滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

４：龍撃の学院

４８８：ネネルド村奇譚、水蜘蛛と蛸足

　ぱちゃぱちゃぱちゃ――――♪

「きゃぁぁ!?　水みずの上うえを走はしってる？」
「あれ!?　沈しずまないね？」
「危あぶないですよ、戻もどって下ください！」
　驚愕きょうがくの子供レイダたち。

　ぱちゃぱちゃぱちゃ――――♪

「本当ほんとうに猪蟹屋ししがにや関係者かんけいしゃたちには、驚おどろかされることばかりだニャァ♪」
「溺おぼれなくて良かったですが、不可解ふかかいですね」
「活力収支マナしゅうしに計算上けいさんじょうの、破綻はたんが見られます！」
　ギュギュギュイッ――ン♪
　数名すうめいが測定機器アーティファクトを、湖上こじょうへ向けた。
「魔法杖つえも使つかえないのに、どうして!?」
　ギュギュギュー、ガチガチガチ――プスン♪
　驚愕きょうがくの学者方ミャッドたち。

　ぱっちゃぽっちゃん――――♪

　がやがやがやがや、がやがやがややや――――!?
　がやがやがやがや、がやがやがややや――――!?
　がやがやがやがや、がやがやがややや――――!?
　がやがやがやがや、がやがやがややや――――!?
　驚愕きょうがくの村人むらびとたち。

　３０シガミー程度ていどの距離きょりを走はしりぬけ、ぱちゃちゃぽん――――♪
　速度そくどが弱よわまり小ちいさな足あしが、水面すいめんへ足跡あわを残のこす。

「（くすくすくす♪　さすがのシガミーさんのお体おからだでも、水みずに浮くのは一苦労ひとくろうですわねっとととと♪・）」
　パカン、カッパァン♪
　お盆トレーを素面すいめんに叩たたきつけ、沈しずみ始はじめた両足りょうあしで――
　すかさず、コパワァンと飛び乗った。

「あらまぁ、水蜘蛛みずぐもとわぁ、お懐なつかしぃでぇすぅわぁねぇぇ♪」
　巨大きょだいな魔法杖ルードホルドを垂直すいちょくにに立て、その上うえに座すわる辺境伯名代ルリーロさま。
「ミィズグモォ……何なんだっけそれぇー？・」
　ルリーロの頭あたまの上うえ。とおくを見つめる御神体ごしんたいさま。

「ござる・・・ですわぁ。えーっと透波すっぱとか乱波らっぱとか、こんな人たち・・・・・・ぃ？」
　結むすんで見せたその刀印いんは、隠形おんぎょうや暗視あんしのための九字まじないではない。
　江戸えどの町まちからの転生者てんせいしゃである妖狐かのじょが、形作るなら・・・・・――
　正真正銘しょうしんしょうめい、敵てきを燃やすための〝瀑布火炎ばくふかえんの印いん〟と化したりするのだ。

「ご・ざ・る!?」
　正真正銘しょうしんしょうめいの〝ござる〟への言及げんきゅうに、レイダの目が見開みひらかれた。

「（もっとも昔むかし、あまりにも暇ひまだったときに三途の川かわを走はしって渡わたったりしてたので、多少たしょうのコツ・・は会得えとくしていますけれど、くすくす♪・）」
　やや、がに股また。両手りょうてでバランスを取る様さまは、力士りきしか審判員アンパイアの様ようである。

「何なんか言ってるけど、とおくて聞こえないよ？」
　リオレイニアおばさんの、袖そでを引く姪っ子ヴィヴィエラ。
「ふぅ、イオノファラーさま。カヤノヒメさまと、お話はなし出来できますか？」
　簡易魔眼殺ししろめがねをクイと持ち上げる、ガムラン町随一ちょうずいいちのモテ女・・・。

「ちょっと待ってねぇーん。いまタブレットにぃー、お繋つなぎぃいたしまぁーすぅ♪・」
　美の女神イオノファラーが、ふざけている間あいだにも、蛸たこと棒ぼうの絡み合いは・・・・・熾烈しれつさを増し――――ヴァリヴァリヴァヴァヴァヴァヴァッリィィィィッ!!
　ＩＮＴインテリジェンスタレット迅雷ジンライの自衛機能ほうでんが、止まらなくなった。

