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3:ダンジョンクローラーになろう
318:惑星ヒース神(シガミー)、自我と非我
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「いってみるかなぁ」
どうせ一度は観念した身だしよぅ。
かんねんってなぁ何だったかなぁ。
ふ――わ――ぁ――ぁ――霧のように漂う自分をじっと見る。
そうするとどういうわけか明るい方へ明るい方へと進むことができた。
あかるいほうへ進むことが良いことなのか悪いことなのかはわからない。
そもそも良いことも悪いこともわからない。
ふ――わぁ――ぁ――あぁ――ぁ――ぁ――ぁ――ぽ――きゅ――む――ん――♪
「なんかにぶち当たったなぁ」
なんかってなぁ何だかわからねぇしぶち当たったってのも何だかわからねぇ。
けどはじめて霧の中に何かが見えた。
「なんでぇいこいつぁぁまるでぇ化け猫じゃねーか」
ばけねこだばけねこ目も鼻も口もねぇのにじたばたともがいてやがる。
その手の先が欠けていて中まで霧がつづいている。
霧なぁ霧ってのわぁこのもやもやしたのが漂ってることをいうんじゃなかったか。
「どうするかなぁこのままあかるい方へすすんでもかまわねぇんだけど」
パァアァァァッ――――カカカカカッ!
「うをぁぁまぶしいまぶしいってのもなんだったかおぼえてはいねえしおぼえてってのもなんだかわからねぇ」
カカカカッ――――!!!
あかるいひかりがひかりってぇのはなんだったかぁ。
「とにかくこのあかるいのがつよくなるとくるしいくるしいのはいやだ」
くるしいてぇのがなんだかわからねぇがこの化け猫のなかににげこむことにする。
「ここわぁいいなぁ霧と自分がわけられててなぁ」
――――霧ってのは外のことで。
――――自分ってのは化け猫の中のことで。
んゐ?
何かが落ちてくるような誰かが何か言ってるような。
なにかが化け猫の耳をくすぐりつづけてる。
あぁぁあぁ化け猫ってのぁなんだったかなぁ。
ゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑ∋ゑゑ――――どふぉどぞぉどくぅどっのぉどろっどどぉどあぁどんごおぉごごっごごごごごごおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉどてぇごどなぁごどをぉごどせっふぉどつぅごどぞぉごどくぉごどぉしどぉごごどてぇごどっくごぉごおぉどだぉぉどさぁぁいぃどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおぉぉおぉんっ――――やかましぃなぁぁ。
「おれにゃぁ何も付いちゃぁいねぇやぁ」
口をついて出た、その一言。
おれが、おれになった。
ふわぁぁぁっ――――!?
「いけねぇや、霧が抜けていっちまう――ぽきゅり♪」
穴が空いた腕を、もう片方の手で慌ててつかんだ。
§
「おれにゃぁ何も付いちゃぁいねぇやぁ」
「「「「また、シガミーの声!?」」」」
「いけねぇや、霧が抜けていっちまう――ぽきゅり♪」
さっきまで花畑を映していた画面から、声や物音が聞こえてくる。
ヴュゥゥンッ――ザザザッ――!
