滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

３：ダンジョンクローラーになろう

３１２：惑星ヒース神（シガミー）、猪蟹屋２号店会議室

「やぁだぁわたくしもぉー、シガミーちゃんとぉ一緒いっしょにぃー寝ぇーるぅーのぉー！」
　どうやらご婦人ふじんが、駄々だだをこねているらしい。

「わたくしは、二人ふたり……いえ三人さんにんが四人よにんになっても変わらないので、構かまいませんわ？　うふふ♪・」
　派手はでなネコミミの帽子ぼうしを被かぶった小ちいさい少女しょうじょが、身動きも出来ず・・・・・・・困惑こんわくの表情ひょうじょう。

　右手みぎてには、やや発育はついくの良い幼おさない少女しょうじょ。
　胸元むなもとには、根菜こんさいのような御神体めがみさま。
　左手ひだりてには、白しろい鳥とりの仮面かめんで目を覆おおい隠かくす若わかい女性じょせい。
　ベッドの人口密度じんこうみつどは、すでに高たかい。

「いいえ、シガミー……カヤノー姫ひめさまは、ゆっくりと療養りょうようさなってくださいませ。それでは、失礼しつれいいたします」
　ギルドの制服せいふくに身をつつんだ、狐耳きつねみみの若わかい女性じょせいが――

「いやぁーだぁー、わたくしもぉー！」
　おなじく狐耳きつねみみの若わかい……いやまるで少女しょうじょのようなご婦人ふじんを――つかまえる。

「お母かあさま……いえ名代みょうだい、あまりお戯たわむれをなさるのでしたら――今晩こんばんのメニューは狐鍋きつねなべにでもぉ、いたしましょぉかぁ？」
「いやぁぁだぁぁぁ、わたくしもぉー！　シガミィィィ――――ちゃぁ――――ばたん！」
　ドアが閉じられると同時どうじ。

　　　■

　ヴォォンッ――――ゴゴン。
　ドアがかき消え、壁かべで塗り込められた。

　猪蟹屋ししがにや２号店会議室ごうてんかいぎしつが、世界せかいから隔絶かくぜつされる。
　この結界けっかいを破やぶれるのは、力自慢ちからの工房長こうぼうちょうやニゲル青年せいねんくらいのものである。
　いや、いま遅おくれて入はいってきたリカルル姫ひめもコントゥル婦人ふじんも、やろうと思えば・・・・・・・出来できるだろうが。

「はいそれでわぁ、しきりなおししますわぁーん。いーいぃ？　この先さきの話はなしわぁ……ひそひそ……シガミー……カヤノ姫ひめちゃんにわぁ、内緒ないしょだからぁーねぇー？・」
　テーブルに手をつき身をかがめ、念ねんを押す女性じょせい。
　その像すがたが、ヴュザジジッとブレる・・・。
　服装ふくそうは黒くろの上下服じょうげふくに、短みじかめのスカート。
　ニゲル青年せいねんが着ているものの、女性版おんなものだ。

　出入でいりり口ぐちのすべてがふさがれたことを確認かくにんし、顔かおをあげる半透明はんとうめいの女性じょせい。
　女性じょせいは手をかざして、天井てんじょうの灯あかりの魔法具まほうぐから――フォォォォォッ！
　風かぜをながした。

「わ、涼すずしぃコォン？」
「ほんとだ、涼すずしいミャ♪」
　ゲスト扱あつかいらしい別卓べつたくから、ちいさな歓声かんせいがあがる。

　パチリッ――指ゆびを鳴らす、半透明はんとうめいの女性じょせい。
　その頭あたまのなかに浮かぶ球・・・・・・・。
　それは〝プロジェクションＢＯＴボット〟と呼ばれる、女神の乗り物・・・・・・のようなものだ。

　ふぉふぉん♪
『聖地壊滅ならびに、カヤノヒメ降臨についての緊急対策会議』
　壁かべに浮き出た文字もじに、おどろく者ものは居ない。
　各種かくしゅの投影技術とうえいぎじゅつは、すでにカブキーフェスタで知れ渡わたり――
　ギルドや温泉街おんせんがいで、継続けいぞくして使つかわれている。

「まずわぁ、このたびのぉことわぁ――あたくしさまとぉ、シガミーとぉ、おにぎり一号いちごーとぉ、その他大勢たおおぜーのぉシシガニャンたちがぁ、大事故だいじこを起こしてしまってぇ――――――――本当ほんとうに、ごめんなさい！・」
　深ふかくあたまを下げる映像じょせい。
　いきおい余あまって、テーブルにゴチンとぶち当たる――浮かぶ球たまにして事故原因じこげんいん。

　ガタガガッガタァン――!?
　飛びのく参加者さんかしゃたち。
　別卓べつたくのゲストたちは、首くびをかしげた。

「あー、これっ！　この体からだわねっ、昨夜改良ゆうべかいりょうして、もう爆発ばくはつしなくなったから安心あんしんしてっ――迅雷ジンライぃ！・」
「はイ、イオノファラー。コチラガ改良型かいりょうがタプロジェクションＢＯＴぼっト、試作一号機しさくさんごうきから試作三号機しさくさんごうきでス・」
　ヴヴヴッ――――コトン、ガシャン、ドガッチャン!!!

　テーブルに現あらわれたのは、何なにかの残骸ざんがいふたつと、つぶれた鉄てつの球たま。
「一号いちごうぉ二号にごうぉは、ご覧らんのとおり・――」
　残骸ざんがいの上うえ、何なにも無いところに現あらわれた画面がめん。
　くるくると回まわるソレを見ようと、別卓組ゲストたちが押し寄せる。

　ふぉふぉん♪
　残骸一号ざんがいいちごう――ボッガガァァァァンッ！
　ふぉふぉん♪
　残骸二号ざんがいにごう――ボガァン！
　並ならんだ順じゅんに、壊こわれたときの爆発ばくはつが弱よわくなっている。

　ふぉふぉん♪
　鉄球三号てっきゅうさんごう――ぽふん、ぐわっしゃん！
「試作三号しさくサんごうにシて、内包ないほウエネルギーヲ分散ぶんサん、衝撃しょうゲきを相殺そうサいすル事コとに成功致せいこウいたしまシた。破壊ハかいさレても、もう爆発ばくハつすることはありません・」

「ほんとぉにぃー、すみませんでしたぁ！・」
　あたまを下げ、またテーブルにぶつかりそうになる浮かぶ球・・・・。
　浮かぶ棒・・・・が――カチャリ！
　伸ばした腕うでで、受け止めた。

「設計製作せっけいセいさく実地運用じっちうんヨうすべテの点てンデ、安全対策あんぜんタいさくが不十分ふじゅうブんでした。私わタしかラも、謝罪しゃザいいたしマす・」

　沈黙ちんもくをやぶるのは――ガムラン代表だいひょうを名のる狐耳きつねみみの若わかい女性じょせい。

「この大爆発だいばくはつを直じかに体験たいけんしたのは、ラプトル王女殿下おうじょでんかだけですので、お聞きいたします。王女殿下おうじょでんか、どう思おもわれますか？」
　狐耳きつねみみの向く先さき。大だいテーブルの末席まっせきには――
　手首てくびに木枷きかせをはめられ、涙目なみだめの高貴こうきそうな女性じょせい。

「こ、これなら大丈夫だいじょうぶだと思おもいますらん。もともと爆発ばくはつの衝撃しょうげきは凄すさまじかったですけれど、熱ねつと言うよりは風圧ふうあつによる被害ひがいがほとんどでしたのでらぁん」
　一斉いっせいに見つめられた視線しせんに、ビクビクしながら返答へんとうする王女おうじょと呼ばれた人物じんぶつ。

「ふむふむ、良いでしょう、謝罪しゃざいを正式せいしきに受け入れます。イオノファラーさま、そして迅雷ジンライ。あたまをお上げください」
　浮かぶ球たまと棒ぼうが、あたまを上げる。

「今後こんご、遺恨いこんが残のこることはありません。この場に居る全員ぜんいんも、そう肝きもに肝に銘めいじて下ください。それを破やぶった者ものには――ぼぉぉぉおぅわっ！」
　ほそく立ちのぼる、青白あおじろい炎ほのお。
　それは指先ゆびさきで操あやつられ、室内しつないを一周したひとまわり。
　指ゆびの付け根には、朱金色しゅきんいろの指輪ゆびわが輝かがやいている。

「――相応そうおうの罰ばつを受けていただくので、そのおつもりで。良いですわね・・・・・・？」
「はーい」「わかったよ」
「わかりましたらん」
「ははーい」
　参加者さんかしゃたちの声こえにつづき――

「わかったぜ」
「右みぎに同おなじコォン」
「左ひだりに同おなじニャ」
　ゲストの声こえがつづく。

　すちゃっ――！
　巨大きょだいなな魔法杖まほうつえを構かまえ――まるで壁かべに穴あなを開けようとでもしているかのような――

「むぎゃ!?」
　うしろ襟くびを、ひっつかまれ――どすん！
「コォォォン！」
　椅子いすへ連れ戻もどされる、この場における最高さいこう権力者けんりょくしゃ。

「お母かあさ……名代みょうだいもぉ――およろしいですわねぇぇ？」
「わ、わかりましたぁ、コントゥルの名においてぇ――イオノファラーさまの謝罪しゃざいを正式せいしきに受け入れまぁぁす。けどまだ――心配しんぱいぃっ！　イオノファラーちゃぁん、アレ、心しんの臓ぞうを見るヤツ、アレだしてっ！」

「〝心ノ臓ヲ見るヤツ〟とハ、コレのことでしょウか？・」
　テーブルの上うえ、支ささえもなしに屹立きつりつした銀色ぎんいろの棒ぼうが尋ねた。

　すぽぽぽんと、仕舞しまわれた残骸ざんがいにかわり――

　ふぉふぉふぉぉん♪
『シガミー（カヤノヒメ）――
　体温　３６・６℃
　心拍数　８３
　呼吸速度　２６
　血圧　１０１・５／５９・３
　生体電位　～～√乁√乁～～√乁～～』
　テーブル上じょうに現あらわれたのは、ひとの形かたちの絵だった。
　その胸むねに脈打みゃくうつ❤。

　ピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッピ――――♪
　かすかに聞こえてくる音おとは、隣となりの部屋へやで眠ねむり始はじめた少女しょうじょの、健康状態けんこうじょうたいを表あらわしているらしい。

　伯爵夫人はくしゃくふじんが椅子いすに座すわりなおし、会議室かいぎしつが安堵あんどで満たされていく。

「まず言っておくこととしてわぁー、言動げんどうがどれほど破天荒はてんこうだとしてもぉー、彼女かのじょわぁーまっぎっれっもっなく、シガミーなのぉです！・」
　演説えんぜつの美の女神イオノファラー。
　ぱちぱちぱちぱちと伯爵夫人ルリーロから、拍手はくしゅが。

　ふぉん♪
『＞異常値は検出されませんでしたので、物理的鉏鋙もありません。
　　シガミーの連続性は正当に保たれています』
「（あたりまえですっ！・）」
　ズザザザッ――!?
　約三名やくさんめいのコントゥル家ゆかりの者ものが、色いろめき立つ。

「こほん、失礼しつれい。一時的いちじてきなぁ記憶きおくのぉー混濁こんだくがぁ生しょうじているだけとぉー、思おもわれるのでぇぇす！・」
　力強ちからづよいうごきに、映像ぞうがゆらめく。

「それくらいは当然とうぜんでしょう、あんな酷い状態・・・・から復活ふっかつした例れいなんて聞いたことが有りませんわっ――――だいたいガムラン町ちょうの冒険者ぼうけんしゃだって、あんな――――!?」
　彼女リカルルはそのとき、何か・・に気づいた様子ようすだったが――

「どうしたコォン？」
　狐耳きつねみみの少年しょうねんのまえに置かれた札ふだには――
『アーティファクト買付人／ルコラコル・ラ・コントゥル』と書かれている。

「いえ、いいえ、まさかそんな――――なんでもありませんわ。ココからは、今回こんかいのダンジョン攻略こうりゃくに関かんする報告ほうこくになります」
　手元てもとの黒板くろいたに、何なにかを書き込んでいく。
　その文字もじは、やがて壁かべに大おおきく映うつし出された。

　ふぉん♪
『Ｂ級探索クエスト
　火山フィールドダンジョン〝火龍の寝床〟にて、
　防具に必要な素材を集める
　クエスト達成――ただし被害が甚大なため、各種精算は一時保留』
『かりゅうのねどこ――本格的な設営開始は来月から』
『ゲール少年の身柄――エクレアを護衛に付け、魔物境界線の砦にて保護』

「さて、次つぎの議題ぎだいでーすーがぁ――もうひとり、正式せいしきに謝罪しゃざいが必要ひつような者ものがこの中なかに居るわねぇ――――？」
　議長リカルルの狐きつねの耳みみが、一点いってんを向いた。