579 / 744
5:大森林観測村VSガムラン町
579:大森林観測所への道、ひとまずレイド村へ
しおりを挟む
「これはこれは、ようこそおいで下さったのう、へへははぁー!」
レイド村の転移陣へと飛ぶと――
レイド村村長が、出迎えてくれた。
ふぉん♪
『人物DB/ナッツバー
レイド村村長』
そうだ、そんな名だった。
「みゃにゃぎゃにゃぁー♪」
かしずくナッツバーの頭に、そっと根菜さまを乗せる――強化服自律型一号。
「こら、失礼だろう、おにぎり……御使いさまぁ」
おにぎりに付き従う青年が、そっと村長の頭の上から――根菜さまを回収する。。
「滅相も無いわよっ、従者さまぁ♪ お構いなくぅ?」
ニゲルがおにぎりを御使いと呼び、根菜がニゲルを従者と呼ぶのには訳がある。
そんな下手な芝居を打つのは――
「これはこれは、お久しぶりで御座います。女神さまと御使いさまと、その従者の剣士さま♪」
ナッツバー村長の傍らに片膝を突き、組んだ手をむぎゅりと鼻に押し当てる。
ふぉん♪
『人物DB/ナーフ・アリゲッタ
イオノフ教神官にして、レイド村神官長代理
現在サステイン村の教会より出向中』
敬虔なイオノフ教神官女性である彼女――
汝阿符在下駄が、居るからだった。
§
ヴァタタタタ、ヴゥォォン♪
〝泥音〟とかいう飛ぶ板を飛ばす。
「高く飛ばすなよ? また撃ち落とされちまわぁ」
「了解デす」
ブォォォォォ――――ゥン♪
飛ぶ板は秋空を漂う勝ち虫のように、おれたちを見下ろしている。
「――ニゲルさまぁ、ららぁぁん♪――」
ちなみにニゲルの新しい服は、王女殿下から大絶賛された。
「――ちょっと、おにぎりが御使いさまって、どういうことですの?――」
こっちの映像は飛ばした飛ぶ板越しに、ちゃんと届いているようだ。
安心したがカナル型イヤホン越しに喚くな、うるせぇ。
姫さんたちは、大講堂に残っている。
険しい山道を歩かせるわけにはいかんし、万が一のとき、王様や魔導騎士団へ渡りを付けてもらえるからだ。
「それが……ひそひそ……いろいろと有りまして。村長たちの勘違いを訂正するのが……ひそひそ……面倒だったのです」
おにぎりがイオノファラーの御使いさまとかいう話は、レイド村復興作業に先行した一部の奴らしか知らない。
しかし随分と正直だな、リオレイニア。
「「――なるほど?」――ららぁぁん?――」
「ギャッ!? ビステッカ!? なんでこんな辺鄙な、超絶田舎村にっ!?」
出迎えてくれた神官女性の目が、見開かれた。
「ナーフちゃん!? なんでこんな辺鄙な、超絶田舎村に!?」
五百乃大角とそこそこの大食らい勝負をくり広げる、いつも巻き毛がわさわさしてる子供。
そいつが神官女性を、指さした。
ふぉん♪
『人物DB>初等魔導学院1年A組
ビステッカ・アリゲッタ』
弥笥体迦在下駄……ビステッカアリゲタ――ビステッカだったな。
ふぉん♪
『シガミー>〝アリゲッタ〟てのはどこの、お貴族さまだったか?』
ふぉん♪
『リオレイニア>失礼致します。ガムラン町とは央都を挟んで反対側の、大陸最端の辺境伯です』
おれが作った新しい眼鏡は、一行文字を見るだけじゃなくて――
向こうから参加することも出来る。
ふぉん♪
『ルガーサイト改【金剛相】
防御力310。魔術的特性の構成質量をキャンセルする。
装備した者の眼光を抑制すると同時に、
魔術構文の概算化による詠唱時間短縮。
追加機能/使用者の好みに形状変化可能』
すっぽ――こぉん♪
ふぉん♪
『イオノ>それってガムラン町みたいわの?』
「そんなにぃ、むさ苦しい感じにわぁー、見えないけどぉん?」
根菜がおれの頭じゃ無く、リオレイニアの頭の上に降臨した。
次から次へと、余計な手練……根菜技を身につけやがる。
ふぉん♪
『>私かシガミーが同席する場合、〝ルガーサイト改〟の装着者に着陸出来ます』
うーん。ほかにはおにぎりや茅野姫の頭の上にも、飛べたっけか。
「(間違ってもリオに迷惑を、掛けるんじゃねぇぞ?)」
ふぉん♪
『イオノ>わかっています。蜂女ちゃんは〝シガミー御一行様〟の紅一点。優しくしてあげますわよ♪』
こうしてリオに内緒の一行表示も使えるから、この世界や日の本の話も出来――紅一点?
