滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

３：ダンジョンクローラーになろう

３１３：惑星ヒース神（シガミー）、王女の謝罪と戦利品

「ららぁぁん!?　はい、わ、わたくしもすでに投降とうこうした身です、正式せいしきにごめんなさいらぁん。まさか猫の魔物ケットーシィたちの中身なかみが、女おんなの子だったなんて知らなかったものだからららぁん!?」
　椅子いすの上うえで諸手もろてを挙げて降伏こうふくする、眼鏡めがねをかけた王女おうじょ。
　いきおいあまって、木製もくせいの手桎てかせがパリンと割れてしまう。
　拘束こうそくは形かたちだけのようだ。

「良いでしょう、正式せいしきな謝罪しゃざいを受け入れます」
「ほんとぉうらん？　リカルルさまっ!?」
「イオノファラーさまの大爆発だいばくはつに巻き込まれていた可能性かのうせいも考慮こうりょすれば、妥当だとうな線せんです。もっとも――すでにコントゥル伯爵はくしゃくと自治領王家じちりょうおうけとの話はなしは、付いていたようですが？」
　目線めせんと狐きつねの耳みみだけが、伯爵夫人はくしゃくふじんの方ほうへ向けられる。

「は、はぁい。ちゃぁんとラウラルと、ルスモンド君くん、双方そうほうのサインをもらってありますぅー！」
　伯爵夫人かのじょが懐ふところから、取りだした巻紙まきがみ。

　「確認かくにんして、いただけるかしら？」と念ねんを押す、狐耳きつねみみの伯爵令嬢はくしゃくれいじょう。
　その瞳ひとみには、月夜つきよの静けさが・・・・宿やどっている。
　射すくめられた王女おうじょの口くちが、開ひらかれた。

「は、はい、お父とうさ……王様おうさまのサインに相違そういありませんらぁん！」
　ひろげられた文書ぶんしょの末尾したには、たしかに２名めいの代表者名だいひょうしゃめいが書かれている。

「では、この件けんもココまでとします。つぎの議題ぎだいへ移うつりますが、イオノファラーさま、例れいのものを――」

「はいはぁい、迅雷ジンライ♪・」
　ヴォォオォン♪
　銀色ぎんいろの棒ぼうがクルクルと、テーブルの上うえを踊おどる。

　ヴヴッヴッヴッヴッヴッヴッヴッ――――コトコトコトゴトン、ポコン、ぱさ、ぱささっ♪
　テーブルに並ならべられていく、多種多様たしゅたようなガラクタ……箱はこに曲がった長剣ちょうけんに……大茸おおきのこに……巻いた紙かみのような物もの。

「これがぁ今回こんかいのぉ火山ダンジョンクエストのぉー、戦利品せんりひんでぇすぅ♪　このほかにもぉー、ミノタウロースの素材そざいとか山やまのように手に入はいったからぁ、一部いちぶは競売きょうばいに掛けまぁすぅー。ほらエクレアの結婚祝けっこんいわいも兼ねてるしさぁ♪・」

「なに!?　ミノタウロースだとぉ――――現存げんぞんしたのかっ!?」
　厳いかつい小柄こがらな職人しょくにんが、叫さけぶ。

「いたんですよねぇー、コレがさぁー♪・」
「ハい、シガミーはとても勇敢ゆうかんでシた。やはり一度いちどは死亡しぼうしましたが、５７回切かいきり結むすんだ結果けっか、とうとう撃破げきはせしめましタ・」

「「「「「「「えっ、死んだぁ!?　その話はなしは、聞いてないんだけどぉ!?」」」」」」」
「はイ、シガミーと私わたしの全力ぜんりょくを以もってしても、ミノタウロースは強敵きょうてきで――」

「っていうか、あたくしさまも初耳はつみみなんですけどぉ――!?・」
　カシャ――『（lllﾟДﾟ)』
　顔かおを青あおくする、浮かぶ球たま。
「くぅぅ、駄目だめだぜ！　シガミーの嬢じょうちゃんが、命いのちがけで手に入れた物ものを――そんな大事だいじなもんを、俺おれたちが勝手かってに扱あつかって良いわけがねぇ!!」
　『職人組合代表／鍛冶工房長ノヴァド』
　そんな札ふだを倒たおし、興奮こうふんする職人代表しょくにんだいひょう。

「それじゃぁ、全部ぜんぶギルドの金庫きんこに保管ほかんしておくんですかぁ？　シガミーちゃんなら、「それで良い武器ぶきをたくさん作つくれ」って言いそうですよぉう？」
　『シガミー担当リオレイニア代理／ネネルド村のタター』
　そんな札ふだを小ちいさく持ちあげ意見いけんする、給仕服姿きゅうじふくすがた。

