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4:龍撃の学院
476:大陸間弾道卵の謎、高高度高速偵察
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シュゴゴォォォォォォォォォォッ――――!
おれたちは城壁を越える。
リオレイニア、レイダ、タター、ノヴァド、エクレア、ビビビー、ミャッド、マルチヴィル。
総勢8名は座席に座り、体を縛り付けるための革ベルトを、たすき掛けにしている。
ふぉん♪
『>神力残量99・99%。飛行可能時間は約4時間、変化ありません』
良し良ぉーし!
ヴォォォォォオゥゥン――――♪
先行する巨大な魔法杖。
巨大な魔石からキラキラと、光の筋が流れ落ちていく。
「ゲイルぅー♪」
レイダが楽しげに、手を振る。
ルリーロの背中に張りつくゲイル少年が、こちらを振りかえる。
「ゲイルくーん♪」
ビビビーも手を振り出すと、やっぱりゲイル少年が振り向いた。
「おいおまえら、やめてやれ。また振り落とされないとも限らんだろうが――ニャァ♪」
今度は少年の体を四点式の安全ベルトで、しっかりと杖に結びつけてある。
そうそう落ちることもないだろうが、少年は轟雷や迅雷で言う所の――
神力棒と同義で、この高高度高速偵察の要ではあるのだ。
チチチィー♪
頭を動かさず、鎧のあちこちに付いた光学装置で、下を見る。
城壁の北側、断崖の側面が見えた。
岩壁に空いた自然の洞窟。
天狗たちの根城も外側からなら、よく見える。
もちろん到底、人が住むような場所ではない。
ヴォォォォォオゥゥン――――ガッシャガチャッン♪
巨大な魔法杖が不意に横を向き、おれは急制動を掛けた。
「「「「「きゃぁぁぁぁっ――!?」」」」」
「「「「うをぁあぁー!?」」ニャァ!」ぁ――ニャァ♪」
ギシギシ、がしがしがしりっ!
ボッファァッ、シュッゴォォォッ――――!
みんなは座席にしがみ付き、おれは姿勢を立て直す。
「危ねーだろぅ、奥方さまよぉ――ニャァ!?」
文句を言ってやる。
「んふふふふぅー、ごぉめぇんねぇぇ――にたぁり♪」
チラリとこっちをみた奥方さまの口が、まるで顔の長い獣のように裂けて見えた。
ふぉん♪
『>天狗の根城を、目視確認したと思われ』
だな。根城には何が置いてある?
ふぉふぉん♪
『>偽装のための備蓄食料と寝具、それと多少の金貨が置いてあります』
わかった。基本的には近寄るなよ?
ふぉん♪
『>了解です』
おれたちはゆっくりと北上する。
巨大な大穴の上に出た。
「「「「「「「「うわぁぁぁぁあぁぁぁっ!」」」」」」」」
眼下に広がるのは、巨大な井戸のような龍の巣。
座席に付いた小さなモニタと、床板に配置した立体視可能な巨大ディスプレイ。
そのどちらにも地表の様子を、映し出している。
つまり床を透かして、とおくの地表を見ているわけだが――
「ぬぅをぉぅうぅっ!?」
「きゃぁぁぁっ!?」
工房長と少女メイドが、その深さに慄いている。
臨場感は問題なさそうだな。
初代ラスクトール王と火龍の、戦いの痕跡。
龍の巣は巨大な穴の底にたゆたう巨大湖だ。
その両端は城壁側から誰かが魔法でも、ぶっ放したかのように深く抉れている。
「大きな龍のぉ目玉みたいねぇーん?」
御神体専用台から身を乗り出した根菜が、言い得て妙なことを宣った。
たしかに、まるで『<●>』みたいに見えた。
だが、もしあれが本当に目玉だとしたら――
その全長は、どれほどになるのか。
神域惑星で見た、まっさらな〝自律型大陸プレート〟が頭をよぎる。
あの歩く地面にも大目玉が付いてたけど、龍の巣ほどじゃなかった。
わいわいわい、がやがやがや♪
物見遊山の子供らが、はしゃいでいる。
タターは高い所が苦手なようで、身を縮こまらせているが。
そういえばおっちゃんは、「猪蟹屋の焼け跡から女神像の台座を回収して、宿泊施設に設置する」と言って央都に残った。
すこし顔が引きつっていたから、ひょっとしたら空の上を飛ぶのが嫌だったのかも知れない。
おれだって自分で飛ぶんじゃなけりゃ、遠慮したいとこだから、気持ちはわからんでもない。
ヴォォォォォオゥゥン――――♪
〝ルードホルドの魔法杖〟が加速していく。
シュゴゴォォォォォォォォォォッ――――!