ふぉん♪
『ヒント>紅一点/読み:こういってん。庭園の緑の中に一輪の赤い花が咲いている様子。ひいては多数の中で異彩を放つこと。男性の中に女性が一人居ること』
中級冒険者パーティー『シガミー御一行様』の構成は――
おれとレイダと茅野姫。あとは根菜と迅雷と、リオレイニアだけだ。
あいつは平たい体つきをしていて、岩壁姫なんて異名も有ったりしたが――
他は子供かりで〝女性〟にゃ、程とおい奴ばっかりだぜ――納得しかねぇ。
こうして日々、神々の言葉や、この惑星ヒースのトッカータ大陸共用語なんかを覚えてきた。
話すこととまるで別のことを考えるのは、仏道以前に人として褒められたことじゃねぇんだが。
中々どうして、知恵も増えるし、何より――魔物や化け物とやり合うときの、修行になってる。
「大陸最端の断崖の向こうには……ひそひそ……海があるため外敵の心配はありません」
魔法杖じゃぁ、塩の水の上を飛べねぇんだったな。
理由はミャッドにも、わからんらしいが。
「じゃぁ、冒険者たちしか居ないガムラン町とは、違うのぉねぇん?」
てちてちてち、ぺちり♪
まるで痛くねぇだろうが、頭を叩いてやるなよ。
「はい。大陸全土を支える、一大穀倉地域です」
つまり、のどかな田舎ってことだな。
ふぉん♪
『イオノ>それで何がおいしいの、その土地わぁ?』
ふぉん♪
『リオレイニア>そうですね、全体的に優しくて甘い料理が』
食いもんの話に、なっちまったな。
悪いが根菜さまの食い道楽は、食う前に話を聞く所から始まりやがるから――
すこし相手をしてやってくれやぁ。
「やい、お前ら。そう田舎田舎と捲し立てるんじゃねぇやい! 田舎村の田舎村長が、泣いちゃったじゃんか!」
崩れ落ちる、ナッツバー村長へ手を差し伸べる。
「よ、よよよよ、良いのじゃぁ。がさつな料理番さまぁ~!」
ぷるぷると、しわしわの手を差し出すご老体――いやまてぃ!
「誰がぁ、がさつだってんだぜ!」
差し出されたてを、ぺちりと叩いてやった!
「「こら! どこからどう見てもシガミーは、がさつです」」
くそう。パーティーメンバーから、言い切られたぜ。
そう、おれたちは早速、大森林観測村最寄りの〝レイド村〟までやってきたのだ。
なんでか、子供たちまで引き連れて。
§
「フカフ村なら、この先の寂れた険しい道を、三週間程進むと見えてきますじゃ」
立ち直った村長が、獣道を指し示す。
3週間の道行きか……結構な行軍だぜ?
ふぉん♪
『>我々なら推定、3日から5日で踏破出来ます』
ふぉん♪
『リオレイニア>イオノファラーさまの転移扉が使えるので事実上、兵站の心配は要りません。時間的にも冬の学期が始まる二ヶ月半までの、猶予が有りますし』
受けたクエストには、完了期日の指定は無かった。
それとは別に学院の、勉強の都合があるだけだ。
しかし、前にも言ったが。
本当この五百乃大角一式が、日の本に有ったら――
ふぉん♪
『>はい。概算ですが約1年ほどで、〝天下太平〟出来ます』
前は14年とか言ってなかったか!?
