滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

４：龍撃の学院

４１４：初等魔導学院、ギルド支部出張所

「おれぁ〝薬草師くさし〟だ。本当ほんとうは〝薬師くすし〟だと思おもって、選えらんじまったんだがぁ――こうして何なんとか、冒険者ぼうけんしゃをやれてる。気負きおうことはねぇぞ」
　おい、女神像めがみぞうのそばにはリオが、付いててくれるんだろ？

「（はい。ここは彼女かのじょに一任いちにんしましょう・）」
　おれは五百乃大角いおのはらから、迅雷ジンライっていう壊れない武器・・・・・・をもらった。
　そして、五百乃大角いおのはらクエストの報酬ほうしゅうでも山やまのようにＳＰスキルポイントをもらった。

　本当ほんとうのところ、おれの職業しょくぎょうや初期しょきスキルには、大たいして意味いみがねぇ。
　１００個以上こいじょうの追加ついかスキルを……取りまくった・・・・・・からな。

　しいて役立やくだった所ところを言うなら……冒険者ぼうけんしゃを始はじめた当初とうしょ、〝生産数せいさんすう最大さいだい〟スキルでまとまった金かねを手にできたくらいか。
　もっとも薬草くさを刈りまくれたのも、特製とくせいの袋ふくろに詰めて運はこんだのも――迅雷ジンライの手柄てがらなんだけど。

「（アンタたちは、最初さいしょから敵てきなし……でもなかったわねぇ。角つのウサギ一匹いっぴきにズタボロにされて、生意気なまいきちゃんと一緒いっしょに泣きながら帰かえってきたことあったしねぇー♪・）」
　ちっ、おまえ見てたのか。
　頭あたまを振って、五百乃大角いおのはらの御神体からだを落っことす。
　ちなみに生意気なまいきちゃんてのは、レイダのことだ。

「ぎゃわっ――!?・」
　叫さけぶ御神体ごしんたい。
「わわわぁっ!?」」
　あわててタターが、手のひらで受け取めた。
　そんなに大事だいじに扱あつかわなくても、そいつぁー基本的きほんてきには壊こわれねぇ――
　なんせ、おにぎりの手刀しゅとうに１０回までなら・・・・・・・耐えられる。

「そいつぁ曲がりなりにも、神かみを名乗なのってるんだ。落っことしたくらいじゃ壊こわれねぇぜ？」
　ふん。

「か、神かみさまだからっ――落っことしちゃ、いけないんでしょっ!!」
　怒おこるタターの、手のひらの上うえ。

「「いぃーーーーっだっ！・」」
　口くちの端はしを大おおきく広ひろげ牙きばを剥く、美の女神いおのはら御神体ごしんたい。

　梅干うめぼしみたいな（意識いしきだけの）映し身アイコンも、同時どうじに操あやつってやがる。

　ふぉん♪
『イオノ＞いぃーーーーっだっ！』
　そして一行文字ティッカーにまで悪態あくたいをつく、余裕よゆうまでありやがる。
　おれも鉄鎧の体ゴウライになってたときは、色いろんなことを同時どうじにやれてたけど――
　今いまのコイツほどには、出来できなかった。

　神々かみがみはこういう、同時に色んな事をするのマルチタスクが得意とくいだ。

「イオノファラーは美・ノ女神めがミとイう自覚じかクヲ、持ッた方ホうが良いノでは？・」
　おう、眷属けんぞくだからって遠慮えんりょするこたぁねぇぞ。
　あとで困こまるのは神さんこいつだ。もっと言ってやれ。

「基本的きほんてきにわぁーねぇー……ぺらぺら、ぺらり……冒険者ぼうけんしゃパーティーに入はいればぁー、どうにかやっていけるはずよぉーねぇ？・」
　画面がめんの中なか、無視むしを決めこむ梅干しアイコン。

　この世の、ありとあらゆる出来事できごとが書かれた虎の巻こうりゃくぼんを、ぺらぺら、ぺらりとめくっている。

「そ、そうだな。全部ぜんぶをうまくやろうとするなら、どうしたって足りない所ところが出てくるもんだぜ」
　正直しょうじきな所ところ、おれぁ一気いっきにＬＶ１００になっちまったから――
　生徒たちガキどもの手本てほんにゃ、程ほどとおい。

「そぉうねぇーん。でもぉシガミーのパーティーにわぁ、このあたくしさまが完備かんびしてるんだからぁー。あんまり鵜呑うのみにしすぎてもぉ、駄だぁ目めぇよぉぉう♪・」

「「「「「「「「「「「「「「イオノファラーさまが、パーティーメンバー!?」」」」」」」」」」」」」」
　うるせぇ、やかましぃ！　耳元みみもとで騒さわぐな、子供ガキどもめっ。
　通路つうろが生徒こどもで――埋め尽くされた。

「こらぁー。冒険者登録ぼうけんしゃとうろくが済んだ人ひとわぁー、速すみやかに教室きょうしつへ戻もどってくださぁーい――あら、シガミーは列れつに並ならばなくても、すぐに職員しょくいんの方かたが手続きをして・・・・・・くれますよ？」
　もうひとりのパーティーメンバーも――通路つうろの奥おくから、仮面かめんの顔かおを出した。

「よくわからんが、そうする。この場は頼たのむよ、リオレイニア」
　はいはい、はははいっと、ちょっくらごめんなすってよぉぅ♪
　おれより少すこし背が高たかい、生徒せいとたちをかき分け――

　『ギルド支部出張所』へと、たどり着いた。

「ご用件ようけんは――？」
　ちいさな受付うけつけカウンターに、座すわっていたのは――
　華はなやかな受付嬢うけつけじょうではなく――
　小太こぶとりの、おっさんだった。　

「えぇーっと？　シガミーです。ただの、シガミーです」
　わからんままに、名乗なのった。
　カウンターの向こうに、学院長がくいんちょうの姿すがたはない。

「「「「「「「「「「「「「「ええええぇぇええっーーーーっ、見習みならい先生せんせいも、パーティーメンバー!?」」」」」」」」」」」」」」
　やかましい、子供ガキどもめっ。
　通路そっちを振りかえると、見習い教師リオレイニアが生徒せいとたちに取り囲かこまれていた。

「あー、はいはい。君きみがシガミーさんね――チーン♪」
　ついさっき学院長がくいんちょうが見せてくれた、〝クエスト依頼書いらいしょ〟とおれを見比みくらべている。
　鐘かねの音おとが鳴ったってこたぁ――上級じょうきゅう鑑定持かんていもちだ。
　おれの偽装きぞうスキル（〝スキル隠蔽いんぺい〟、〝ＬＶ詐称レベルさしょう〟、〝人名詐称じんめいさしょう〟）なら、見破みやぶられねぇとは思おもうが――
　ソレでもやっぱり、緊張きんちょうは……するぜ。

「おや？　君きみの名前なまえとスキルに、不備ふびがありますね？」
　職員しょくいんのおっさんが、受付うけつけカウンターに身を乗りだし――
　おれの顔かおをジッと、見下みおろしてきた。