轟雷の背中のスラスターが火を吐くが――
距離は離れていく一方だ。
ガシャラララララッラアッ――――ガッシィィィィィッ!!
ルリーロが垂らした太鎖をつかんだ。
パッシュルルルルルルルルルルルッ――――♪
ゲイル少年をうしろに乗せた魔法杖が、さらに加速する。
そうなのだ。
どうも〝ルードホルドの魔法杖〟の出力が足りなくて、全員を乗せられなかったわけじゃないらしい。
ふぉふぉん♪
『>我々の動力である交流神力と違い、魔法杖が使用している活力はいわば直流の魔法力です』
わか――るな。
いまのおれには轟雷の頓知――演算単位が使えるからな。
ふぉふぉん♪
『ゴウライ>なるほどな。術者以外の魔法力はノイズとなり、浮遊効果を半減させるわけか』
ノイズの発生源であるおれたちを、魔法杖に取り付けた鎖で引っぱろうという魂胆だ。
たしかに、大陸の端に近いガムランから央都まで数時間で、すっ飛んでくる推進力なら、轟雷と手持ちの馬車くらい軽々と引いてくれるだろうさ。
§
荒れた土地が続く。長閑と言えばのどか。
ときどき茂る小さな森、そして岩場。その間を縫うように流れる小川。
小川の一部は地を削り大きな川となって、央都の龍の巣へと続いているようだ。
それにしても、先を行くルリーロの――さらに先。
コォォォァッ――――♪
リオレイニアが張ってくれた〝ひかりのたて〟のおかげで。
とんでもない高さを、とんでもない速さで飛んでいるのに――
かすかな風すら感じず、良い日和だぜ。
ヴォォォォォオゥゥン――――♪
さらに加速する魔法杖。
ヴォォォォォオゥゥン――――♪
さらに加速する(略)。
ヴォォォォォオゥゥン――――♪
さらに(略)。
パッシュルルルルルルルルルルルッ――――♪
パッシュルルルルルルルルルルルッ――――♪
パッシュルルルルルルルルルルルッ――――♪
パッコォォォォォオォンッ!
あまりの速さに、轟雷で居合いをやったときの――妙な音までしやがった。
ふぉん♪
『ヒント>ソニックブーム/音速を超えると生じる衝撃波。それによる爆発音』
そういう理か。
「「「「ぎゃぁぁぁぁぁっ、怖い怖い!」」」――がくりっ」
高さは平気なレイダとビビビーまで、とうとう喚きだした。
ノヴァドに至っては、顔面蒼白。
無我の境地に……気絶してやがるぜ。
ふぉん♪
『>ノヴァドの生命反応に異常は見られません』
なら放っとく。
ヴォォォォォオゥゥン――――♪
それでも、ルードホルドの加速は止まらない。
せめて床板に地表を映すのを、止めてやる。
「アと10分ほドで、ネネルド村へ到着しマす。注意してくダさい」
「注意って何のだ――ニャァ?」
ボッゴッゴオッゴオォォォォォォォォッ、がたがたがたがた、ビリビリビリビリリッ!
ジンライ鋼製の強靱な馬車が、ガタガタと揺れ始めた。
「ばかね、また卵を投げられるかも知れないでしょ?」
御神体さまが宣う。
「ああ、そりゃそうだぜ――ニャァ♪」
どこからだれがどうやって、あんな物を投げつけてきたのか。
それを知り、それをした奴をとっ捕まえることが目的だったぜ。
「けどここまで、何もなかったニャァ?」
顧問氏が見解を述べた。
気になったことと言えば――
聞いてた話と違って、川という川が途切れ途切れになってるくらいか。
全長50センチ弱の、バカみたいに硬い卵。
重さは「大人ひとり分くらいだ」って話だから――
「はイ。携帯可能ナ対空兵器デ有ル可能性が、高くなりマした」
「そうなるなぁ――ニャァ♪」
鳥も飛ばないこんな高い所まで、生身の人間が投げられるとは思えない。
おれたちは城壁を越える。
リオレイニア、レイダ、タター、ノヴァド、エクレア、ビビビー、ミャッド、マルチヴィル。
総勢8名は座席に座り、体を縛り付けるための革ベルトを、たすき掛けにしている。
ふぉん♪
『>神力残量99・99%。飛行可能時間は約4時間、変化ありません』
良し良ぉーし!
