滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

４：龍撃の学院

５３７：旧カピパラポテパケギウス領ザンクネリキキマギバネロベネグラムタタラディッシュ新町、町内紛争終結

「この家宝かほうの甲冑かっちゅうは、母ははのお下がり・・・・ですわ。「サイズが合わなくなったから、リカルルちゃんにあげるわぁ♪」とか言って」
　膨ふくらみのある胸板むないたを手甲てっこうでガガンと、叩たたいてみせるご令嬢リカルル。
　流石さすがは家宝かほうか、傷一きずひとつ付かない。

「あれ？　それってさぁ、おかしくなぁいぃー？　ルリーロちゃんわぁー、茅野姫かやのひめちゃんくらいのぉー身長しんちょうでしょぉー？・」
　ヴッ――すぽん♪
　おれの頭あたまにしがみ付いていた、御神体まるきのこさまが――
「あら、くすくす♪　どうぞ、よしなに？・」
　てちり。茅野姫ほしがみの頭上ずじょうに、舞い降りた。

　リカルル姫ひめの、赤あかい甲冑かっちゅうを見やる。
　ふぉん♪
『朱狐シリーズ【多目的機動戦闘四足歩行車両】
　古より伝わる最古のアーティファクト』

　気を利かせた迅雷ジンライが、装備かっちゅうの記録ブクマを見せてくれた。
　こいつわぁ、五百乃大角いおのはらの兄神あにがみさまが、作つくったらしい物もので。
　切り結むすんでから１５分ぷんで、攻撃力ＡＴＫが倍ばいになる。

「（とんでもねぇ性能せいのうだがぁ――）」
　装備そうびする人間ひとに合わせて伸び縮む・・・・なんてことわぁ、書いてねぇぞ？
　装備品そうびひんは中肉中背ちゅうにくちゅうぜいなら、大柄おおがらや小柄こがらの幅はばを超えて着られる。
　それが着れなくなったってこたぁ太った・・・か、あるいは――

「するってぇと、ルリーロさまの体からだがぁ――縮ちぢんだってことか？」
　２００歳さいも年としを取りゃぁ、縮ちぢんだりもするだろうが――
　どうも、わからんな。

「そウですね。今イまハ深ふカク考かンがえルのはよしましょう・」
　ふぉん♪
『イオノ＞そーわねん。シガミーだって何もないところから、自分の体を作ったりしたんだから。若返るくらいのことは、起きても不思議はないわねん』

　おれに瓜二うりふたつの、おれの体からだ。
　それに・・・むんずと捕とらられた丸茸さまいおのはらがぁ――すぽん♪
　てちり――またおれの頭あたまの上うえに、戻もどってきやがった。

　　　§

「しかしそれにしても、まさかフォチャカのご両親りょうしんが、あの〝扇杖おうじょうの炎鬼えんき〟と〝針刺《はりさ》し男おとこだっただなんて、思おもいもよりませんでしたわ！」
　驚嘆きょうたんを禁きんじ得ない様子ようすの、リカルルご令嬢れいじょう。

「わ、私わたしもですぅー!?」
　両親たちの二つ名・・・・・・・・に、戸惑とまどいを禁きんじえない様子ようすのフォチャカ嬢じょう。

「お、奥方おくがたさまとお話はなしになられてみては――ヴヴヴヴヴヴウヴッヴッ？」
　蜂はちの魔神まじんルガレイニアが――息いきを吹き返かえした！

「「ひっひぃぃぃぃぃぃいぃっぃいっ!?」」
　フッカと冒険者ぼうけんしゃさまと――
「ぶっひぃぃぃぃいん――蜂はちじゃぁ！　な、何なんという大おおきさぞぉっ!?」
「ぴゃぁっ、怖こわぁいぞぉぉぉぉぉぉお――――――――!!!!」
　おっさんと子爵ししゃくさまが、手に手を取って恐おそれれおののいてる。
　冒険者ぼうけんしゃさまと子爵ししゃくさまは、置いて行かれちまったみてーだぜ。

　ふぉん♪
『＞そのようですね。今、馬車が停止しました。じきに、そちらへ戻ると思われます』
　やれやれだ、よーっぽど怖こわかったんだろうぜ。
　仮かりにも子爵ししゃくともあろう者ものの、じつに情なさけない姿すがた。
　目頭めがしらを押さえつつも助たすけ起こそうと、蜂女ルガさんが――ヴヴヴヴヴヴヴヴッ♪

「「うっぎゃぁぁぁぁっ、蜂はちぃがぁ！」
「こっち来たぞぉぉぉっ！」
「怖こわぁっ！　でっかぁっ！」
　やれやれだ、よーっぽど蜂はちがぁ、怖こわかったんだろうなぁ。
　フッカと冒険者ぼうけんしゃさまと、おっさんと子爵ししゃくさまが。
　それぞれひしと、抱き合ってやがる。