ふぉん♪
『>長長距離狙撃と強化服技術の向上と、私のタレットスキル解放による評価を更新しましたので』
タターは勘定に入れるなよ。
ふぉん♪
『>でしたら約6年ほどかと』
5年を縮める兵力は侮れんが、冗談でも子供を巻き込むな。
ふぉん♪
『>レイダは良いのですか?』
それも考えんといかんのだが、一先ず保留だ。
日の本に戻る方法もねぇし、やるつもりもねぇ天下太平だったが――
レイダを何処まで冒険者として扱うかは、一朝一夕には決められん。
やること一覧に入れといてくれやぁ――
「いやまて、フカフ村? おれたちが行くのは、大森林観測村だろ?」
おれやリオレイニアの目に、表示されているのは、レイド村周辺地図。
「大森林観測村国じゃないのぉ?」
生意気な子供が、余計なことを言う。
「はははっ、フカフ村の先にまず観測所があるんさね。観測村の名前は――何だかって言うのに変えられたっぽいんだけど、ど忘れしちまったたさね♪」
ふぅん。地図を目で先へ動かすと――
女将さんが言ったとおりに、フカフ村と観測所とやらのアイコンが見えた。
「おやこれはっ――まさかっ!? 神罰の商会長さまではござらぬか!」
「いやぁ懐かしいな。隣町のじいさまぁ! まだ生きてたかぁ、あははははっ♪」
ぺっちんぺっちんと、村長の頭をひっぱたく仏罰の商会長。
「知り合いだったのか?」
「まぁね。フカフ村から物を売りに、しょっちゅう来てたし。なんせ人里に出るには必ず、レイド村を通るしか無いからねぇ」
そりゃ、顔なじみにもなるか。
がやがやがやぎゃぎゃ、わいわいわいわっきゃっきゃっきゃっ♪
うるせぇ。おれたちの背後で五月蠅くしてるのは――
おれは振り返り、〝一クラス分の級友たち〟を見た。
がらららん、ぐわららん♪
うるせぇ。何本もの魔法杖が、ぶち当たる音。
「はーい、みなさーん。山道は険しく魔物も出るそうですのでー、特別講師の先生の言うことを良ーく良く聞いて、楽しいクエストにしましょーう!」
線の細い担任教師が――特別講師へ丸投げする。
ふぉん♪
『人物DB>ヤーベルト・トング
初等魔導学院1年A組担任教師』
こんな大所帯で子供たちを一クラス分も引き連れて、険しい山道を行くのは――
相当骨が折れるから、気持ちは超わかるがぁ。
「はいはぁい、はいはぁいぃーん♪ みなさん、おれっちに注目ーしてっ? ねーぇ?」
出たぜ、奇天烈千万。フッカの父親。凄腕の地図屋。
おっさんが素面になるのわぁ元魔導騎士団総大将ルリ-ロさまの、前だけと来てやがる。
「「「「「「「「「「「「「「「はいははーい♪」」」」」」」」」」」」」」」
子供受けは、矢鱈と良いな。
ひゅひゅひゅひゅんっ――――カチャララララッ♪
おっさんが手にしてるのは、小さな槍の束と大量の細縄。
舞い上がる小槍と細縄。
すぽすぽすぽすぽこぉん――大きな腕輪に全部が、仕舞われていく様わぁ――
おれの大道芸よか、手際が良かった。
「「「「「「「「「「「「「「「わわーい♪」」」」」」」」」」」」」」」
受けも良いときてらぁ。
少し悔しいぜ、どーする迅雷!?
ふぉん♪
『>日々精進するしか有りません。せいぜい我々の芸の肥やしにさせて貰いましょう』
おう、面白ぇ技を見せたら記録しとけや!
