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4:龍撃の学院
429:初級魔法とシガミー、授業開始とマナー講座について
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「おはようございまーす。ではまた今日から、魔術の勉強をしていきましょーう」
青年を少し過ぎたくらいの年齢。
やけに線が細い担任教師が、挨拶をする。
ふぉん♪
『人物DB>ヤーベルト・トング
初等魔導学院1年A組担任教師』
担任のヤーベルトだな。覚えとく。
この便利な画面表示は、耳栓から伸びた機械腕の先から映し出されてる。
差し込む赤光は、外から見られることはない。
さて、どうする。
結局の所、ごたごたのせいで有耶無耶になったが――
「(そうですね。今後、魔力量を、最大値である32以上にすることは難しくなりました)」
この内緒話は、アーティファクトである迅雷とおれにしか聞こえない。
五百乃大角や茅の姫が、盗み聞きしたりはするがな。
ヴォゥ――♪
『HP/■■■■■■■■■■4364
MP/■■32』
画面端に見える、体力と魔力は最大。
体力と比べて、魔力の少ねぇことったら、ねぇぜ。
魔力量に関わるスキルを、ありったけ取っちまえば話は早いが――
ふぉふぉん♪
『シガミー LV:39
薬草師★★★★★ /状態異常無効/生産数最大/女神に加護/七天抜刀根術免許皆伝
追加スキル/遅延回収/自動回収/自動回復/体力増強/上級鑑定/自爆耐性/解析指南/超料理術
――所属:シガミー御一行様』
画面横に表示されたのは、冒険者カードと同じ内訳。
コレがLV100を越えたおれが、目立たねぇよう偽装したLVや所持スキルだ。
「(対外的にはMP32が、シガミーの現時点での最大になります。偽装したLVが上がるタイミングで、増やすことも可能ですが)」
それだって魔力に乏しい薬草師である以上、あまり増やせねぇだろう?
「(はい、いろいろと怪しまれかねません。むしろ奇跡的な采配でLV100の能力を、表現できたことを良しとしましょう)」
本当にいろいろと、うまくは行かねぇが――
今日のおれには朝、彼女からもらったコレがある。
それは尖った帽子。
教室を見渡しても、他にこんなのをかぶってる奴はいねぇが、コレで済むなら安い物だぜ。
誰だっけか、あいつ。
ガムランの冒険者で、〝血を吸う呪いの外套〟を着てたあいつ。
ふぉん♪
『人物DB>フォチャカ・モソモソ
炎系魔術を行使する冒険者』
そうだ、フッカだ。
アイツの装備を作りなおしてやったときに、尖った帽子も揃えてやったが。
あれと形は同じだ。
ヴォゥ――♪
『HP/■■■■■■■■■■4364
MP/■■■51』
画面端に見える、魔力がほんの少し増えた。
少ねぇことにかわりはねぇが、リオの話じゃ――
これでギリギリ、追い出されなくて済む。
「(餅は餅屋に。魔術全般はリオレイニアに、相談すべきでしたね)」
まったくだぜ。
ギルド出張所に行ったとき、ちょっと相談すりゃ全部丸く収まっただろ。
「はい、では本日から当分の間は、生活魔法と初級魔法の成り立ちについて勉強しまーす」
みれば長机に、本が置いてある。
隣に座るタターと、顔を見合わせた。
前の関に座るレイダとビビビーも、自分の席に置かれた本をもって――
嬉しそうに、こっちを振りかえる。
こりゃぁ、座学か。
ぱらぱらと捲ってみると、生活魔法の簡単な歴史と――
そこからどのようにして、大きな力を放つ魔術が開発されたのか。
それだけが一冊分、延々と書かれてる。
しかも結構な、込み入りようだぜ?
「(そうですね。頑張らないとヴィヴィーやタターはおろか、レイダにも置いていかれかねません)」
ちっ、猪蟹屋四号店の改装も、碌に終わってねぇのに。
「ソレとは別に本日より、〝紳士淑女の社交儀礼講座〟も開催されますので、希望者は放課後、教室に残るように」
はぁ? 担任のヤーベルト先生が、おかしなことを付け足した。
「ビシビシいきますので――そのおつもりで?」
教壇端に控えていた、見習い先生……美の化身リオレイニア先生。
彼女の黒眼鏡がピタリ。おれを見つめて微動だにしなくなった。
おれは授業の間中、迅雷と――逃げる算段をしたが。
とうとう――がしり。
やべぇ、レイダとタターに取っ捕まった。
今日は明るいうちに神域惑星に行って、茅の姫が作ってくれた地図をたよりに、必要な食材を確保しようと思ってたのに!