　ぎゅりゅりゅりゅっりゅりゅっ――――蛸たこの叫さけび。
　振り上げられる太腕うで、もしくは太脚あし。
　ぶぅぅうぅぉぉぉぉぉおんっ――――ずどがぁぁぁん！
　桟橋さんばしに、千切れた蛸の足・・・・・・・が落ちてきた。

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ――――――――――――――――!?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
　叫さけぶ全員ぜんいん。
　太ふとく赤黒あかぐろい蛸足たこあしが、じたばたぶぎゅりゅると――もんどり打つ様・・・・・・・は、とても正視せいしに耐えられるものではなかった。

「うるっせぇっ！　人ひとが折角せっかく、蛸たこの野郎やろうを仕留しとめたってのに、水みずをさすんじゃねーやぁ！　目が覚めちまった・・・・・・・・だろーがぁ！」
　女性じょせいらしい体からだつきへの過渡期かとき、金糸きんしの髪かみの上品じょうひんな守銭奴しゅせんど。
　茅野姫カヤノヒメインザシガミーの、起床きしょうである。

「うへぇ！　今度こんどはさっきと逆ぎゃくに、でけぇ方ほうのカヤノヒメが――シガミーみてぇになっちまったぞ!?」
　驚愕きょうがくの工房長ノヴァド。

「シガミー、起きたのねぇん♪　状況じょうきょうわぁ、お・か・わ・りぃ？・」
　うるせぇーがぁー、「根菜おまえさまに言われるまっでもねぇぜ！」
　おれは長椅子ながいすから、飛びおりた。

　ふぉん♪
『シガミー＞おれがあの蛸野郎を、現でも掻っ捌いてやりゃぁ良いんだろ？』

「迅雷ジンライィー、無事ぶじかぁー？　あとちょっと待て、おれもすぐそっちへ行くから――」
　ピッ――ジジジッツジジィィィィィィィ♪
　取りだした、強化服シシガニャン１０号改ごうかいを着る。

　ヴヴヴゥゥンッ――ズゴォォォゥン♪
　ゴガッチャリ――カッヒュゥーイ♪　
　次つぎに轟雷ごうらいを取りだし、背中せなかを開けた所ところで――
　おれの体からだが、ひるがえるくるりーん♪

　強化服シシガニャンの画面モニタが消え、辺あたりが薄暗うすぐらく――
　ぐらり、すてころん、ばっしゃぁぁぁんっ！

「ばかやろう！　こんな所ところで、ごぼがばごべ――――塩しおっかれぇなっ！」
　おれは水面すいめんに浮いた何なんかの上うえで、盛大せいだいにすっ転ころび――ごぼがばごべー!?
　ふぉん♪
『シガミー＞急に体を返すなってんだ！」
　あーも－、沈しずむ沈しずむぜ。
　凄すげぇ勢いきおいで沈しずんでいくぜ、おれがぁ！

　ふぉん♪
『ホシガミー＞ごめんなさい。
　　　　　　　イオノファラーさまのライブラリを参照したら、
　　　　　　　〝蛸は大根で殴れ〟なんて攻略法が見つかったので、
　　　　　　　急いで迅雷さんの元へ駆けつけたのですけれど、
　　　　　　　もう限界ですわ――へにゃりん♪」

「えー、ごぼがば――そうわのう？　がばげべ？」
　ちっ、おれの姉ほしがみさまは体からだの使つかい方かたがぁ、本当ほんとうに出来できてねぇなぁ！ 
　おれの体からだに、ガタが来ちまってるじゃんか！

　それにおれぁ山育やまそだちで、泳およぎなんざ――――ばちゃばちゃすすすすうすぅい♪
　あれ？　泳およげてやがる？
　そういやぁ神域惑星しんいきで、とんでもなくでけぇ河鱒かわますに追いかけられたときに、スキルを取ったんだった！

　ばしゃばしゃ――水面すいめんまで上がると、何なにかが浮かんでやがる。
　二ふたつの足場あしばが見えた。
　レイダ材ざいの盆ぼんだ――ぱかぁん、ぱかかぁぁん♪
　それを踏みつけ、どうにかこうにか水面すいめんに立った。

「ぜぇはぁぜぇはぁ――――ごっほはぁっ！」
　眼前がんぜんには大蛸おおだこと、大蛸おおだこに突き刺さる・・・・・相棒ジンライ。

　ヴッ――くるくるるっ、ジャッリィィィィィン♪
　おれは錫杖しゃくじょうを、取りだした。