滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

４：龍撃の学院

５６２：火山ダンジョンふたたび、建国の戦いもふたたび

　崩くずれ落ちる岩肌いわはだ。
　結局けっきょくおれは、ノヴァドの金槌かなづちで発掘された・・・・・んだが。
　その穴あなから、ダンジョンの入り口ぐちは崩落ほうらくした。

　ドッゴゴゴオッ、ゴオゴゴゴゴゴゴゴゴゴ、ガララッラッ、ガンゴンゴゴガガン――――――――!!!

　揺れる地面じめんに、もんどり打ちながらも――
　火山かざんから離はなれ、振り返かえった。
　火口かこうを広ひろげ溶岩ようがんを吹き上げ、現あらわれるのは――うねる太足ふとあし。
　それは――

「組成そせイヲ検出けんシゅつ、解析終了かいせキしゅうりょうしマした。巨木きょボくト９９・９９９９９％同質どウしつデす・」
　おれの後うしろ頭あたまから、相棒あいぼうの声こえがする。
「このやろーぉ、とうとう生えちまった・・・・・・かぁ！――ニャァ♪」
　めきめきと生え伸びる所ところは、普通ふつうの木にも思おもえるが――
　普通ふつうの木は、おれたち目掛めがけて幹みきや太枝ふとえだを、振り下ろしたりしねぇ・・・・・・・・・・！

「まるで蛸之助たこのすけじゃねぇーかよっ!?――ニャァ♪」
　吸盤きゅうばんもないし、太枝ふとえだは直ぐに炭すみになる。
　だが崩くずれるそばから、新あらたな太枝ふとえだが芽吹めぶき――
　バキバキョ、メキョキョギッと何処どこまでも、這い進すすんでくる。
「逃げろぉ！――ニャァ♪」

「まったくもう、大方おおかた、迷路めいろまえの通路つうろで転ころびでもしで、〝木龍きりゅうの卵たまご〟を落っことしたのですわっ！」
　腰こしの赤あかベルトから、小ちいさな取っ手を・・・・引き出し――ヴォヴゥゥン！

「音声入力おんせいにゅうりょく、朱狐しゅぎつねシリーズ装着そうちゃく！」
　リカルルが取っ手レバーを押すと・・・、彼女リカルルの合成音声こえがして――
　パァァァァッ――――カシャカシャしゅるるるっパチパチン♪
「――ふぅ、さっぱりしましたわっ！」
　身につけていた狐面の甲冑しゅぎつねシリーズ一式いっしきを、一瞬いっしゅんで派手はでなドレス姿すがたに着替きがえ――
　更にもう一度・・・・・・、甲冑かっちゅうに着替きがえたのだ。

　つまり変身へんしんベルトに甲冑一式しゅぎつねいっしきを、軽かるく整備せいびし直なおし――
　汗あせや土草つちくさで汚よごれた甲冑かっちゅうと、小袖こそでに袴はかまに褌ふんどしも――
　綺麗きれいさっぱりした、というわけで。

「おーぉーい！　おれたちも全員ぜんいん、猪蟹屋装備みせのふくを着てくれやぁ――！」
　着替きがえ方かたは口くちを酸っぱくして、何度なんどか教おしえた。
　パァパァパパパッパッァァァッ――しゅるん、しゅるるるるうるるるるっ♪
　子供こどもたちを含ふくむ、いつもの連中れんちゅうが――猪蟹屋装備がんじょうなふくへと着替きがえていく。

　ノヴァドやエクレアは、甲冑姿かっちゅうすがたに。
　ニゲルはどういうわけか、給仕服メイドふくに。
　ふぉん♪
『＞どうやら服を取り違えたようです。ある程度のサイズ変更は自動で行われるので――破けたりすることは無いと思われますが』

　メキメキョ、ウゾゾゾゾゾッ――――ぽきゅごむんっ♪
　おにぎりが片足かたあしを巨木きょぼくの根に払はらわれそうになり、盛大せいだいにこけた。

「ぶはハっはははッ、ニゲル君くン。良いわネ、想像以上そうゾういじょうニ似合ってル・・・・・！・」
　ウケケケッケケッと白目を剥いたまま・・・・・・・・、青年ニゲルをからかう丸茸まるきのこが――
　ガチャッリィィン♪
　抱かかえていた女神像めがみぞうの土台どだいから、すっぽ抜けた・・・・・・。

「あら本当ほんとうですわね、サイズが小ちいさいですけれど、似合にあっていますわね？」
　良かったなニゲル、姫ひめさんがことのほか喜よろこんでくれてるぞ？
　そして、サイズが〝小さい・・・〟ってことは――
　取り違ちがえた相手あいては、おそらく少女しょうじょメイド・タターだ。