猪蟹屋の新しい献立にためにも、海を見ときたかったしなぁー!
「シガミーちゃんが、残るなら私も♪」
「ぼくも――」「でしたらわたくしも――」
がやがやわやややっ♪
ほとんど全員が、残りやがったぞ。
「なんでいなんでぃオマエ等さまわぁ、立ち振る舞いくれぇ、お手の物だろうが――?」
レイダでさえ、おれよかしゃんとしてるだろう?
「はぁー、まったくもう。淑女が机に腰掛けて、大股をひらくものではありません」
コツコツコツコツ――ぴたり。
静かな所作。それはまるで、剣の達人のようで。
すぅ――ピシャリッ!
手にした小さな魔法杖で、膝を叩かれた。
「「「「「「「「「「「「「「「イオレイニア先生❤」」」」」」」」」」」」」」」
あー、そう言うことか。子供どものお目当ては――
五百乃大角の生まれ変わりと噂され、一躍、央都の話題の中心となった見習い教師か。
ゴドン――ガチャチャリ♪
そのとき壇上奥の小さめの扉が、ひとりでに開いた。
「あら、みなさまお揃いで、くすくすす?」
中から現れたのは――おれそっくりな猫耳メイドだった。
一斉に見つめられても、動じない胆力は――
さすがは、神なのかもしれない。
「んぁ、どうしたぁ? やることが無いのか、お前さまわよぉう?」
二号店はニゲル青年に、本店は猫頭青年に任せてある。
率先して四号店の手伝いに来てくれたのは、わかるが――
「くすくす? 良いのですか、そんなことを言っても?」
「なんでい?」
「せっかく助っ人を、お連れしましたのに♪」
くいと、手綱を引く茅の姫。
ぽっきゅぽっきゅら――♪
なんか黄緑色のが、ドアを通ろうとして――もぎゅ、ぼごん♪
ぶつかって、上の奴が下に落っこちやがった。
「ひひひひひぃぃぃんっ?」
落ちた黄緑色を、振りかえる黄緑色。
「テンプーラ号!?」
身構える見習いメイド兼、初級魔導学院一年生。
「ふにゃみゃにゃごぉ?」
痛くもない額を、手で押さえる黄緑色、
「おにぎりちゃん♪」
駆け寄る子供兼、初級魔導学院一年生。
「(やい、お前さま。その扉どうした?)」
「(くすくす、私も神の端くれですので、いま有る物を複製するだけなら、簡単にできますわ、うふふ?)」
ふぉん♪
『ホシガミー>とはいっても偶然座標を確定できたこのドアと、
神域惑星の女神像のメンテナンスハッチ間にしか、
まだ経路はありませんけれど。うふふ♪』
よりにもよって黒板横の、その扉か。
人目に付くなんてもんじゃねぇだろ。
「(便利なのかどうか、判断がつきかねます)」
だよなぁ。
「あら、おにぎりたちを連れてきてくれたのですね?」
この日は丁度良いってんで、おにぎり騎馬をまじえて――
馬の美しい乗り方を、みっちりと教え込まれた。
「ひひひひひぃぃぃぃん?」
「みゃにゃがぁー♪」
まぁ騎馬一式は、子供どもにはやさしいから――
学院に居ても、問題ねぇとは思うが。
「「「「「「「「「「「「「「「ね、猫の魔物ぉ!?」」」」」」」」」」」」」」」
こいつを一回、やっとかねぇとな。
「「「「「「「「「「「「「「「それと馬の……魔物、そんなの居たっけ?」」」」」」」」」」」」」」」
猫の魔物てのは居るが、馬の魔物は居ねぇらしい。
§
「ひひぃぃん?」
おれとレイダを乗せた天ぷら号を、リオレイニアが引き。
袖の金具を引っかけられないように、腕まくりのタター。
「みゃがおー♪」「くすくす?」
おにぎりに抱えられる、茅の姫が付いてくる。
「まったく、何奴も此奴も仕事ばかり増やしやがって。さしあたって、馬小屋は……いらねぇか」
ひと部屋を、こいつらの寝床にして――
走らせるための馬場は……地下の対魔王結界を使やぁ良いだろ。
青年を少し過ぎたくらいの年齢。
やけに線が細い担任教師が、挨拶をする。
ふぉん♪
『人物DB>ヤーベルト・トング
初等魔導学院1年A組担任教師』
担任のヤーベルトだな。覚えとく。
この便利な画面表示は、耳栓から伸びた機械腕の先から映し出されてる。
差し込む赤光は、外から見られることはない。
さて、どうする。
結局の所、ごたごたのせいで有耶無耶になったが――
「(そうですね。今後、魔力量を、最大値である32以上にすることは難しくなりました)」
この内緒話は、アーティファクトである迅雷とおれにしか聞こえない。
五百乃大角や茅の姫が、盗み聞きしたりはするがな。
ヴォゥ――♪
『HP/■■■■■■■■■■4364
MP/■■32』
画面端に見える、体力と魔力は最大。
体力と比べて、魔力の少ねぇことったら、ねぇぜ。
魔力量に関わるスキルを、ありったけ取っちまえば話は早いが――
ふぉふぉん♪
『シガミー LV:39
薬草師★★★★★ /状態異常無効/生産数最大/女神に加護/七天抜刀根術免許皆伝
追加スキル/遅延回収/自動回収/自動回復/体力増強/上級鑑定/自爆耐性/解析指南/超料理術
――所属:シガミー御一行様』
画面横に表示されたのは、冒険者カードと同じ内訳。
コレがLV100を越えたおれが、目立たねぇよう偽装したLVや所持スキルだ。
「(対外的にはMP32が、シガミーの現時点での最大になります。偽装したLVが上がるタイミングで、増やすことも可能ですが)」
それだって魔力に乏しい薬草師である以上、あまり増やせねぇだろう?
「(はい、いろいろと怪しまれかねません。むしろ奇跡的な采配でLV100の能力を、表現できたことを良しとしましょう)」
本当にいろいろと、うまくは行かねぇが――
今日のおれには朝、彼女からもらったコレがある。
それは尖った帽子。
教室を見渡しても、他にこんなのをかぶってる奴はいねぇが、コレで済むなら安い物だぜ。
誰だっけか、あいつ。
ガムランの冒険者で、〝血を吸う呪いの外套〟を着てたあいつ。
ふぉん♪
『人物DB>フォチャカ・モソモソ
炎系魔術を行使する冒険者』
そうだ、フッカだ。
アイツの装備を作りなおしてやったときに、尖った帽子も揃えてやったが。
あれと形は同じだ。
ヴォゥ――♪
『HP/■■■■■■■■■■4364
MP/■■■51』
画面端に見える、魔力がほんの少し増えた。
少ねぇことにかわりはねぇが、リオの話じゃ――
これでギリギリ、追い出されなくて済む。
「(餅は餅屋に。魔術全般はリオレイニアに、相談すべきでしたね)」
まったくだぜ。
ギルド出張所に行ったとき、ちょっと相談すりゃ全部丸く収まっただろ。
「はい、では本日から当分の間は、生活魔法と初級魔法の成り立ちについて勉強しまーす」
みれば長机に、本が置いてある。
隣に座るタターと、顔を見合わせた。
前の関に座るレイダとビビビーも、自分の席に置かれた本をもって――
嬉しそうに、こっちを振りかえる。
こりゃぁ、座学か。
ぱらぱらと捲ってみると、生活魔法の簡単な歴史と――
そこからどのようにして、大きな力を放つ魔術が開発されたのか。
それだけが一冊分、延々と書かれてる。
しかも結構な、込み入りようだぜ?
「(そうですね。頑張らないとヴィヴィーやタターはおろか、レイダにも置いていかれかねません)」
ちっ、猪蟹屋四号店の改装も、碌に終わってねぇのに。
「ソレとは別に本日より、〝紳士淑女の社交儀礼講座〟も開催されますので、希望者は放課後、教室に残るように」
はぁ? 担任のヤーベルト先生が、おかしなことを付け足した。
「ビシビシいきますので――そのおつもりで?」
教壇端に控えていた、見習い先生……美の化身リオレイニア先生。
彼女の黒眼鏡がピタリ。おれを見つめて微動だにしなくなった。
おれは授業の間中、迅雷と――逃げる算段をしたが。
とうとう――がしり。
やべぇ、レイダとタターに取っ捕まった。
今日は明るいうちに神域惑星に行って、茅の姫が作ってくれた地図をたよりに、必要な食材を確保しようと思ってたのに!