ヴォォォォォオゥゥン――――♪
先行する巨大な魔法杖。
巨大な魔石からキラキラと、光の筋が流れ落ちていく。
「ゲイルぅー♪」
レイダが楽しげに、手を振る。
ルリーロの背中に張りつくゲイル少年が、こちらを振りかえる。
「ゲイルくーん♪」
ビビビーも手を振り出すと、やっぱりゲイル少年が振り向いた。
「おいおまえら、やめてやれ。また振り落とされないとも限らんだろうが――ニャァ♪」
今度は少年の体を四点式の安全ベルトで、しっかりと杖に結びつけてある。
そうそう落ちることもないだろうが、少年は轟雷や迅雷で言う所の――
神力棒と同義で、この高高度高速偵察の要ではあるのだ。
チチチィー♪
頭を動かさず、鎧のあちこちに付いた光学装置で、下を見る。
城壁の北側、断崖の側面が見えた。
岩壁に空いた自然の洞窟。
天狗たちの根城も外側からなら、よく見える。
もちろん到底、人が住むような場所ではない。
ヴォォォォォオゥゥン――――ガッシャガチャッン♪
巨大な魔法杖が不意に横を向き、おれは急制動を掛けた。
「「「「「きゃぁぁぁぁっ――!?」」」」」
「「「「うをぁあぁー!?」」ニャァ!」ぁ――ニャァ♪」
ギシギシ、がしがしがしりっ!
ボッファァッ、シュッゴォォォッ――――!
みんなは座席にしがみ付き、おれは姿勢を立て直す。
「危ねーだろぅ、奥方さまよぉ――ニャァ!?」
文句を言ってやる。
「んふふふふぅー、ごぉめぇんねぇぇ――にたぁり♪」
チラリとこっちをみた奥方さまの口が、まるで顔の長い獣のように裂けて見えた。
ふぉん♪
『>天狗の根城を、目視確認したと思われ』
だな。根城には何が置いてある?
ふぉふぉん♪
『>偽装のための備蓄食料と寝具、それと多少の金貨が置いてあります』
わかった。基本的には近寄るなよ?
ふぉん♪
『>了解です』
おれたちはゆっくりと北上する。
巨大な大穴の上に出た。
「「「「「「「「うわぁぁぁぁあぁぁぁっ!」」」」」」」」
眼下に広がるのは、巨大な井戸のような龍の巣。
座席に付いた小さなモニタと、床板に配置した立体視可能な巨大ディスプレイ。
そのどちらにも地表の様子を、映し出している。
つまり床を透かして、とおくの地表を見ているわけだが――
「ぬぅをぉぅうぅっ!?」
「きゃぁぁぁっ!?」
工房長と少女メイドが、その深さに慄いている。
臨場感は問題なさそうだな。
初代ラスクトール王と火龍の、戦いの痕跡。
龍の巣は巨大な穴の底にたゆたう巨大湖だ。
その両端は城壁側から誰かが魔法でも、ぶっ放したかのように深く抉れている。
「大きな龍のぉ目玉みたいねぇーん?」
御神体専用台から身を乗り出した根菜が、言い得て妙なことを宣った。
たしかに、まるで『<●>』みたいに見えた。
だが、もしあれが本当に目玉だとしたら――
その全長は、どれほどになるのか。
神域惑星で見た、まっさらな〝自律型大陸プレート〟が頭をよぎる。
あの歩く地面にも大目玉が付いてたけど、龍の巣ほどじゃなかった。
わいわいわい、がやがやがや♪
物見遊山の子供らが、はしゃいでいる。
タターは高い所が苦手なようで、身を縮こまらせているが。
そういえばおっちゃんは、「猪蟹屋の焼け跡から女神像の台座を回収して、宿泊施設に設置する」と言って央都に残った。
すこし顔が引きつっていたから、ひょっとしたら空の上を飛ぶのが嫌だったのかも知れない。
おれだって自分で飛ぶんじゃなけりゃ、遠慮したいとこだから、気持ちはわからんでもない。
ヴォォォォォオゥゥン――――♪
〝ルードホルドの魔法杖〟が加速していく。
シュゴゴォォォォォォォォォォッ――――!