おっさんのあの道具のせいで、ずっと働きづめだったんだし、文句も言われんだろう。
あとで見返して芸を、盗んでやるぜ――フフフヘヒッ♪
ふぉん♪
『>そうですね。ミギアーフ・モソモソ氏の要求した装備は、規格外の精度を要求されましたし。それくらいの恩恵を受けても、良いと思われます』
ふぉん♪
『>そうだぜ。アレと比べたらこっちは、よっぽど簡単だったぜ』
よっこらせっと――――――――――――ヴヴヴヴヴヴウッ♪
ぽきゅぽこん、ぽきゅぽこん、ぽきゅぽこむん♪
ぽきゅぽこん、ぽきゅぽこん、ぽきゅぽこむん♪
ぽきゅぽこん、ぽきゅぽこん、ぽきゅぽこむん♪
ぽきゅぽこん、ぽきゅぽこん、ぽきゅぽこむん♪
ぽきゅぽこん、ぽきゅぽこん、ぽきゅぽこむん♪
それは一クラス分の、シシガニャン特撃型改。
出しただけで超絶に、喧しかった。
ーーー
勝ち虫/蜻蛉のこと。前にしか進まない不退転の動きから、いくさ事に験の良い虫とされた。
レイド村の転移陣へと飛ぶと――
レイド村村長が、出迎えてくれた。
ふぉん♪
『人物DB/ナッツバー
レイド村村長』
そうだ、そんな名だった。
「みゃにゃぎゃにゃぁー♪」
かしずくナッツバーの頭に、そっと根菜さまを乗せる――強化服自律型一号。
「こら、失礼だろう、おにぎり……御使いさまぁ」
おにぎりに付き従う青年が、そっと村長の頭の上から――根菜さまを回収する。。
「滅相も無いわよっ、従者さまぁ♪ お構いなくぅ?」
ニゲルがおにぎりを御使いと呼び、根菜がニゲルを従者と呼ぶのには訳がある。
そんな下手な芝居を打つのは――
「これはこれは、お久しぶりで御座います。女神さまと御使いさまと、その従者の剣士さま♪」
ナッツバー村長の傍らに片膝を突き、組んだ手をむぎゅりと鼻に押し当てる。
ふぉん♪
『人物DB/ナーフ・アリゲッタ
イオノフ教神官にして、レイド村神官長代理
現在サステイン村の教会より出向中』
敬虔なイオノフ教神官女性である彼女――
汝阿符在下駄が、居るからだった。
§
ヴァタタタタ、ヴゥォォン♪
〝泥音〟とかいう飛ぶ板を飛ばす。
「高く飛ばすなよ? また撃ち落とされちまわぁ」
「了解デす」
ブォォォォォ――――ゥン♪
飛ぶ板は秋空を漂う勝ち虫のように、おれたちを見下ろしている。
「――ニゲルさまぁ、ららぁぁん♪――」
ちなみにニゲルの新しい服は、王女殿下から大絶賛された。
「――ちょっと、おにぎりが御使いさまって、どういうことですの?――」
こっちの映像は飛ばした飛ぶ板越しに、ちゃんと届いているようだ。
安心したがカナル型イヤホン越しに喚くな、うるせぇ。
姫さんたちは、大講堂に残っている。
険しい山道を歩かせるわけにはいかんし、万が一のとき、王様や魔導騎士団へ渡りを付けてもらえるからだ。
「それが……ひそひそ……いろいろと有りまして。村長たちの勘違いを訂正するのが……ひそひそ……面倒だったのです」
おにぎりがイオノファラーの御使いさまとかいう話は、レイド村復興作業に先行した一部の奴らしか知らない。
しかし随分と正直だな、リオレイニア。
「「――なるほど?」――ららぁぁん?――」
「ギャッ!? ビステッカ!? なんでこんな辺鄙な、超絶田舎村にっ!?」
出迎えてくれた神官女性の目が、見開かれた。
「ナーフちゃん!? なんでこんな辺鄙な、超絶田舎村に!?」
五百乃大角とそこそこの大食らい勝負をくり広げる、いつも巻き毛がわさわさしてる子供。
そいつが神官女性を、指さした。
