滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

４：龍撃の学院

５１５：央都へようこそ、深遠の囁き御一行さま

　『ガムラン温泉宿』の法被はっぴに、魔女帽子まじょぼうしをかぶっている。
　『ガムラン温泉宿』の法被はっぴの下したに、外套がいとうを着込きこんでいる。
　『ガムラン温泉宿』の法被はっぴの下したには、何なにも着てないように見える。

　温泉宿おんせんやどの法被はっぴを着た、見方みかたによっちゃあ粋いきな女衆おんなしゅうが――
　受付嬢うけつけじょうと根菜こんさいとおにぎりに、引っ立てられて――

「「「し、深遠しんえんの囁ささやき――推参すいさん！」」」
　言ってる場合ばあいか。
　ぽっきゅらぽっきゅららら、「ひっひひぃぃぃぃん？」。
　獲れた野菜やさいや獲物えもののように、子馬の背てんぷらごうに横よこたえられた――
　彼女たちが・・・・・、あまりにも不憫ふびんだったので――

「迅雷ジンライあれ、解ほどいてやれやぁ・――ニャァ♪・」
　轟雷おれの頭あたまに刺さってた、白金の棒ジンライが――カシュカシュッ♪
　短みじかくなってヴォォォォォォゥンと、飛んで行く。

　しかし、〝ガムラン温泉宿おんせんやど〟ってのぁ、何なんの捻ひねりもねぇなぁ。
　おれが生きてた頃ころの日の本もとだって、店みせには洒落しゃれた名前なまえを付けたもんだぜ。

　ふぉん♪
『イオノ＞猪蟹屋ってオサレさんわの？』
　ふぉん♪
『シガミー＞やかましい。ガムラン温泉宿よかマシだろうが？』

　　　§

「本当ほんとうにシガミーちゃんなのっ!?　声こえはシガミーちゃんだけど……久ひさしぶりっ!?」
　驚愕きょうがくのフッカ嬢じょう。
「おぅ、おれだぜ。悪わりぃな、宿やどの仕事しごとで忙いそしいところを呼びつけちまってよ・――ニャァ♪・」
　ガッキュゥゥンと手を差し出したら、乗ってきたので――
　そのまま持ち上げた。

「ううん、全然ぜんぜん。出稼でかせぎぎに来た隣町となりまちの冒険者ぼうけんしゃにまかせてきたから――」
　宿やどの法被はっぴを着たままだし、取る物ものも取り敢えず受付嬢オルコトリアに連れてこられたんだろうなー。
「出稼ぎ・――ニャァ？・」
　ガキュゥン――首くびをかしげてみせる。

「なんでも城塞都市オルァグラムに湧いた魔物まものを、全部狩ぜんぶかり尽くしちゃったんだってさー。それにしてもー、大おっきいねぇー!?　私わたしも乗せてよー！」
　地面じめんから手を振る、深遠の囁きパーティーメンバーその１。
　外套がいとうを着込きこんでる方ほうだ。

　しかし、狩り尽くした・・・・・・だとぉ？
　城塞都市となりまちの筋肉お化けギルドちょうなら、おれが改良かいりょうしてやった一式装備いっしきそうびもあるし――
　殺りかねない気はするな。
　けどそれやっちゃうと確たしかに、次つぎの日から仕事が無くなる・・・・・・・んだよな。
　ガムラン町ちょうの薬草採取やくそうさいしゅの仕事しごとを、おれが全部終ぜんぶおわらせちまって――
　レイダからＦ級エフきゅうクエストを、奪うばっちまったみてぇによ。

「あっ、ずるいっ！　あたしもシガミーちゃんに乗りたい、乗せてっ！」
　おなじく手を振る、深遠の囁きパーティーメンバーその２。
　碌ろくに服ふくを着てねぇ方ほうだ。

　空いた方ほうの手をガッキュゥゥンと、地面したに下ろしてやった。
「「きゃぁー♪」」
　楽たのしそうに乗ってきたから、持ち上げようとしたら――

「ぅぉりゃぁっ！　やぁシガミー、こ・ん・に・ち・わ・あ？」
　鬼娘オルコまで、飛び乗ってきた。
　その一本角いっぽんつのが一瞬青白いっしゅんあいじろく光ひかったのは、どうしてだろう？

　さすがに鬼族オーガの体からだが乗ると、重おもかったけど――ゴッゴォォゥン！
　轟雷おれには強化服おれの体からだの動うごきを大おおきくする、二重の金剛力・・・・・・が有る。

「き、聞いてたのと違ちがってー、シガミーちゃんはオルコトリアとおなじ、鬼族オーガだったのねーぇ？」
　深遠の囁きメやたらとうンバーその２すぎのほう。
　法被はっぴの下したにはさらしと革鎧かわよろい、裾すその短みじかい山袴ズボンなんかをちゃんと着てたが――ギュガチャチャッ♪
　体中からだじゅうに結むすびつけられた匕首あいくちや短刀たんとうや――まさか手裏剣しゅりけんかぁ!?
　轟雷おれの鉄鎧からだにも短刀たんとうが何本なんぼんか、拵こしらえられちゃいるが――
　何なんだぜ、この本数ほんすうわよぉ？。

　ふぉん♪
『＞短刀×１２。ショートソード×２。投げナイフ×３２。用途不明の暗器×６』
　薄着の奴おまえさまわぁ、収納魔法具しゅうのうまほうぐ箱ばこかっ!?