「格納する服しまうふくを間違まちがえたな。悪わりぃ、ひとまずソレで戦たたかってくれやぁ――ニャァ♪」
　これで青年ニゲルが素足すあいを晒さらしていたら、蜂女ルガさんが即死そくししてた所ところだが――
　収納魔法具付しゅうのうまほうぐつきの腕時計うでどけいは、良い仕事しごとをした。

　元々もともとニゲル青年せいねんが着ていた、黒くろい細身ほそみの制服ふく。
　その上うえから給仕服きゅうじふくを、一式着込いっしききこんだ形かたちになってる。

「なんか妙みょうに、様さまになってやがるな？」
　見方みかたによっちゃ羽織はおりみてぇにもみえるしな。
　もともとニゲルは、猪蟹屋二号店ししがにやにごうてんの店長てんちょうをしてる間あいだは――
　ずっとあんな、ひらひらした白しろいの（しかも猫耳族ねこみみぞくの耳型みみがたが付いてる）を、頭あたまの上うえに乗せてたし――

「ひゅぅ、びっくりしたけど……結構動けっこううごけるし、このメイド服ふくはちゃんと、もの凄すごく頑丈なんだろ・・・・・・？」
　スタンスタタァンと、後うしろ走ばしりでおれを見る青年せいねん。

　おれたちは崩くずれた火山かざんから離はなれ、森もりへ侵入しんにゅうする。

　ヴォヴォヴォヴォォォォゥン――――♪
　ルガレイニアはレイダとビビビーを乗せた、大おおきな魔法杖まほうつえを飛ばしている。
　本人ルガさんは金剛力パワーアシストもなしに地を、すべるように駆けている。

　顔かおの良い〝盾男エク（新婚レア）〟は姫さんリカルルが背に乗せ、四つ足あしで――先行せんこうする。
　甲冑あの四つ足あしは、相当そうとうやべぇ。
　ふぉん♪
『シガミー＞迅雷おまえ、よくあれを捌ききったな？』
　ふぉん♪
『＞対魔王結界という限定空間での一騎打ちでなければ、翻弄されていたと思われます』
　だなぁ。

「ぅぉぉおぉぉぉぅうっわぁぁぁぁぁっ――――!?」
　ヴォヴォヴォヴォオヴォヴォヴォヴォオヴォヴォ――――♪
「うるさのい――――？」
　ノヴァドは第四師団長だいよんしだんちょうの童わらしが、頭あたまが太ふとい魔法杖つえに付いた金具かなぐに引っかけて、運はこばれてる。

「シガミー、どうせ走ったら・・・・脱げちゃうから、これは返かえしておくよ！」
　ヒラヒラした前掛けエプロンを、青年ニゲルに突っ返かえされた。
　それを受け取り、すぽんと仕舞しまう。
「それを言ったら、その頭あたまの上うえのも落っこち――ねぇな？――ニャァ♪」

　ニゲルはずっと、後うしろを向いたままだ。
　横よこから突き出た木の枝えだを、振り返かえりもせずに背をそらせて・・・・・・避けた。
　いま彼ニゲルは〝勇者の歩みブレイブステップ〟を使つかっていない。
　敵てきに立ち向かうときに限かぎり、彼かれは何処どこまでも加速かそくする。
　今いまおれたちは巨木きょぼくの蛸足たこあしから、逃げている・・・・・。

　多分たぶんだが青年かれは今いま、急激きゅうげきに成長せいちょうしてるんじゃね？

「「ふふ、プリムは最初さいしょの身だしなみで――」」
　右手みぎてにルガレイニア。
　左手ひだりてにニゲル。

「「こほん、可憐かれんさと実用じつようを兼ね備そなえた――」」
　声こえが被かぶってやがる。
　片方かたほうは魔法杖まほうつえに童二人わらしふたりを乗せ、風かぜより早はやく走はしってる。
　もう片方かたほうも後うしろ走ばしりで風かぜより早はえぇし、後ろの様子が・・・・・・見なくてもわかってる。
　既すでにＬＶレベル１００のおれの方ほうが、強つええ筈はずなんだが。
　この二人ふたりの体捌たいさばきに並ならぶ自信じしんは、まだまだねぇ。

「メイドの神髄しんずいとも言え――」
「メイドさんの精神的規範せいしんてききはんとも言え――」
　やっと、違ちがう言葉ことばが出てきたが――

　けどよぉ――ニゲルよぉ。
　お前まえさんは、給仕きゅうじじゃねぇーだろうが。

　　　§

　蓋ふたを開けると、煉獄れんごくの炎ほのおを吹き出す。
　ならその炎ほのおに、高等魔術こうとうまじゅつを掛けてもらう。

　いくぞぉ――いちにのさぁん！
　いまだぜ、フッカァ！
　樹木じゅもくと化していく、長大ちょうだいな炎ほのお。
　かくして央都おうとに、平和へいわが訪おとずれ――

　そんな予定つもりで冒険者ぼうけんしゃパーティー〝深遠しんえんの囁ささやき〟の三人さんにんを、呼んだりもしたんだが。
　唯一無二ゆいいつむにのユニークスキル、〝炎曲えんきょくの苗木なえぎ〟の出番でばんは無くなった。