　こいつらわぁ、仲なかが悪わりいわけじゃねぇーっぽいぞ。
　ふぉん♪
『＞そのようですね。そもそも大事な娘、いえ息子を修行に預けているような間柄ですし』

「にゃぁぁぁん？」
　お猫ねこさまが、また後うしろ足あしで立ち上がり、こっちを見てる。

「（おいどうする？）」
　猪蟹屋ししがにやとしちゃ完全自律型かんぜんじりつがた裏天狗うらてんぐか、予備よびの緊急用きんきゅうよう女神像めがみぞうでも欲しいところだがよ。
　この場合ばあい、仕方しかたなくね？

　ふぉん♪
『イオノ＞そうわねん。今は兎に角、央都の揉め事を解決するのが先決よねん。超茸鍋のまえの小事如き、あたくしさまの料理番ならかっさばいて見せなさいな♪』

　女神おまえさまの料理番りょうりばんてのわぁ、通りが良い・・・・・から言ってたが――
　大分だいぶ、定着ていちゃくしてきたぞ。
　実際じっさいにおれぁ、この現うつつを守まもるため――
　「おれがお前まえさまに、旨うまい飯めしを食わせてやる」と、約束やくそくしたし――
　毎日まいにち、欠かさず飯めしを作つくってやっている。

　ふぉん♪
『イオノ＞〝たらふく〟が抜けてるわよ？』
　うるせぇ。

「なぁんかさ、これ。今度こんどこそ、抜けそうな気がする・・・・・・・・・わね？」
　嬉々ききとした狐耳かおが、突き刺さる剣けんへ向く。
「お止めください、お嬢じょうさま。そのようなバランスが悪わるい剣けんに触れると、お怪我けがをなさいますので――ヴヴヴヴヴヴウヴヴヴィ？」
　だから何なんで犬歯けんしを覗のぞかせて、悪わっるい面つらして笑わらってんだ？

「ふぅ。ま、全まったく……リカルルさまは、自分じぶんがどれだけ可憐なのか・・・・・……自覚じかくしてくれないと……ぼそり……困こまるよ」
　ふらふらと起き上がる、青年せいねんニゲル。

「んゆぐひゅぎょっぴゃぁぁぁぁぁっ――――!?!?!?」
　ニゲルの剣けんを引き抜き持ち上げようと、顔かおを真っ赤にするご令嬢れいじょう。
　あられもない渾身こんしんの蟹股がにまたに、可憐要素かれんようそは微塵みじんもない。

　仮かりにもこの中なかじゃ、一番高貴いちばんこうきとされるご令嬢れいじょうが――
　んゆぐひゅぎょっぴゃぁぁぁぁぁっは、無い・・。

「はいはい、リカルルさま。危あぶないから手を、お離はなしになってくださませ――ヴヴヴヴヴッ♪」
　近寄ちかよろうとするニゲル青年ふとどきものを、足蹴あしげにして退どかす蜂女ルガレイニア。

「にゃぁ♪」
「みゃにゃがぁ♪・」
「ひっひぃぃん？」
　猫馬がうるせぇ。
「「「「がやがやがやや、ざわざわざわわ!?」」」」
　子供たちがきどもも、うるせぇ。

　室内しつないの状況じょうきょうが混迷こんめいを極きわめた、そのとき――
「――――――――ッシュッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン――ドガンッ！」
　壁天井かべてんじょうから――凄すさまじい轟音ごうおんが！

「なんだぁ!?　うるせ――――――ぇ!?」
　一斉いっせいに外そとに出ると――轟音それは天から・・・轟とどろいていた。

「雷かみなりかぁっ――!?」
　見上みあげた雲間くもまに白線はくせんが、ゆっくりと引かれていく。

「ありゃあ、何なんだぜ？」
　ふぉん♪
『＞この世界で音速の壁を越えるのは、我々以外に一人しか居ません』

「ルリーロ……名代みょうだいさまの、山菜束の様な魔法杖ルードホルドかっ!?」
　白線すじは央都側おうとがわから、伸びている・・・・・。
　今いまは政まつりごとがらみで、コントゥル辺境伯家へんきょうはくけ央都別邸おうとべっていで隠遁いんとんしてるはずじゃ？
　白線まほうつえは真っ直ぐ空そらを二分にぶんし――雲くもの向こうへ消え去った。

「みゃにゃやーにゃ、みゃにゃにゃがみゃにゃや♪」
　おう、なんだぜ。お猫ねこさまよ。

「みゃぎゃにゃがぁ。――――、――♪・」
　おにぎりがこっちへ向けた、木板きいたを見た。

『「アダマンタイトの長い奴。今まで見た二つの内の、もう一つはアレにゃぁ♪」と言ってるんだもの』
　オリハルコンって聞いてた気もしたが、奥方さまルリーロめ。
　謀たばかりやがったなぁ。