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5:大森林観測村VSガムラン町
578:大森林観測所への道、うららかな春のめざし?
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うららかな春の日差し……じゃねぇ。
初等魔導学院の教育課程も、その大部分を消化し……てねぇし。
「そレでも、この一週間ハ随分ト休めたノでは、シガミー?」
{(そりゃ、シガミーだけだろうが!)}
この一週間、天狗と烏天狗は昼夜問わず、出ずっぱりだったじゃんか!
この話は大森林に向けて飛ばしておいた飛ぶ板が、撃ち落とされた所から始まる。
§
「大方、二首の大鷲にでも、とっ捕まって壊されたんだろぅ?」
おれやルコルも城塞都市の渓谷で、あいつらに襲われたからな。
ふぉん♪
『>いえそれが。今わの際のバースト通信で送られてきた、キルカメラ映像に人影が』
ヴゥオォン♪
映し出されたのは、モコモコとした大きな森。
その木々の上に立つ人影が――パッ!
拡大されたのは――長い棒を持つ……髪の長い女。
パッ――女が棒の先から吹き出したのは、七色の噴煙。
視界が遮られ、再び映し出される――大きな森。
繰り返される画像は、三枚きり。
「どーいぅ?」
「さア?」
「このピンク色とか紫とかの、カラフルな煙わぁ何わのぅ?」
わかるかぃ。
森に住む誰かが、攻撃してきたことしかわからんわい。
「おや、シガミー。何を見ているのですか?」
そんな声に一斉に、振り向くと――
蜂っ気がすっかり落ちた、美の権化がそこに居た。
§
「あちゃぁー!? この〝空から大森林を見ていた魔法具〟は、あんた達が飛ばしたんだね?」
映像をリオに見せたら、女将さんに告げ口され――
やんわりと、怒られる羽目になった。
大講堂の隣に建てた板場。干し魚を焼いてた女将さんが――
前掛けを外し、真面目な顔で腕組みをした。
何でも大陸二つ目の国である、〝大森林観測村〟とやらは――
三人の手練れによって、守られているらしくて――
「しかもその中の一人は、かつて悪逆令嬢と恐れられた――あたしの……知り合いさね」
とおい目をする女将さん。
その知り合いのことを話すたびに、そんな顔をするけど――
一体、何を見ているんだ?
「こうなると……空から行くのは、やめた方が良さそうだね。商談する前から、話がこじれちまうさね」
又、とおい目。
「つまり話を、拗らせるような相手ってことか?」
こくりと頷くコッヘル婦人の目が一瞬だけ、ガムラン代表を見た。
たまたまだと思ったが、窓際まで行き――
とおい目で流れる雲を眺め、長ーい息を吐かれた。
ふぉん♪
『イオノ>ふふん、女の勘がこう言ってるわね。彼の地には知り合いがいて、その知り合いは限りなく厄介で。ひょっとしたら、お姫ちゃんと系統が似ていると』
皿に山積みの切った野菜を凝視し、そんなことを言われてもな。
お前さまにわかるのは精々、献立くらいのものだろぉが。
あーあー、ゴロロロロロロォ♪
さっきまで天気が良かったのに、雨雲が出てきやがったぞ。
不吉にも、程があるだろがぁ。
こじれる前に話を付けよう、と言う話になり――
急遽おれたちは出発の準備を、させられる羽目になったのだ。
§
出発前の準備として、猪蟹屋予定地……いや工房長の――
〝アダマンタイト工房〟の改装を――天狗に依頼された。
竈・煉獄を雨ざらしには、しておけねぇから仕方がねぇ。
けど万が一のときの為に、フッカや〝深遠の囁き〟の二人も控えることになるからと――
リオレイニアによる間取り案を、十数回も書き直させられた。
王女殿下や顧問秘書や、タター測定所に入り浸っていた、女性の学者方たちも参加し――
漸くのことで完成した、間取りの図面。
その再現には辺境伯令嬢や、鬼の受付嬢や、女将さんの横やりも入って――
完成まで、三日も掛けさせられた。
さて、出来たばかりのアダマンタイト工房。
大量に作った客間に陣取っているわけだが。
昨夜の寝心地は、実に快適だった。
従業員や工房利用者向けの宿泊施設は、階を分けて――
男女それぞれ、8部屋ずつ用意した。
これだけ有れば、一部屋くらい借りても良いだろう。
フヒハハヒッ♪
「何とおれさまわなぁ、二・度・寝をしてやるつも――むにゃぁ♪」
すっぽ――こぉん♪
てちりとおれの鳩尾に降り立つのは、御神体さま。
「女将さんがぁ出かけてる間のぉガムラン町のおー、ご飯事情がぁ心配じゃね?」
くそう、うるせぇ。おれぁ眠ぃ。
「静かにしとけ、おれぁ寝――すやぁ♪」
いやまて、今回のクエストの道行きには、どうしたって関係者である女将さんには、フカフ村へ里帰りしてもらう必要があるんだっけかぁ?