　何故なぜなら温泉卵おんたまにしようと茹でたら、バカのように大火たいかを吹き出した対魔王結界たいまおうけっかいは――
　超長ちょうなげぇ長銃ひなわを作つくる算段さんだんで――どういう訳わけか、調伏出来ちょうぶくできちまった。

　ふぉん♪
『イオノ＞それねー、煉獄って書いて〝ゲヘナ〟って読むのよん♪』
　拾ひろって懐ふところに突っ込んだ、丸茸まるきのこさまが――すっぽこぉん♪
　またおれの顔かおの横よこに、てちりと顕現けんげんした。

　対魔王結界たいまおうけっかい〝煉獄《ゲヘナ》〟は、既すでに売り物ものにする算段さんだんを顧問秘書マルチヴィルと第一王女殿下ラプトルおうじょが、進すすめると言っていた。
　基本的きほんてきには工房長こうぼうちょうノヴァドに、アダマンタイト特化とっかの鍛冶工房かじこうぼうとして使つかってもらうだけだ。
　それだけで、いつか炎ほのおは弱よわまり、毎度まいどルガレイニアの手を、煩わずらわせなくて済む。
　そして炎ほのおの魔術師まじゅつしフッカに〝煉獄番《ゲヘナばん》〟として、詰めて・・・もらえば万一まんいちが有っても――
　巨木が生える・・・・・・だけで済む。

　メキョメキョメキョキキキキキッ――――ゴドッガァン!!
　まるで蛸たこの脚あしのような、太枝ふとえだがおれをかすめて、うしろへ流ながれた。
　強化服きょうかふくシシガニャンを着ておいて、良かった――迅雷ジンライ！
　ふぉん♪
『＞轟雷を着用しますか？　Ｙ／Ｎ』
　やらいでかぁ！

　目のまえに現あらわれた轟雷ごうらいの鉄鎧の体からだが、バッシャ――ガシャガシャガシャ！
　背中から開いた・・・・・・〝外部装甲てつよろい・轟雷ごうらい〟の、背部はいぶハッチへ飛び込む――ぽぎゅごむん♪
　カヒューィ、ガゴゴンッ！
　隔壁ハッチが閉じられ――ヴュパパパパパパパパッ♪
　真っ暗くらだった目のまえが、明あかるくなった！

　メキョメキョメギギギギギャッ――――太枝ふとえだが背後はいごから迫せまる。
　無数むすうの目レンズが、全部ぜんぶの方向ほうこうを一度いちどに見せてきた。
　一瞬いっしゅんの目眩めまい。

　ガッチャゴッ、チキッ――――ビィィィィィッ！
　おれは振り向きざまに、太刀たちを抜く！
　ギュルルルルルルッ――――――――――――――――ガリリリリリリリリィィィィィンッ!!!
　鞘さやの歯車はぐるまが、火花ひばなを散らす！

　撃ち出される太刀たち――パッコォォォォォオォンッ！
　ふざけた音おのを立てて、振るわれた巨大きょだいな太刀たちは――
　巨木きょぼく・木龍きりゅうに垂しだれ柳やなぎが如ごとく、するりと躱かわされた。

　太枝ふとえだが分かれる所ところに――ギョロッ!?
　強化服シシガニャン程度ていどの大きさ・・・の目玉めだまが、芽吹めぶいた！
　動うごきも速はえぇし、こいつぁ――植物系みためどおりの魔物まものじゃなさそうだぜ。

　少すくなくともネネルド村むらの巨木きょぼくみたいに、生え揃そろってない――
　今いまの若木わかぎの状態じょうたいはなぁ――――！

「お嬢じょうさま。我々われわれは足手あしでまといのようですので、距離きょりを取ります！」
　そう言って自分じぶんも杖つえに乗り――轟雷おれと姫さんリカルルと勇者ニゲルから、大おおきく距離きょりを取るルガレイニア。

　轟雷おれの無数むすうの、外部がいぶカメラが捉とらえるのは――チチチィィッ、ヴュヴュユユゥ♪
　四方八方しほうはっぽうから群むらがる、巨木きょぼくの蛸枝たこえだ。
　ソレを細切こまぎれにしていく、一組ひとくみの男女だんじょ。

　そしてルガレイニアが前掛けエプロンの物入れポケットから取り出したのは――薄くて大きな本・・・・・・・。

　大陸中たいりくじゅうの子供こどもが必かならず、読み聞かされる伝承おはなし。
　彼かのミノタウロースと双璧そうへきをなす、伝説でんせつのなかの伝説でんせつ。
　それは正まさに〝龍りゅう〟と呼ぶべき対象・・で――

『おうさまと、りゅうのまもの』
　その本ほんには、そんな表題タイトルが付けられていた。