音が聞こえるとき、画面は大きく波打った。
「声紋なラびに、会話内容ヲ解析しマした――84%ノ確率デ、こノ音声ノ発生源ハ――」
「聞かぁなくてぇもぉーわっかるわよっ! シガミーわよっ♪」
「はイ、以前ノ粗野でがさツなシガミーと、大部分にオいて特徴が一致しマす」
画面に突き刺さったアーティファクト迅雷が、細い腕を伸ばし――
ふぉん♪
『シガミー(がさつ)現在地点』
という表題を付けた。
地形のように見えなくもない、画面のモヤモヤは少しずつ動いていた。
「衛星写真とぉ照らしあわせてぇ、シガミーが居るぅ座標をぉー割り出して――!」
「照会しマしたが、惑星ヒースノ景観ニ該当箇所はアりません」
「じゃぁ、ドコに居るのよっ?」
「わかりマせん。解析中デす――」
「イオノファラーさまたちの言うことは、さっぱりわからないのですけれど――」
その高貴な指先が、画面の隅を指ししめした。
「ココォォン、なんでっしゃろ? 三つの数字が上下に二つ、書かれてますなぁ?」
また口調が変わる夫人。目頭口元に力が入っている。
考えごとをすると京言葉が出るように、なってしまったようだ。
「この三軸、二対ノ数値ハ映像の変化ヨり算出しタ、シガミー(がさつ)ノ現在地点ノ目安とナる座標デす」
「「「座標?」」」
「最初ニ映シ出さレた花畑ヲ、起点とシた場合――シガミー(がさつ)は少シずつ、こちラへ近づいてきているヨうです」
「近づいてる!? ソレって、どのくらいでガムラン町に着くのよ?」
「類推になりマすが、約半年かラ一年と言っタ所カと」
「やったぁ、シガミーがかえって来――」
跳び上がるイオノファラー。
「半年から一年……」
「マズいですわね……」
顔を見合わせる狐耳母娘。
「えっ、あれあれっ? なんで深刻な顔してるのぉん? 帰ってこれるかも知れないんでしょ? ね、迅雷?」
映し身を映し出すことが、おろそかになったのか――
浮かぶ球が、むき出しになる。
「はイ、でスが、コントゥル親子ノ懸念はもっとモです」
「懸念って、なぁにぃ?」
ヴォヴォォン?
母娘に向きなおる、球。
「そうですわねー、では明日もう一度。カヤノヒメさまに猪蟹屋の店員をして、頂きましょうか?」
「そレが一番――」
「――わかりやすいどすなぁ」
顔を見合わせる三人。
「どういうことなのぉん?」
イオノファラーがひとり、困惑の表情。
かしゃかしゃかしゃり♪
棒がテーブルに置いたのは、三枚のちいさな黒板。
ソレには、『シガミー(がさつ)現在地点』という文字と――
三軸、二対の座標が、映し出されていた。
どうせ一度は観念した身だしよぅ。
かんねんってなぁ何だったかなぁ。
ふ――わ――ぁ――ぁ――霧のように漂う自分をじっと見る。
そうするとどういうわけか明るい方へ明るい方へと進むことができた。
あかるいほうへ進むことが良いことなのか悪いことなのかはわからない。
そもそも良いことも悪いこともわからない。
ふ――わぁ――ぁ――あぁ――ぁ――ぁ――ぁ――ぽ――きゅ――む――ん――♪
「なんかにぶち当たったなぁ」
なんかってなぁ何だかわからねぇしぶち当たったってのも何だかわからねぇ。
けどはじめて霧の中に何かが見えた。
「なんでぇいこいつぁぁまるでぇ化け猫じゃねーか」
ばけねこだばけねこ目も鼻も口もねぇのにじたばたともがいてやがる。
その手の先が欠けていて中まで霧がつづいている。
霧なぁ霧ってのわぁこのもやもやしたのが漂ってることをいうんじゃなかったか。
「どうするかなぁこのままあかるい方へすすんでもかまわねぇんだけど」
パァアァァァッ――――カカカカカッ!
「うをぁぁまぶしいまぶしいってのもなんだったかおぼえてはいねえしおぼえてってのもなんだかわからねぇ」
カカカカッ――――!!!
あかるいひかりがひかりってぇのはなんだったかぁ。
「とにかくこのあかるいのがつよくなるとくるしいくるしいのはいやだ」
くるしいてぇのがなんだかわからねぇがこの化け猫のなかににげこむことにする。
「ここわぁいいなぁ霧と自分がわけられててなぁ」
――――霧ってのは外のことで。
――――自分ってのは化け猫の中のことで。
んゐ?
何かが落ちてくるような誰かが何か言ってるような。
なにかが化け猫の耳をくすぐりつづけてる。
あぁぁあぁ化け猫ってのぁなんだったかなぁ。
ゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑ∋ゑゑ――――どふぉどぞぉどくぅどっのぉどろっどどぉどあぁどんごおぉごごっごごごごごごおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉどてぇごどなぁごどをぉごどせっふぉどつぅごどぞぉごどくぉごどぉしどぉごごどてぇごどっくごぉごおぉどだぉぉどさぁぁいぃどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおぉぉおぉんっ――――やかましぃなぁぁ。
「おれにゃぁ何も付いちゃぁいねぇやぁ」
口をついて出た、その一言。
おれが、おれになった。
ふわぁぁぁっ――――!?
「いけねぇや、霧が抜けていっちまう――ぽきゅり♪」
穴が空いた腕を、もう片方の手で慌ててつかんだ。
§
「おれにゃぁ何も付いちゃぁいねぇやぁ」
「「「「また、シガミーの声!?」」」」
「いけねぇや、霧が抜けていっちまう――ぽきゅり♪」
さっきまで花畑を映していた画面から、声や物音が聞こえてくる。
ヴュゥゥンッ――ザザザッ――!
音が聞こえるとき、画面は大きく波打った。
「声紋なラびに、会話内容ヲ解析しマした――84%ノ確率デ、こノ音声ノ発生源ハ――」
「聞かぁなくてぇもぉーわっかるわよっ! シガミーわよっ♪」
「はイ、以前ノ粗野でがさツなシガミーと、大部分にオいて特徴が一致しマす」
画面に突き刺さったアーティファクト迅雷が、細い腕を伸ばし――
ふぉん♪
『シガミー(がさつ)現在地点』
という表題を付けた。
地形のように見えなくもない、画面のモヤモヤは少しずつ動いていた。
「衛星写真とぉ照らしあわせてぇ、シガミーが居るぅ座標をぉー割り出して――!」
「照会しマしたが、惑星ヒースノ景観ニ該当箇所はアりません」
「じゃぁ、ドコに居るのよっ?」
「わかりマせん。解析中デす――」
「イオノファラーさまたちの言うことは、さっぱりわからないのですけれど――」
その高貴な指先が、画面の隅を指ししめした。
「ココォォン、なんでっしゃろ? 三つの数字が上下に二つ、書かれてますなぁ?」
また口調が変わる夫人。目頭口元に力が入っている。
考えごとをすると京言葉が出るように、なってしまったようだ。
「この三軸、二対ノ数値ハ映像の変化ヨり算出しタ、シガミー(がさつ)ノ現在地点ノ目安とナる座標デす」
「「「座標?」」」
「最初ニ映シ出さレた花畑ヲ、起点とシた場合――シガミー(がさつ)は少シずつ、こちラへ近づいてきているヨうです」
「近づいてる!? ソレって、どのくらいでガムラン町に着くのよ?」
「類推になりマすが、約半年かラ一年と言っタ所カと」
「やったぁ、シガミーがかえって来――」
跳び上がるイオノファラー。
「半年から一年……」
「マズいですわね……」
顔を見合わせる狐耳母娘。
「えっ、あれあれっ? なんで深刻な顔してるのぉん? 帰ってこれるかも知れないんでしょ? ね、迅雷?」
映し身を映し出すことが、おろそかになったのか――
浮かぶ球が、むき出しになる。
「はイ、でスが、コントゥル親子ノ懸念はもっとモです」
「懸念って、なぁにぃ?」
ヴォヴォォン?
母娘に向きなおる、球。
「そうですわねー、では明日もう一度。カヤノヒメさまに猪蟹屋の店員をして、頂きましょうか?」
「そレが一番――」
「――わかりやすいどすなぁ」
顔を見合わせる三人。
「どういうことなのぉん?」
イオノファラーがひとり、困惑の表情。
かしゃかしゃかしゃり♪
棒がテーブルに置いたのは、三枚のちいさな黒板。
ソレには、『シガミー(がさつ)現在地点』という文字と――
三軸、二対の座標が、映し出されていた。
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