轟雷の背中のスラスターが火を吐くが――
距離は離れていく一方だ。
ガシャラララララッラアッ――――ガッシィィィィィッ!!
ルリーロが垂らした太鎖をつかんだ。
パッシュルルルルルルルルルルルッ――――♪
ゲイル少年をうしろに乗せた魔法杖が、さらに加速する。
そうなのだ。
どうも〝ルードホルドの魔法杖〟の出力が足りなくて、全員を乗せられなかったわけじゃないらしい。
ふぉふぉん♪
『>我々の動力である交流神力と違い、魔法杖が使用している活力はいわば直流の魔法力です』
わか――るな。
いまのおれには轟雷の頓知――演算単位が使えるからな。
ふぉふぉん♪
『ゴウライ>なるほどな。術者以外の魔法力はノイズとなり、浮遊効果を半減させるわけか』
ノイズの発生源であるおれたちを、魔法杖に取り付けた鎖で引っぱろうという魂胆だ。
たしかに、大陸の端に近いガムランから央都まで数時間で、すっ飛んでくる推進力なら、轟雷と手持ちの馬車くらい軽々と引いてくれるだろうさ。
§
荒れた土地が続く。長閑と言えばのどか。
ときどき茂る小さな森、そして岩場。その間を縫うように流れる小川。
小川の一部は地を削り大きな川となって、央都の龍の巣へと続いているようだ。
それにしても、先を行くルリーロの――さらに先。
コォォォァッ――――♪
リオレイニアが張ってくれた〝ひかりのたて〟のおかげで。
とんでもない高さを、とんでもない速さで飛んでいるのに――
かすかな風すら感じず、良い日和だぜ。
ヴォォォォォオゥゥン――――♪
さらに加速する魔法杖。
ヴォォォォォオゥゥン――――♪
さらに加速する(略)。
ヴォォォォォオゥゥン――――♪
さらに(略)。
パッシュルルルルルルルルルルルッ――――♪
パッシュルルルルルルルルルルルッ――――♪
パッシュルルルルルルルルルルルッ――――♪
パッコォォォォォオォンッ!
あまりの速さに、轟雷で居合いをやったときの――妙な音までしやがった。
ふぉん♪
『ヒント>ソニックブーム/音速を超えると生じる衝撃波。それによる爆発音』
そういう理か。
「「「「ぎゃぁぁぁぁぁっ、怖い怖い!」」」――がくりっ」
高さは平気なレイダとビビビーまで、とうとう喚きだした。
ノヴァドに至っては、顔面蒼白。
無我の境地に……気絶してやがるぜ。
ふぉん♪
『>ノヴァドの生命反応に異常は見られません』
なら放っとく。
ヴォォォォォオゥゥン――――♪
それでも、ルードホルドの加速は止まらない。
せめて床板に地表を映すのを、止めてやる。
「アと10分ほドで、ネネルド村へ到着しマす。注意してくダさい」
「注意って何のだ――ニャァ?」
ボッゴッゴオッゴオォォォォォォォォッ、がたがたがたがた、ビリビリビリビリリッ!
ジンライ鋼製の強靱な馬車が、ガタガタと揺れ始めた。
「ばかね、また卵を投げられるかも知れないでしょ?」
御神体さまが宣う。
「ああ、そりゃそうだぜ――ニャァ♪」
どこからだれがどうやって、あんな物を投げつけてきたのか。
それを知り、それをした奴をとっ捕まえることが目的だったぜ。
「けどここまで、何もなかったニャァ?」
顧問氏が見解を述べた。
気になったことと言えば――
聞いてた話と違って、川という川が途切れ途切れになってるくらいか。
全長50センチ弱の、バカみたいに硬い卵。
重さは「大人ひとり分くらいだ」って話だから――
「はイ。携帯可能ナ対空兵器デ有ル可能性が、高くなりマした」
「そうなるなぁ――ニャァ♪」
鳥も飛ばないこんな高い所まで、生身の人間が投げられるとは思えない。
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