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4:龍撃の学院
477:大陸間弾道卵の謎、ネネルド村上空
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馬車には渦流生成器なるものが、配置されている。
迅雷が変異種……〝空を泳ぐ魚〟とやらの〝鱗〟を模して作った。
屋根や横っ面に、魚のひれがごとく出っ張った〝小さな突起〟。
それは規格外の揚力を、発生させるだけでなく――
神力を流すことで、堅牢な鎧にもなるらしい。
ふぉん♪
『ゴウライ>渦流生成器/ON』
おれの手甲から鋏が伸びて、馬車の屋根へ――ガチャリッ。
「ひかりのたてよ!」
風からおれたちを守っていた〝ひかりのたて〟には、思いもよらぬ弱点があった。
パッシュルルルルルルルルルルルッ――――♪
パッコォォォォォオォンッ!
怪音と共に突出する、巨大魔法杖の先端。
ヴァチヴァチヴァチヴァチィ――――――――パキィィィィンッ!
リオレイニアが重ねた、ひかりのたてがまた壊れた。
ボッゴッゴオッゴオォォォォォォォォッ、がたがたがたがた、ビリビリビリビリリッ!
「――えぇえぇー!? この速さが出せないとぉー、ネネルド村までわぁー、けぇっこぉー時間がぁかかるぅわぁよぉぉう?――」
困惑のルリーロアイコン。
〝音の速さ〟とやらを越えられない〝ひかりのたて〟は――
杖やおれたちに、突き破られてしまうのだ。
もう、このままガタガタガタガタッ――ビリビリビリビリッ!!
バラバラになっちまうんじゃないか?
もうおれを引っぱる太鎖を、手放すしかない!
そう思ったとき――
ピィーッ――――ヴォヴォヴォヴォヴォヴォ。
作動する渦流生成器。
画面横に表示された鉄鎧の絵。
手甲から伸びたシールドワイヤーケーブルが、馬車へ神力を供給している。
ガタガタ――ビリビリ……ゴォン!
馬車そして轟雷の揺れが、ピタリと止まった。
ふぉん♪
『>亜音速時の振動は、超音速時に収まる筈なのですが。
惑星ヒースにおける空力特性を更新』
そりゃ、魚が空飛ぶくらいには、いろいろ違ってるんだろうよ。
ヴュゥゥゥン♪
前方に展開した馬車の装甲板に、外部映像を映し出す。
「ふう。そういえば、タターちゃん。村に帰るのはいつぶりなの?」
揺れが収まるなり平静を取りもどしたレイダが、隣の席へ座るタターへ尋ねた。
「か、ガタガタ、ブルブル、ガ、ガムラン町に出稼ぎに来て、ず、ずっと帰ってなかったからぁ、2年ぶりですよぉー!」
よそ行きの格好の、少女メイド。
メイド姿じゃない彼女を見るのは、二回目だ。
ドレスとも違うその服は、おれやレイダの一張羅とほとんど同じ。
「――まえに来たときにわぁ、お土産にっていってぇ、ムシュル貝おぉーたっくさん頂きましたわぁねぇー♪――」
馬車の装甲板の裏側。ルリーロの顔アイコンが点滅する。
「そういえば、そうでしたね」
エクレアが、顔アイコンへ同意する。
「本日は村復興経過の確認も兼ねていますので、あまり羽目を外さないようお願い致します」
リオレイニアが釘を刺した。
もののついでということで、タターの帰郷にあわせてネネルド村の視察も行うことになっている。
レイド村から始まった天変地異は、トッカータ大陸全土に及んでいた。
それでも央都近郊では、魔物が不規則に発生した程度で収まった。
何で収まったのかと言えば、例の三日三晩央都を照らした光の剣のせい……おかげだ。
各地の情報はいまだ交錯し、もっとも未確認な地域が――
まさにネネルド村と言うわけで。
「へぇー、貝料理がオススメなのかしらねぇー、じゅるるりっ♪」
ムシュル貝か、近頃食ってねぇな。
結構まえに全部、お造りにして食っちまったから在庫もねぇ。
ヴュパパパパッ――――ふぉふぉぉん♪
「ピッ――顧問、地上の川の水位が下がっているようです」
「ピッ――本当だニャァ。この辺りの地盤はオリハルコンを含み、相当硬いはずニャァ?」
ちなみに大人たちは、もう座席に付いたタッチパネルを使いこなしている。
轟雷を着ているわけでも解析指南やヒントを聞けるわけでもない連中が、よくも扱えるもんだと感心する。
顧問と秘書は魔法具なんかの専門家だから、頷けるが――
「ピッ――ゲイルくーん♪」
「――レイダか、どうした?――」
「なんでもなーい。お話しする魔法具を使ってみたかったのー♪」
おいレイダ、やめてやれ。
ゲイルがまたこっちを、振りかえってるだろうが。
「ピッ――奥方さま、救援物資は個人名で出されますか?」
「――えーっとねぇー。タターちゃんのお家への分わぁ、私名義でぇおねがぁぁい♪――」
おれたちと行動を共にすることが多かった、ガムラン町の連中は――
「(普通に使いこなしてやがるぜ)」
ふぉん♪
『イオノ>人類がピクトグラムを使い始めて約300年。
GUIの勝利よねぇん♪』
300年てこたぁ……おれが死んでから600年分の、神々の叡知の賜ってことかぁ?