ふぉん♪
『人物DB>初等魔導学院1年A組
ビステッカ・アリゲッタ』
弥笥体迦在下駄……ビステッカアリゲタ――ビステッカだったな。
ふぉん♪
『シガミー>〝アリゲッタ〟てのはどこの、お貴族さまだったか?』
ふぉん♪
『リオレイニア>失礼致します。ガムラン町とは央都を挟んで反対側の、大陸最端の辺境伯です』
おれが作った新しい眼鏡は、一行文字を見るだけじゃなくて――
向こうから参加することも出来る。
ふぉん♪
『ルガーサイト改【金剛相】
防御力310。魔術的特性の構成質量をキャンセルする。
装備した者の眼光を抑制すると同時に、
魔術構文の概算化による詠唱時間短縮。
追加機能/使用者の好みに形状変化可能』
すっぽ――こぉん♪
ふぉん♪
『イオノ>それってガムラン町みたいわの?』
「そんなにぃ、むさ苦しい感じにわぁー、見えないけどぉん?」
根菜がおれの頭じゃ無く、リオレイニアの頭の上に降臨した。
次から次へと、余計な手練……根菜技を身につけやがる。
ふぉん♪
『>私かシガミーが同席する場合、〝ルガーサイト改〟の装着者に着陸出来ます』
うーん。ほかにはおにぎりや茅野姫の頭の上にも、飛べたっけか。
「(間違ってもリオに迷惑を、掛けるんじゃねぇぞ?)」
ふぉん♪
『イオノ>わかっています。蜂女ちゃんは〝シガミー御一行様〟の紅一点。優しくしてあげますわよ♪』
こうしてリオに内緒の一行表示も使えるから、この世界や日の本の話も出来――紅一点?
ふぉん♪
『ヒント>紅一点/読み:こういってん。庭園の緑の中に一輪の赤い花が咲いている様子。ひいては多数の中で異彩を放つこと。男性の中に女性が一人居ること』
中級冒険者パーティー『シガミー御一行様』の構成は――
おれとレイダと茅野姫。あとは根菜と迅雷と、リオレイニアだけだ。
あいつは平たい体つきをしていて、岩壁姫なんて異名も有ったりしたが――
他は子供かりで〝女性〟にゃ、程とおい奴ばっかりだぜ――納得しかねぇ。
こうして日々、神々の言葉や、この惑星ヒースのトッカータ大陸共用語なんかを覚えてきた。
話すこととまるで別のことを考えるのは、仏道以前に人として褒められたことじゃねぇんだが。
中々どうして、知恵も増えるし、何より――魔物や化け物とやり合うときの、修行になってる。
「大陸最端の断崖の向こうには……ひそひそ……海があるため外敵の心配はありません」
魔法杖じゃぁ、塩の水の上を飛べねぇんだったな。
理由はミャッドにも、わからんらしいが。
「じゃぁ、冒険者たちしか居ないガムラン町とは、違うのぉねぇん?」
てちてちてち、ぺちり♪
まるで痛くねぇだろうが、頭を叩いてやるなよ。
「はい。大陸全土を支える、一大穀倉地域です」
つまり、のどかな田舎ってことだな。
ふぉん♪
『イオノ>それで何がおいしいの、その土地わぁ?』
ふぉん♪
『リオレイニア>そうですね、全体的に優しくて甘い料理が』
食いもんの話に、なっちまったな。
悪いが根菜さまの食い道楽は、食う前に話を聞く所から始まりやがるから――
すこし相手をしてやってくれやぁ。
「やい、お前ら。そう田舎田舎と捲し立てるんじゃねぇやい! 田舎村の田舎村長が、泣いちゃったじゃんか!」
崩れ落ちる、ナッツバー村長へ手を差し伸べる。
「よ、よよよよ、良いのじゃぁ。がさつな料理番さまぁ~!」
ぷるぷると、しわしわの手を差し出すご老体――いやまてぃ!
「誰がぁ、がさつだってんだぜ!」
差し出されたてを、ぺちりと叩いてやった!
