶわささささぁぁぁぁっ!
長く真っすぐな道を、飛んでかけぬける。
わめく令嬢をふたたび、すくい上げて抱えた。
「(迅雷、コッチに行き止まりの道があるだろ?)」
画面に表示される地図を見てたら、短ぇ横道を見つけた。
ふぉん♪
『>はい、なるほど。リカルルにココへ隠れていてもらえば、
安全に地上へ引き返させることが出来そうですね』
「(ああ、隠れ蓑を一枚出してくれ)」
ぶわっさぁぁぁぁ――――あっぶね!
風に煽られて、前が見えなくなった。
巻きついちまった隠れ布を通して、迷路の壁が表示される。
ぐるん――スッタァン。
三叉路の壁を蹴り、出口じゃない方に身を隠す。
「ふう、姫さんに相談だ。コイツで体をまとって、この先の行き止まりに隠れてくれ」
ガンガガン――隠れ蓑を力一杯、拳で叩いてみせる。
こいつは迅雷が無しじゃただの布だが、それでも強い攻撃には滅法強い。
色味も群青色にしてある。
「んなっ!? ガムラン代表のこの私が、シガミーみたいな小さい子をひとりのこしておめおめと、逃げおおせられるとお思いっ!?」
「思わねぇが、ここはおれひとりのほうが動きやすい。ミノタウの野郎を倒したらスグに呼ぶから、ソレまでみんなの所に戻っててくれねぇかい?」
がばっ――歯を食いしばられ、腕に抱きつかれた。
意地でも付いて来やがるつもりだぜ。
「じゃあ、この刀に免じて言うことを聞いちゃくれねぇか?」
ヴッ――ぱしん♪
指輪から群青色の小太刀を、取り出して押しつける。
オルコトリアに色とりどりの小太刀を自慢されたとき、そうとう悔しがってたから……ひょっとしたら。
「あら、素敵な色ね?」
片手を放して、ガシリとつかまれる小太刀。
もう「返せ」って言っても、あの手は離れそうもない。
「そうだろう? そしてもう一本おまけにくれてやるから、姫さんの剣を貸しちゃくれねぇか?」
ヴッ――ぱしん♪
同じ色じゃ芸がねぇから――コッチのはさっきまでの洞窟の、赤茶けた岩肌色にしてみた。
剣は武人の魂だ。
命を預ける刃を、そうそう借り受ける事は出来ね――――――
「――先ほどノ、大角ヲ破壊しタ一撃を再現するのに必要かモ知れないのデす――」
「そうなんですの? ならよくってよ」
おれの腕を放り投げ、手首に引っかけた剣のこしらえをグイッと持ちあげる。
「随分とすんなり貸してくれるんだな――助かるけど」
あわよくばさっき剣に付けちまった〝伝説の職人〟のくだりを、アイテム名偽装スキルで隠しちまおうって腹だったんだが。
うまくいったなおい。
「けれど、この剣自体はそれほど強いものでは無くってよ?」
「いや、大丈夫だ。恩にきる」
ドッゴォォォxン――――――――――――!
銃声が飛んでくる。
「じゃ、みんなの所には五百乃大角も付いてるから、何かあったらなんでもいいつけてくれ!」
§
じゃあこの豪奢な剣に、アイテム名偽装を掛ける――
スタタァァン、肩越しにうしろを振りかえる。
ドッゴォォォォォンッ!
空中を裂く銃声は、コッチを追ってきてる。
画面の地図の中。
ものすごい勢いで迫り来る――『殳』。
逆に『◎』から離れていく――『尽』、リカルルか?
――けど、まずは魔物を倒しちまおう。
危なくて仕方がねぇ。
ふぉん♪
『>了解しました』
すこし削れた錫杖を――すぽん♪
収納して出しなおす――ジギャリリィン♪
鉄輪の重い音が心強い……すっげー重くて疲れるけど。
借りた剣は、ひとまず締まっとく。
壊れない〝不壊〟は錫杖にも、付けといても良いかもな。
「(あれ? けどそもそも姫さんの剣は、指輪で直しただけじゃね?)」
もし、伝説の職人スキルが、よけいな気をきかすってんなら、今までだって小太刀も錫杖も〝不壊〟になってなきゃおかしーよな?
ふぉん♪
『仕込み錫杖(極太)
攻撃力102。修験者が使う鉄の棍。
内部に隠された刀身は高威力。
追加効果/ATK+274』
やっぱり〝不壊〟の文字はない――――スッタァァン!
ドゴッォォオォンッ――ゴガギャッ!?
また曲がり角で躱したら、ミノタウが壁に突き刺さった。
「(シガミー、いまです!)」
おうよ――――シュッカァァァァァンッ!
一本のこった太角へ、打ちおろしの変則的な居合いを繰りだした。
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