猪蟹屋の新しい献立にためにも、海を見ときたかったしなぁー!
「シガミーちゃんが、残るなら私も♪」
「ぼくも――」「でしたらわたくしも――」
がやがやわやややっ♪
ほとんど全員が、残りやがったぞ。
「なんでいなんでぃオマエ等さまわぁ、立ち振る舞いくれぇ、お手の物だろうが――?」
レイダでさえ、おれよかしゃんとしてるだろう?
「はぁー、まったくもう。淑女が机に腰掛けて、大股をひらくものではありません」
コツコツコツコツ――ぴたり。
静かな所作。それはまるで、剣の達人のようで。
すぅ――ピシャリッ!
手にした小さな魔法杖で、膝を叩かれた。
「「「「「「「「「「「「「「「イオレイニア先生❤」」」」」」」」」」」」」」」
あー、そう言うことか。子供どものお目当ては――
五百乃大角の生まれ変わりと噂され、一躍、央都の話題の中心となった見習い教師か。
ゴドン――ガチャチャリ♪
そのとき壇上奥の小さめの扉が、ひとりでに開いた。
「あら、みなさまお揃いで、くすくすす?」
中から現れたのは――おれそっくりな猫耳メイドだった。
一斉に見つめられても、動じない胆力は――
さすがは、神なのかもしれない。
「んぁ、どうしたぁ? やることが無いのか、お前さまわよぉう?」
二号店はニゲル青年に、本店は猫頭青年に任せてある。
率先して四号店の手伝いに来てくれたのは、わかるが――
「くすくす? 良いのですか、そんなことを言っても?」
「なんでい?」
「せっかく助っ人を、お連れしましたのに♪」
くいと、手綱を引く茅の姫。
ぽっきゅぽっきゅら――♪
なんか黄緑色のが、ドアを通ろうとして――もぎゅ、ぼごん♪
ぶつかって、上の奴が下に落っこちやがった。
「ひひひひひぃぃぃんっ?」
落ちた黄緑色を、振りかえる黄緑色。
「テンプーラ号!?」
身構える見習いメイド兼、初級魔導学院一年生。
「ふにゃみゃにゃごぉ?」
痛くもない額を、手で押さえる黄緑色、
「おにぎりちゃん♪」
駆け寄る子供兼、初級魔導学院一年生。
「(やい、お前さま。その扉どうした?)」
「(くすくす、私も神の端くれですので、いま有る物を複製するだけなら、簡単にできますわ、うふふ?)」
ふぉん♪
『ホシガミー>とはいっても偶然座標を確定できたこのドアと、
神域惑星の女神像のメンテナンスハッチ間にしか、
まだ経路はありませんけれど。うふふ♪』
よりにもよって黒板横の、その扉か。
人目に付くなんてもんじゃねぇだろ。
「(便利なのかどうか、判断がつきかねます)」
だよなぁ。
「あら、おにぎりたちを連れてきてくれたのですね?」
この日は丁度良いってんで、おにぎり騎馬をまじえて――
馬の美しい乗り方を、みっちりと教え込まれた。
「ひひひひひぃぃぃぃん?」
「みゃにゃがぁー♪」
まぁ騎馬一式は、子供どもにはやさしいから――
学院に居ても、問題ねぇとは思うが。
「「「「「「「「「「「「「「「ね、猫の魔物ぉ!?」」」」」」」」」」」」」」」
こいつを一回、やっとかねぇとな。
「「「「「「「「「「「「「「「それと馬の……魔物、そんなの居たっけ?」」」」」」」」」」」」」」」
猫の魔物てのは居るが、馬の魔物は居ねぇらしい。
§
「ひひぃぃん?」
おれとレイダを乗せた天ぷら号を、リオレイニアが引き。
袖の金具を引っかけられないように、腕まくりのタター。
「みゃがおー♪」「くすくす?」
おにぎりに抱えられる、茅の姫が付いてくる。
「まったく、何奴も此奴も仕事ばかり増やしやがって。さしあたって、馬小屋は……いらねぇか」
ひと部屋を、こいつらの寝床にして――
走らせるための馬場は……地下の対魔王結界を使やぁ良いだろ。
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