「「こら! どこからどう見てもシガミーは、がさつです」」
くそう。パーティーメンバーから、言い切られたぜ。
そう、おれたちは早速、大森林観測村最寄りの〝レイド村〟までやってきたのだ。
なんでか、子供たちまで引き連れて。
§
「フカフ村なら、この先の寂れた険しい道を、三週間程進むと見えてきますじゃ」
立ち直った村長が、獣道を指し示す。
3週間の道行きか……結構な行軍だぜ?
ふぉん♪
『>我々なら推定、3日から5日で踏破出来ます』
ふぉん♪
『リオレイニア>イオノファラーさまの転移扉が使えるので事実上、兵站の心配は要りません。時間的にも冬の学期が始まる二ヶ月半までの、猶予が有りますし』
受けたクエストには、完了期日の指定は無かった。
それとは別に学院の、勉強の都合があるだけだ。
しかし、前にも言ったが。
本当この五百乃大角一式が、日の本に有ったら――
ふぉん♪
『>はい。概算ですが約1年ほどで、〝天下太平〟出来ます』
前は14年とか言ってなかったか!?
ふぉん♪
『>長長距離狙撃と強化服技術の向上と、私のタレットスキル解放による評価を更新しましたので』
タターは勘定に入れるなよ。
ふぉん♪
『>でしたら約6年ほどかと』
5年を縮める兵力は侮れんが、冗談でも子供を巻き込むな。
ふぉん♪
『>レイダは良いのですか?』
それも考えんといかんのだが、一先ず保留だ。
日の本に戻る方法もねぇし、やるつもりもねぇ天下太平だったが――
レイダを何処まで冒険者として扱うかは、一朝一夕には決められん。
やること一覧に入れといてくれやぁ――
「いやまて、フカフ村? おれたちが行くのは、大森林観測村だろ?」
おれやリオレイニアの目に、表示されているのは、レイド村周辺地図。
「大森林観測村国じゃないのぉ?」
生意気な子供が、余計なことを言う。
「はははっ、フカフ村の先にまず観測所があるんさね。観測村の名前は――何だかって言うのに変えられたっぽいんだけど、ど忘れしちまったたさね♪」
ふぅん。地図を目で先へ動かすと――
女将さんが言ったとおりに、フカフ村と観測所とやらのアイコンが見えた。
「おやこれはっ――まさかっ!? 神罰の商会長さまではござらぬか!」
「いやぁ懐かしいな。隣町のじいさまぁ! まだ生きてたかぁ、あははははっ♪」
ぺっちんぺっちんと、村長の頭をひっぱたく仏罰の商会長。
「知り合いだったのか?」
「まぁね。フカフ村から物を売りに、しょっちゅう来てたし。なんせ人里に出るには必ず、レイド村を通るしか無いからねぇ」
そりゃ、顔なじみにもなるか。
がやがやがやぎゃぎゃ、わいわいわいわっきゃっきゃっきゃっ♪
うるせぇ。おれたちの背後で五月蠅くしてるのは――
おれは振り返り、〝一クラス分の級友たち〟を見た。
がらららん、ぐわららん♪
うるせぇ。何本もの魔法杖が、ぶち当たる音。
「はーい、みなさーん。山道は険しく魔物も出るそうですのでー、特別講師の先生の言うことを良ーく良く聞いて、楽しいクエストにしましょーう!」
線の細い担任教師が――特別講師へ丸投げする。
ふぉん♪
『人物DB>ヤーベルト・トング
初等魔導学院1年A組担任教師』
こんな大所帯で子供たちを一クラス分も引き連れて、険しい山道を行くのは――
相当骨が折れるから、気持ちは超わかるがぁ。
「はいはぁい、はいはぁいぃーん♪ みなさん、おれっちに注目ーしてっ? ねーぇ?」
出たぜ、奇天烈千万。フッカの父親。凄腕の地図屋。
おっさんが素面になるのわぁ元魔導騎士団総大将ルリ-ロさまの、前だけと来てやがる。
「「「「「「「「「「「「「「「はいははーい♪」」」」」」」」」」」」」」」
子供受けは、矢鱈と良いな。
ひゅひゅひゅひゅんっ――――カチャララララッ♪
おっさんが手にしてるのは、小さな槍の束と大量の細縄。
舞い上がる小槍と細縄。
すぽすぽすぽすぽこぉん――大きな腕輪に全部が、仕舞われていく様わぁ――
おれの大道芸よか、手際が良かった。
「「「「「「「「「「「「「「「わわーい♪」」」」」」」」」」」」」」」
受けも良いときてらぁ。
少し悔しいぜ、どーする迅雷!?