ふぉん♪
『>概ねその解釈で合っているかと』
詠唱魔法具板の『♪』とかのマーク。
あれひとつ取ってみても、猪蟹屋の影響はそこそこ大きい。
普段は考えもしねぇが、轟雷を着てると――
いろいろと同時に、考えが巡っちまうぜ。
チチチチチィー、ヴュパパパパッ。
おれは周囲をくまなく、索敵する。
動体検知にも行動予測にも、おかしなところはない。
やがてずっと遠くの地上に、川が増えてきた。
「もうすぐ、ネネルド村だね♪」
座席に付いた小さな画面に、食い入るように見入るビビビー。
映し出された現在位置の端に、『ネネルド村』の文字が現れた。
「なんだぜ、ありゃ――ニャァ?」
どこかへ出かけたりするたびに、同じ言葉を発しているが――
言わずには、居られなかった。
無数の川。
それが一カ所に集まっている。
さしずめ、巨大な水たまり。
中央にそびえる、その形。
巨大な森のような繁りには――
見覚えがあった。
王族が管理していた、召喚の塔。
それを守るための結界内に生えていた――
「なんか、似てねぇか――ニャァ?」
五百乃大角が大爆発し、木っ端微塵に吹き飛ばしちまった――
ご神木によぉ。
ーーー
ピクトグラム/絵文字。絵を使った図表。文字を介さずに機器や設備の使用法を伝える為に発展した。もしくは今は廃れてしまった古代魔法を使用するための、方陣を描く手のひらツール。
迅雷が変異種……〝空を泳ぐ魚〟とやらの〝鱗〟を模して作った。
屋根や横っ面に、魚のひれがごとく出っ張った〝小さな突起〟。
それは規格外の揚力を、発生させるだけでなく――
神力を流すことで、堅牢な鎧にもなるらしい。
ふぉん♪
『ゴウライ>渦流生成器/ON』
おれの手甲から鋏が伸びて、馬車の屋根へ――ガチャリッ。
「ひかりのたてよ!」
風からおれたちを守っていた〝ひかりのたて〟には、思いもよらぬ弱点があった。
パッシュルルルルルルルルルルルッ――――♪
パッコォォォォォオォンッ!
怪音と共に突出する、巨大魔法杖の先端。
ヴァチヴァチヴァチヴァチィ――――――――パキィィィィンッ!
リオレイニアが重ねた、ひかりのたてがまた壊れた。
ボッゴッゴオッゴオォォォォォォォォッ、がたがたがたがた、ビリビリビリビリリッ!
「――えぇえぇー!? この速さが出せないとぉー、ネネルド村までわぁー、けぇっこぉー時間がぁかかるぅわぁよぉぉう?――」
困惑のルリーロアイコン。
〝音の速さ〟とやらを越えられない〝ひかりのたて〟は――
杖やおれたちに、突き破られてしまうのだ。
もう、このままガタガタガタガタッ――ビリビリビリビリッ!!
バラバラになっちまうんじゃないか?
もうおれを引っぱる太鎖を、手放すしかない!
そう思ったとき――
ピィーッ――――ヴォヴォヴォヴォヴォヴォ。
作動する渦流生成器。
画面横に表示された鉄鎧の絵。
手甲から伸びたシールドワイヤーケーブルが、馬車へ神力を供給している。
ガタガタ――ビリビリ……ゴォン!