「そうねぇー、ひとまず全素材ぜんそざいの半分はんぶんをシガミーにくれないかしら？　のこりは別途協議べっときょうぎして、そうね――あとで町まちの全工房ぜんこうぼうへ優先的ゆうせんてきに安価販売あんかはんばいするのでわぁ、どうかしらぁねぇん？」
　半透明はんとうめいの女性じょせいが、意見いけんをかさねる。

「シガミーの取り分ぶんが半分はんぶんってのには、賛成さんせいだ。けど安やすくってのは無しだぜ。適正てきせいな市場価格しじょうかかくでぜひ、買わせてもらう！」
　くぅ――目尻めじりに涙なみだを浮かべた、職人装束しょくにんしょうぞくの男性だんせいがテーブルをゴドンと叩たたいた。

「コントゥル夫人も・・・・・・・・、それでよろしくて？」
　『ガムラン町代表兼冒険者ギルド受付嬢代表／リカルル・リ・コントゥル』
　出し忘わすれていた立て札ふだをコトリと置く、受付嬢うけつけじょう代表兼だいひょうけん議長ぎちょう。

　ゴドガチャン♪
　ひとかかえは有る、革袋かわぶくろ。
　音おとから察さっするに、中なかは金貨きんかだ。

「そちらは？」
「ギルドにぃ渡わたしてぇあるぅ、成功報酬せいこうほうしゅうとぉわぁー別べつにぃー、金貨きんかで２５０枚パケタ！　クエスト参加者さんかしゃへの追加報酬ついかほうしゅうでぇーすわぁぁん！」

「ヒューゥ♪　相変あいかわらず豪気ごうきなもんだぜ！」
　職人代表しょくにんだいひょうノヴァドが口笛くちぶえを吹いた。

「ただし、クエストの目的みくてきだったコントゥル家家宝けかほうに匹敵ひってきするぅ〝一式装備いっしきそうび〟を期限きげんは設もうけませんがぁ、所望しょもういたしまぁすわぁ！」
　狐耳きつねみみの伯爵夫人はくしゃくふじんが宣言せんげんし――

「まあ、装備そうびを作つくるのはカラテェー君くんだし――よろしいのではないかしら、イオノファラーさま？」
　狐耳きつねみみの伯爵令嬢はくしゃくれいじょうである議長ぎちょうが――話はなしを引きつぐ。

「そ、そそそそそそ、そうねぇーん。よ、よよよ、よろしいのではなくて、ねぇ迅雷ジンライ君くん？」
　目や半透明はんとうめいの体からだを泳およがせ、眷属けんぞくである空飛そらとぶ棒ぼうへすがりつく。

「はイ、イオノファラー、問題もんだいありません。ですが天狗せんぐと烏天狗からすてんぐの両名りょうめいは――現在げんざい、火山かざんダンジョンおよび、魔王城まおうじょう周辺しゅうへんの念入ねんいりな探査ちょうさに出かけておりますので、もどり次第しだいと言うことになってしまいますが？」

「そう、そーだったわねぇー！　烏天狗カラテェー君くんがもどり次第しだいってことなのだけれどもぉー？」
　もみ手をして、伯爵夫人の顔色をうかがう美の女神イオノファラー。

「はぁい、構かまいませんわぁ。でわぁ、そのように手配てはいおーお願ねがいいたしますねぇー♪」
　満足まんぞくしたらしい夫人ふじんが、指先で・・・金貨袋きんかぶくろを弾はじくと――――ゴッシャ！
　軽々かるがると、まるで紙かみくずのようにふっとぶ袋ふくろ。

　金貨それは、議長兼ぎちょうけん受付嬢うけつけじょう代表だいひょうのまえに――ゴガッチャリン♪
「ではたしかに、お預あずかりしますわ――すぽん♪」
　収納魔法具しゅうのうまほうぐらしい、小ちいさな手提てさげ金庫きんこにソレをしまう。

「ではさいごに、手元てもとに有る物ものだけでも鑑定かんていして、本日ほんじつはお開ひらきに――」
　金庫きんこを腰こしのベルトに仕舞しまう、ガムラン代表だいひょうにして受付嬢うけつけじょう代表だいひょう。
　伯爵令嬢はくしゃくれいじょうリカルルの、話はなしの腰こしを折ったのは――

「やっと出番でばんニャ！　殺ってやるミャー♪」
　猫ねこの耳みみをあたまから生やした、若わかい女性じょせい。
　『喫茶店ノーナノルン店員／ニャミカ・ミャニラウ
　　※私はココで見聞きしたことを、口外しないことを誓います。』
　そんな立て札ふだを吹っ飛ばし、満まんを持して取り出されたのは――

　まるいのぞき窓ビードロが埋めこまれた調度品ちょうどひんだった。