「むにゃぁ――ご飯事情だぁ? 飯処がぁ、手薄になるとでも言――すやぁ♪」
ふぉん♪
『イオノ>これは由由しき事態ですわよ!』
ソコまでのことじゃぁねーと、思うがぁ――すやぁ♪
ふぉん♪
『>コッヘル夫人だけでなく、央都に滞在中のニゲルさんも同行する予定です。ガムラン町の屈強な連中の胃袋を、完全には賄えない懸念があります』
あーそっか。猪蟹屋二号店のニゲルも、念のため付いてきてもらうんだった……けかぁ?
となるとネコアタマ青年や、二号店の給仕たち。
ウチの従業員たちに、迷惑を掛けることには……なりそうかぁ?
コンコン♪
「(お休みの所、大変失礼致します)」
誰か来た……ぜ。
「入ってまぁーす♪ 張り切って、どーぞーぉ?」
ガチャリ♪
扉を開けて入ってきたのは……見なくても、声でわか――むにゃ、ぐぅ♪
「ご安心下さいませ、皆さま。ププークス♪」
出たな、星神さ――すやぁ♪
こつこつこつ、どかどかどかりっ♪
おれの寝床に腰掛ける重量……んうぅうぅー!?
こりゃ星神さまの――重さじゃねぇ?
「クスクス、我が神域食堂はコッヘル夫人を料理長として、お招きすることとなりましたわ♪ ププークス♪」
ぐぅ……確かに神域惑星を挟めばぁ、ガムラン町との行き来が――
お猫さまの転移扉一枚で……済むことになるかぁ?
ふぉん♪
『>はい。女神像の設置されていないフカフ村への道中でも、女将さんを無料でガムラン町へ送り届けることが可能です』
「ひゃぁ、ほっひへふはいほほひゃっへふれひゃぁ――むにゃぁ♪」
「あっはははっ♪ 何言ってるかわからないよ、シガミー! とっとと起きた起きた、朝飯にするよっ♪」
たたき起こされたおれが、秘密の通路へ逃げ込むやいなや――
すっぽ――こぉん♪
「じゃぁ、シガミーは寝てて良いわよ。その代わり、烏天狗を借りるわよぉぅん♪」
追ってきた女神御神体に、そんな提案を持ちかけられた。
ふぉん♪
『ホシガミー>神域食堂とシームレスに行き来出来る、木さじ食堂の内扉を作って下さいな?』
そんな難しいことわぁ――ふぉん♪
『シガミー>誰でも何でも構わん。もう好きにしてくれやぁー、おれぁ寝』
――ぐぅすやぁ♪
二つ返事で、やらされそうな仕事の一切合切を――
烏天狗に、押しつけた。
§
大森林最寄りの村は、フカフ村だ。
例の女神像に取り付けられる転移扉があれば、移動は一瞬だ。
つまりどんな辺境であろうと、その道中だろうが関係ない。
だが魔物境界線の綻びのような、大辺境に女神像は設置されていないらしく――
最寄りの女神像があるレイド村から、深い山道に入る必要があり――
女神像を、大森林がある女神像ネットワーク未敷設地域に――
設置しなければならないのだ。
「けど女将さんも村に帰るのは随分と、久しぶりということですので――コォン♪」
「くすくすうふふっ♪ 地勢や地理や情勢の把握に長けた、旅の専門家に来ていただきましたわぁ――ココォーン♪」
コントゥル母娘が、狐耳をピクピクと動かし――戸口から、こっちを見てやがる。
地勢や地理や情勢の把握に長けた、旅の専門家だとぉ?