ふぉん♪
『>日々精進するしか有りません。せいぜい我々の芸の肥やしにさせて貰いましょう』
おう、面白ぇ技を見せたら記録しとけや!
おっさんのあの道具のせいで、ずっと働きづめだったんだし、文句も言われんだろう。
あとで見返して芸を、盗んでやるぜ――フフフヘヒッ♪
ふぉん♪
『>そうですね。ミギアーフ・モソモソ氏の要求した装備は、規格外の精度を要求されましたし。それくらいの恩恵を受けても、良いと思われます』
ふぉん♪
『>そうだぜ。アレと比べたらこっちは、よっぽど簡単だったぜ』
よっこらせっと――――――――――――ヴヴヴヴヴヴウッ♪
ぽきゅぽこん、ぽきゅぽこん、ぽきゅぽこむん♪
ぽきゅぽこん、ぽきゅぽこん、ぽきゅぽこむん♪
ぽきゅぽこん、ぽきゅぽこん、ぽきゅぽこむん♪
ぽきゅぽこん、ぽきゅぽこん、ぽきゅぽこむん♪
ぽきゅぽこん、ぽきゅぽこん、ぽきゅぽこむん♪
それは一クラス分の、シシガニャン特撃型改。
出しただけで超絶に、喧しかった。
ーーー
勝ち虫/蜻蛉のこと。前にしか進まない不退転の動きから、いくさ事に験の良い虫とされた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
『悪魔クロとやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は秘密の力で人間の頂点を狙う』
なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。
スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、
ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。
弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、
満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。
そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは――
拾ってきた野良の黒猫“クロ”。
だが命の灯が消えかけた夜、
その黒猫は正体を現す。
クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在――
しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。
力を失われ、語ることすら封じられたクロは、
復讐を果たすための契約者を探していた。
クロは瀕死のソラと契約し、
彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。
唯一のスキル《アイテムボックス》。
そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、
弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。
だがその裏で、
クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、
復讐の道を静かに歩み始めていた。
これは――
“最弱”と“最凶”が手を取り合い、
未来をやり直す物語
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
50歳元艦長、スキル【酒保】と指揮能力で異世界を生き抜く。残り物の狂犬と天然エルフを拾ったら、現代物資と戦術で最強部隊ができあがりました
月神世一
ファンタジー
「命を捨てて勝つな。生きて勝て」
50歳の元イージス艦長が、ブラックコーヒーと海軍カレー、そして『指揮能力』で異世界を席巻する!
海上自衛隊の艦長だった坂上真一(50歳)は、ある日突然、剣と魔法の異世界へ転移してしまう。
再就職先を求めて人材ギルドへ向かうも、受付嬢に言われた言葉は――
「50歳ですか? シルバー求人はやってないんですよね」
途方に暮れる坂上の前にいたのは、誰からも見放された二人の問題児。
子供の泣き声を聞くと殺戮マシーンと化す「狂犬」龍魔呂。
規格外の魔力を持つが、方向音痴で市場を破壊する「天然」エルフのルナ。
「やれやれ。手のかかる部下を持ったもんだ」
坂上は彼らを拾い、ユニークスキル【酒保(PX)】を発動する。
呼び出すのは、自衛隊の補給物資。
高品質な食料、衛生用品、そして戦場の士気を高めるコーヒーと甘味。
魔法は使えない。だが、現代の戦術と無限の補給があれば負けはない。
これは、熟練の指揮官が「残り物」たちを最強の部隊へと育て上げ、美味しいご飯を食べるだけの、大人の冒険譚。
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。
もる
ファンタジー
剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる