滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

３：ダンジョンクローラーになろう

３３１：龍脈の回廊、シガミー受容体あらわる

「ふ、増えたぜ？」
「ふ、増えましたわね？」
「イオノファラー、デバイスＩＤ＃ナンバーノ重複ちょウふくが見らレます。たダちに解消かイしょうしてくダさい・」
　光ひかるのを止めた棒ぼうが、慄おののくように震ふるえる。

　レイダの両手りょうて、うやうやしく掲かかげられた御神体ごしんたい。
　ソレが、大おおきく息いきを吸い――
「「カヤノヒメちゃん、これどーいうことぉぉ!?・・」」
　――絶叫ぜっきょうした。

「イオノファラーさまっ、うるさい！」
　少女《しょうじょ》が御神体めがみを叱しかりつける。
「騒々そうぞうしさも、倍ばいだぜ」

「ひとまず、レイダさんのスキル収得しゅうとくは成功せいこういたしましたわ♪・」
　たおやかな仕草しぐさ。
「「うん、それはよかったわねぇん♪・・」」
　叱しかられボリュームをしぼる、丸茸まるきのこのような姿フォルム。

「シガミーさんの痕跡こんせきも、順調じゅんちょうに解析中かいせきですわ♪・」
　舞う金糸きんしの髪かみ。

「にゃにゃみゃごにゃご、みゃにゃごみゃにゃ♪」
　ふぉん♪
『おにぎり＞いまどこなのもの、
　　　　　　お返事してなのもの』
　猫の魔物おにぎりは両手りょうてをクルクルと回まわし、何なにかを巻き取るような動うごきを続つづけている。

「「うん、それはよかったわねぇん♪・・」」
　一糸乱いっしみだれぬ双子茸ユニゾン。

「そうですわね……明日あしたまでには追跡可能ついせきかのうな状態じょうたいになると思おもいますわ♪・」
　おにぎりの舞踏ダンスに意味いみがあるのか、その様子ようすを観察かんさつし、そう告げる星の神カヤノヒメ。

「「ふーん、それは良かったけどさっ……コ・・レ・・わぁ・・、どーいうことなのっ!?・・」」
　肩かたを組み、その場でピョンピョンと跳ねる――御神体たちイオノファラーズ。

「うふふふ、ご説明せつめいさせて頂いただきますので、座すわりませんかみなさま。うふふ？」
　頬ほほへ添えられる手。その立ち居振舞いふるまいには、非の打ち所どころがなかった。

　　　§

「ひとまず、レイダのスキルを確認かくにんしてみましょうか」
　リオレイニアに促うながされ、首くびにさげた冒険者ぼうけんしゃカードを頭あたまから抜き取るレイダ。

『レイダ・クェーサー　ＬＶ：１３
　魔法使い★★★　／全属性使用可能／レンジ補正
　　　　追加スキル／＜報酬二倍＞／星神の加護
　――所属：シガミー御一行様』

「わっ、スキルが増えてる！」
　はしゃぐ子供こども。
「本当ほんとうですね、うふふ♪」
「おう、良かったじゃねぇか♪」

「本来ほンらい、希少きシょうナＳＰスキルポイントヲ使用しよウしなケれば得らレない、追加つイかスキル……しかモ〝報酬二倍ほうしゅうニばい〟は、レイダ限定げンていノユニーク・スキルデす・」
　解き放はなたれた女神の眷属アーティファクト――迅雷ジンライが、テーブル上に舞う。

「あれっ!?　なんかもう一個いっこ、あるよっ？」
　はしゃぐ子供こども。

「〝星神ほしがみの加護かご〟ってぇこたぁ――カヤノヒメさまからの授さずかり物ものか？」
　ヒゲをなで思案しあんする、小柄こがらな男性だんせい。

「はい、ご協力頂きょうりょくいただいたお礼れいもかねて、授さずけましたが――リオレイニアさんが収得済しゅうとくずみの〝女神めがみの加護かご〟よりも万能ばんのうですので、この先さきの人生じんせいでつまずくことはありませんよ、うふふ♪・」
　ゴゴゥワァアァッ――！
　ふたたび湧きあがる後光ごこう。
　光ひかりの霧きりが渦うずを巻いて――フシュルワァと霧散むさんした。

「あらまっ、良かったですわねレイダ♪」
　子供レイダに飛びつき、自分じぶんのことのように喜よろこぶ給仕姿リオレイニア。
「うん、嬉うれしい！　何なにに使つかうのかは、わからないけどっ♪」