そんな奴に心当たりは、一人しかいねぇ。
とても寝起きにわぁ、合いたくはない手合い。
狐耳親子の背後から、ぬっと飛び出す長い横髭。
「出たわねっ! 二つ名持ちのぉ、面白有名人♪」
色めき立つ、根菜。
「決して有名などではございませんが、この針刺し男ニードラー! ルリーロさまからのご依頼、見事やり遂げてご覧に入れましょうぞ――キリッ!」
あー、辺境伯名代のまえだと、しゃっきりとしてるんだな。
「サインちょーだい! このお店、〝アダマンタイト工房〟に飾るからさっ♪」
〝アダマンタイト工房〟だとぉう?
ひねりのねぇ名前だぜ。何なら猪蟹屋鍛冶事業所でも、構わんが?
さらさらさらららっ――♪
『アダマンタイト工房さんへ
――針刺し男ニードラー
光陣暦132年㊑月◇日』
おっさんが書いた二つ名は、工房の待合室へ早速飾られた。
「不肖、針刺し男にお任せいただければ、〝大森林〟すらも恐るるに足りません――ですが、用意していただきたい物が御座います」
頭を垂れる、針刺し男。
おっさんが用意してくれと頼んできた装備品や道具に、殊の外、苦労させられ――
烏天狗役のぼくは4日程、働きづめになった。
初等魔導学院の教育課程も、その大部分を消化し……てねぇし。
「そレでも、この一週間ハ随分ト休めたノでは、シガミー?」
{(そりゃ、シガミーだけだろうが!)}
この一週間、天狗と烏天狗は昼夜問わず、出ずっぱりだったじゃんか!
この話は大森林に向けて飛ばしておいた飛ぶ板が、撃ち落とされた所から始まる。
§
「大方、二首の大鷲にでも、とっ捕まって壊されたんだろぅ?」
おれやルコルも城塞都市の渓谷で、あいつらに襲われたからな。
ふぉん♪
『>いえそれが。今わの際のバースト通信で送られてきた、キルカメラ映像に人影が』
ヴゥオォン♪
映し出されたのは、モコモコとした大きな森。
その木々の上に立つ人影が――パッ!
拡大されたのは――長い棒を持つ……髪の長い女。
パッ――女が棒の先から吹き出したのは、七色の噴煙。
視界が遮られ、再び映し出される――大きな森。
繰り返される画像は、三枚きり。
「どーいぅ?」
「さア?」
「このピンク色とか紫とかの、カラフルな煙わぁ何わのぅ?」
わかるかぃ。
森に住む誰かが、攻撃してきたことしかわからんわい。
「おや、シガミー。何を見ているのですか?」
そんな声に一斉に、振り向くと――
蜂っ気がすっかり落ちた、美の権化がそこに居た。
§
「あちゃぁー!? この〝空から大森林を見ていた魔法具〟は、あんた達が飛ばしたんだね?」
映像をリオに見せたら、女将さんに告げ口され――
やんわりと、怒られる羽目になった。
大講堂の隣に建てた板場。干し魚を焼いてた女将さんが――
前掛けを外し、真面目な顔で腕組みをした。
何でも大陸二つ目の国である、〝大森林観測村〟とやらは――
三人の手練れによって、守られているらしくて――
「しかもその中の一人は、かつて悪逆令嬢と恐れられた――あたしの……知り合いさね」
とおい目をする女将さん。
その知り合いのことを話すたびに、そんな顔をするけど――
一体、何を見ているんだ?
「こうなると……空から行くのは、やめた方が良さそうだね。商談する前から、話がこじれちまうさね」
又、とおい目。
「つまり話を、拗らせるような相手ってことか?」
こくりと頷くコッヘル婦人の目が一瞬だけ、ガムラン代表を見た。
たまたまだと思ったが、窓際まで行き――
とおい目で流れる雲を眺め、長ーい息を吐かれた。
ふぉん♪
『イオノ>ふふん、女の勘がこう言ってるわね。彼の地には知り合いがいて、その知り合いは限りなく厄介で。ひょっとしたら、お姫ちゃんと系統が似ていると』
皿に山積みの切った野菜を凝視し、そんなことを言われてもな。
お前さまにわかるのは精々、献立くらいのものだろぉが。
あーあー、ゴロロロロロロォ♪
さっきまで天気が良かったのに、雨雲が出てきやがったぞ。
不吉にも、程があるだろがぁ。
こじれる前に話を付けよう、と言う話になり――
急遽おれたちは出発の準備を、させられる羽目になったのだ。
§
出発前の準備として、猪蟹屋予定地……いや工房長の――
〝アダマンタイト工房〟の改装を――天狗に依頼された。
竈・煉獄を雨ざらしには、しておけねぇから仕方がねぇ。
けど万が一のときの為に、フッカや〝深遠の囁き〟の二人も控えることになるからと――
リオレイニアによる間取り案を、十数回も書き直させられた。
王女殿下や顧問秘書や、タター測定所に入り浸っていた、女性の学者方たちも参加し――
漸くのことで完成した、間取りの図面。
その再現には辺境伯令嬢や、鬼の受付嬢や、女将さんの横やりも入って――
完成まで、三日も掛けさせられた。
さて、出来たばかりのアダマンタイト工房。
大量に作った客間に陣取っているわけだが。
昨夜の寝心地は、実に快適だった。
従業員や工房利用者向けの宿泊施設は、階を分けて――
男女それぞれ、8部屋ずつ用意した。
これだけ有れば、一部屋くらい借りても良いだろう。
フヒハハヒッ♪
「何とおれさまわなぁ、二・度・寝をしてやるつも――むにゃぁ♪」
すっぽ――こぉん♪
てちりとおれの鳩尾に降り立つのは、御神体さま。
「女将さんがぁ出かけてる間のぉガムラン町のおー、ご飯事情がぁ心配じゃね?」
くそう、うるせぇ。おれぁ眠ぃ。
「静かにしとけ、おれぁ寝――すやぁ♪」
いやまて、今回のクエストの道行きには、どうしたって関係者である女将さんには、フカフ村へ里帰りしてもらう必要があるんだっけかぁ?
「むにゃぁ――ご飯事情だぁ? 飯処がぁ、手薄になるとでも言――すやぁ♪」
ふぉん♪
『イオノ>これは由由しき事態ですわよ!』
ソコまでのことじゃぁねーと、思うがぁ――すやぁ♪
ふぉん♪
『>コッヘル夫人だけでなく、央都に滞在中のニゲルさんも同行する予定です。ガムラン町の屈強な連中の胃袋を、完全には賄えない懸念があります』
あーそっか。猪蟹屋二号店のニゲルも、念のため付いてきてもらうんだった……けかぁ?
となるとネコアタマ青年や、二号店の給仕たち。
ウチの従業員たちに、迷惑を掛けることには……なりそうかぁ?
コンコン♪
「(お休みの所、大変失礼致します)」
誰か来た……ぜ。
「入ってまぁーす♪ 張り切って、どーぞーぉ?」
ガチャリ♪
扉を開けて入ってきたのは……見なくても、声でわか――むにゃ、ぐぅ♪
「ご安心下さいませ、皆さま。ププークス♪」
出たな、星神さ――すやぁ♪
こつこつこつ、どかどかどかりっ♪
おれの寝床に腰掛ける重量……んうぅうぅー!?
こりゃ星神さまの――重さじゃねぇ?
「クスクス、我が神域食堂はコッヘル夫人を料理長として、お招きすることとなりましたわ♪ ププークス♪」
ぐぅ……確かに神域惑星を挟めばぁ、ガムラン町との行き来が――
お猫さまの転移扉一枚で……済むことになるかぁ?
ふぉん♪
『>はい。女神像の設置されていないフカフ村への道中でも、女将さんを無料でガムラン町へ送り届けることが可能です』
「ひゃぁ、ほっひへふはいほほひゃっへふれひゃぁ――むにゃぁ♪」
「あっはははっ♪ 何言ってるかわからないよ、シガミー! とっとと起きた起きた、朝飯にするよっ♪」
たたき起こされたおれが、秘密の通路へ逃げ込むやいなや――
すっぽ――こぉん♪
「じゃぁ、シガミーは寝てて良いわよ。その代わり、烏天狗を借りるわよぉぅん♪」
追ってきた女神御神体に、そんな提案を持ちかけられた。
ふぉん♪
『ホシガミー>神域食堂とシームレスに行き来出来る、木さじ食堂の内扉を作って下さいな?』
そんな難しいことわぁ――ふぉん♪
『シガミー>誰でも何でも構わん。もう好きにしてくれやぁー、おれぁ寝』
――ぐぅすやぁ♪
二つ返事で、やらされそうな仕事の一切合切を――
烏天狗に、押しつけた。
§
大森林最寄りの村は、フカフ村だ。
例の女神像に取り付けられる転移扉があれば、移動は一瞬だ。
つまりどんな辺境であろうと、その道中だろうが関係ない。
だが魔物境界線の綻びのような、大辺境に女神像は設置されていないらしく――
最寄りの女神像があるレイド村から、深い山道に入る必要があり――
女神像を、大森林がある女神像ネットワーク未敷設地域に――
設置しなければならないのだ。
「けど女将さんも村に帰るのは随分と、久しぶりということですので――コォン♪」
「くすくすうふふっ♪ 地勢や地理や情勢の把握に長けた、旅の専門家に来ていただきましたわぁ――ココォーン♪」
コントゥル母娘が、狐耳をピクピクと動かし――戸口から、こっちを見てやがる。
地勢や地理や情勢の把握に長けた、旅の専門家だとぉ?
そんな奴に心当たりは、一人しかいねぇ。
とても寝起きにわぁ、合いたくはない手合い。
狐耳親子の背後から、ぬっと飛び出す長い横髭。
「出たわねっ! 二つ名持ちのぉ、面白有名人♪」
色めき立つ、根菜。
「決して有名などではございませんが、この針刺し男ニードラー! ルリーロさまからのご依頼、見事やり遂げてご覧に入れましょうぞ――キリッ!」
あー、辺境伯名代のまえだと、しゃっきりとしてるんだな。
「サインちょーだい! このお店、〝アダマンタイト工房〟に飾るからさっ♪」
〝アダマンタイト工房〟だとぉう?
ひねりのねぇ名前だぜ。何なら猪蟹屋鍛冶事業所でも、構わんが?
さらさらさらららっ――♪
『アダマンタイト工房さんへ
――針刺し男ニードラー
光陣暦132年㊑月◇日』
おっさんが書いた二つ名は、工房の待合室へ早速飾られた。
「不肖、針刺し男にお任せいただければ、〝大森林〟すらも恐るるに足りません――ですが、用意していただきたい物が御座います」
頭を垂れる、針刺し男。
おっさんが用意してくれと頼んできた装備品や道具に、殊の外、苦労させられ――
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