馬車そして轟雷の揺れが、ピタリと止まった。
ふぉん♪
『>亜音速時の振動は、超音速時に収まる筈なのですが。
惑星ヒースにおける空力特性を更新』
そりゃ、魚が空飛ぶくらいには、いろいろ違ってるんだろうよ。
ヴュゥゥゥン♪
前方に展開した馬車の装甲板に、外部映像を映し出す。
「ふう。そういえば、タターちゃん。村に帰るのはいつぶりなの?」
揺れが収まるなり平静を取りもどしたレイダが、隣の席へ座るタターへ尋ねた。
「か、ガタガタ、ブルブル、ガ、ガムラン町に出稼ぎに来て、ず、ずっと帰ってなかったからぁ、2年ぶりですよぉー!」
よそ行きの格好の、少女メイド。
メイド姿じゃない彼女を見るのは、二回目だ。
ドレスとも違うその服は、おれやレイダの一張羅とほとんど同じ。
「――まえに来たときにわぁ、お土産にっていってぇ、ムシュル貝おぉーたっくさん頂きましたわぁねぇー♪――」
馬車の装甲板の裏側。ルリーロの顔アイコンが点滅する。
「そういえば、そうでしたね」
エクレアが、顔アイコンへ同意する。
「本日は村復興経過の確認も兼ねていますので、あまり羽目を外さないようお願い致します」
リオレイニアが釘を刺した。
もののついでということで、タターの帰郷にあわせてネネルド村の視察も行うことになっている。
レイド村から始まった天変地異は、トッカータ大陸全土に及んでいた。
それでも央都近郊では、魔物が不規則に発生した程度で収まった。
何で収まったのかと言えば、例の三日三晩央都を照らした光の剣のせい……おかげだ。
各地の情報はいまだ交錯し、もっとも未確認な地域が――
まさにネネルド村と言うわけで。
「へぇー、貝料理がオススメなのかしらねぇー、じゅるるりっ♪」
ムシュル貝か、近頃食ってねぇな。
結構まえに全部、お造りにして食っちまったから在庫もねぇ。
ヴュパパパパッ――――ふぉふぉぉん♪
「ピッ――顧問、地上の川の水位が下がっているようです」
「ピッ――本当だニャァ。この辺りの地盤はオリハルコンを含み、相当硬いはずニャァ?」
ちなみに大人たちは、もう座席に付いたタッチパネルを使いこなしている。
轟雷を着ているわけでも解析指南やヒントを聞けるわけでもない連中が、よくも扱えるもんだと感心する。
顧問と秘書は魔法具なんかの専門家だから、頷けるが――
「ピッ――ゲイルくーん♪」
「――レイダか、どうした?――」
「なんでもなーい。お話しする魔法具を使ってみたかったのー♪」
おいレイダ、やめてやれ。
ゲイルがまたこっちを、振りかえってるだろうが。
「ピッ――奥方さま、救援物資は個人名で出されますか?」
「――えーっとねぇー。タターちゃんのお家への分わぁ、私名義でぇおねがぁぁい♪――」
おれたちと行動を共にすることが多かった、ガムラン町の連中は――
「(普通に使いこなしてやがるぜ)」
ふぉん♪
『イオノ>人類がピクトグラムを使い始めて約300年。
GUIの勝利よねぇん♪』
300年てこたぁ……おれが死んでから600年分の、神々の叡知の賜ってことかぁ?
ふぉん♪
『>概ねその解釈で合っているかと』
詠唱魔法具板の『♪』とかのマーク。
あれひとつ取ってみても、猪蟹屋の影響はそこそこ大きい。
普段は考えもしねぇが、轟雷を着てると――
いろいろと同時に、考えが巡っちまうぜ。
チチチチチィー、ヴュパパパパッ。
おれは周囲をくまなく、索敵する。
動体検知にも行動予測にも、おかしなところはない。
やがてずっと遠くの地上に、川が増えてきた。
「もうすぐ、ネネルド村だね♪」
座席に付いた小さな画面に、食い入るように見入るビビビー。
映し出された現在位置の端に、『ネネルド村』の文字が現れた。
「なんだぜ、ありゃ――ニャァ?」
どこかへ出かけたりするたびに、同じ言葉を発しているが――
言わずには、居られなかった。
無数の川。
それが一カ所に集まっている。
さしずめ、巨大な水たまり。
中央にそびえる、その形。
巨大な森のような繁りには――
見覚えがあった。
王族が管理していた、召喚の塔。
それを守るための結界内に生えていた――
「なんか、似てねぇか――ニャァ?」
五百乃大角が大爆発し、木っ端微塵に吹き飛ばしちまった――
ご神木によぉ。
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