「「「違ちがう！」――わよ」――ぜ・――ニャァ♪・」
　オルコトリアとフッカと、おれの声こえが重かさなった。

「違ちがうの？　けどとっても良いカラダしてるじゃない――どごん、べちこぉん♪」
　収納魔法具しゅうのうまほうぐ箱ばこ娘むすめが、おれの親指おやゆびを素手すでで殴りつけてきた。

「こりゃ、頑丈がんじょうな服ふくと鎧よろいを重かさねて着てるだけだ・・・・・・ぜ・――ニャァ♪・」
　ガッキュゥン、ガガッキュゥゥゥゥンッ♪
　手を揺らさず、全身よろいを揺さぶってみせる。

「服ふくとと鎧よろいを重かさね着……素敵素敵すてきすてき大素敵だいすてきっ！　スィガガミーちゃんは、超素敵ちょうすてきっ♪」
　外套がいとうを着込きこんでる方ほうが、おれの鉄てつの掌てのひらにしゃがみこんだ。
　鉄鎧鬼てつよろいおにの姿すがたを恐おそれるどころか、気に入られたぞ？
　けど酔臥神すいががみてのわ誰だれでぇいっ!?

「スイガガガミミィーちゃぁん？　この鉄鎧てつよろいでーニゲルとー立ち合ったん・だ・よ・ねーえ？」
　だから誰だれが、酔臥神すいがががみみいちゃんだぜ！
　――――こぎりっ！
　鬼娘オルコの自前じまえの金剛力こんごうりきが二の腕うでを、三倍さんばいの太ふとさに膨ふくらませた。
　ブゥォォォンッ――――ゴゴゴッギャガガガァァンッ!!
　くっそ、いきなり胸部装甲板むないたを叩たたいて来やがった！

「おい、なんでそんなに滾たぎってやがるんだぜ・――ニャァ!?・」
　両耳りょうみみを押さえて、うずくまる深遠の囁きフッカたち。
　彼女かのじょらが乗ってるから、両手りょうてが使つかえねぇし――
　反応装甲ばくはつするよろいわぁ、太刀たちを打ち出した直後ちょくごにしか使つかえん。

　ふぉん♪
『＞レイド村での戦いを見せられて以来、勝負を挑む機会をうかがっていたところ、ルリーロやリカルルに各種の立ち会いを自慢された結果。とうとう居ても立っても居られなくなった、のでは？』
　のでわじゃねえーけど、そうなのかぁぁっ？

「まいったっ、降参こうさん！　オルコトリアの勝ちだっ・――ニャァ♪・」
　ごきんっ――ばきぃん！
　太ふとももまでが膨ふくれあがり――鬼娘おにむすめの体からだが倍・・化する！
　二重にじゅうに頑丈がんじょうな服ふくを着てる今いま、どれだけ殴なぐられても痛いたくねぇし――
　轟雷ごうらいのおれを殺ころせるのはやっぱり、ニゲルとルリーロくらいだろう。

　殴なぐられてやるのは構かまわんが、鬼娘かのじょの目的もくてきは試合うこと・・・・・……雌雄しゆうを決けっすることであって――
　轟雷おれを殴なぐりつけることでは無い。

　ひゅごぉぉぉっ――不意ふいの強つよい風かぜ、
　ぼごごごぼわっぁぁぁぁぁぁぁあっ――――!!
　風かぜに煽あおられた、焚き火のような。
　おれたちを、まるごと覆おおった炎ほのおは青かった・・・・。

「「「「ぎゃっ!?　燃えてる!?」」」」
　深遠しんえんの囁ささやきの三人さんにんと、体からだを膨ふくれあがらせた鬼娘おにむすめが――
　おれの手から飛びおり、バラバラに逃げていく。

「はい、そこまで！　何なにをしていますの、オルコトリア？」
　振り向けば、ジトリとした目。
　いまは甲冑かほうも白頭巾ふくめんも取り去り、派手目はでめのドレスに身を包つつむお嬢じょうさま。
　魔物境界線ガムラン最凶さいきょうのご令嬢れいじょうは、とおくの倉庫そうこの天辺てっぺんに登のぼり――仁王立におうだちである。
　あーあー、下したから見たら裾すそがめくれて――

「げふんげふん！」
　おれと一緒いっしょに三人さんにんを出迎でむかえに出たニゲル青年せいねんが、首くびが折れそうな勢いきおいで視線しせんを逸らしたぞ。
　もう少すこしニゲルの気持ち・・・を、酌んでやれやぁ。

「あれ、燃えてない？」
「むしろ寒さむくなかった？」
「なんか青あおいし？」
　蒼白あおじろい命いのちの炎ほのおに晒さらされ続つづける轟雷おれを、ふりかえる三人さんにん。
　おれたちを燃やしてたのは、雑ざつで力ちからない巨大きょだいなだけの狐火きつねびだからな。

「あっれ!?　どうして私わたしは、臨戦態勢りんせんたいせいに？」
　我に返ったらしい鬼の娘オルコトリアがふしゅるると、二の腕うでに溜めた血を開放かいほうした。
　本当ほんとうにどうしたんだぜ、鬼娘オルコわぁ？