「私わたくしの授さずかった〝女神めがみの加護かご〟の恩恵おんけいは、とても便利べんりというか――侍女長じじょちょうの仕事しごとから討伐とうばつクエストの滞とどこおりのない行軍こうぐんまで、実じつに多岐たきにわたっていてソレはソレはもう――♪」
「リオレイニアさんのお仕事しごとが、私わたしにも出来できるのっ!?」
　「きっと出来できますよ♪」「やったー♪」と喜よろこぶ女性じょせいと子供こども。

「「あたくしさまの加護かごより万能ばんのうってソレ……まるで神さま・・・・・・じゃないのっ!?・・」」
　テーブルの上うえに放はなたれてなお、肩を組みスクラム一体化ワークをつづける御神体複数形イオノファラーズ。

「はい、わたくしは惑星わくせいヒースの星神ほしがみですわ♪」
　ゴワァ――フシュ♪
　一瞬いっしゅんの後光きらめきに、金糸きんしがとぐろを巻いた。

「「ぐぬぬぅ、同業他社どうぎょうたしゃさんに追い立てられている件けんについて！・・」」
　ひざをつき、うなだれる女神イオノファラーたち。

「イオノファラー、脱線だっせンしテいる場合バあいでハありません。デバイスＩＤ＃ナンバーが重複ちょウふくしタ件ケんにツいて尋たずねナければ・」
　ヴォヴォォォン♪

「それは簡単かんたんな、お話はなしですわ迅雷ジンライさま。レイダさんに授さずけた報酬二倍ほうしゅうにばいスキルの暴走ですわ・・・・・。よりにもよって、スキル収得中しゅうとくちゅうに接触せっしょくしてしまうものですから、私わたくしにも予想よそうが付きませんでしたわ・」
　飛んできた棒ぼうを、真剣白刃取しんけんしらはどり。

「「報酬二倍ほうしゅうにばいスキル……なんか、「今いまならもう一個いっこプレゼント♪」っていう通販番組つうはんばんぐみみたいよねぇん、ウケルー♪・・」」
　ムクリと起き上がる、女神御神体ダブルボディーズ。
　その顔かおにはもう、苦渋くじゅうや葛藤かっとうの色いろはなかった。

　　　§

「ギャニャニャニャッ――――みゃごぉぉぉぉぉっ!?・」
　猫ねこの魔物まものが尻餅しりもちをついた。

　ズゴゴゴゴォォォォッ――――!!!
　上うえから振ってくる柱はしら。
　ドガドガドッガドガドガガガガァァンッ――――!!!
　無数むすうのソレが、杭くいのように突きたてられた。

　猫ねこの魔物まものが見る先々さきざきに――
　ズゴーン、ガガーン、ドドゴォン！
　壁かべや戸や天井てんじょうが、はめ込まれていく。

「にゃがにゃがにゃやー!?・」
　その地響じひびきや、めまぐるしく変わる周囲しゅういの様子ようすに、耐えきれなくなったのか――猫ねこの魔物まものが四つんばいになり、うずくまった。

「みゃにゃが、みゃにゃんにゃやー!?」
　猫ねこの魔物まものは細長ほそながい通路つうろのような所に、閉じ込められた。
　ズゴゴゴゴォォオォォ――――――――!!!!
　唯一ゆいいつ、霧きりの景色けしきのままだった――地面じめんに色いろが流ながれる。
　それは血の色いろではなく、土つちの色いろ――ボッガァァンッ！
　吹き飛ぶ地面じめん！

「ふっぎゃぎにゃみゃごぉぉぉ――――!?」
　跳ねて落ちる魔物ねこ。
　バラバラバララッ――――舞う土塊つちくて。

　魔物ねこが顔かおを上げたとき――霧きりは晴れた。

　　　§

「ここは、洞窟どうくつか？」
　えーっと？
　おれぁ誰だれだっけ？

　細長ほそながい道みちには松明たいまつが灯ともされていて、暗くはねぇけど――
　武器ぶきがねぇと心許こころもとない。

　ヴッ――考えたら・・・・棒ぼうが出た。
　あわててソレをつかむ――じゃりぃぃん♪
　この音おと……聞きおぼえがある。
　この棒ぼうは――おれのだ。

　ふぉふぉん♪
『ヒント＞現在地点は龍脈の回廊／第八階層です』
　顔かおのまえに、そんな文字もじが出た。